閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

28 / 112
連続投稿です


Twentiesixth Judge

 

百鬼夜行...

鬼達が百を超える大群を組むことを指し、百以下だと百鬼夜行とは言わない

現世では妖、怪異などが群れをなすことを言うが死後の世界では文字通りの意味になる

 

「隗潼さん、裁判所が見えて参りました!」

 

「全隊止まれ、陣を張る」

 

隗潼の一言により百を超える鬼達は一斉にピタリと止まる

百鬼夜行を組むには数を揃えるだけでなく、主将のカリスマ性も重要となってくる

故に主将は力があり長生きをしていることが必然的な条件となる

 

「陣はまだ完成しないのか?」

 

「あともう少しで完成致します」

 

よし、と隗潼は立ち上がり裁判所の方角を見据える

彼もかつてあの地で働いていた時代もあった、どこか名残惜しそうな目で裁判所を見る

 

「うぃ、懐かしいのか?」

 

「まぁな、それとは別に気がかりもあるがな」

 

「まぁわかるよ、俺も久しぶりに見ると懐かしいからな、納得」

 

「だが、そのような中途半端な覚悟では作戦は成功せん、悔いは作らな.....」

 

隗潼の言葉が最後まで続くことはなかった

再び裁判所に目を向けるが、さっきまでの見方とは180°違った視線である

盃と朧岐もその変化を他の鬼達よりもいち早く察知する

 

「凄まじい力だ」

 

「あぁ、数もかなりのモンだぜ、多いな」

 

「ヒック、腕が鳴るねぇ〜」

 

三人は裁判所ではなく裁判所の少し下、つまり自らの目の前を真っ直ぐ見据えていた

 

「全く、ゴクヤマさんの息子も中々のカリスマだ」

 

隗潼はそれだけを呟くと後方の鬼達に号令を掛ける

 

「向こうも陣を組み出した、こちらの戦闘準備は?」

 

「いつでも行けます!」

 

「よし、全軍突撃だ!」

 

『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』

 

隗潼の号令に従い、百鬼全てが天地の裁判所に向けて走り出す

ある者は武器を持ち、ある者は自らの肉体を武器に、ある者は他の者よりも前を走る!

 

しかし、そこに天地の裁判所の前に構える鬼達が立ち塞がる

 

百鬼だ

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!?」

 

「ツェイャァ!」

 

「ゲフッ!?」

 

鬼達が互いにぶつかり合う

血を流し、武器を破壊し、骨を砕く

 

「くっ、強いぞコイツら!」

 

「怯むな!全軍前進!」

 

鬼と鬼...

舞台は地獄、その光景まさに地獄絵図...

百鬼と百鬼の激突...

百鬼夜行合戦の幕が開く!

 

 

 

時を少々遡り、数分前天地の裁判所にて...

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

煉獄が早くも気絶から回復し意識を取り戻すと、査逆との距離を一気に縮める

煉獄の使うトンファーは近接戦で用いる武器のため距離を取ると身動きが取れなくなってしまう

しかし、

 

「おっと、」

 

査逆は後方に全力でバックする

煉獄との距離を取り、彼女の武器が煉獄の頭上を舞う

 

「鎖?」

 

しかもその数は二つだけではない

十、二十、いや百以上はあるかもしれない

その無数の鎖を狂うことなく煉獄に向けて攻撃する

 

「ヤベッ!」

 

「甘い!」

 

煉獄は鎖から回避を試みるが、その回避した方向から無数の瓦礫が煉獄を襲う

査逆は器用に鎖一つ一つに瓦礫を取り付け、どういう原理かはわからないが鎖から瓦礫を飛ばす

煉獄は一撃一撃丁寧に受け、トンファーで防ぐ間もなくダメージを更に蓄積させる

 

「コンノォ!!」

 

煉獄は再び接近するしトンファーを振るうが、間一髪のところで躱され脇腹に蹴りを一発もう

煉獄の体は無抵抗に吹き飛ぶが、無数に絡められた鎖の影響で壁まで届くことはなかった

査逆はそこに更に追い打ちをかける

鎖を絡めた腕で殴り、華奢な脚から想像も出来ないほどの威力の蹴りを放つ

煉獄はトンファーで防ぐこともできず、ただ無抵抗に一撃一撃を体に痛みを刻み付ける

 

「がっ...ハァ...!?」

 

「さて、そろそろマジで終わらせますか」

 

査逆は何気ない、いつもの調子で笑いながら鎖を束ねる

煉獄はこの隙にと一旦潜影術で査逆から距離を取る

 

(クソッ!何なんだ奴は、強ゐなんてモンじゃねぇぞ!)

 

「はぁ〜い、鬼ごっこはマジでガキ臭いですよ?」

 

「は...?」

 

煉獄は目を見開く

先程距離を取り離れた筈の人物が隣にいた

一瞬我が目を疑ってしまった、何故なら距離にしてさっきの場所から20mほど移動したというのに一瞬で追いつかれた

潜影術は暗闇や影なら基本常人離れした速度で移動することも可能になる術である

死神が殺しを行う際に獲物を逃がさないための術なのだから

いくら煉獄が鬼と死神のハーフといえど、この差はおかしかった

何故なら彼女は自身の身体能力のみで煉獄に追いつき、隣に立っているのだから

 

「貴方中々強いけど、ウチからしたらまだまだだよ」

 

ジャラ、と鎖の擦れる音が煉獄の耳に大きく響く

咄嗟に潜影術を使い距離を取った

 

「また鬼ごっこ?マジ面倒なんですけど〜」

 

査逆は溜息をつきながら脳波を展開する

展開された脳波は煉獄を追い、彼の頭の中に入り込む

脳波とは本来、通話や意思疎通に用いるコミュニケーション手段の一つだが、応用すれば他者の僅かながら無意識に放たれている脳波と波長を合わせることで、その対象の考えを読むこともできる

 

それ故に月見里 査逆は煉獄の位置を寸分の狂いもなく予測することができる

 

「逃がさないよ」

 

ジャラ、という音と共に査逆は瞳を光らせ煉獄を追いかけた

 

 

 

一方、ヤマシロは...

 

「いいかお前ら!」

 

麒麟亭に立ち寄り、負傷した鬼以外を集めていた

ヤマシロの傍には亜逗子と麻稚が堂々と立っていた

 

「これから此処に敵が集団で攻めてくる、ならばこちらも集団で迎え撃とうではないか!」

 

ヤマシロは鬼達に号令をかけるも動揺と戸惑いの方が多かった

いきなりそんなことを言われてもという顔つきだった

 

「一番敵を多く討った者は給料十倍だ!」

 

ヤマシロがそう叫ぶとざわめきが一瞬にして歓声に変わった

....亜逗子が隣でうるさいのは一先ずスルーしよう

 

「行くぞお前ら!俺たちには裁判所を守る義務がある!」

 

ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!と再び士気が上がる

こうして、百鬼夜行合戦の幕は開けた

 

 




何やかんやで投稿できてます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。