閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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もうすぐ今年も終わりますね...
心残りはあるようでないような...


Fiftieth Judge

ベンガディラン図書館...

 

「査逆さん、そろそろ仕事しますかぁ、ってゐなゐし...」

 

燃え上がる赤い長髪が特徴的な青年煉獄は広辞苑の様に分厚い死神伝記と表記された一冊の本を閉じ、そこにいるはずの上司に声をかけたが空振りに終わる

どうやら随分集中して長い時間読みこんでいてしまっていたらしくある程度図書館は読み始める前よりも綺麗になっていた

あの上司がどこに行ったかは知らないし興味もないが今日はいつも以上に天地の裁判所が静かに感じた

 

もしや外で何かが起こっているのか?

そうだとしたら余計に査逆がここにいない理由がわからなかった、何故なら彼女は超が付くほどの面倒くさがりで仕事を部下に押し付けて一人で本を読みながら「グヘヘへ」とか言っているような上司なのだから

特に彼女自身にメリットがないと彼女は絶対に動くことがないことを査逆と数日過ごしただけだが、おそらく彼が一番実感しているに違いない

 

(それに、あの人無駄に強ゐし俺が出る幕なんてないだろうな...)

 

煉獄はそんなことを思いながら近くの本棚に手をを伸ばし、セレモニー・カルドセプト12巻を手に取りしおりを挟んでいた部分から読み始めた

彼も曲がりなりに図書館の整理を行ってきたので査逆には負けるが大体の本の位置と種類は頭に入ってしまっている

 

煉獄は再び眼鏡を掛け直し、本の世界に没頭し始めた

 

 

 

地獄...

 

「ウォらァァ!!」

 

「おっと、と、もしかして変身能力とかあったの?憧れるね〜格好良いね〜!!」

 

「ト、まれィ!」

 

ズドォォォォン!と天狼の拳がヤマクロを大地ごと叩きつけ、とてつもない衝撃波を生み出す

天狼は焦点の定まらない眼でヤマクロを睨みつける

 

「まさかコレを受け止めてヒビを入れるなんて予想外だよ、思ったより楽しめそうで何よりだよ!!」

 

ヤマクロは妖刀村正の刀身を見ながら興奮気味に年相応の純粋な子供のように目をキラキラと輝かせる

天狼は宙に浮いているヤマクロに向かって炎を放出する、しかし先ほどのような赤く広範囲に広がる炎ではなく酸素と空気とアルコールと瘴気の力で安定させた青白いバーナー状の炎のレーザーを打ち放つ

ヤマクロはそれを村正と村正に纏わせた瘴気で炎のレーザーを辺りに拡散させ、攻撃を防ぐ

もし村正だけで受け止めていたのなら炎の温度により刀身がドロドロに溶けてしまったであろう

 

「シぶとイ...ゴフッ!」

 

天狼は一か八か、瘴気を吸い込みその後理性を捨てるという荒技を行い自らの体内に瘴気を取り込み力に変換することに成功した、それに加え僅かで消えてしまいそうだが意識と理性を保つことにも成功した

しかしその代償として瘴気が体を蝕む速度が急激に上昇してしまっている、長期戦は望めない...

そして何より瘴気を力に変換し過ぎたせいで見た目にまで影響が及ぶことになった

角は大きく逸れて目の前のモノを突き刺すかのような鋭利と迫力が増し髭と髪は繋がり髪も背中に届くほど長くなり、元々筋肉質の体の上に更に筋肉が増量し体も一回り大きくなる

 

「ごゥ、ラぁぁぁァぁぁ!」

 

「おっとっとっと、危ない危ない」

 

天狼が再び炎のレーザーを放つも空を飛んでいるヤマクロは難なくひょいひょいと高度を変えながら回避する、回避が間に合わない時には瘴気を練り出して防ぐという防御を中心に反撃のチャンスを伺っている

 

と、ヤマクロは地に足を預け足に瘴気を集中させて瘴気が発生する衝撃をバネのように扱い天狼との距離を一気に詰める

そして、

 

「そりゃ☆」

 

妖刀村正で天狼の体に瘴気を纏わせた一太刀を斬りつける

 

「.....ガッ、ァ!?」

 

天狼の体の斬り傷から血が流れ出す

ヤマクロはニヤリと笑みを浮かべながら村正に付着した天狼の血をペロリと舐める

 

「まだ倒れないでよね、楽しいゲームはまだ始まったばっかなんだからさ〜☆」

 

ヤマクロは笑みを崩さない、それどころか更に狂気の満ちた表情に歪んでいくのがわかる

天狼はヤマクロに傷を付けられたが倒れる様子はなく、そのまま踏み止まり息を荒げる

 

「て、ンメェェぇ、こノ野郎ぅ!」

 

「アハ、アハハ☆」

 

天狼がヤマクロに殴りかかる、ヤマクロはそれを村正で防ぎ弾き、追い打ちをかけるように瘴気を天狼に浴びせる

しかし天狼はその瘴気すらも飲み込んでしまい、全身から血管が浮き出口から血を吐くも、そのまま吸収して力に変換することで更に一回り体を大きくする

天狼は蹴りを、ヤマクロは刃をぶつけ合い肉体と刃物の攻防戦が暫しの間展開され、実力は互いに均衡し合いどちらが先に隙を見せるかという唾競り合いの状態になっている

 

「あは、いいねいいねいいねいいねいいねいいねいいねいいね!もっと、もっともっと楽しもうよ、もっと力を見せてよ!」

 

ヤマクロは表情を歪めながらひたすら笑い独り言を話すが、天狼が応えることはなかった

もはや理性もギリギリ、戦いも互角で戦うのがやっとの彼にそんな余裕は一切なかったのだ

 

すると、突如ヤマクロの動きが止まり、天狼の一撃がヤマクロを捉える

ヤマクロは抵抗することなく後方へと吹き飛ばされるがもう一つの異変に気がつかされる

 

鎖、右腕に鎖が巻きついていたのだ

おそらく動きが止まってしまったのはコレのせいであろう

ヤマクロは鎖の出処を探るため鎖の放たれている方向に目を向ける

 

「ねぇ、何で邪魔するの?」

 

「すみませんね〜坊ちゃん、ウチも本来なら坊ちゃんをマジで応援したいところなんですけど目の前で同僚がズタズタに叩きのめされてるの見ちゃったら不利な方応援したくなるのがウチのポリシ〜なんすよね」

 

鎖の主は少女だった

無駄に髪を盛り金髪と茶髪の丁度中間辺りの微妙な色で染められた長髪のせいで両目が隠れてしまっており確認することができない

しかし、あの攻防戦の中でヤマクロの腕を狙い鎖を巻きつけることができた相当の実力者として見て正解であろう

 

「久し振り査逆、今度は君が昔みたいに遊んでくれるの?」

 

「昔みたいな甘っちょろいのは坊ちゃんの好みではないでしょ、もっと刺激的で血が煮えたぎるような遊びの方が好みなんじゃないですか?」

 

「流石だね、査逆はボクのことがよくわかっている」

 

「お褒めにいただきありがとうございます」

 

そこから両者の間に言葉は交わされなかった

 

そして、二十を越える無数の鎖と一本の刀がそれぞれ構え放たれ、月見里査逆とヤマクロ、かつて特に主従関係の強かった二人が激突した

 




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