先手を取ったのはヤマクロだった
妖刀村正に再び瘴気を収束させヤマシロに斬りかかる、瘴気を纏わせてサイズを拡大させているためある程度離れていても攻撃は届き斬撃と重圧の性質を兼ね備えた瘴気がヤマシロを襲うも、ヤマシロは鬼丸国綱を即座に構えて一太刀で防ぐ
更に瘴気の重圧など関係ないとばかりに妖刀村正を瘴気ごと弾く、そして炎を収束させヤマクロに放つ
普段のヤマシロであれば閻魔帳を経由しなければ脳波を炎の属性に変化させることはできないが地獄にいるときのみ閻魔帳を経由することなく炎を扱うことができる
対するヤマクロも炎を放出し更に瘴気を纏わせて世にも珍しい紫黒の炎を形成する
「世に降りし燃え盛る化身、全ての邪を焼き貫け!」
「聖なる白を飲み込む黒よ、その力で汝をば呑み込まん!」
ヤマシロの炎とヤマクロの炎が激突する
広範囲に広がる互いの炎は侵食と再生を繰り返し火花が飛び散る
ヤマシロはそこから炎を掴むように捻じり起動を無理矢理変える、ヤマクロも炎により多くの瘴気を送り込む
二人の力の差は五分と五分というのは目測ではわかるが実際のところはヤマシロが押している
なぜならヤマクロは自ら力を弱めているのと等しい行為を行っているからである
「アハ、流石だね兄さん☆」
「ヤマクロ...」
「あの白い光よりもずっと楽しくて面白いよ、もっともっとその力をボクにぶつけてよォォォォォ!!」
ヤマクロから放たれる瘴気の量が一気に跳ね上がる
普通のヒトであれば近づくだけで気絶、いや絶命してもおかしくないほどの殺気。肌で触れるのも嫌に感じる、いわば毒のようなモノである
本能的にそれを感じ取るレベルを軽く越すような禍々しさと危険な状態でもある
ヤマシロは無言で近づき鬼丸国綱に炎を纏わせてヤマクロに斬りかかるがヤマクロは妖刀村正で軽々と防ぐ
ヤマシロが斬りヤマクロが防ぐ、ヤマクロが斬りヤマシロが防ぐというパターンの火花を散らし合う唾競り合いが続く
時折ヤマクロは瘴気のみの攻撃を試みるもヤマシロの炎によってあっさりとかき消される
「アハ、アハハハハハ、いいよ兄さん強いよ!昔殺り合った時よりも遥かに強いよ!!」
「俺だって弟のお前に負けっぱなしは流石に嫌だからな、それなりに鍛えてんだぜ」
「でも相変わらず地獄じゃないと炎は使えないんだね☆」
「.....地獄じゃ使えるからいいんだよ」
唾競り合いの最中にも会話を交わすことからお互いに本気を出していないことがわかる
本来ならば本気で戦ってもおかしくない状況なのだが二人とも心のどこかで兄弟という情が働いているのかもしれない
特にヤマクロ、彼は瘴気により精神を蝕まわれていう様に見えるが実際そんなことはない
気がついているのはヤマシロと査逆の二人だけである、長い付き合いのある二人だからこそ気がついたことである
何故ならヤマクロの性格は以前からあのような感じだったからである
微妙に狂ったような口調もおちゃらけ気味な感じも戦闘狂なところも偶に殺意が沸くのも彼が幽閉される前からの性格であるからだ
恐らくだがその性格が瘴気に魅入られて常人より多くの瘴気を保つ器を手に入れたからだと思われる
「兄さん、ボクその後ろの二人とも戦ってみたいんだけど」
突如ヤマクロが唾競り合いの最中後方に移動してヤマシロに、いやヤマシロの後ろに立つ二人に妖刀村正を突きつける
「それは光栄だな、まさか坊ちゃん直々のご指名を受けるとは思わなかったッスよ」
「ま、あたいが居れば千人力ってね」
「お前ら...」
「選手交代ッスよ閻魔様、あんた脳波使ゐすぎてもうクタクタじゃなゐですか、ぶっ倒れるぜ?」
「それにただあいつらを治すためだけにあたいを連れてきたんなら文句も言いたいね、あたいにも体を動かす権利はあると思いますんでね!」
紅 亜逗子と煉獄 京がヤマクロの目の前に立ち上がった
実際ヤマシロは脳波の操作が元々得意ではないため脳にかかる負担も人一倍大きくなる、実際疲労でフラフラしているのも事実である
「....煉獄、アレはできそうか?」
「さっき実験で査逆さんにやってみたんですけど、他者でそれを実行しようとしたら負担大きゐですんで長時間は無理ですね」
「それでもいい、動いているヤマクロには可能か?」
「さっきの戦ゐを見てたトコだと、可能ですね。かなり難易度高ゑですけど」
煉獄の言葉に安心しヤマシロはニヤリと笑みを浮かべる
亜逗子は何のことかわからない表情を浮かべながら何のことかと尋ねてくるがあえて話さずに、
「よし、よろしく頼む!」
亜逗子と煉獄の背中を全力で叩いた
亜逗子と煉獄も笑みを浮かべ、それを合図とするかのように亜逗子と煉獄は同時にヤマクロへと向かって行った
ヤマクロも妖刀村正を構え直す
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