閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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お陰様で体調は回復しました



Thirtiefifth Judge

物陰喫茶「MEIDO」にて...

 

「ドラゴンソーダ一つ!」

 

「....もっとマトモな品はなゐのか?」

 

月見里 査逆と煉獄 京は図書館の整理を一通り終わらせ気分転換がてらに査逆が煉獄を連れていつしかのゲテモノ喫茶店に足を運んでいた

...まぁ、半分以上作業は煉獄一人で行っていたのだが

 

「じゃあ、マンゴースカッシュを...」

 

「あ、この人は実験新作のベーコンパフェもお願いします!」

 

「おゐ!!」

 

「お待たせいたしました、ドラゴンソーダ一つとマンゴースカッシュ一つとベーコンパフェ一つになりま〜す」

 

「早すぎだろ!注文してからまだ一分も経ってなゐぞ!?」

 

そんな煉獄の叫びを聞く耳も持たずに査逆はドラゴンソーダをストロー越しに飲み初め、店員はそそくさと何処かへ行ってしまった

しかも煉獄の前には丁寧にマンゴースカッシュとベーコンパフェが並べられていた

 

「ったく、何で頼んでもなゐやつを持ってくるかな...」

 

「ウチが頼んだから」

 

「俺の意思は全部無視かよ!?」

 

もうここが公共の場であることもお構いなしに煉獄は叫ぶ

査逆は査逆で煉獄のことを華麗にスルーしドラゴンソーダを飲むことに集中している

とりあえず、言いたい文句は今は置いておき煉獄は唯一自分の意思で注文したマンゴースカッシュを飲み始める

 

どうせ今回は目の前の上司の奢りということになっているため渋々付いてきただけである

本音を言えば煉獄は亜逗子と一緒に来たかったが彼女は今麒麟亭の宴会に参加中であるため

 

「はぁ〜何が悲しくてあんたと喫茶店に来ることになっちまったんだろうな...」

 

「煉獄君、煉獄君、本音が口に出てるけど?」

 

既にドラゴンソーダを飲み干した査逆が珍しく突っ込みに回る

煉獄はマンゴースカッシュを飲みながらの明後日の方向に視線を向けている

そんな煉獄の態度が気に入らなかったのか査逆は頬をプクッと膨らませ、ベーコンパフェを奪い取りやけ食いを始める

...まぁ、元々から煉獄が食べるつもりはなかったが

 

「ん?」

 

そこで煉獄は店員が複数集まり騒いでいるところに目をやる

何やらトラブルが発生しているようだ

煉獄は伝票を持って立ち上がり、その場所へ向かう

 

「どうしますか?」

 

「仕方あるまい、今あるもので急遽新メニューを開発するぞ!」

 

何やら予想以上のトラブルのようだ

煉獄は見かけと今までの行動と反して何かとこういうことは放っておけない性格である

だからこそ、部下の少ない、かつて敵として立ち塞がった査逆の下で働いている

...本人の前では口が裂けても言えないが

 

「どうかしたんですかゐ?」

 

「あぁ、お客さん精算ですね少々お待ちください」

 

「....ゑ?」

 

一瞬店員の言っている意味がわからなかったが、すぐさま自分の右手に持っているものに気がつかされる

 

「...........」

 

つい、いつもの癖で席を立つ時に伝票を握ってしまったらしい

ここまで来て引き下がれる筈もなく本来ならば査逆の奢りであった筈の代金を煉獄が支払うことになった

新作メニューのベーコンパフェは破格の2500円であったことに痛手を感じながら財布から代金を取り出す

 

会計をしながら煉獄は奥の厨房に耳を傾ける

表では話せないことも店裏の厨房ならば堂々と話しても客に聞かれる心配はないと思ったのか、内容も店の信用に関わるような内容であった

 

「食材を調達できないとはどういうことだ!?」

 

「すみません、どうも業者の方が協力を拒んでいる様子で...」

 

「クソ、だから俺はあんな連中に頼るのは嫌だったんだ!」

 

会計が終わってしまい、査逆も連れていかないといけなかったため会話はこれ以上聞くことはできなかったが何やら面倒なことが行われている様子であった

 

あまり関係なかったと煉獄は自己完結させて、査逆と共にペンガラディラン図書館へと残った作業を片付けに向かった

 

 

 

「死神伝記?」

 

「はい、それはペンガラディラン図書館にある死神に関して書かれた書物です」

 

「...最初からそれを勧めといてくれたらあんな長ったらしい説明せずに済んだんじゃ...」

 

「......では、資料の画像を見てください」

 

図星だな、とヤマシロはジト目で枡崎を見る

その視線を無視して枡崎は話を勝手に進める

 

「まず先程も言いましたが公式的に天地の裁判所から依頼した場合には履歴が残るものなんです」

 

そのシステムが導入されたのは先代の時代かららしい

更にその履歴は削除することは可能だが一億八千桁のパスワードを解除し指紋検証を行った後、声紋認証、更には所持物から性格までも認証され全てを終えやっと可能になるらしい

 

「.....何なんだその絶対に解けないようなセキュリティシステムは」

 

「それほどまで厳重にしないと悪用されたらたまったもんじゃないですからね」

 

確かに都合の悪い履歴を簡単に削除してしまえば全世界の魂がここまでやって来ることになり、依頼主がわからないまま事件は闇の中に消える結果となってしまう

閲覧だけならばセキュリティに引っかかることはないらしい

 

「ですので今回の殺しは公式ではなく非公式ということになります」

 

ヤマシロは全てに合点がいったが一つだけわからないことがあった

 

「なんで親父は俺にこんな大事なことを話さなかったんだ?」

 

「単純に忘れてたか、面倒だったのでは?」

 

「...大いにあり得る話過ぎて逆に笑えないんだが...」

 

もはや、ヤマシロの中でゴクヤマの評価は地獄よりも底に落ちてしまったと言っても過言ではないだろう

 

そしてヤマシロはもう一つの謎を考えた

天地の裁判所以外から死神に依頼した人物の存在を...

 

「閻魔様!!」

 

そこまで考えたところで一人の鬼が第二資料室の扉を勢い良く開け放ち大声で叫んだ

急ぎの案件なのか、鬼の顔から汗が流れていることがそのことを物語っている

 

「どうした?」

 

「三途の川が、三途の川が凍結しております!」

 

「はぁ!?」

 

新たな衝撃がヤマシロを襲った

そもそも三途の川というのは凍りつくものではない

一応水分は含まれているが自然に起こった訳ではなさそうだった

 

「ど、どうなさいますか?」

 

しばしの呆然の後、言葉の意味を理解したヤマシロは、

 

「すぐに向かう!」

 

三途の川へと急ぎ向かった

 

 

 

 




キャラクター紹介

冨嶽 厳暫(ふがくげんざん)
種族:鬼
年齢:1420歳(人間でいう142歳)
趣味:盆栽
イメージボイス:辻親八
詳細:鬼の中でもかなりの年長者
閻魔の寿命は800年だが鬼の寿命は計り知れない
全盛期は今の倍以上の実力があり、拳一つで山を消し飛ばした伝説がある
かつての力は失ったがそれでもヤマシロを圧倒できるほどの実力者
今は静かな隠居生活に若干苛立ちを覚えている


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