閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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連続投稿です


Twentiethird Judge

その頃...

 

「ヤマシロの小僧め、中々やりおるの」

 

天地の裁判所上空にて、冨嶽と共に天地の裁判所を襲撃した百目鬼は高見の見物と言わんばかりに、三本の足に四枚の巨大な翼を生やした黒い鳥...伝記にも現れる地獄の怪鳥、八咫烏に乗っていた

八咫烏は地獄に何羽か生息しており手懐けることも難しいことではない

ただ、その凶暴性と知能の低さから接触することは非常に困難とされている

「さて、儂らは儂らの仕事を完遂しようかの、頼むぞ」

 

百目鬼が八咫烏に指示をすると、八咫烏は動き出す

そして、百目鬼はある方向へと向かった

百目鬼は今までにないような殺気を放ちながら、それでいて若干興奮気味になっている

 

「待っててくだせぇよ、先代...」

 

 

 

麒麟亭...

 

「ガッ..ハッ...ハァ、ハッ...ち、畜生が!」

 

「驚いた、意識あんだね」

 

「当たり前だぁ!全ては我らの秩序の為に!!」

 

煉獄の言葉に亜逗子は僅かに眉をピクリと動かす

そして問い詰めるように尋ねる

 

「あんたら、一体何が目的だ?」

 

「へっ、ゐくら亜逗子ちゃんでもそれは言え...」

 

煉獄が言葉を繋げようとすると亜逗子の拳が煉獄の頬を掠める

しかも、後ろの壁が跡形も無くなるほどの威力のパンチだった

当たっていれば恐らく顔の形が歪んでいたであろう

 

「言え」

 

「は、はゐ...」

 

若干ドスの効いた亜逗子の声と睨みに冷や汗を垂らしながら煉獄は静かに肯定する

そして、ゆっくりと冷や汗をひたすら垂らしながら亜逗子に作戦の全てを語る

 

その事実とは実に馬鹿らしく年寄りらしい考えであった

 

「まさか、そんなことが理由で」

 

「だが俺は賛成だ、これでこっちの世界が安定するならな...」

 

煉獄は不気味に笑う

まるで作戦が知られても絶対に止められないと言わんばかりの表情で

 

「そうゐや、もう今頃爺ゐ共が天地の裁判所に着ゐてる頃か...」

 

「何!?」

 

「言ったろ?俺の役目は此処、麒麟亭を混乱させ閻魔大王との連絡を遮るためだって...」

 

ククク、と笑う煉獄に亜逗子は思いっきり拳を放つ

その一撃で煉獄の意識は空の彼方に消え去った

 

「クソ、麻稚!どうせ起きてんだろ?」

 

「えぇ、さっき意識が戻ったトコだけど...」

 

「なら話は早い、急いで行くぞ!天地の裁判所に!」

 

 

 

一方、天地の裁判所...

 

「ぐぬぅ...」

 

激しい光が冨嶽を襲い、ヤマシロは緊張を解かずに一先ず距離を取る

 

「若僧が、中々やりおるわ見事な不意打ちであった」

 

「.....あんた、本当に怪物だな」

 

「フン、主ら閻魔に言われたらお終いじゃて」

 

ヤマシロは再び鬼丸国綱を握り直し、冨嶽も構え直す

殺伐とした雰囲気が空間を支配する

天地の裁判所は戦闘の影響でかなりボロボロだ

これ修復すんの大変だな〜とヤマシロは考えてしまう

こんな状況でもそんなことを考えてしまう余裕は本来ないのだが、目の前の強敵に若干現実逃避しているようにも思える

 

「覚悟は決まったか?」

 

「とうの昔から決まってる!」

 

それ以上は口で語られることはなかった...

ヤマシロの斬撃が、冨嶽の拳が、互いにぶつかり合い激しい衝撃を生み出す

一撃一撃が重く、油断する暇が一瞬たりとも与えられないくらいの速度でぶつかり合う

ヤマシロの斬撃が避けられたと思ったら、冨嶽の拳が受け流される

そのやり取りがひたすら続く、ただ一瞬の隙も許されないほどの速度と力で

世界の時間の進み具合の2秒が彼らにとっては20秒にも感じるくらいに

 

「ハァ、ハァ」

 

「ゼェー...ゼェー...」

 

互いに血を流し、息を切らす

ヤマシロはこれほどの戦闘は初めてのため体力の配分をうまく調整できずに、経験の無さが表れる

対する冨嶽はもう鬼達の中でもかなりの高齢である

現役の時代はまだまだ大丈夫だったかもしれないが、もう既に引退した身である

ヤマシロを圧倒する猛者も年波には敵わなかった

 

すると、

 

「ウッ...グゥッ!!?」

 

冨嶽が突然胸を抑え、膝をつく

突然の出来事にヤマシロが戸惑っていると冨嶽は口から血を吐き出す

 

「厳爺ィ!」

 

ヤマシロは敵であることを忘れ駆け寄る

 

「ば、馬鹿野郎!儂は敵じゃて、何故トドメを刺さん!?」

 

「刺せるかよ!俺は別にあんたみたいな弱った老いぼれと戦ってたんじゃないからな!」

 

「...!貴様...!!」

 

冨嶽はヤマシロの台詞に青筋を浮かべるが、ヤマシロは続ける

 

「俺は冨嶽 厳暫って一人の戦士と戦ってたんだ!その戦士は今どこにもいねぇだろうが!」

 

ヤマシロは言いたいことだけ言うと必死に冨嶽のことを介抱し始める

冨嶽はもう既に意識を失っていた

 

「無茶しやがって、勝手に死にやがったら俺が許さねぇぞ、こんのクソ爺ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

 

ヤマシロは閻魔帳を取り出し、治療を始める

もうヤマシロに敵と味方の認識などなかった

ただ一人の老人を助けるべく力を振り絞る!

 

 




キャラクター紹介

瓶山 一(かめやまはじめ)
種族:元人間
年齢:48歳(生前)
趣味:映画鑑賞、ドライブ
イメージボイス:乃村健次
詳細:一度天国への切符を破り捨てた人物
しかし、裁判の後信長達の協力もあり娘の夏紀と無事再会する
現在は五右衛門と共に便利屋を営み、生活費を稼いでいる


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