あの日から一週間が経った...
若い閻魔様のご厚意で一度捨てた天国への道標を再びいただき、夏紀を探すことにした
そうでもしないと閻魔様に顔向けできない...
しかし、一向に見つからなかった
夏紀と同年代の子なんてそうそう見つからない
...見つけて話掛けても変態扱いされそうなので流石にそれは自重しているが
「なぁ、あんた、こんな女の子見なかったか?」
「いや、見てないよ」
また駄目だったか〜と思わず肩を落としてしまう
閻魔様から貰った写真を使って夏紀の行方をずっと探しているが一向に見つかる気配がない
「なぁ、あんた」と先程尋ねた男が声を掛けてくる
黒い短髪に迷彩柄のバンダナを付け、更にはよく見ればその顔には刺青が刻まれている
.....俺、よく話しかけれたな〜、と思うが男にそんな俺の考えがわかる訳もなく話続ける
「いや、こうして会えたのもなんかの縁が働いたんだ、その娘探すの手伝うよ」
男は笑顔で応えた
「いいのか?」
「あぁ、俺も丁度暇してたし」
「ありがとうな、俺は瓶山 一、あんたの名前は?」
俺は右手を差し出す
それに応えるように男も自分の名前を告げると同時に右手を出し、俺の手を握る
「俺は五右衛門、石川五右衛門だ!」
※
その頃...
「なぁ、信長、今日は五右衛門と一緒じゃないのか?」
「いや、さっきまで一緒にいたのだが、お前の気を感じて儂は空港まで最高速度で向かったからな、まぁ、簡単に言うと置いてきた」
「中々酷いな、お前...」
そんな五右衛門が現在ヤマシロ達の目的の夏紀の父親と出会っていることなど知る由もない
「いかん、気を見失った」
「ここまで来て!?」
色んな意味で突然すぎる発表であった
しかも、ヤマシロはそこまで天国の地理に詳しいわけではないため、ここがどこだかわかる術はない
よって、信長に全て任せている形になっている
「おい、あまり遠くまで行ってないよな、俺この後一応お偉いさんと会う予定になってんだから」
「安心せい、カーナビがあるからな!」
「ンなことドヤ顔で言われてもどう対処しろってんだ!」
「大丈夫だ、気は見失ったがもう一つの可能性に儂は走っておる!」
「もう一つの可能性?夏紀と最後に会った場所に行くとかそんなんじゃないよな!?」
「ワハハハハ、そんなロマンチックな展開にはならんわ!」
そう言い、信長は更に速度を上げる
.....もうスピード違反とかどうとかは突っ込んでも意味はないため割愛する
ヤマシロは今持っている疑問を無茶な運転をしている運転手に尋ねる
「一体どこに向かってんだ!?」
「儂の友人の情報屋の下に超特急で向かっとるよ、お客さん!」
※
情報屋...
天国どころか死後の世界のありとあらゆる情報を提供する者
正直、情報の仕入れルートは全て不明であり、企業秘密とするのが情報屋の売りでもある
「......ここ、何時ぞやの酒場じゃないか?」
「そうだ、此処の二階に住んでるからな」
信長はスポーツカーから降りるなり、今にも崩れそうな非常階段をギシギシと音を立てながらゆっくりと登って行く
信長の友人なのだから少しは信頼できるが、なんだか癖がありそうなのは気のせいだろうか?
「信長、その情報屋ってどんな奴なんだ?」
「強いて言えば、化け物だな」
......……..........................................はい?
「そいつ人間だよな?」
「いや、ゴリラだ」
「一体どんな奴だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
本日何度目になるかわからないヤマシロの叫びが響く
それ以前にここ天国だよな!?とヤマシロは思った
情報屋がゴリラで化け物?しかもあの信長にそこまで言わせる者...
「や,やばい、逆に気になってきた...」
「ヤマシロ、さっきから何ブツブツ言ってんだ?」
どうやら小さいが声に出ていたらしい、次からは自重しよう
信長とヤマシロはやたらと長い廊下の奥にある扉にやっとの思いで辿り着く
「ちょっと待て、なんでさっきの階段が隣にあるんだ!?これまさかただ無駄に一周しただけ!?」
「全く、あやつも相変わらず悪い趣味している...」
どうやらその通りらしい...
こんなことなら隣から飛び越えて来ればよかった...とヤマシロは肩を落とす
彼の頭上で紫色のモヤモヤが漂い、背後にズーンという文字が見えるのは幻覚だろう
「とりあえず、行くぞ...!」
何やら信長が汗を流している...
そこまで緊張する相手なのか、今更ながらどんな人物なのかが本気で気になってきた
なんか信長も「相変わらず凄まじい気だ...」とか言っちゃってるし
信長はノックもチャイムも押さずに、
「出て来んかーーーー!この引きこもりーーーーーー!」
.......大声で何やら喧嘩上等の言葉を言い放つ
だが、返事がない、すると信長は続けて、
「ニート!コミュ症!ぺったん娘..」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁれがぺったん娘だ、コラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
言い続けると、扉が開くと同時に拳が飛んできた
信長はモロ顔面にくらうが、倒れることも動くこともなく、ただ起立の姿勢を保ち続ける
まさかの弁慶立ちに呆然とするが、
「よぉ、相変わらずだな」
「あんたも変わってないね、信長」
すぐさま信長が言葉を繋ぎ、相手も笑顔で返す
「あれ、俺空気じゃね?」
そして、現状について行くことの出来ないヤマシロは、驚く以外することはできなかった
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