閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

3 / 112
連続投稿です


Second Judge

 

天国...

それは人間生きていれば誰しもが憧れざるを得ない楽園

生前に善行を行い、良心を持つ者たちの集まる場所

....のはずだった

 

「今日はどうよ?」

 

「こいつだな、今日は調子がいいらしい」

 

競馬場。

 

「Hey☆彼女、俺と遊ばないかい?」

 

「却下、私男待ってんのよ」

 

「俺の人生Oh、My、ガぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ナンパ、しかも失敗。

 

「いや〜今日は運が良かったな〜」

 

「畜生!明日こそは、明日こそは!」

 

パチスロ。

 

「.................はぁ〜」

 

ここは本当に天国か?

何度来てもこの光景には慣れなかったりする

 

飛行機で数時間の移動という名の休息を終えたヤマシロは空港から目的地へと向かう

 

「勘弁してほしいな...」

 

数時間前、鬼に聞いた事件の内容を思い出す

 

 

 

『今回窃盗にあったのは1582年に亡くなられた織田信長の鞄です』

 

『........衰えたな信長殿』

 

『えぇ、何でも犯人は大泥棒五右衛門だそうで...』

 

『何で大泥棒が天国に居るんだよ!』

 

『....あの時代は3代目の担当でしたな』

 

『....納得だな』

 

『3代目には毎日困らせられました』

 

『閻魔として、よくやっていけたな』

 

『全くですな』

 

『他には問題起こしてないだろうな、3代目』

 

『......とにかく、よろしくお願いしますぞ!』

 

『何だよ!その間!?』

 

 

 

そして現在、天下の武将(生前)織田信長の屋敷の前

 

「......滅茶苦茶近代的だな」

 

門の左右にレーザー砲らしき物体があるのは気のせいだろうか?

屋敷の屋根に電波塔が見えるのは目の錯覚だろうか?

 

「......と、とりあえずチャイムを..」

 

これだけ近代的なんだからチャイムの一つくらいあるだろうとヤマシロは思う

....というか攻撃されたりしないかな?

 

 

 

対してこちら地獄...

生前に悪行を働き、邪心の持つ者たちが行く場所

その地では雷が降り注ぎ、火山爆発は当たり前、血の泉は6000度

それと同時に「天地の裁判所」で働く鬼達の巨大な共同住まいがある

鬼達はある程度環境に適応できる能力が高いため地獄の厳しい環境もものとしない

 

「うぅ〜閻魔様のバカァ〜マジであたいの給料減ってんじゃん」

 

ヤマシロに脅され、急いで部屋で通帳を確認すると先日と比べ8割程減少していた

ちなみに給料は一日5000円である

ある意味命が関わる危険な仕事と雇い主が太っ腹なのと財産が凄いという結果からこのような給料配分となっている

給料目当てにここで働く鬼も珍しくない

 

「はぁ〜こんなけでどうやって生きろと...」

 

「亜逗子、元気がないんじゃない?」

 

「げっ、麻稚!」

 

「....人の顔見るなりげっ、て何?」

 

亜逗子は心底迷惑な視線を向ける

メガネをかけたこの女性は蒼 麻稚[あおいまち]

亜逗子の同僚で補佐を担っている青鬼の少女

海のように青いショートヘアーで額にある青い一本の角が彼女が鬼であることを証明している

二人はそこまで仲が悪いわけではないが先程の出来事を思い出す

亜逗子は麻稚の言葉を待つ

そういえば、と麻稚は通帳を取り出し、

 

「本日の給料が8割程上がっていたのですが何かご存知ないですか?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

亜逗子はその一言に涙腺を崩壊させる

状況が読み飲み込めない麻稚は珍しくおどおどしていた

ちなみに一部始終を知っている鬼達は「閻魔様、恐るべし...」と呟いたとか

 

 

「...あんた本当に信長か?」

 

「無論だ」

 

俺は目が可笑しくなったのか?

この時ヤマシロは本気でそう思ってしまった

 

あの後、チャイムを探していたら突然スポーツカーに乗った金髪サングラスの

チャラいおじさんがこの屋敷の前に止まり、

 

『儂の屋敷に何か用か?』

 

………………………………………はい?

 

『じゃから、この織田信長の屋敷に何か用か?』

 

 

そして現在に至る

何?この金髪でサングラスで黒い特攻服でピアスで?

たしかに織田信長は外交に力を入れていたと聞いたが...

このままではキリがないので、

 

「俺、閻魔です」

 

「何?」

 

信長はサングラスを挙げる

向こうも何か信じれないものを見た表情を浮かべる

 

「だから、今回窃盗された鞄を取り返すために来た閻魔のヤマシロです」

 

「....嘘ではないようだな」

 

ヤマシロと信長は互いに向き合う

先に口を開いたのは信長だ

 

「勘違いするなよ、儂はただ休んでいるところで鞄から目を離したらなくなっていただけだ、盗まれたわけではない」

 

「......それを盗まれたって言うんですよ」

 

ヤマシロの言葉に信長は高らかに笑う

その姿はまさに戦国の武将、織田信長だった

 

「犯人の目星はついているのか?」

 

「五右衛門」

 

「そうか、乗れ」

 

信長はスポーツカーの助手席にヤマシロを呼ぶ

 

「場所わかるんですか?」

 

「五右衛門は儂の友人じゃ」

 

「あんた、友人に荷物盗まれたんかよ」

 

「わははははは、笑いが止まらんな、ヤマシロ」

 

「全くだよ、信長」

 

二人は笑いながらスポーツカーに乗る

目指すは五右衛門の家...

 

 

 

 

 




信長ファンの方、すみません

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。