制裁のエピローグ
須川雨竜という男はあの日以来路頭もなく彷徨い最終的に自主することとなった
その後でわかったことが問題となっていた宗教組織のトップであることと近隣の住民の神隠し事件の主犯であることにより無期懲役の刑が課せられた
須川雨竜は美原千代という人生の支えを無くしてからは彼女の蘇生を生きる糧としていた
それすらも失ってしまった彼は本当に廃れた人間となってしまい、事情聴取にもまともに応じれる状態ではなかった
ある日、彼の収容されている刑務所に一人の男が須川雨竜を尋ねて来た
彼は須川雨竜宛の手紙を看守に渡すとそそくさと去って行ってしまったらしい
看守のチェックが終わり手紙はようやく本人に届いた
手紙の送り主を見て須川雨竜は目を大きく見開き驚いた
彼は手紙を丁寧に開き一言一言丁寧に黙読し始める
須川雨竜様
お元気ですか?
時間の流れというものは早いもので貴方が私の為に動いてくれた日から既に一ヶ月という年月が過ぎ去りました
私は死んだことを後悔していません、だから私のことは心配しないでください
こちらに来て沢山の人と出会いました、有名な偉人や世界に名を残した名君、そして閻魔大王様
貴方のご先祖様にも会いました
かつての貴方と同じで赤い目と色素の抜けたアルビノの髪にコンプレックスを抱いている、今では私のかけがいのない大切な友人になりました
そちらでのご様子はどうですか?
こちらには季節という概念がないみたいなので四季を楽しむことが出来ないのが少し残念ですがおそらく貴方は楽しめているでしょう
貴方に折り入ってお願いがあります
もし私の両親に会うことがあったのならあっちで元気にやっているとお伝えしてもらいたいです
信じてもらえないかもしれないですがこの手紙を見せればきっと信じてくれると思います
こちらにも都合があるのでいつでも手紙を出せるわけではありませんがまたいつか書かせてもらいます
貴方と次に会う時は貴方が死んだ時なんて少し悲しいですが、死んだら絶対に会いましょう(笑)
それと私に会いたいからと言って今すぐ自殺なんて絶対にしないでくださいよ!
私の分まで生きていてください
迷惑かけてばかりですがこんな私を許してください
P.S:そちらからお手紙を貰えるともっと嬉しいです
美原千代より
手紙を読み終えた須川雨竜は涙を流していた
偽物と考えるのも一つの手段だが彼女の筆跡に間違いないと須川雨竜は即座に判断することができた
そして改めて須川雨竜という男がどれほど愚かで馬鹿な人間だと言うことを思い知らされた
手紙はくしゃくしゃになり須川雨竜の顔も涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた
後悔してももう遅かった、須川雨竜は戻らない時の大切さを初めて身に染みて実感した瞬間だった