閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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「.....ハッ!?」

 

地獄、火山爆発が頻繁に発生し雷が降り注ぐなど日常茶飯事、そこには大きな隕石が大量に落下した跡のような巨大なクレーターがいくつも形成されており地盤が保つかの危機感のある少し離れた場所でヤマシロは意識を取り戻した

 

そう真っ黒に染まった世界が崩壊したのだ、ヤマクロの心の闇に何らかの異変が起こったようだ

 

「....俺は」

 

「おぅヤマシロ、ようやく起きたか、ヒック!」

 

「天狼さん...」

 

ヤマシロが目を開くとそこには上半身裸体の盃天狼が酒を飲みながら近くの岩に腰掛けていた

どうやらヤマシロの意識が離れている間、身動きのとれないヤマシロの体を守っていてくれたようだ

 

「怪我は平気なんですか?」

 

ヤマシロの問いかけに天狼は苦笑いで返す

 

「外傷に至っては全く問題ないが、体の中はボロボロだ。あの光で体に残留した瘴気は全部消え去ったが破壊された細胞までは元には戻らなかったからなァ...」

 

「何でそんな危険な状況になってんですか!?」

 

「あ、後で説明するよ...」

 

事情を知らないヤマシロは天狼の発言に驚きとちょっとした心配という見せかけた怒りが心中を葛藤する

何故か冷や汗ダラダラの天狼は取り敢えずとばかりにもう一杯酒をグビグビと飲み始める

しかも現世のアルコール度数が異異に高い高級日本酒を一口で飲み干した

 

「いや、一応言っておくが別にただ無駄に酒を楽しんでるんじゃねェぞ。俺は自身の身体にアルコールを取り入れてエネルギー源に変換させた後細胞の再生を少しでも早めようとしているだけだからな!」

 

「....そういうことにしておきますよ」

 

ヤマシロの冷たい目線と一言に天狼は大切な見えない何かが粉々に砕け散った感覚がした

 

「なぁ天狼さん、聞きたかったんだけどヤマクロって...」

 

「閻魔様ー!おーーーい!!」

 

「亜逗子、査逆...」

 

「坊ちゃんはあいつらに任せてある。あと煉獄のことを忘れてやるな、あいつが今回一番頑張ったみたいだからな」

 

声が聞こえ天狼の指差す方向を見てみると何やら冷や汗を垂らしながらの煉獄を引きずる亜逗子とヤマクロを背負った査逆が走ってきた

どうやらあちらも無事に済んだようでヤマシロは一先ず溜息を一つ漏らす

 

「閻魔様、本当にすみません!坊ちゃんのこと全力で殴っちまって気絶してしまったかもしれねぇ!」

 

「落ち着け亜逗子、とりあえず炎を纏って全力で一発問答無用で殴らせろ」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいや、たしかにあたいは悪いって思ってますけど!たしかに多少の罰は期待、あ、いや、覚悟してましたけどそれはないと思います!!」

 

「.....まぁいい」

 

ヤマシロは拳とさり気なく出現させていた閻魔帳を仕舞うと亜逗子に片足を握りしめられていて身動きの取れない煉獄を見る

 

「ありがとな煉獄、お前がいなかったら正直結果は変わっていたかもしれない」

 

「フン、俺は俺の意思で動ゐただけだ。礼を言うのは少し違うぜ」

 

煉獄はニヤリと小さく笑みを浮かべながら応える

脳波を長時間、しかもかなりの高難度の操作を行った彼の脳に現在掛かっている負担はかなりのものであろう

下手すれば頭痛なんてモノじゃ済まないレベルかもしれない

だが、彼がいなければヤマシロが無事に精神を身体から離脱するなんて荒業が出来なかったのも事実である

 

「閻魔様〜ウチの部下もマジ中々やるでしょ!この機会にもっと図書館に人員派」

 

「の前にアンタは信頼を得ることから始めろよ」

 

「マジ余計なお世話!!」

 

「ゴフッ!?」

 

煉獄は今度こそ本当に意識を失った

先程の一撃は割と本気の一撃のようでその証拠に脳波も僅かに纏っていたこともわかった

 

「にしても今回も派手に暴れたな」

 

「俺と査逆は坊ちゃん相手だったから無意識に力を抑えちまってたからな、大半は紅が原因だな」

 

「責任取るの結局あたいですか!?」

 

『うん』

 

「まさかの全員一致!?」

 

きゅ、給料が、給料がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!と頭を抱えて叫ぶ亜逗子を無視してヤマシロ、天狼、査逆はヤマクロを近くの岩場にそっと寝かせる

 

「で、坊ちゃんはマジどうなったんですか?」

 

「結論から言わせてもらうと妖刀村正が全ての元凶だな、あと隗潼さんと親父も間接的にだがこのことに大きく関わっていることになる」

 

「隗潼と先代が?」

 

「たしかに先代は坊ちゃんを幽閉したマジ許すまじの張本人だけど、隗潼のおじさんが関わってるっていうのはマジどういうことだ?」

 

ヤマシロの言葉に天狼と査逆は首を傾げて疑問を浮かべる

ゴクヤマが関わってるということは百も承知だったのだがここにきて隗潼の名前を聞くことは予想外だったのだろう

ヤマシロは言葉を続ける

 

「ゼストから聞いた話なんだが隗潼はあの時、ヤマクロを封印していた道具の一つであるミァスマを密かに持ち出したらしい。それで封印は力を失ってヤマクロは以前から目をつけられていた妖刀村正の力を使って封印を解いたんだ」

 

「ちょっと待て、たしかに隗潼はそんな死神を呼び出していたし鎌も持っていた。だが妖刀村正に目をつけられていたとはどういうことだ?坊ちゃんが妖刀村正ち目をつけていたんじゃないのか?」

 

「妖刀村正がヤマクロを選んだんだ、現世の言葉を借りると長く存在したモノに魂が宿る、付喪神みたいなモノだろう。ただし刀に意思そのものがあったわけじゃないみたいだけどな」

 

「なるほどね、それで何らかの形で地獄の瘴気と波長して意思を捨てて力を持ったわけね」

 

「あくまでも仮説だがな」

 

そう、今となっては本当のことなど誰もわからない

ヤマクロの意思の主導権を握っていた仮面も今やどうなったかは不明である、おそらくヤマクロも仮面を被っていた頃の自分のことなど話したがらないだろう

 

「じゃあ坊ちゃんが瘴気を放っていたのはどういうことなんだ?いくらあんたら閻魔が規格外だからってアレだけはどうしようもないはずだ」

 

「ヤマクロは瘴気を放っていたわけじゃない、操っていただけだ」

 

「だがあれほどの瘴気...」

 

「あれは妖刀村正に宿っていた瘴気だ。妖刀村正がヤマクロの瘴気の器として機能していたんだ、現にあいつが刀を握っていない時には瘴気が放たれていなかった」

 

「そういえば...」

 

どうやら天狼に思い当たる節があるようで思い返している

 

「そういえば村正は?」

 

「さぁ、亜逗子が坊ちゃんと戦っている途中にどこかへ吹っ飛んでちゃったんじゃない?」

 

「ここでまさかの追い打ち!?いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、そこに普通に刺さってますから!地面に普通に刺さってますからぁー!」

 

「........チッ」

 

「その舌打ちは聞きたくなかった!」

 

やれやれといった様子でヤマシロは亜逗子の指差す方向を見てみると本当に妖刀村正は地面に刺さっていた

鞘は見当たらない、というかヤマクロは元から鞘を所持している様子はなかったので鞘は初めからなかったのだろう

閻魔帳を再び取り出して妖刀村正を封印するためにヤマシロは準備を進めていく

 

 

 

 

その時であった...

 

妖刀村正は怪しく淡い紫の輝きを放ち始めたのは

 

「なん、だ?」

 

悪い予感しかしなかった、このタイミングで何かが起こると必ず何か起こることの可能性が高いからである

次第に紫の輝きに黒い炎の様なモノまで発生し始めて何故だかわからないが近づきたくなかった

近づかなければならないのに、どうしても近づこうと思えなかった

 

「閻魔様!」

 

背後から亜逗子の声がした、背後から亜逗子が走ってきた

ヤマシロが亜逗子の方向に振り向いた瞬間、

 

「なっ...!?」

 

「閻魔様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

妖刀村正から放たれた紫の輝きは天に向かって一直線の巨大なエネルギーとして放出された

妖刀村正を中心に地割れが発生する、ヤマシロは地割れと衝撃波に巻き込まれる

 

「ガッ...!?」

 

衝撃がヤマシロの体に痛みを与える、地割れがヤマシロの足場を奪う

 

更に地面から村正から放たれてるのと同じ紫色の輝きが辺りに同じように天に向かって放出される

もちろん、ヤマシロの足元も例外ではなかった

紫の輝きがヤマシロを直撃した

 

「閻魔様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「よせ!危険だ!!」

 

「離せ天狼ォ、閻魔様が、閻魔様がァ!!」

 

「落ち着け、ヤマシロは大丈夫だ!」

 

天狼は亜逗子を抑えながら査逆の方向に視線を向ける

査逆は紫の輝きに向かって数本の鎖を向けていた

その鎖の先には...

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

ヤマシロの左脚が巻き付いていた

査逆はヤマシロを巻きつけた鎖を一気に手繰り寄せる

 

「うご!?助かったぜ、査逆」

 

「全く、マジ油断しすぎですぜ閻魔様」

 

ヤマシロは背中から落下するが見た所外傷はなさそうであった

ヤマシロは大の字の状態から座り直し、再び妖刀村正に目を向ける

 

「あれは一体何なんだ?」

 

「マジわからないけど一難去ってまた一難ってことじゃないですかね?」

 

少し離れた位置からヤマシロも査逆も亜逗子も天狼も突然の現象に目を疑う

 

「アレ、もの凄い瘴気の量だぞ」

 

「瘴気?たしかに瘴気の感じはするがそこまで強くは感じないぞ」

 

「いや、アレはとんでもない量だ!地獄中の瘴気が収束していると言ってもいいかもしれない!」

 

天狼は一人冷や汗を流す

彼は人一倍瘴気に因縁があり、人一倍瘴気に敏感である

だからこそあの膨大な量の瘴気を感じ取ることができるのだ

あまりに巨大過ぎる力は当たり前のように認識してしまうため当たり前として捉えてしまう、例えるならば辺りに埃が大量に舞っていても全く気がつかないのと同じということだろう

 

「天狼さん、あんた地獄中の瘴気が集まっている感じだって言ったよな」

 

「あぁ、とんでもねぇ量だ」

 

「だとしたら、かなりマズイ!今すぐにアレを止めないと取り返しのつかないことになる!!」

 

「ど、どういうこと?」

 

「この地獄という世界は瘴気があるからこそ存在が保たれている、現世の地球に酸素と水素があってこそ存在できるように。漂っている瘴気は地獄という世界を安定させ存在させるためには必須のモノ、それが地獄内とは言え大気中から瘴気が無くなってしまえば地獄は崩れ、こちらの世界のバランスが崩れてしまうから下手すれば現世にまで影響が及んでしまう!!」

 

ヤマシロの説明に亜逗子は顔を青ざめる

たしかに瘴気は有害でしかないものだが地獄を支え存続させていくには無くてはならない存在だった

 

「俺が、何とかするしかねェ!!」

 

「閻魔様!」

 

ヤマシロは脚の筋力をバネの代わりとして扱い、妖刀村正まで再び距離を詰める

しかし、やはり近づけない、というよりも近づきたくない

あまりにも膨大な瘴気を前にヤマシロの防衛本能が働き一歩たりとも近づくことができない

何度弾かれてもヤマシロは挫けることなく妖刀村正に近づこうとする

 

地獄には沢山の亡者、麒麟亭に住む鬼たち、地獄に生息する生物、天地の裁判所では働いていない鬼たちと多くの命が滞在している

しかもその生命は一度消えてしまえば輪廻転生の輪に乗って新たな生命として生を受けることになるが数が多すぎるためそれこそ輪廻転生のバランスが崩れてしまいとんでもない事態になりかねない

 

「チクショウ、チクショウ!!」

 

ヤマシロは大地に拳を打ち付ける

 

「何なんだ俺は!たった一人の弟を救うことしか出来ないのか!?俺は多くの命を救うことはできないのか!?何が閻魔大王だ!!」

 

ヤマシロは涙を流していた

それは悔しさゆえの涙か己の弱さを責める涙かは誰にもわからない

 

たしかに今回の件でヤマシロの弟、ヤマクロは救われたかもしれない

しかし、それは所詮身内であり一個人でしかない

閻魔大王という役職は多くの責任と命を背負いながら生きている、自身の運命を呪っても救われる者は一人もいない

 

「俺は、何て非力なんだ...!」

 

普段弱いところを決して見せないヤマシロの弱音であった

どんな難事件があっても、どんなに怪我をしても、次の日にはケロっとした様子で一切文句も言わずに仕事場に戻るヤマシロも生きているヒトの一人である

疲れは感じるし怠さも感じるし眠気もあるだろう、それでも弱音やそんな様子を見せなかったのは閻魔大王という役職の重みと責任感を十二分に知っていたからである

だからこそ前向きにかつ明るく振る舞い信頼を得ていた

その信頼の積み重ねの裏にはヤマシロの誰にも話したことのない弱音や本音があったのだ

 

「俺は...俺は...!!」

 

ヤマシロが何かを言いかけた時、彼の肩にゴツゴツとした大きな手が置かれた

 

「辛かったな、ヤマシロ」

 

「て、天狼さん...」

 

「ゆっくり休んでな、後は俺が決着をつける!」

 

「え...!?」

 

天狼の一言にヤマシロだけでなく亜逗子や査逆も目を見開いた

 

「あんた、一体何を...」

 

「そのまんまの意味だ、あのとんでもない瘴気は俺が何とかする!」

 

「だ、駄目だ、アレには近づくことすらできない!」

 

「大丈夫だ、俺は人一倍瘴気に強い体だからな。俺が妖刀村正を破壊して瘴気を再び地獄に分散させて全部終わりだ」

 

「あんた、自分が何言ってんのかわかってんのかよ...」

 

「十分承知している」

 

ヤマシロは天狼の目を見て言葉を失った

それは何かを決意し覚悟を決めた一匹の狼の眼だった

 

「ったく、泣き虫は相変わらず変わってねぇな」

 

天狼はヤマシロの顔を見ると優しい笑みを浮かべた

ヤマシロが今まで見たことのない表情だった

再び妖刀村正を睨みつけ天狼が一歩足を進めようと

 

「ざけんじゃねぇ!!」

 

したところで、亜逗子が態々天狼の正面にまで回り込んで天狼の右頬を全力で殴りつけた

 

「ふざけんなよ、テメェ!あたいとの決着はどうするつもりだよ!勝負に引き分けはないんだろ、逃げんのかよ、盃天狼って男はその程度の男だったのかよ!あたいと互角に戦っておいて戦闘以外で自分の全てを終わらせるつもりかァ!」

 

「紅...」

 

「冗談じゃねェ、たとえ閻魔様や査逆、煉獄や坊ちゃん、裁判所の連中がそれでお前を許したとしても、あたいが絶ッ対にお前を一生許さないからな!!」

 

亜逗子は涙を流しながら天狼の胸ぐらを掴んだまま叫んだ、ひたすら叫んだ

彼女もまた孤独だったのだ、彼女の周りにはたくさんの部下達に囲まれているので孤独という言葉は真逆の位置にあるように思えるがそれは違った

彼女の実力についていける者が裁判所内にいなかったのだ、彼女は昔から戦うことが好きであった

周りと突出した力を持っていた彼女は自分と同等の力を持つ理解者を求めていた

麻稚よりも強く査逆とは釣り合わずヤマシロとは機会がない

そんな時に現れたのが天狼だったのだ

彼と戦って彼女の生きがいが戻ったのも事実、だからこそ天狼を失いたくないのだ

天狼は亜逗子の涙を指でそっとなぞりながら微笑む

 

「紅、やっぱお前、銀狐にそっくりだわ」

 

その一言とともに亜逗子の首に手刀を入れる

 

「止めんなよ、査逆、ヤマシロ」

 

「ウチは止めようとは思わないわよ、友の頼みを聞かないわけにもいかないからね」

 

査逆はそう言い気絶した亜逗子を自身の肩に乗せてそのまま俯いたまま小さく笑った

 

「煉獄にもよろしく言っておいてくれ、あんな奴でもかつて共闘した仲間だ」

 

「天狼さん...」

 

ヤマシロは天狼の覚悟の重さに再び涙を流す

 

「閻魔様、俺は自分自身に決着をつける!」

 

その一言を最期にヤマシロと査逆は天狼を一人置いてその場を跡にした

 

 

 

数分後...

天狼は重苦しい瘴気をものともせずに妖刀村正の側までやって来ていた

 

「銀狐...」

 

彼はかつて愛した女性との日々を思い出す

彼女もまた瘴気と戦い瘴気の被害者の一人である

だからこそヤマクロを彼女と重ねてしまい本気で救おうと思った

これ以上瘴気関連で無駄な犠牲は出ないで欲しい、ヤマシロが閻魔大王である以上その心配はないだろう、そう判断したのだ

 

天狼は瘴気を吸い込み始める

 

そして体内に取り込んだ瘴気を力に変える

体から嫌な音がミシミシと鳴り出し、あちこちから出血し始めるがそんなことはもはやどうでも良かった

 

思えば彼が彼女の死に挫けずにいられたのはゴクヤマのお陰だったのかもしれない

あの後、彼はゴクヤマに発見されその力を魅入られて天地の裁判所で働くことになった

そこでは自分より強い鬼たちと母の死体と出会った

母の治療は失敗に終わっていたのだ

それでも前に進めたのは査逆のお陰かもしれない

幼かった彼女は積極的に自分に絡んできたのだ、もうそれは鬱陶しいというぐらいに

裁判所では驚きの連続だった、最も驚いたのは紅亜逗子との出会いであろう

何せ性格や角の生え方が彼女そっくりなのだから

 

(思えば色々なことがあったな...)

 

天狼は静かに目を閉じ微笑む

 

そして全身に力を込める

 

「お前の役目はもう終わったんだ妖刀村正」

 

天狼は静かに妖刀村正を握りしめる

 

「俺が一緒に逝ってやる、感謝しろよォ!!」

 

その言葉とともに、妖刀村正にビキビキビキッとヒビが入る

 

「待ってろ銀狐、今そっちに行く」

 

瞬間、妖刀村正に込められた瘴気が四方八方に分散した

 

この日、地獄は幾度の危機を迎えて一つの命を犠牲に救われた

紫色の不気味な輝きは消え去り、辺りには巨大なクレーターがいくつも残っていた

 

その中心に色素の抜けた髪をなびかせ両腕を失ったの男が倒れていた

 

享年352歳、酒呑童子最後の生き残り盃天狼

 

彼の生涯は静かに閉じられたのであった

 




キャラクター紹介

酒井田銀狐(さかいだぎんこ)
種族:酒呑童子
年齢:258歳(生前、人間でいう25歳)
趣味:飲み比べ
イメージボイス:斉藤佑圭
詳細:バッカス集落最強の酒呑童子
天狼の保護者のような存在で天狼に弟のような感情を抱いていた
天狼の気持ちには最後まで気がつかなかった
唐辛子が苦手という一面があり、よく天狼にいたずらされていた


【挿絵表示】

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