騎士と魔女と御伽之話   作:十握剣

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第5話「騎士と猟師」

「この場所に降ろせば良いんですね?」

 

そう言ってガウェインはゆっくりとだが校庭に置いてあったサッカーで使うゴールを、誰も来なさそうな場所に置いた。

 

「あ、相変わらず。凄いわね、黒軋(くろきし)くん・・・・」

 

とても一人じゃ動かせないであろうサッカー場にある白いゴールをガウェインは掴み、浮かばせて、邪魔にならない所に移動させた。

 

「よっと」

 

どんっ!!

 

ガウェインはゴールを置く。

 

「また何かある?」

 

「う、ううん。もう無いよ、ありがとうね黒軋くん、御伽銀行って以外と頼りになるんだね」

 

「これからも御伽銀行を宜しく」

 

 

 

 

 

 

ガウェインが手伝っていたのは陸上部の皆さんで、授業でゴールを出したのは良いが片付けてなかったので、練習が出来なかったらしい。

ならば、皆で動かせば良いのでは? と思うのだが、そこにもきちんとした理由があり、今現在の御伽学園のサッカーゴールは超合金やら、闇の結社が特殊な武器を作っている材料がオリハルコンなどで出来上がっているらしく、サッカーゴールを運ぶ為の運搬車があるらしい、何故そんな風に作られたかと言うと、卒業して行った先輩達の中で、何故か『思い出として作りたい!』と考えた人が居たらしく、秘密裏に作られていたらしい。

 

まずガウェインはどこでその超合金やらオリハルコンをその先輩が手に入れたのか気になった。きっと学生ならではの手腕で中々面白い展開を築いた話で手に入れたのではッ!? とガウェインは小説を読みすぎたイタイ脳を活用しながらも、きっと最後にはあの魔法のランプ魔神ジジイが夢を壊すことをオチ付けて思想を終える。

 

そして、そんな超重量のサッカーゴールを運ぶ運搬車がその日に限って修理に出していて運べなかったらしい。

 

そこで、学園で幾つもの問題(荒事)を解決してきたガウェインに頼み込むと、ガウェインは普通に了承して、見事に運搬車しか運べないサッカーゴールを運んだのだ。

 

 

「う〜ん・・・・・・・・・以外と重かったな」

 

そして運んだ本人はまったく表情を変えないで、御伽銀行本店に戻っている途中だった。

 

「よう、ガウェイン。またまた相変わらず無表情のまま歩いてやがるな」

 

「・・・トリスタンか」

 

ガウェインは声を掛けられた方を見ると、金髪に独自に編んだ髪が特徴な青年、鳥栖淡(トリスタン)が居た。

 

「これから何処行くんだ?」

 

「御伽銀行だ」

 

「ん〜、そうか」

 

ガウェインはスタスタと御伽銀行があるプレハブ小屋に向かおうとするが、何故かトリスタンも付いてくる。

 

「・・・何か用があるのか?」

 

ガウェインは付いてくるトリスタンに質問する。

 

「いやぁ、暇だから付いてってるだけなんだけどね。ついでに御伽銀行に寄らせて貰おうかなと♪」

 

「餌をやるから何処かに行ったらどうだ」

 

「あっはっは、人を犬みたいに言うなよなぁ」

 

トリスタンはニカニカしながらガウェインに答える。ガウェインも溜め息を吐きながらまた歩を進める。

 

(別に良いか)

 

ガウェインはそう思いながら御伽銀行へと戻って行った、若干一人を足して。

 

 

 

 

 

 

 

ガウェインとトリスタンは御伽銀行地上店と言い張る、ボロボロなプレハブ小屋に着くと、ガラガラーとドアが開く。

 

「・・・!・・・騎士先輩」

 

「うん? 涼子か」

 

ドアから出て来たのは御伽銀行に所属している一年の大神涼子で、何やら苛々している雰囲気だった。

 

「・・・・失礼します」

 

「あぁ」

 

大神はガウェインの横を通り過ぎ、帰って行った。

 

「なんだ、なんだ?」

 

そして一緒に居るトリスタンは若干自分だけ挨拶されなかった事を気にしつつ、今の展開に興味を示す。

ガウェインはトリスタンを無視してプレハブ小屋に入ると、そこには前髪を下ろして目を隠している男の子と、御伽学園で『赤頭巾ちゃん』と有名なロリキャラの赤井林檎が居た。

 

「お帰りなさいですの、騎士先輩、あら? トリスタン先輩も一緒ですの?」

 

「失礼しますよ、赤井ちゃん」

 

林檎が帰って来たガウェインと、トリスタンに挨拶をする。

 

「依頼は無事に終了した。副頭取に連絡をしといてくれ」

 

「はい、分かりましたですの」

 

「あと、邪魔だっか?」

 

ガウェインは物凄くビクビクしている男の子に申し訳無く言う。

 

「あ、あれ? ガ・・・ウェインさんスか?」

そしてビクビクしていた男の子は、ガウェインを見るとハッとする。

 

「うん? 君は・・・あぁ、亮士(りょうし)か」

 

「はいッス!」

 

ガウェインに気付かれたビクビクしていた男の子、亮士はガウェインに名前を呼ばれて元気の良い挨拶が帰って来た。

 

「ご存知なのですの?」

 

「あぁ、同じ寮で暮らしてる」

 

ガウェインはそう言いながら壁に寄りかかる。

 

「それで、何かあったのか?」

 

ガウェインがそれを言うと、亮士は黙ってしまった。

 

「何か訳ありね」

 

そしてトリスタンは興味津々に理由を待つ。

 

「まぁ、かくかくしかしかかなのですの」

 

「そうか、この前の仕事でストーカーに襲われた涼子は影でジッと見ていただけの亮士に怒って出て行ったのか」

 

「えっ!? 今ので分かったの!?」

 

「しかも亮士は涼子に惚れていて、告白したのは良いが、視線が怖くてヘタレになっていると・・・」

 

「マジで!?」

 

「だが亮士も亮士なりに涼子を守るように援護射撃をしたと・・・言う訳か」

 

「はっ!・・・ま、まさかの読心術を心得ているのかガウェイン!」

 

ガウェインが次々に理解していってるのに驚愕を示すトリスタン。

 

「凄いスね・・・ガウェインさん。でも・・・・・何を言おうと、飛び出せなかったのは変わらないっスよ。人前に出るとヘタレて身体が思うように動かなくなる、それが分かってたっスから。あの十数メートルはおれには長すぎたんスよ。・・・・・情けないっスね。あれほど自分が情けなかったことはないっスよ」

 

りんごとガウェイン、トリスタンは黙って亮士の独白を聞く。

 

「それなのに告白したのはっスね、すぐ側にいれば、突っ立ってるだけでも盾変わりにはなるだろう・・・・・そう思ったからなんっスよ。でも・・・・・考えてみればこれも逃げっスよね、自分を変えようとしていない」

 

 

・・・・ほんと情けない。

 

 

ガウェインの耳に亮士の最後の一言が届く。

 

亮士はその一言を絞り出すようにそう言って、立ち上がった。

 

「それじゃあ帰ります。どうもっした」

 

とぼとぼと部室を出ていった亮士、ガウェインはその後ろ姿を見て少し寂しい目をする。

 

「・・・・亮士」

 

「・・・んまぁ別にな、盾になるだけが『守る』って意味じゃないと思うけどな、俺は」

 

「私もトリスタン先輩と同じ意見ですの、でも、まぁ、男の子的には騎士(ナイト)になりたい年頃なのかもしれないのですの」

 

三者三様の反応する。

 

 

「・・・・・・・・・んーやっぱり欲しいですね」

 

「亮士をか?」

 

「ハイですの! 涼子ちゃんの内面を見抜いた彼なら頑なな涼子ちゃんをどうにかできるかもしれないですし、何より・・・・・」

 

一旦言葉を切った林檎にトリスタンは不思議にがり、聞いてみる。

 

「何より、どうしたの赤井ちゃん?」

 

「ふふふふ、二人を絡ませるといじりがいがさらにありそうですのよ。でも涼子ちゃんは頑固ですし、今の状態で森野君を受け入れるなんてのは余程のことがない限り無理でしょう。ほんと、ままならないものですのねぇ」

 

(な、なんて子なの!?)

 

そう静かに頭の中で思ったトリスタンでした。

 

 

 

 

 

 

 

ガウェインは受け持った仕事を全部終わらせたので、お馴染みの魔女工房へと向かうと、そこには。

 

「おジャマしてるよ♪」

 

萌仁香(モニカ)・ルーカンが居た。

 

「・・・んで此処に萌仁香が居るんだよ」

 

「私も聞きたいな、と思ったら間違いかしらマジョーリカさん?」

 

「ん〜間違いじゃないヨー」

 

ルーカンとマジョーリカはグツグツと巨大な鍋が何かを煮込んでいる横でお茶しながらガウェインとトリスタンを見た。

 

「萌仁香か、どうしたんだ?」

 

「マジョーリカさんにお願いしたい物があってね、それより何で弾(タン)が此処に───────」

 

「タンじゃねぇよ! “トリスタン”だ!! やめろその名っ!」

 

ルーカンの間違いにトリスタンは怒り奮闘して訂正させる。

 

「良いじゃない、本名がタンなんだから」

 

「・・・嫌だ」

 

「私もそう思うヨー♪」

 

「嫌だ」

 

「俺もおも────」

 

「嫌だァああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

「「「必死かっ!?」」」

 

トリスタンは物凄い剣幕で本名を毛嫌う。

 

「この名でどれ程の苦労と苦行を抱きながら生きてきたか分かるまい!」

 

トリスタンは近くに居たガウェインの肩を揺すぶりながら大声で叫ぶ。

 

「静かにしろよ・・・」

 

「いィィや! お前らには前々から一回俺の説明をするべきだったんだ! 良いか、この名前はな───────────でな──────そして───────────────────あれから俺は───────────────────────あの日から────」

 

急に自分の名前について詳しく、そして熱く語っているがガウェインの頭の中では、

 

(・・・・・・・あぁ〜何でだろ、急に綺麗な髪触りたいと思ってきた)

 

物凄い関係無いことを考えていた。

そして説明が終わったトリスタンは、

 

「────そして俺はこの『トリスタン』にプライドを持つようになったんだ、・・・・・・・・・分かったくれたか、ガウェイン」

 

「そうか、お前も大変だったんだな」

 

「お・・・・おぉ! やっと、やっと分かってくれたかガウェインよ!」

 

「あぁ」

 

「おぉ! 我が友よ! 我が盟友よォォー!」

 

「髪は素晴らしいよな」

 

「何の話だァァァァ!!」

 

正に感動な場面になり掛かろうとした瞬間に、トリスタンはガウェインの横を通り過ぎ、ガシャーン! とマジョーリカが作った数々の発明品に突撃してしまった。

 

 

「てめぇガウェイン! 人が名前についてどれだけ熱く語っていたと思って痛(た)ァァァァァい!!? えっ普通に痛い!?・・・・痛たい! 痛い何コレ痛い! 手が挟まったぞ!」

 

「おおー! トリスタンも私の実験に手伝ってくれるのかヨー♪」

 

「実験って何ッ!? てか痛いんですけど、この鳥を捕まえる為のトラップ的な物!」

 

「おりょ? ソレは『相手絶対逃避不能! 必殺トーリートラップ』だヨー!」

 

「何そのツッコミ所が満載な品名! 取り敢えずコレ取れないの!? さっきから俺の肉の食い込みようが半端無ぇんだけど! 痛ぇんだけど!?」

 

「取れないヨー♪」

 

「えっ、あっ、取れないの!? あっ! そういえば『相手絶対逃避不能』とか前置きあったわ! つうか痛い!」

 

「ぷっ(笑)」

 

「(笑)じゃねぇよ萌仁香ァァァァ!! てかさっきから言ってますけどね、うん、実際ゆっくり見てみてから溜めてから言うけどね、コレ食い込みようが半端無ぇよォォォ!」

 

 

痛いィィィィ! とトリスタンが床を転がっている中、ガウェインは頭を押さえて考えていた。

 

 

 

 

また頭取にコキ使われるな。

 

 

 

 

ガウェインはそう思いながらトリスタンを足で止め、食い込んでいたトラップ的な物をガウェインは糸も簡単に取ってあげて、簡単に取れたことにショックを受けているトリスタンに『ヘボいな』と止めの一言に突きつけ、トリスタンのプライドと精神と“何か”をトリプルブレイクしたガウェインだった。

 




2014 / 10 / 04 / 改善! トリスタンの名前変更。

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