美原千代...
ヤマシロの父であり、先代閻魔大王を務めていたゴクヤマが引退したことに何か関係があるかもしれない人物、ゼストによるとゴクヤマが引退する三日前に美原千代を死後の世界に連れてくるように依頼を受けており、公式の記録にも残されていることが枡崎の協力により判明もしている
その後、美原千代の裁判が行われ、その裁判の後のゴクヤマの活動記録はなかった、つまり引退したのだ
元々ゴクヤマの時代は裁判が比較的少なく、最も平和な時代と言われていたため記録を漁ることは無理難題ではなかった
「.....なるほどね、確かに怪しいわね」
こちらの持っている情報を須川に渡すことが今回の前払いの報酬だと彼女は応じてくれた
「あの堅物のゴクヤマが裁判をするなんて、中々興味深いじゃない」
「.....あんたもその一人なんだろ?」
「一応ね、でもその数少ない枠組みの中の一人って珍しいんじゃない?」
「ドヤ顔で言うことじゃないだろ」
「それもそうね」
須川はいつの間に注文したのかわからない未だに湯気が立っているコーヒーを一口飲む
ヤマシロもまだ少し中身の残っている酒樽を持ち上げ豪快にグビグビと飲む
気が付けば須川はコーヒーを置きスマートフォンをいじっていた
「何してんだ?」
「足の調達よ、移動しないといけないからね」
瞬間、店の外から凄まじい激突音が響き渡った、というか店に向かってどこかで見覚えのあるスポーツカーがヤマシロの視界に映る
「......あれって、まさか」
「......えぇ、そのまさかよ」
二人は一先ずスポーツカーを見て見ぬ振りをし、静かに勘定を済ませ店から立ち去った
その後ろで頭を抱え、叫び、店員に追い回され、挙げ句の果てには警察にまで追われているどこかで見た金髪で黒い特攻服を着たグラサン野郎がスポーツカーと共に逃走したのは恐らく気のせいであろう
気を取り直して、須川は他のツテを使うべく再びスマートフォンに視線を落とした
「そういやどこに向かうつもりなんだ?」
「美原千代のトコよ」
「場所わかんのかよ!?」
ヤマシロは思わず突っ込む
まさかこんなに早く顔を見ることができるとは思いもしなかったからだ
「一応ね、知り合いってわけじゃないけど私の情報網を使えば楽勝よ、私にプライバシーなんて言葉は通用しないわ」
「.....お前には絶対秘密とか喋ったら駄目だってことが今よくわかったよ」
「男なんて、ちょっと色目使えば何でも話してくれるしね♪」
「最悪だ、コイツ!!」
※
一方...
「チクショウ、時雨の奴め!儂を呼び出したにも関わらずどこに行きおった!?あぁぁぁ、まだ追っ手が!?面倒だな、一気に引き離す!!」
腹黒い情報屋に呼び出された挙句、何故か警察に追われる羽目になった戦国武将は全速力で道路を走り抜けていた
※
「ここで待ってれば来るのか?」
「えぇ、そろそろ着くはずよ」
その後、近場の公園に移動した二人はベンチに座りながら待ち合わせた人物の到着を待っていた
須川に至っては自動販売機から無糖の缶コーヒーを数本買い、もう三本目に突入するトコロである
カフェインの取りすぎではないか、と忠告しようとしたがそれを言ってしまえばヤマシロはアルコールの取りすぎなので、グッと我慢する
そこで彼女はとうとう五本目に突入した
「カフェイン取りすぎじゃないか?」
ヤマシロはとうとう我慢できずに須川に忠告する
「あら、それを言ったらあなたはアルコールの取りすぎなんじゃない?」
「.....それもそうだな」
まさかのシュミレーション通りの結果になってしまった
ヤマシロはそこまで酒好きではないのだが、今日に限っては何故か酒が進んでしまう
そこで、須川は「あっ!」と声を挙げたと思うと、
「そういえば信長呼んでたんだったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア、忘れてたよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!」
「そっちかよ!」
いつものパターンと言えばいつも通りなのだが、どこかズレた変化球にヤマシロは思わずツッコミを入れてしまう
「まぁ、信長なら大丈夫よね!」
「開き直った!?」
「そろそろかな?」
「一人で話を進めるなよ!」
「閻魔さん、もうすぐで足が到着するから準備しといてね」
須川がそう言った、その瞬間だった
信長のスポーツカーとは少し違う形の、どちらかと言うとバイクに近い大型の四輪車が公園の前にキキキィィィィィ!!と大きな音を立て停止する
そして、運転席と助手席に座る二人には見覚えがあった
「お待たせしやした、ヤマシロの旦那に須川の姉御!」
「お久しぶりです、閻魔様!」
「五右衛門!瓶山さん!?」
大泥棒、石川五右衛門と以前よりも幾分たくましくなった瓶山一の二人が再びヤマシロと力を合わせることになった
キャラクター紹介
枡崎 仁(ますざき じん)
種族:鬼
年齢:198歳(人間で言う19歳)
趣味:情報収集、解析
イメージボイス:近藤隆
詳細:麻稚と同じで直接的な戦闘を苦手とする頭脳派の鬼
過去の資料を漁り、自らの知識を深めていくことを生きがいとしており、いつかこの世界の謎を全て解き明かしたいと思っている
酒に弱く宴会には中々参加しないため、そこまで交友関係は広くない
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