閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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ちょっと、急展開かな?


Eighteenth Judge

鬼子母神...

かの有名な毘沙門天の妻として知られ、子供は500人も産んだとされる

しかし、常に他人の子を食してしまうため、釈迦は彼女が最も愛した末子を隠して、母から子が失われる悲しみを悟らせた

 

名前に「鬼」がついているが決して鬼ではない

 

しかし、この世界ではそのような常識は覆される

鬼子母神は鬼の始祖とされ、地獄でも鬼達の間では神として崇められている

更に言えばまだ生きているという話まで飛び交うくらいである

もっと言えば、初代閻魔大王とも知り合いらしい

更に言えば、きしぼしんではなくきしもしんと読むらしい

 

全ての鬼の祖、鬼子母神

 

鬼達にとっては神同然の存在...

 

「どう?」

 

「いや、何が?」

 

そして此処は天地の裁判所

神の国から帰ったヤマシロは先代にお礼を言おうと先代のいるはずである場所に向かうと、もう帰ってるということであった

それで亜逗子に絡まれ、急に鬼子母神の話に付き合わされたのである

 

「亜逗子よ、話の趣旨が掴めないんだが、いきなりとまうしたんだ?」

 

「いや、特に理由はないんだけど、ふと思ってさ」

 

「そんな話、査逆辺りとすればいいだろ?」

 

「あんな根暗とは話す気にはならないね」

 

「...とことん嫌われてんだな、あいつ」

 

これは本気でさっさと次期図書館館長を探し出さねば、とヤマシロは心の中で密かに決心する

やはり人望に溢れていないとな、とヤマシロが考えてるところに

 

「閻魔様、聞いてんのか?」

 

「あ、あぁ、聞いてる聞いてる、確かに酒は日本酒に限るよな」

 

「何の話だよ!?全然あたいの話聞いてなかっただろ!」

 

「いやー、ちょっと考え事を」

 

「............あたい以外の女のこと考えてたんじゃない?」

 

何故わかった!?とヤマシロは心の中で突っ込み、表には決して出さない

 

(おかしい、あの亜逗子がいつの間に伝説のDOKUSINJYUTUを!?)

 

何故かはわからないが、出してはいけないと脳が危険信号を送ってきているからである

脳の命令は絶対である、よって...

 

「ソ、ソンナコトナイヨー」

 

「吃驚するほどの棒読み!?」

 

「そういや、麻稚は?あいつこういう話とか詳しそうだけど...」

 

「.....閻魔様、あいつがどんな奴か知ってんの?」

 

「本の虫ってイメージがあるな、辞書とかも読書で使いそうだ」

 

ははははー、と笑うヤマシロをジト目で見つめる

言えない、彼女の愛読している本の8割がBLだなんて...

男の前で、ましてや上司の前では何かと言いづらい...

 

「そういや、鬼子母神がどうしたんだ?」

 

「まさかの掘り返し!?しかもこのタイミングで!!?」

 

二人の会話はこの後、30分程続いたという

 

 

 

一方、ペンガディラン図書館...

 

「マジいらっしゃい、麻稚さん」

 

「どういう風の吹きまわしなの、査逆」

 

「まぁ、いいじゃないっすか、マジでウチ孤独死しちゃいますからね!定期的に人と会いたいわけですわー」

 

「ま、あなたなら本気で孤独死してそうですがね」

 

「相変わらずマジ毒舌ですね」

 

麻稚は先代の見送りも終わり、一人でゆっくりと本でも読もうと図書館を訪れたのだが、いつもは絡んでこない査逆が珍しく絡んでくる

麻稚としても趣味が合うもの同士話したい部分もあるのだが、残念ながら今はそんな気分ではなかった

 

「全く、先代には困ったものです」

 

「マジでゴクヤマっち来てたんだ」

 

「えぇ、何ともやる気がなさそうにしていましたよ」

 

「ウチもあの人少し苦手かな、マジで」

 

査逆は髪をワシャワシャと掻きながら会話を進める

先代閻魔大王、ゴクヤマは一部では期待されていたが、実はそれは年老いた鬼達だけで若い鬼達からはあまり良く思われていなかった

ゴクヤマ自身もあまり若い鬼達とコミュニケーションを取っていなかったことが原因ともいえる

 

「それに比べたら、今代の閻魔様はマジでいい、ウチらに差別なく接してくれるし、要望も嫌々ながらも何やかんや言いつつも聞いてくれるし」

 

「それには同意ですね」

 

ゴクヤマに反し、ヤマシロは若い世代だけではなく天地の裁判所で働く全ての鬼達から信頼があり、期待されている

ヤマシロは前例がないほどの若さで閻魔大王に就任しているため、わからないことや、出来ないことがたくさんあった

しかし、彼はゴクヤマと違い、鬼達を自分達を頼ってくれた

閻魔大王というのは、何でもかんでも一人で片付けようとするが、ヤマシロは自分一人では対処できない壁ばかりのため部下の鬼達を頼りまくっている

例えば掃除、例えば餓鬼駆除、例えば裁判の準備、例えば地獄の治安維持、例えば図書館の整理、例え個人的な事情にまで鬼達を頼ることが多い

 

だが、先代閻魔大王ゴクヤマはこれらのことを全て一人で行っていた

 

「ウチらもマジで頑張ってるって感じだよな」

 

「そうですね」

 

広い広い図書館では二人の笑い声が大きく響いた

.....何故ならこの二人以外図書館にいなかったからである

 

 

 

「じゃあ、準備はよかろうて?」

 

くすんだ白髪に覇気の篭った目つき、額にある五本の角が存在感と威厳を放つ鬼...

2代目閻魔大王の時代に就任、4代目閻魔大王の時代に引退...

 

冨嶽 厳暫(ふがくげんざん)...

 

「気が早ゐよ厳暫さん、ンなことしなくても5代目は逃げなゐよ」

 

血の様な黒く、紅い髪にまだ若さも残り、額にある三本の真っ赤な角が帽子によって見え辛く、パッと見人間にも見えなくもない鬼...

4代目閻魔大王の時代に就任、5代目閻魔大王が就任する直前に若くも引退...

 

煉獄 京(れんごくきょう)...

 

「若僧が出しゃばるでないわ、せっかちなのは老い先が短いだからろうて」

 

「はゐはゐ、若ゐ奴はせっかちですよ〜だ」

 

「どっちでもいい、今はそんなことは関係ないだろうが」

 

海底の様な青い乱れた髪に、巨大な体躯に空に伸びる一本の大きな角が更に威圧感を出す鬼...

3代目閻魔大王の時代に就任、4代目閻魔大王引退時に引退...

 

蒼 隗潼(あおいかいどう)...

 

「今は口喧嘩よりも作戦の成功に力を注ぐ時だ」

 

「ひゅ〜、さっすが隗潼さんだぜ!」

 

「ケッ...」

 

冨嶽は忌々しく舌打ちし、煉獄は口笛を軽く吹く

彼らは元々天地の裁判所で働く鬼達であったが、何かしらの理由で引退した鬼達...

そこでは確実に準備が進めれていた

 

「待たせたのう、もう皆おるか?」

 

そう言い、底が知れない真っ黒な髪に四本の角、そして目の傷が特徴的な鬼...

2代目閻魔大王の時代に就任、5代目就任直後体の限界を感じ引退...

 

百目鬼 雲山(どうめき うんざん)...

 

「もしや、わてが最後かな?」

 

「安心しろ百目鬼、まだ全員ではなかろうて」

 

「何時も済まぬな、厳暫よ」

 

「フン、これしき当たり前じゃて」

 

そう言い、百目鬼は杖をあちこちに当て自分の指定位置を探す

話の流れからわかるように、百目鬼は目が見えないがため引退した老鬼である

 

「今日は恐らくこれだけじゃて...」

 

「ゑ、もう始めちゃうの?まだ四人しかゐなゐけど?」

 

「四人もいれば十分じゃて、そもそももう動いても何の問題すらないぞよ」

 

「なら、俺が最初に行くよ、ゐゐだろ?」

 

煉獄が自分から挙手して乗り出す

 

「構わぬが失敗は許さぬぞ?」

 

「うへ〜今更ながらプレッシャーが...」

 

「煉獄、失敗は構わぬが悔いは残すな、我らはこんなトコで立ち止まってはいられん」

 

「あざーす、頑張ってきまーす!」

 

「コリャ、煉獄!」

 

煉獄は冨嶽の制止も聞かずに飛び出す

はぁ、と冨嶽は溜息をつく

 

「隗潼、アレは本当に大丈夫かて?」

 

「問題ない、奴はあの世代の中の鬼では様々な才能が突出している、中々の逸材だ」

 

ならよい、と冨嶽が呟くと隗潼は笑みを浮かべる

 

「特に、奴は殺しだけに関しては死神に並びますよ」

 

事態は急速に進行し始める

煉獄 京が動き始めたことで....

 

「全ては我らの秩序のために...てか?」

 

 

 

 

 




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