妖刀村正...
かつて江戸幕府を開いた徳川家康の一族が所持していた業物
家康の父、松平広忠や祖父、松平清康と嫡男である松平信康が腰にして命を落としたことから江戸時代では禁忌の一つとして厳重に保管されていた
それを数百年前、死んだ家康が裁判所に来た折に当時の三代目閻魔大王に黄泉の世界で管理を依頼されて以来は家康の頼み通りに閻魔一族が代々厳重に取り扱って来た
しかし、世は四代目の時代に変わる
ここまでは何の問題はなかったのだが問題はヤマクロが生まれてしまったことであった
ヤマクロの力は四代目の想像を越えるモノで封印せざるを得なくなった
その封印に使われた三つの道具の内の一つが妖刀村正である
村正には負の気を吸収する性能が備わっていたのでヤマクロの負の気を抑えながら封印の中枢を担うにも等しいものであった
(.....なんでそれが封印されてた本人に使われてんだよ、ッたく)
その封印対象であるヤマクロに意のままに操られている妖刀村正、刀は主人を選ぶとも言われているがこの結果は偶然が産んだモノであろう
「ねぇ、早くやろうよ暇だから、さァ!」
「全く...せっかちな坊ちゃんだな!」
痺れを切らしたヤマクロが天狼に斬りかかる
妖刀村正に乗せられた瘴気とヤマクロ本来の閻魔の力が作用して斬れ味は数段にも跳ね上がる
天狼は持っていた瓢箪で剣撃を受け止める、彼も戦闘前に大量に酒を飲んでおりアルコールをエネルギーに変えるという酒呑童子独特のドーピングと彼本来の力が防御力に具現化される、加えて脳波を瓢箪に集中させ瓢箪本来の硬さをも上昇させる
本来脳波とはテレパシーなどの通信手段や相手の位置を特定する時などに使用されることが多いが、戦闘に活かすことも可能となる
そもそも脳波は脳から直接放たれる波長なので想像力を働かせることで少しながら現実に影響を与えることができる
これは訓練次第で強化できるもので大抵の鬼はこの力を駆使して戦闘を行っている
天狼はそのまま瓢箪に脳波を纏わせヤマクロに殴りかかる
瓢箪は鋼鉄の強度を誇りヤマクロが村正で防ぐが衝撃は周辺に散乱し、ヤマクロと天狼を中心にクレーターが出来上がりクレーターから地面からヒビが生じる
ヤマクロはすぐさま瓢箪を弾き、天狼に下段からの斬り上げを放つも脳波を纏わせた腕で受け止めて更に脚にも脳波を纏わせヤマクロの首を狙う
(悪りぃな、遠慮なくいかせてもらう!)
しかし、ヤマクロは瞬時に空中へ飛び、浮遊する
ヤマシロの弟でゴクヤマの子である彼も閻魔なので空を飛ぶことなどヤマクロにとっては造作もないことである
ヤマクロはそのまま天狼の背後に迫り数多の瘴気を纏わせた斬撃を放つ
「ぬぐぅ....!?」
「アハッ☆」
躱しきれずに一撃攻撃を受けてしまう
斬り込みが浅かったのが幸いしたが天狼の動きは確実にだが鈍り始めていた
(クソッ、瘴気は確かに有害なモンだがここまで効き目が強いもんじゃねぇはずだぞ...)
「もう、いっぱーつ!!」
「チィッ!」
ヤマクロは村正に先程より膨大な量の瘴気を纏わせ巨大な剣を象る
ヤマクロはそれを両手で支え天狼は静かにそれを見上げる
(あんなモンが地獄に当たったら、ただじゃスマネェぞ!)
まさに地獄を両断してしまいそうな武器になり得ない
恐らく瘴気や邪気といった類の負の気を吸い取る村正が地獄中の瘴気を吸い取り、一つにしたのが今の村正である
しかし、
(坊ちゃんは、なんで影響受けてないんだ?)
本来ならばあれほどの量の瘴気を手中に収めようとするならば相当の実力者でなければ不可能だろう、しかしそこではなく瘴気とは本来精神を貪り身体に害を与えるという本当に有害な物質なのだ
地獄に常時漂っている微量の瘴気ならばまだしも、地獄の瘴気が集結した村正の近くにいるヤマクロは体が残っていることすら本来ならば閻魔と言えどもありえないことである
(とりあえず、アレを何とかしないとなァ!)
天狼はボロボロになった服を破り千切る
そして、
スゥ〜....ゴキュゴキュゴキュゴキュ!!
「ガッ....ハバァ...!?」
酒、ではなく大気中に漂よう瘴気を体内に吸収し始めた
『天狼、酒呑童子はある程度ならば体内に何を含もうとも死ぬことはない』
『ンだよその根拠のない話...』
『根拠はある、私は先日腐った豚肉七キロを食べ腹を下すハメになってしまった...』
『全然説得力ねぇよ!』
『だが死ななかった、これ以上の理由が必要か?』
『あんたが言ってなかったら必要なかったろうなァ!!』
「そうだ、俺たち...ゴフッ、酒呑童子は...飲み込んだ成分を力に変える、ガフッ...アルコールが一番適正だったに過ぎないんだ、俺は瘴気を力に変えるッ!!」
瞬間、天狼の姿がヤマクロの視界から消え、
「もっとヨコセェ!!」
「ゴァァァァァァァァァァァァァ!!?」
ヤマクロの身体に強烈な一撃を放った
村正に集まった瘴気は形を留めることができずにグニャリと分散して大気中に飛び散る
「ゴハッ...!」
「は、ははは、面白いことしてくれるね!」
瘴気が天狼の身体をゆっくりと蝕み始めた
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