閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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...中々終わらせられない


Sixteenth Judge

 

神の国...

神話や伝説となって現世で語り継がれている者たちの住む土地

その国では日々神々が雑談し、酒を飲み、秩序を保ち、文化に触れ、サブカルチャーにはまり、情報を共有し、意見が食い違えば争うという本当の意味で平和な国

外界との関わりを絶っているが、聖人や閻魔大王などの一部の特別な存在は少しだけではあるが入国が許されている

と言っても、向こう側から招待されなければ不可能であるが

 

「んで、ここが神の国...」

 

夏紀の捜索は信長と須川に任せ、予定時間になったヤマシロは神の国に行きキリストを待っていた

そこには、天然の温泉が湧き、巨大な樹がそびえ立ち、空は透明な蒼に広がり、まさに神々しい光景が広がっていた

どちらにしろ天国や地獄はもちろん、裁判所でも見ることができない光景がヤマシロの視界を支配した

 

「待たせたね」

 

突如、ヤマシロに声が掛かる

 

「あんたが、イエス・キリストか?」

 

「いかにも、そう言う君は閻魔大王だね?」

 

イエス・キリスト...

織田信長の様に容姿が吹っ飛んでなくて少しだけ安心した

柔和な顔に髭が目立ち、肩まで掛かる茶色の髪が不思議と神々しさを放っている

この人物が神の子であり、キリスト教の象徴...

 

「5代目の閻魔大王を務めています、ヤマシロと申します」

 

「もう、そんなに時が経ったのか...」

 

キリストは小さく呟く

そう、この神の国では時間という概念も外界と完全に遮断してしまっている

そのため、神は老いることも死ぬこともない

だからこそ神は永遠の象徴として有名なのである

 

「それで、本日はどのようなご用件で?」

 

「大したことではないのだが、少し酒に付き合って頂けないだろうか?」

 

「構いませんが、なぜ?」

 

その言葉にキリストは黙る

何か理由がありそうだが、ここは問い詰めない方がいいだろう

 

「すみません、問題ありません」

 

ヤマシロは謝罪する

 

「いや、こちらこそすまない」

 

キリストも謝る

 

「では案内しよう、人を待たせるわけにはいかんからな」

 

「他にも誰かいるんですか?」

 

「あぁ、天照大御神も閻魔大王殿と同席したいと言ってたからな」

 

天照大御神...

日本を代表する神の一体だ

 

こんな大物の名前を聞けるなんて自分は本当に神の国に来たのだな、と改めて実感する

 

そして、ヤマシロはキリストに導かれるがまま、神の国へと足を踏み入れて行った

 

 

 

「で、別行動はどうなったんだ?時雨」

 

「いいじゃない、車の方が移動楽だし」

 

「...お前、確かバイク持ってなかったか?」

 

「なんのこと〜?ぜんぜんわかんな〜い」

 

信長は拳を握りしめ、ピキピキと青筋を浮かべるが、運転中の為に手を出すことができない

 

ヤマシロを空港に送り届け、続けて瓶山 夏紀を探している信長と須川は走っていた

結論から言うと須川は夏紀のことを知っていた

最近、天国に来た小さな女の子は彼女だけだと言う

だが、どこに住んでいるかまでは知らないと言う

そのため、信長が再び夏紀の気を捉えるまでは二人でドライブという形で天国を走り回っている

...当初の予定では信長は信長で、須川は須川で捜索する予定だったのだが何故か須川が信長のスポーツカーの助手席に座っていたという

 

「で、気とやらは感じる?」

 

「いや、感じないな、この近くではないのかもしれん」

 

「ていうか、あんた気とか察知できたのね」

 

「今更!?」

 

「いや〜そんなの創作の中の話だと思ってたけど実際に出来るんだね〜」

 

何やら須川が理解し難い歓喜に浸っているが面倒くさそうなのでとりあえず無視する

しかし、ヤマシロと一緒に居たときには感じれたが今では中々捉えることができない

 

「時雨」

 

「何?」

 

「確か、この辺りに此処の住民を管理している施設がなかったか?」

 

「あったねぇ〜何で今まで忘れてたんだろうね〜?」

 

「となれば目的地は決まったな」

 

信長は進路を変え、速度を更に上げた

 

 

 

その頃、件の役所で話を聞いた瓶山と五右衛門は...

 

「やったな瓶さん、娘さんの居場所がわかって」

 

「あぁ、本当ありがとうな五右衛門!」

 

「何言ってんだよ、俺なんか礼を言われるような人間じゃないさ」

 

「それでもありがとよ」

 

瓶山と五右衛門はついに夏紀の居所を掴むことに成功する

本来であれば、個人情報がどうとかで教えてはもらえないのだが、捜索人物が娘であったり、閻魔大王の知り合いであることがはたらき、教えてもらうことに成功した

 

しかし、

 

「瓶さん、ちょっとこの場所は歩きじゃ遠くないか?」

 

「........................」

 

そう、目的の場所が滅茶苦茶遠いのだ

乗り物で行けば一瞬ではないにしろ早く着くが、徒歩ではとても時間が掛かる

おまけにこの辺りに交通機関は全くと言っていいほどない

 

「それでも行くさ、何時間、何日、何ヶ月、何年掛かろうが俺は夏紀の下に行かなきゃ閻魔様に合わす顔がねぇ!」

 

瓶山は決意すると、目的の方向に歩き出す

 

「待てよ、瓶さん」

 

「なんだよ!」

 

五右衛門は瓶山の肩を掴み、行く手を阻む

 

「俺の知り合いにスポーツカー乗り回す野郎がいるんだ、そいつに頼んでやるよ!」

 

「....いいのか?」

 

「当たり前だろ」

 

瓶山は表情で喜びを表し、五右衛門も自然と笑顔になる

五右衛門はポケットから携帯電話を取り出し、スポーツカーを乗り回す野郎、もとい信長に電話をしようと耳に携帯電話を近づける

 

と、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!どけどけどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

何やら五右衛門にとってはとても見覚えのあるスポーツカーが車道に現れる

心なしか、歩道のためこちらは大丈夫だが、こちらに向かって来てる気がする...

 

そして、件のスポーツカーはスピードを殺すことが出来ずに目の前の建設中のビルに勢い良く激突する

 

「.......なぁ、五右衛門、まさかだが..」

 

「そのまさかだ、この登場は少々予想外すぎだがな」

 

瓶山は信じられないものを見る表情を浮かべるが、五右衛門はこういうアクシデントに慣れているのか苦笑いで対応する

すると、スポーツカーがゆっくりとバックを始める

 

「だから、何であんなスピード出すわけ!?」

 

「お前が調子に乗って、『あと十秒で到着しないと死刑ね♡』とか言うからだろうが!」

 

「冗談に決まってるでしょうが!」

 

「お前の場合は本気でしかねないんだよ!」

 

............とりあえず、どうリアクションすればいいかに困る

 

「おい、信長!」

 

五右衛門がとりあえず信長に声を掛ける

すると信長は口喧嘩を止めこちらに気づく

 

「おぉ、五右衛門」

 

「え!?信長って、あの織田信長!?」

 

瓶山はここでまさかの戦国武将の登場に果てしないほど混乱する

その隣にいる女性、須川時雨も五右衛門という単語に反応する

 

「へぇ〜あんたがあの石川五右衛門...」

 

「ちょっと待て五右衛門、信長ってあの織田信長で間違いないのか!?」

 

「ワハハハハハハ、名も知らぬ男よ、間違いではない」

 

なんか場がとてもカオスになってきたがとりあえず話を切り出さなければ、と瓶山は思うが

 

「てか信長!お前いつの間にナンパ成功させたんだよ、畜生!」

 

「馬鹿か五右衛門、誰がこんなまな板をナンパするか!」

 

「だ・れ・が...まな板だ、コラァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

.....話を切り出さなければ、場は更にカオスになっていく

ギャーギャー騒ぐ面子から外された瓶山はもはや収集のつかなくなってしまったこの場にただいるだけとなってしまった

そこで、信長が瓶山の存在に気がつく

 

「そういえば、五右衛門こいつは誰だ?」

 

「こいつか?こいつは瓶山 一ってんだ、俺はこの人の娘さんを探すのを手伝ってた」

 

瓶山、という単語に反応して須川もこちらに迫ってくる

そして、しばしの沈黙の後、信長と須川は顔を見合わせ、

 

『瓶山ァァァァァァァァ!?』

 

盛大に叫んだのであった

 

 

 

 

 

 




なんかグダクダですみません

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