閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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連続投稿です


Twentieth Judge

 

麒麟亭正面玄関...

 

「こいつは酷いな...」

 

「大丈夫、脈はある」

 

亜逗子と麻稚が案内のもと、急ぎ正面玄関に辿り着くと一人の鬼が頭から血を流して倒れていた

あの鬼の言うとおり傷は後頭部に重い打撃が一発入っている

かなりの腕の持ち主であることが推測される

 

「こいつは素手じゃないな、何か武器を使っている...」

 

「根拠は?」

 

「簡単だ、拳じゃここまで広い範囲一発じゃ無理だ、蹴るにしても目立った靴跡とか足跡なんかがない」

 

亜逗子は傷口を塞ぎながら説明する

彼女は麻稚と比べれば戦闘の経験が一桁ほど違う

麻稚はどちらかというと後方支援や頭脳派タイプだから乱戦に混じることは滅多にない

対する亜逗子は好戦的な特攻型であり、今までに幾度という戦闘を経験している

 

「それに拳なら握り拳の痕があるはずだ」

 

「なるほどね、確かにそう考えるのは妥当、では他の負傷者も同じように?」

 

「それは状態を見てないから何とも言えないな、どちらにしろ閻魔様には報告すべきだ」

 

「そうね、電話はないから脳話で伝えとく」

 

わかった、と亜逗子は鬼の傷を塞ぐのに力を注ぐ

そして麻稚はヤマシロに連絡を入れるために脳波を展開する

 

脳波とは、脳から発せられる電波であり頑張れば人間でもできるかもしれない特殊な技術の一つである

その脳波を一定範囲に展開し、呼びかけ会話をするのが脳話である

....まぁ、簡単に言えばテレパシーである

 

麻稚は無駄な脳波を広げないように天地の裁判所まで一直線に脳波を展開する

脳波は集中力次第では現世にまで繋げることもできるらしい

そして、使い方次第では複数人とも会話することが可能である

だが、脳波は集中力と精神力を削る術であり、ちょっとした心の乱れや感情の爆発により乱れが発生することもある

そう、例えば....

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ギィヤァァァァァ!」

 

麒麟亭から突如響き渡る悲鳴とかで

 

「なんだ!?」

 

「また現れたらしいわね、今度こそは!」

 

麻稚は亜逗子と負傷した鬼を置いて麒麟亭の方へ走る

 

「あ、おい!麻稚!!」

 

亜逗子も一通り治療を終えたようで負傷した鬼を担いで麒麟亭に戻る

また麻稚の悪い癖が...!と亜逗子は苦虫を潰す表情を浮かべる

彼女は昔から感情に身を任せて行動しては周りを見失ってしまうことがある

それは長い付き合いの亜逗子はわかっているが他の鬼達は一部しか知らない

常にポーカーフェイスで冷静でクールな彼女がそんな人物だと思わないからである

よって、無茶は亜逗子、ストッパーは麻稚というイメージを持たれているが実際は真逆だったりする

 

そして、麒麟亭内で偶然会った鬼に負傷した鬼を医務室に連れて行くよう頼み悲鳴の聞こえた方へ急ぐ

 

「麻稚!」

 

亜逗子は同僚の名を叫ぶ

すると、そこには...

 

「おゐおゐ、何?隗潼さんの娘ってこの程度なの?俺ちと期待してたんだけどな〜」

 

額の角が綺麗に隠れるほど大きな帽子、亜逗子と似てどこか対象的な紅い髪、極め付けには両手に握られている真っ赤な液体が付着した異形のトンファー...

そして、その前で倒れる麻稚...

 

「お、前は...!」

 

「よぉ、久しぶりじゃないの亜逗子ちゃ〜ん」

 

亜逗子のことをかつて愛した男が目の前にいた

今、いやこれからも亜逗子が最も会いたくない人物だった

 

「煉獄、京...!」

 

「全く、そんなに睨むなよな、もうお前のことはどうでもゐゐからよ」

 

煉獄は帽子に手を置き、目元を隠しながら笑う

亜逗子は信じられないものを見るような目で煉獄を睨みつける

 

「まさか、お前が...」

 

「ん?あぁ、そうそう、これを殺ったの俺だよ、大丈夫息はあるからさ」

 

「これ...だと...!?」

 

「ああそうか、他にも五個くらゐ殺ったな、悪ゐ悪ゐ、数間違えちまったよ」

 

悪びれる様子もなく、恐れる様子もなく、ましてや友達との会話のように話を続ける煉獄...

しかし、どうしたらそんな態度で軽々しくそんなことを言えるか亜逗子には全くわからなかった

 

こいつがあの煉獄 京?

 

かつて亜逗子と共に笑いあった煉獄 京?

 

亜逗子の中で煉獄 京という人物像が音を立てて次々と崩れていく

 

「あはは、俺もう一回算数から教わった方がゐゐかな?どう思うよ亜逗子ちゃ...」

 

しかし、煉獄の台詞が最後まで続くことはなかった

亜逗子が全力で煉獄の顔面を殴りつけたからである

 

亜逗子の中で煉獄 京という人物像が崩れると同時に吹っ切れた気分にもなった

 

そうか、もうあたいの知る煉獄 京はいない...

 

「これなら、全力を出せる!!」

 

凄まじい地響きと共に、煉獄は吹き飛び、暴風が吹き荒れた

亜逗子を中心に凄まじい力の渦が流れる

 

それは普段の自称ドSを称する紅 亜逗子ではなかった

それは普段のヤマシロに弄ばれるだけの紅 亜逗子ではなかった

それは普段の給料と戦う紅 亜逗子ではなかった

 

そこには鬼達の筆頭...

‘‘赤鬼’’ 紅 亜逗子がそこにいた

 

「へへ、そー来なくっちゃよ」

 

吹き飛ばされた煉獄も立ち上がる

亜逗子の目には煉獄以外は映っていない

 

怒りの力を纏った赤鬼が今、猛威を振るう!!

 

 




ヤバイ、戦闘描写が難しい...

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