ペンガラディラン図書館...
「煉獄くーん、次それをそっちによろしくねー!」
「へゐへゐ〜」
麒麟亭で行われている宴会には参加せず、せっせと作業を進める二人の鬼の姿があった
百鬼夜行大戦の最中に裁判所がダメージを受け修復は完了したのだが、図書館の本までには管理が周っていなく作業は今も続いている
「あんたさ、他にも部下与ゑられてんだろ?何で俺たち二人しかゐなゐ訳?」
髪に隠れるほど小さな三本の角を持ち僅かに黒ずんだ紅い髪の青年、煉獄 京は忙しさのあまりか愚痴をこぼす
彼は普段帽子を被っているのだが今は室内のため外している
煉獄の問いにフフン、とない胸を張るなんちゃってギャルの目が隠れるほどの長い金髪を風がないためわざわざ手でなびかせる鬼、月見里 査逆は宣言する
「それはウチが部下からマジ信用されてないからに決まっているだろー!」
「....何で俺がここに配属されたかが何となくわりましたよ」
煉獄は溜息を吐きながらも渋々作業を続ける
本来ならば彼らも宴会に参加して酒を飲んで馬鹿騒ぎしていた頃なのだが煉獄の傷が癒えるまで査逆がほとんど作業をしていなかったせいで主に煉獄が本の整理に追われている事態である
そして、もう一度彼の(一応)上司である査逆に目を向けると...
「ぐへへ、ここはこうなってて、えへへへ...」
無駄に高級そうな真っ白なソファに座りながらジャンル不明の本を読みながら興奮していらっしゃった...
そんな駄目上司に対して部下代表(といいながらもここには今一人しかいないが...)である煉獄はプチン!と何かが切れた音と共に、ズカズカと査逆に近づき...
「 サボってなゐでとっとと作業しろやコラァァァァァァァァ!!!」
「キャァァァァァァァァァァ!?」
ソファの足を思いっきり持ち上げ、座っている査逆のことなどお構いなしに卓袱台返しならぬソファ返しを実行した
査逆の持っていた本は図書館の奥底に吹っ飛び、ソファが倒れた衝撃で本棚から本が数冊落下する
「いてて、ちょ、煉獄君マジなにんのよ!いいトコだったのに、しかも図書館散らかして、ちゃんと片付けなさいよ!」
「誰のせゐだ、誰の!!アンタが部下から信頼なゐ理由が今ここでハッキリしたよ!!信頼が欲しかったらとりあえず働け!!」
「ハッ、マジ失礼な...だ、だ、だだだだだ誰が部下から信頼されてないって!?!??」
「アンタだよ、さっき自白したくせに無理に隠そうとすんな!」
もはや上司が何だってんだ!という勢いで煉獄は査逆に青筋を浮かべながら拳を握りしめる
査逆は査逆で騙せるわけでもない下手くそな嘘泣きと上目遣いで反撃に出るが、それも煉獄には通用せず即座に見破られる
破竹の勢いで畳み掛ける煉獄に対して、査逆は反論することなく、ある準備を進める
「大体、アンタはな...」
「れ〜んご〜く〜くぅ〜ん」
何やら語尾にハートマークでも付きそうな甘ったるい声と笑顔で煉獄の言葉を遮り両手にあるモノを握りしめる
ジャラジャラ、と音を立てるソレは煉獄の思考を奪い、煉獄の勢いを止めるには十分すぎる物であった
「く、鎖...」
「好き放題言ってくれたね、覚悟はいいかな〜?」
「.........作業をしてきますので、どうぞごゆっくりとお休みくださゐ...」
「じゃあよろしくね」
査逆が戦闘用の鎖を取り出すと同時に煉獄は態度を百八十度変え、黙々と本の整理を再開する
実は煉獄は百鬼夜行大戦のとき、査逆と交戦しており圧倒的実力で査逆に抑えられた煉獄はあれ以来、鎖がトラウマになってしまったのだ
というよりもジャラジャラ、という音にすら警戒心を抱くほどの重症状態にまでなってしまった
ちなみに原因は言うまでもなく月見里 査逆である
「くそ〜」
煉獄は査逆の聞こえないところで静かに愚痴を吐く
そして一冊の本を手に取ると彼の動きが止まり視線が本に集中する
「死神伝記?」
タイトルを読み上げ、ページを開こうとした瞬間、
「今日中に作業が終わらないと覚悟はいいよね?」
「が、頑張らせてゐただきまーす!」
突如、響いた査逆の声に煉獄は手にした本を本棚に戻し作業を再開する
ペンガラディラン図書館では煉獄がひたすら作業を行い、査逆が優雅にくつろぐ、この光景が後々に日常と化し不自然に感じなくなるのはそう遠くない未来の話だったりもする
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