騎士と魔女と御伽之話   作:十握剣

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本当に長い間、不定期更新の小説なのですが、この間この小説に不定期なのに感想を書いてくれた方がおりまして、久々に小説意欲がたぎり、今日やっと書き貯めておりましたモノを投稿いたしました(*_*)

本当に不定期更新すみません(涙)

それでも読んで下さる方がいましたら、どうか読んで言ってって下さい!




第21話「騎士は兎と亀の醜い争いに再び巻き込まれる」


第21話「騎士は兎と亀の醜い争いに再び巻き込まれる」

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──御伽花市、御伽銀行地下本店隠視(かくし)カメラより──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやいや、まさか(はざま)に王子くんの話を入れてくるなんて思わずの展開だったね?』

 

『頭取、何の話ですか?』

 

『アリスちゃん、アリスちゃん。二人だけの時はボクのことを〝リっくん〟と言ってくれなきゃ?』

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

『冷たい(まなこ)と漢字で書くと〝冷眼(れいがん)〟と読むらしいよ? いやー冷眼ってちょっと響きがかっこいいよね?』

 

『かっこよくありません』

 

『うんそうだね、ボクもそう思った所だったよ? まぁ要するにボクが言いたい事はね─────』

 

『高等部三年の白馬王子さんの件ですね。ええ、存じています。こちらはこちらでやりますのでそちらは自由にして構わない、と副頭取権限で伝えました』

 

『あらー? そうだったんだ。────あれ、知らなかったよボク?』

 

『今伝えました』

 

『おわーやるねぇ、アリスちゃん? もう実質御伽銀行を牛耳ってると言っても過言じゃないよ~』

 

『・・・・・・・・言ってて悲しくありませんか?』

 

『悲しい悲しくないと問われたらそりゃあ悲しいとボクは答えないとイケないねぇ?』

 

『・・・・・・・・・・・・ミスミスター御伽学園コンテストの決行も間近です』

 

『あらー? 面倒になった? 面倒になっちゃって話戻しちゃった?』

 

『致命的なまでに策略謀略に向かない大神さんや亮士くん、そして謀り事が嫌いな黒軋(くろきし)さんが別行動をしたことで、暇を与えないようしたのですが。お陰で“計画”は進んでいます』

 

『宇佐見君たちに喧嘩売りに行ってくれたのが赤井君と竜宮君、それと警護に浦島君を行かせたけど、これまた良い具合に挑発してくれたよ? ガウェイン君たちもそろそろ帰ってくるみたいだし・・・・』

 

『ハイ、我らも──』

 

『動くとしますか?』

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「騎士先輩、まだ宇佐見に対しての妨害工作が行われてるらしい」

 

「らしいな」

 

「貸しの徴収の名目で呼び集めた人たちも使っての工作みたいっス」

 

「・・・みたいだな」

 

「どうぞ、人数分のカフェ・アロンジェです」

 

「ありがと・・・ぅお?」

 

辛気くさかったあの寓和総合病院から離れ、御伽花市の街中にあるカフェで休憩していた。

街路に面し、歩道に迫り出したテーブルや椅子が置かれてあり、ガウェインたちは店内のテーブル席に着いていた。

カフェにメイド姿でいる鶴ヶ谷おつうに他のお客の視線が集中するのにもそろそろ慣れたが、まさか鶴ヶ谷が店員の代わりにメニューを運んで来たのには大変驚いたガウェインに、鶴ヶ谷はにこやかな笑顔を絶やさないで芳しい香を漂わせたカフェを渡した。

だが流石にカフェの店員さんに悪いから止めなさい、と三人に宥め(すか)された鶴ヶ谷は同じテーブル椅子に座りコーヒーを飲む。

 

鶴ヶ谷を落ち着かせたガウェインはコーヒーを飲みながら携帯を華麗に操作させていく。

 

「・・・どうやら順調のようだ」

 

「りんご達のですか?」

 

「ああ」

 

そう言ってガウェインは携帯を懐に仕舞い、中々旨いカフェをまた一口喉に通す。

鶴ヶ谷のメイド姿により注目され続けられている為、亮士は半硬直化したままカフェ片手にしており、それを呆れながら見ていた大神が長いスカートの切れ目から見せる美脚をチラつかせながら(多分恐らく無意識)ガウェインに質問する。

 

「騎士先輩、ミスコンの投票日って何日まででしたっけ? オレたちも流石に控えた方が良いと思ったんすけど・・・・」

 

「まだ日にちはある・・・・・が、謀り事には時間が必要だろう。頭取や林檎には俺から言っておくから先に帰宅して良いと思うが、どうする?」

 

「あぁ~・・・じゃあ、お言葉に甘えて帰るとします、オレも謀略とか策略とか苦手だし」

 

相変わらず男らしい口調の大神だったのだが、若干熱かったカフェに『あちゅっ!!・・・・//////』と可愛らしい女の子な反応をした瞬間顔を真っ赤にして何故か亮士を睨む大神。

そして大神に睨まれてビクゥッッ!! と体振るわしながら反応する亮士だったが、可愛らしい大神の仕草と羞恥に染まった顔の大神に思わず睨まれても嬉しそうな表情をしてしまった。

 

「承った、それではな」

 

男子目掛けて殴り掛かろうとしている後輩を一瞥し、ガウェインは黒いコートを翻しながら席を立った。

メイド服ほどでは無いにしろ、長身にこの黒い服は目立っていた。

だがガウェインが気にする筈も無く、店から出て行こうとすると後から鶴ヶ谷も付いてきた。

 

「どうした、おつう」

 

「また学園にお戻りになられるのですか?」

 

「あぁ・・・確かに謀り事が嫌いだが、気にならない訳でも無い」

 

「ふふふ、そうですか」

 

やはり仲間の事を心配しているガウェインに鶴ヶ谷は微笑みを浮かばせて後を付いて来ると、

 

「お供しますよ?」

 

そう言って鶴ヶ谷と一緒に店内から外に出れば、外は茜色に染まった夕日が随分と高い所から眺めていた。

そのお高く見下げてくる夕日をガウェインは眩しそうに見ながら、横に並ぶ鶴ヶ谷に視線を移すガウェイン。

優雅に微笑む鶴ヶ谷は何処か開放的で、同時に嬉しさに満ち溢れていた。それを疑問に思ったガウェインは率直に聞いてみる。

 

「機嫌が良いな、何かあったのか?」

 

本当に不思議そうに、でも顔は相変わらず無表情なままの同級生の彼に鶴ヶ谷は内心溜め息を吐いて、笑顔でガウェインに答えた。

 

「いいえ、何もありませんよ。うふふふ」

 

そうなのか? と深く聞いて来ないガウェインに、暗に興味が無いから聞いて来ないのか、それともこちらに気を遣って聞いて来ないのか、と両方から意味を捉えることできる言動でガウェインは変わらぬ表情で大神や亮士に別れ告げて歩き出した。

 

 

 

 

街中にあったカフェから大分歩き、民家が広がる川添の道路を歩きながら他愛の無い話をして歩く男女二人組。

 

「それではその鶴ヶ島という女子と鶴繋がりの苗字で仲良くなったという訳か」

 

「はい、同じクラスでは無いのですが、美化委員会のゴミ袋の分別の手伝いの時に」

 

「ゴミ袋の分別?」

 

「御伽花市でも指定袋方式が強化されたみたいでしたので、学園のゴミ箱の区別などで話していました」

 

「指定袋方式か、・・・・・確か指定された袋を用いることを義務づけられた方法だったか? 自治体の設定したゴミの区分と出し方に応じた指定袋があると若人さんと話した記憶がある」

 

「鶴ヶ島さまも美化委員会でそういった会議が沢山あったと話しておりました。学園での指定袋も自治体と同じでしたので」

 

「・・・・御伽学園がか?」

 

「は、はい。確かに理事長である荒神洋燈さまは地元の人たち一部と険悪な仲だと聞いていましたが、流石に指定袋は国の教育委員会が決めたことでもありましたので」

 

「ほうほう」

 

「学園でミスコンがあるから尚ゴミの対処が大変だと嘆いておりました」

 

クスクス、と笑う鶴ヶ谷にガウェインは再びミスコンについて話が戻ってきているのに気が付いた。

健全な高校生がゴミやゴミ袋に関する清掃関連の話を楽しく会話するなんて聞いたこと無いと思うが、楽しそうに話す鶴ヶ谷にガウェインは自然な流れに流れたといった感じだったので、特に気にしてはいなかったが、やはり話はミスコンに戻る。

 

「ミスコンか・・・・・何か頭取がやっているみたいだが、・・・ん? 確かおつうも頭取たちに何か言われていなかったか?」

 

そこでガウェインは夕日で照らされた川に、反射する茜色の光を直視しないよう気をつけて歩きながら鶴ヶ谷に聞けば、

 

「言われましたよ、ですがガウェインさまの手伝いに行っても構わないと許可が下りましたので」

 

来ちゃいました、と微笑んでガウェインを見る。

健全たる肉体と健全たる精神を宿す高校生ならば一撃必殺の言葉と仕草だったのだが、ガウェインは真正面から男らしく受け止め、

 

「そうか、ありがとう」

 

と口角を吊り上げ、小さな笑みを一つ浮かばせるだけだった。

ガウェインにすればやはり誠心誠意の言葉なのだから、鶴ヶ谷は直球に受けてしまったことで顔を赤くする。

 

「・・・・むぅ~卑怯です////」

 

だが鶴ヶ谷はそんなガウェインの反応にやはり嬉しく思ってしまい、気恥ずかしくなりながら小声でガウェインに文句を洩らしていた。

 

「何か言ったか?」

 

「い、いえ~なんでもありません」

 

と気丈にして言い放ったつもりの鶴ヶ谷だったのだが、ガウェインから見た鶴ヶ谷の顔は若干赤くなっているのに気付き、その事に関して聞こうとしたのだが、目的地に着いたのでガウェインは歩を止める方を優先したのだった。

「?」と不思議がり、止まった周囲に鶴ヶ谷が見渡せばそこは御伽学園学生女子寮の地区だった。

 

そこで鶴ヶ谷は気が付いた。

 

「・・・そういえば御伽学園の方向じゃありませんでした」

 

覚えのある通学路に、覚えのある交通信号、そして覚えのある夕方の女子寮への帰り道。

 

「学園に行こうと思ったが、もう遅いことだしな」

 

「そ、それでわざわざ女子寮(ここ)まで?」

 

そうだ、と言わんばかりにガウェインの目が語っていた。

何気ないこの気遣いに、鶴ヶ谷は仄かに胸の辺りが熱くなる。

恐らくだが、ガウェインは僅かに鶴ヶ谷の話を持ち上げ、話題を絶やさず、徐々に熱を上げたりして語らさせたことで道程(みちのり)をこの女子寮に向けていたのだろう。

鶴ヶ谷の通学路も、学園生活の何気ない日々の会話から拾い集めた情報だろう鶴ヶ谷は推測する。

 

「その・・・ありがとう、ございます!」

 

鶴ヶ谷は感謝の念を込めてガウェインにそう言えば、気にするな、と言わんばかりに静かな仕草で親指をビシッ! と出し、

 

「気にするな」

 

言ってしまった。

 

ガウェインは臆面無く堂々とした無表情顔でその行為をブチかます。

だが鶴ヶ谷はやはり微笑みを浮かばせて、ガウェインにお礼を言う。

 

そんな感じに二人のやり取りが長く続いた。

 

他愛のない、何のこともない、普通の高校生のやり取りだ。

 

格好は気にしてはならないが・・・・・・・・。

 

今日が終われば明日が来る、そんな日々(かたち)を作りながら、あっという間にミスコンの日にへと近付いていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

ミスミスター御伽学園コンテスト投票日を翌日に控え、御伽学園地下本店で主要メンバーによる作戦会議、というより最終報告会が開かれた。

いつも通りに豪華な地下施設、そこで一人の少女が頭取が座るであろう指定席に座っていた。そばかす赤毛で三つ編みのやんちゃな印象を受ける少女は、

 

「いやーいろんな所で聞いてみたけど、順調に高感度が下がってるみたいだね?」

 

頭取が変身した噂好きのよっちゃんだ。

 

「そうっスね、いろいろ聞いて回りましたけど、その噂で持ちきりでしたっス」

 

亮士のいう聞いて回るというのは勿論、正面切ってズバッ! と男前に聞く場合では無く、盗み聞きして回るということ。亮士が赤の他人と会話を成立させる訳が無く、目と目を合わせて会話なんてしてたら亮士はいつもの発作を起こしてしまう。

 

「はい、両者の高感度はもうすごいことになっているようです。噂だけではなく、醜い女の戦い故に双方がその噂を広め合ったという認識が後押しとなったようです」

 

桐木アリスの報告に頭取よっちゃんバージョンは嬉しそうに頷いた。

 

「うんうん、流石僕ら、良い仕事してるね~?」

 

「はい、うまく人目のある場所で二人が出会うように仕向けましたので、かなり効率よく噂が浸透しました」

 

見た目が少女なのに、頭取の声が聞こえてくるのに気持ち悪がる後輩たちを見ながら、ガウェインは謀略を巡らせているマジョーリカの横に立ちながら話を聞く。

 

「というか、乙姫の好感度も下がりまくってんだがいいのか?」

 

確かに、とガウェインは大神と同じく今回はあまり役に立たないということで、全然働いていない状態になっていた。マジョーリカから詳しく策謀の内容を聞けば簡単だったが、ガウェインは聞かずに今日まで居た。

 

理由は頭取とりんごが大神と同様に面白がって隠していたからだ。

 

だが亮士は意外と影の薄さを最大限に利用して情報収集に徹していたらしい。

 

大神が頭取に聞いたので一緒になり話を聞くと、

 

「いいんだよ? あ、そうそう森野君、明日の投票は竜宮君に入れちゃダメだよ?」

 

「了解っス」

 

その言葉にも物の見事に反応する大神とガウェイン。疑問が浮上するに決まっている。

 

「おいおい、いいのかよ。票が必要なんじゃねえのか?」

 

「これもいいんだよ? 大丈夫大丈夫、作戦は順調だから? そのために、宇佐見君の竜宮君への誹謗中傷を妨害しなかったんだからね? まあ、これは竜宮君は知らないことだけどね?」

 

確かに地下本店に浦島太郎と竜宮乙姫の姿が見当たらなかった。

誹謗中傷の話は二年生でも噂立っているのにガウェインは心苦しく聞いていた。何もそこまで罵りあわなくて良いのでは無いか? と。

 

だがそんな事など露知らず、頭取は楽しくて楽しくて仕方がないって感じに少女姿で微笑んでいる。

 

(はしゃ)いでますね頭取、一体何を謀っているのですか?」

 

大神も『そうだーそうだー』と便乗してくる。

 

「あー黒軋(くろきし)君に大神君? どうせここまで知らなかったのなら、最後まて知らない方が面白いかもしれないよ?」

 

「・・・・そうか? 騎士先輩はどうスか?」

 

「・・・・・ノーコメントだな」

 

「喋ってるヨー」

 

「そこは敢えてツッコまないんですのよ魔女先輩!」

 

頭取の曖昧で断言しない言葉のせいで、これまた曖昧な返答のせいで大神が首を傾げてしまい、思わず先輩のガウェインに意見を聞いてみれば何も答えないと言ってきた。

 

結局は大神の意思で『楽しみにしとくか』という結果で終わりを告げた。

 

実は大神とガウェインの考えは共通しており、どうせろくでもないことなんだろうから、知らない方が精神衛生上良さそうだ。と結論ついていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

『やぁやぁ、お早う諸君! 今日は生徒会も仕切るミスミスター御伽学園コンテスト当日だよー!』

 

「だよー」

 

『という訳で生徒会役員少ないからさぁ、君達に来て貰ったんだよ、御伽学園の騎士(ナイト)なキミ達にィッ! 朝だよ朝、朝6時だよ!』

 

「ハハハ、相変わらず殺したいほど五月蝿い副会長だ、奇抜な格好で奇抜な行動を控えろ」

 

『あんだよあんだよパーシヴァル! 紫な髪が垂れ下がっているぞ! モルドレッドはこんなに元気なのに!』

 

「ルーカン、随分久しぶりな気がするんだ、私」

 

「そうねフェイル、忘れられていたと思うわ。でも貴女は結構重要な役割を持っているのに本当に活躍してなかったわね」

 

「はぅッ!!」

 

『大丈夫だよ、ルーちゃんにランスローちゃん。私は君たちを見ているから、ニコニコ』

 

「口では言っていますが、仮面しているので表情分かりません、あしからず」

 

『ガウェインCOOLッ!』

 

「いたっいっ痛い!! 何でオレ叩くの!? 何でパーシヴァルさんオレにナイフ向けて投げようとしてんの!? 苛々してるから? それでオレ刺殺されそうになってんの? ナニコレ!!」

 

御伽学園に設けられた広大な校庭には、既にミスミスター御伽学園コンテスト会場が建設されていた。

業者の方々がわざわざ作っていって下さったらしいが、『普通』は学校の行事ぐらいで建設会社(結構有名な企業)がわざわざ全社員フル稼働で建設してくれていたのに対し、生徒たちは唖然としていたのを忘れない。

 

あの学園理事長(オヤジ)本当に半端な事はしねぇな的に恐れおののいていたのだ。

 

だが会場だけ作ってくれたので、後の作業などは流石に生徒達が受け持った。

 

『生徒会は当然、御伽学園コンテストの為に働く訳だが、人員が不足している。会長のヘンゼルくんは放送部やコンテスト実行委員会やらの打ち合わせ、グレーテルちゃんもコンテスト実行委員の人と投票用紙を揃えて貰ってる』

 

朝早くから生徒達は登校しており、楽しみであったミスミスター御伽学園コンテストの為に働いていた。

 

まさかの一日使っての校内行事、学期ごとに行われるミスコンが一学期半場という中途半端な時期になったのが痛恨だったのが生徒たちを動かせている。

 

『あ、ちなみに知られてないけど会計には風紀委員長に兼任してもらっているよ』

 

「・・・・あの桃先輩が会計か」

 

「計算が意外と得意だぞ」

 

「だが大変なんだろ、フェイル」

 

「・・・あぁ、大変過ぎて胃が持たない」

 

胃薬上げようか、とルーカンが半分心配そうに、半分哀れみに思いながらフェイルの肩に手を置くがフェイルはプルプルと震えることによって返事した。

 

『桃ちゃんにはねー、今頑張ってもらってる』

 

内容を話さない副会長は漆黒に染め上げられた仮面をなぞりながら言うと、少し気まずさを滲ませていた。

 

『君達に、やってもらいたいことがある・・・・・』

 

覆面みたいに顔全体を、いや『頭』全てを覆うように隠した仮面を被った副会長は、劇団員のように大袈裟に身体を使い、“騎士”たちに伝えた。

 

『第一体育館の地下倉庫、まぁ壇上の下からパイプ椅子を・・・・・持って来ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!』

 

ランスロットとルーカンは溜め息を吐き、トリスタンとパーシヴァルは既に姿を眩まし、モルドレッドとガウェインは無表情同士言われた事を素直に聞き第一体育館にへと向かった。

 

『どうよ、見事な統率力!』

 

「よく吐けましたねその言葉」

 

「仮面してるから悲しい顔なのか分かんないのよねぇ。ズルいわ」

 

その後も邪魔過ぎるマントを気にもせず、せっせと使用する分だけのパイプ椅子をガウェイン、モルドレッドと共に運び終えていた。

異観過ぎる光景だったが、然も毎日のように見ている御伽学園の生徒たちは差当りなく作業に取り掛かっていた。

 

『グレテルちゃんや、君のお兄様は何処に行ったんだい?』

 

「・・・・・・・・」

 

「グレーテルちゃん♪ ヘンゼルは何処に行っちゃったのかしら」

 

「ヘンゼルお兄様なら実行委員会の方々と先生を呼びに行きました。何か報告した筈の備品が無かったとか」

 

『おっと新手の無視かい? 視えて無い? アウトオブ眼中? グレるなよ、グレーテルなダケに~』

 

「吉備津先輩、この日曜朝にやる戦隊ヒーローの敵役などが着る仮面貴公子然とした奇格好(きかっこう)野郎を何とかして頂けませんでしょうか。主に消し去る方面で」

 

「あら、“奇格好”なんて聞いたことない言葉言っちゃうほどウザったらしいのかしら! でもそこが可愛いわグレーテルちゃん!!」

 

チィィこっちも面倒だッ! とグレーテルは抱き着こうとする吉備津桃子から全力で逃避行した後、扱いが雑な副会長は黒く長いマントを翻し、待っていた『円卓の騎士』たちに向き合った。

 

『諸君! 大に助かった! パイプ椅子だけだったけど大に助かった! ありがとう!』

 

「それは良かったです」

 

「良かった」

 

『うん! あれ? 二人しか居ない? ぶっ飛んだ恥ずかしがり屋だなアイツらは!』

 

「幾ら抉られ毟(むし)り取られても決して無くならない副会長のポジティブ、凄いと思います」

 

『ありがとう、ガウェイン!!』

 

結局、フェイルとルーカンは一本分だけパイプ椅子を運んだ後、用事があるのでという典型的嘘でその場から逃げていたので、実質三人だけで運び終えてしまったのだ。とはいえマンモス校である御伽学園の全生徒分を運んだ訳では無く、使用する生徒会やミスコン実行委員会の仮設テントで使う分だけだったので三人でも間に合ったのだ。

 

ただそれは午前中一杯を使えばの話なのだが、、三人の異常なまでの身体能力で、数時間の僅かで終えた仕事ぶりには、準備を終えたグレーテルと吉備津が唖然とするくらい驚かれていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「放送部の下桐すずめさんがMCを務めるのですか?」

 

午前中に会場の準備を終わったことで、まだかまだかと楽しみにやって来た御伽学園の男子生徒たちによって校庭は群集となり活気盛んに騒いでいた。

すぐにミスミスター御伽学園コンテストを開催するべくミスコン実行委員会が身を乗りだした頃、ガウェインは一度自分のクラスにへと戻っていた。

 

「そうのですよ~☆ まさかまさかの私がミスコンのMCを任せられるとは思いも寄りませんでした★」

 

相変わらずなアニメ声の下桐すずめはガウェインと廊下で話していた。

 

「これからカラス部長とヘンゼル会長とで打ち合わせがあるので~☆ ガウくんも楽しみにしてて下さいね」

 

にこやかスマイルで言って手を振る下桐はすぐに放送部が使用する仮設テントへ向かうべく、校庭にへと向かって行った。

 

(・・・・そう言えば“ガウくん”と呼ばれたが、ガウェインだから“ガウ”なのか?)

 

日本人らしからぬ名前なだけに、自己紹介をする度に質問攻めを強いられた時を思い出す。

 

名前の方に意識が向いてしまったが、下桐が向かった辺り、もうすぐ審査が始まるかもしれない。

一度クラスに戻り荷物を持ってから御伽銀行にへと向かおうとしたガウェインの前に、竜宮乙姫の怨敵である宇佐見美々の姿があった。何やら一人の少年と話し込んでいた。

 

「私頑張るから応援宜しくね白兎(ハクト)くん! ───────────見てなぁさい、あァのクソ生意気な粋(いき)がり女ァ・・・まだ深海から這い上がらせねぇからなァ」

 

「ハハハ、黒さが滲み出てるよ、美々」

 

宇佐見と一緒に居たのはガウェインと同じクラスだった因幡白兎(いなばはくと)という少年だった。

 

宇佐見と並ぶとやはり白兎の方が高かったが、白兎もどちらかと言うと虚弱そうなイメージが大きかったが、優しく微笑む彼の顔にはその虚弱さを僅かながらに細緻に薄めさせていた。

 

「宇佐見、もうすぐ審査じゃないのか」

 

「アラァ、これはこれは“御伽銀行”の黒軋ガウェインくんじゃない。アナタこそ仕事をしなくても構わないのかしらぁ?」

 

妙に刺々しい物言いだが仕方無い、それだけのことをしたのだから。

 

「あからさまに失礼だよ美々? 黒軋くんが聞いただけじゃないか」

 

「ふん、それじゃ私は準備があるので~」

 

そう言って長いピンク色のツインテールをピョコピョコと揺らしながらコンテスト会場にへと向かった。

 

そしてふと白兎と目が合うガウェイン。

 

「気を悪くしちゃったかな?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

それは良かった、と穏やかに微笑んだ白兎はガウェインと共に教室にへと入る。教室には数人の生徒しか居らず、恐らくもう半数以上(男子生徒)は校庭に向かったのだろう。学園の教室から校庭までの距離が意外と長くある為に早めに向かったのだろう、とガウェインは結論付く。

 

「御伽銀行もそうだけど、美々たちも凄いことになってるみたいだね」

 

そこで白兎が鞄を持ちながらガウェインに話を切り出す。

 

「それは・・・・その、済まない」

 

「何で謝るのさ。無表情だから怖いなぁ」

 

色々と策略謀略巡らせまくった御伽銀行と宇佐見組、廊下を歩けば嫌でも耳に入ってくる謀略戦に、ガウェインは苦い顔を浮かべるしか無かった。

 

「僕と美々は幼なじみなんだ」

 

「・・・・・そうだったのか、だから名前を」

 

「うん、人が居なければ美々も呼び捨てで僕のことを呼ぶよ」

 

にこやかに笑う白兎にガウェインも理由が分かり頷いた。

 

「実はね、今回のことは御伽銀行のお陰で“良い方向”に向かうと思うんだ。あと感謝かな?」

 

「・・・!?・・・・・」

 

「あからさまに驚くね、しかも器用に無表情ながらで」

 

 『良い方向』と『感謝』という言葉に驚いていたガウェインに思わず語った方の白兎もたじろぐ。

 

「美々の性格は薄々と分かってきているんじゃないかな?」

 

「・・・・言動やらでな」

 

頭取の指示で何やら乙姫と御伽銀行一年生メンバーで宇佐見を陥れたような話を鶴ヶ谷から聞いたが、もしかしたらその時から宇佐見もスイッチが入ったのかもしれないと予想する。

 

「・・・美々も色々と大変なんだ、過去(むかし)のせいで早く大人になってるんだよ。もちろん心がね」

 

ガウェインと一緒に教室に出て、廊下を歩く。

 

「なんて言うんだろう、早く大人が何なのか、大人という責任とかを知っちゃった、て言うのかな。とにかく、間違えた。僕がとやかかく言える程目に見えているわけじゃなけど、確かに言えるんだよ。間違えてるって」

 

廊下から階段へと降りる。

 

「猫を被るって言葉があるけど、美々は本当にそうだ。上辺だけを大人しく、可愛く、清潔に見せる。でもいつまでも“化けの皮”を被ってはいられない。剥がされる日が必ず来るって僕はずっと思ってた」

 

「・・・・・・・・」

 

「僕が剥がそうと思えば剥がせることはいつだって出来た、でもしなかった」

 

「・・・(うま)く事が運ばない、から?」

 

階段を降りた辺りで、先に歩いていた白兎がガウェインに振り向き、小さく頷いた。

 

「僕も策略とか得意じゃないんだ、一度臨み込もうとしたけど、失敗が確実に予想出来た・・・・・なんとも情けない話だけど」

 

 アハハ、と失笑する白兎だがガウェインは真面目に聞いていた。

 ガウェインも策略や謀略など得意な方で無いから共感する部分があったのだ。

奇策も無いし頭のキレも早くは無い、発想も無い、何もない。

 

「失敗するのが確実に分かったのは、僕よりも美々の方が策略戦が得意だったから、かな」

 

 確かに宇佐見の謀略戦を見る限り、場数は踏んでいる様子だった。だから御伽銀行も総力を上げて謀略戦に挑んだ。

 マンモス校である御伽学園に噂を広げ上げたのも御伽銀行だ。

 

「機会を窺っていた・・・・剥がそうと思えば剥がせると言ったのは、仲を拗(こじ)らせる可能性があったから、しなかった」

 

「・・・・下手をすれば絶交もあり得たか」

 

「・・・うん、結局我が身が大切でやらなかった臆病者さ」

 

「そんな事は無いと思う、誰だって仲が良い友を失うリスクを負ってまでやろうとは思わない」

 

「でもそのせいで美々が傷付いてしまうかもしれない、それは嫌だ」

 

その言葉で下駄箱で靴を手に取ろうとしたガウェインが停止する。

 

「我が身が大切で、友も大切とは・・・・・それは我儘だと思うぞ」

 

思わず呟いてしまったガウェインだったが、ふと頭の中にマジョーリカが浮かんだ。

 

例えマジョーリカとの関係を壊してしまっても、彼女を正しくする為に敢えて壊す覚悟。

 

彼女が傷付くくらいなら、自分が傷を負えば良い。

 

何て男々(おお)しくも美しく、尊く、清らかなで、やけに“甚だしい話”だ。

 

美談として及第点だろう。だが実際ともなれば、難点であり汚点じゃないか。

 

思考を巡らせるガウェインに、我儘と言われた白兎は、特に憤慨することも無く素直に反応する。

 

「ハハハ! 確かに! これは紛れも無く我儘だ」

 

責めた言い方をしたのだが、意外と芯が強い少年なのかもしれない因幡白兎に、ガウェインは向き合って瞳を見る。そこには真っ直ぐな眼差しで、虚弱とは思わせない強い意思で伝えてくる。

 

「でも僕は、美々の為ならその我儘を棄てるよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あ、いや、棄てられるように、なりたい・・・かな?」

 

「・・・・・そこが曖昧(それ)では締まりが無いな」

 

同級生に真顔でクサい台詞を吐いたことで羞恥心が浮上してしまったのか、白兎は白い肌を赤くして指で顔を掻いていた。

 

だがガウェインには、白兎が騎士のように|気高(つよ)く見えた。上品があるとか、気品があるとか、品性とかでは無く、自信強く頂上高い存在に見えた。

 

自分を犠牲して守る強さ。

 

いざとなれば我が身を盾に宇佐見を守ると言った白兎に、ガウェインは敬意を示した。

 

「強いよ、白兎」

 

「そんな事ない、ただの臆病な白い兎なだけだよ僕は」

 

本当に締まりが無いな、ガウェインは珍しく、口角が吊り上がった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

『さぁーやって参りました! ミス御伽学園コンテスト☆ 学園の美少女たちが今日この日に為に己を磨き、輝ける原石となって登場しますっ★ 刮目せよ男子ども! 司会はわたくし、天使のさえずり下桐すずめで~す☆』

 

始まったミス御伽学園コンテスト、壇上の上では見事な陽気なMCを演じる下桐すずめが司会進行していた。ガウェインは白兎と最前列まで行こうと、男子生徒を掻き分けながら進んで行くと、途中で『御伽銀行特等席』と書かれた看板の前に座っている御伽銀行男子メンバーが鎮座していた。

 

どうやらガウェインの分まで席を用意してくれていたらしいが、虚弱体質である白兎に席を譲ろうと振り向けば、もう因幡白兎が消えていた。

 

「・・・聞きたいんだが」

 

「ん? ぅおッでかっ! 黒軋じゃん」

 

「俺の背後からくっついて来ていた奴は・・・・・・・・」

 

「えっ? そいつなら顔色悪そうにして口押さえながら校舎に戻ってったぞ? ホラ階段上がってる」

 

「・・・・本当だ」

 

人の群れに酔ったか白兎よ! とガウェインは先程垣間見た白兎の雄々しき姿を早くも霧散しそうになったが、教えてくれた同級生にまず礼を言ってから、やはり記憶に留めて置くことにした。

 

ガウェインは御伽銀行の特等席に向かえば、頭取と亮士が向かい入れた。

 

「生徒会のお手伝いご苦労様だねガウェインくん?」

 

「お疲れさまっス」

 

ただ唯一、浦島太郎だけは真剣にコンテスト会場を見ていた。

浦島の隣にパイプ椅子があった為、ゆっくりと席に着いたガウェインはふと浦島に聞いた。

 

「乙姫が心配か?」

 

「・・・・・・・・あぁ」

 

珍しい言葉数少ない浦島にガウェインは心配そうに思えたが、すぐに意識が会場にへと向いた。

 

エントリーした美少女たちが会場に現れ始めたのだ。

 

「残ぁ念、アリス君は出てないみたいだね~?」

 

「・・・吉備津先輩もエントリーしてたんですね。知らなかった」

 

「いや、部室で言ったっスよ騎士先輩」

 

水着審査なだけにエントリーした女子たちの水着はどれも男子生徒たちの心を燃えさせるものだった。特に風紀委員長でもある吉備津桃子の水着は高校生として大丈夫なのかッ? と鼻息荒れる男子たちが目に血が走るギリセーフなまでに危ないライン。

 

様々な水着を着た少女たちが各々のアピールタイムのスタートが下桐すずめの発言により始まった。

 

『さぁー! 始めましょうミス御伽学園コンテストぉッ☆ 一発目はこの方!──────合法ロリまであと一歩? 見た目は白ウサ、中身は黒ウサ★ 宇佐見美々さん!』

 

「きゃはぁ♪」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」」」」」

 

『見た目は可愛い赤頭巾☆ でも心は真っ黒だ毒リンゴっ★ 赤井林檎さん!』

 

「うふっ♪」

 

「「「「「ううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお「可愛いっっ!!!」おおおおおおお!!!」」」」」

 

『グルグル眼鏡のマッドな変人☆ マジョーリカ・ル・フェイさんと~! リアル恩返しメイド★ 鶴ヶ谷おつうさんだ~!』

 

「あわっあわわっ」

 

「おぉ~うぉぉ~う!」

 

「「「「「うううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!! 肩車ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」」」」」

 

『果たしてデレる日が来るのか!? ヤンキー系ツンデレ未満☆ 大神涼子さん!』

 

「あァ・・・?」

 

「「「「「・・・・・うおおおおっっ!!?」」」」」

 

『最後は皆さんお待ちかね☆ 昼は淑女に夜は娼婦★ 浦島大好き! 竜宮乙姫さん!』

 

「「「「「ふふぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォォォオオオオオッッッッッ!!!!!!」」」」」

 

強い意思の眼差しでポーズを決めた乙姫は、やれる事はやったと顔に写し出して、元の配置にへと戻る。

すると隣同士だった宇佐見美々の視線が合った瞬間、バヂバヂバヂィィィ!!! と火花がリアルに飛び散っていた。

 

『おおっとぉぉ!? 壇上でも火花が飛び散っておりますぅ☆ まぁそんなこんなでアピールタイム終了でっす★ それでは男子生徒諸君? 一人一票の投票お願いしまぁす★ 一人一票ですからねぇ?』

 

 

 

 

『いやぁ良かったよMC! また頼むね、すずめちゃん♪』

 

「はいィ、是非また放送部をお願いしますねぇ☆ 部活予算とか諸々~」

 

『いやぁ致し方ない! これは致し方ない! 考えて上げようじゃないか御伽学園放送部めい!』

 

「きゃあァーー☆ ありがとうございますぅ♪ 副会長ぉ★ 仮面(マスク)とマント超イケてますぅ☆」

 

『アッハッハッハ! ワッショイ上手いな君はまったくアッハッハッハ!』

 

「吉備津先輩ィィ! またあの副会長が権力振りかざして生徒会予算を破産させようとしてまァァす!!」

 

「あらあら何ぃグレーテルちゃん? 私にそんなに副会長の貞操を食べてもらいたいですって?」

 

『私の操は私のものだ!!』

 

「きゃあーー★ 副会長男前ぇ~! そして生徒会混沌としてますぅ~☆」

 

生徒会が漫才している仮設テントには続々と男子生徒たちが投票していく中、着々と全男子生徒の投票が集まっていく。

 

この投票で決着がつく。

 

固唾を飲むは御伽銀行。選挙中の政治家もこのような心持ちなのだろう。

 

ミス御伽学園を決める方法は実に簡単でよく用法される投票だった。投票は任意、一人一票で男性しか投票できない。校内の何ヵ所かに投票所が用意されていて、投票は午後五時に締め切られる。

 

「それでは締め切らせて貰います」

 

『あーダメダメ。ダメだよちゃんと言わなちゃダメ』

 

「これより選挙投票された票数の合わせに入りますので、副会長もお早く選挙管理委員会本部にお戻りください」

 

『ちょっとちょっと、七五三木(しめき)さん? 何の為の苗字なんだい? 何の為に私はこの投票所で任されている選挙管理委員会の七五三木委員長の元に居たんだい? それはね、君の姓名が正にこの日この時この“締め切り”の“しめきり”っていうこのユーモアな間をどれだけ心待ちに─────────』

 

「あー・・・・そこの男子生徒、すみません。ミス御伽コンテスト会場、もしくは選挙管理委員会本部に連絡をお願いします。ええ、内容はこの神出鬼没の仮面副会長が一介の女子生徒のコンプレックスをガリガリ掘り返して愉悦に浸っていることを事細かく緻密にお願いします。・・・・え、名前を教えてくれ?─────────七五三木梨子(しめき・りこ)ですが何か?」

 

 学園の昇降口前にも設置されてある投票所でいつの間にか移動していた副会長も、自分の姓名にコンプレックスを抱いている真面目系メガネ美少女とマンモス校である御伽学園の選挙管理委員会の長を務めている七五三木に追い出され、呼ばれた生徒会の書記と会計によって捕縛される。

 

 学園の昇降口前にも設置されてある投票所でいつの間にか移動していた副会長も、自分の姓名にコンプレックスを抱いている真面目系メガネ美少女とマンモス校である御伽学園の選挙管理委員会の長を務めている七五三木に追い出され、呼ばれた生徒会の書記と会計によって捕縛される。

 

粛々と、だが着々と投票が集計されていき、即日開票された結果が御伽学園の校庭に建設された最新鋭の電子モニターにて知らされる。

 その校庭に天高く建てられた電子モニターの前に集まるのは男子生徒も勿論のこと、女子生徒達も楽しみにして待っていた。皆が一体誰がミス御伽学園コンテストの『学園一の美少女』になるか話し合っては熱を込めていた。

 

 

そして、即日開票を心掛け一気呵成に集計し続ける生徒会の面々。────と言っても御伽学園生徒会書記を務めるグレーテルと風紀委員会委員長兼生徒会会計でもある吉備津桃子を筆頭に奮戦し、選挙管理委員会も協力もあるので残り一時間も満たずに終了することを、愛する妹を眺めていたヘンゼルが予測する。

 御伽学園の生徒代表たる“生徒会長”がこのヘンゼルという生徒。ドイツ人と日本人のハーフであり、髪も茶髪に近く、顔立ちも十人が見て十人が答える整った優しげある相貌。だがこのヘンゼルという男、“実妹”であるグレーテルにしか関心が持てないちょっと、というか果てしなくアブノーマルな性格の持ち主。だがそれ故に十把一絡(じっぱひとから)げとして他人と接すると同時、それは誰とでも“公明正大”として周囲に知られており、公平で良識的。バランス感覚が広大な為に『生徒会長』に適任な人物として高い評価を生徒から支持されていた。

 

『ミス御伽学園コンテストにも出場したのに、桃ちゃんには大変苦労を掛けるな』

 

「ふふふ、それなら君も自重してくれよ。これ以上彼女たちを苦労を掛けさせないでくれ。特にグレーテルには」

 

『君ら兄妹の仲睦まじさにはいつも手を焼かれているのだ。私の蛮勇に手を焼くくらい可愛いものだろう。おまけに他人と少し関係も必要してくるし、僥倖だと言って前向きに喜ぼうとしようじゃないか』

 

 この神出鬼没の副会長は何処までが本気で何処までが戯れているのかヘンゼルにとって計り知れなかった。

 確かにこの副会長を捕まえるには否(いや)が応でも生徒たちから話を聞かなければならない。そして、親しい者同士なら尚有力な情報や、もしかしたら協力してくれるかもしれない。それも全てやはり“関心”が無ければその親しい関係も築けない。それを見越して行なっているのか、はたまた本気でふざけているのか。やはりヘンゼルは理解出来なかったし、理解しようと関心さえ向かなかった。

 

「グレーテルの為にしてくれているのは嬉しい事だけど、余り度を過ぎると僕も動き出すかもしれないねぇ」

 

『フハハ、勘弁願える。家族の恨みは憎しみの根底より深しだ。ちゃんと弁えているだろう? こうして捕まっている訳だしね』

 

「あぁ、だから縄で縛られているのかい? テントに着いた時グレーテルが怒りまくっていたから何かしたのだろうな、と思ったけど・・・。それとだ。君いい加減に選挙管理委員長をからかうのも止してくれ。名前は忘れたけど」

 

『七五三木梨子ちゃんだよ、君もいい加減生徒の名前くらい覚えていたらどうだ?』

 

「グレーテルのことなら何でも知っているんだけどなぁ・・・・」

 

 そんな会長と副会長の実に他愛の無い話をしていれば、グレーテルと桃子が投票結果を記した紙を片手に、二人を呼んで結果発表の準備を促していた。

 生徒会長は愛しき妹と一緒に選挙管理本部に微笑みながら向かい、副生徒会長は縛られていた筈の縄をいとも簡単に、難なく解いて生徒達と共に電子モニターの前にへと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは皆さんお待ちかね♪ 投票結果の発表です!」

 

ミス御伽学園コンテストを行われた会場に立つは御伽学園放送部の自称『天使のさえずり』下桐すずめ。司会アナウンサーの改造制服が似合う元気なすずめも今この場のテンションにも打って付けである。

 そして会場の中央に鎮座するのは御伽銀行の面々であり、最もこのコンテストに力を入れた労働者である。その場所からでも十分に電子モニターが見えたことで、発表される順位もきっと一人残らず分かるであろう。

 その御伽銀行の中、一際目立つのが黒軋ガウェインであり、黒い改造制服に浦島よりも大きな身長。恐らく会場からもガウェインが何処に居るかなど分かるだろう。そんな誰よりも一つ目立つであろうガウェインに近寄るのは更に一際一層誰よりも目立つ御伽学園の自称・仮面貴公子。生徒会副会長が近寄って来たのだ。

 

「君は本当に目立つねぇ? 暑くないのかい?」

 

『やぁ、桐木リスト。これも慣れれば大概大丈夫なものだぞ? それとそこのあからさまに嫌そうな表情を必死に作ろうとしている無表情騎士に何か言ってくれやしないか?』

 

「黒軋くんはありのままが良いんだよ」

 

 高等部三年生ということもあり、仮面を被る奇抜な格好の副会長と桐木リストは顔見知りだったらしい。互いに軽口を言いながら電子モニターにへと視線を戻す。会場で仕切るすずめによって進行する。

 

「それではまずは10位から4位までをどぅぞっ♪」

 

その言葉を合図に、電子モニターに10位から4位までの準備が上下に並び、一つ間を空けてから名前が羅列する。

 名前が映った瞬間に歓声を上げる生徒達。互いに笑い声や嬉しそうな声を上げていた。特に男子。

 

『ほー・・・4位の大槻恵美さんと5位の矢吹美和さんとの票数が凄いな。123票と97票か』

 

「点差が確かに差があるけどねぇ、御伽銀行(こちら)にも嬉しい名前が表示されているよ?」

 

「あっ! おつう先輩10位っス。凄いっスね!」

 

『メイド服効果というヤツだねぇー! あそこまでメイド服を着こなす淑女は居らんだろう。そこの所はどうだいガウェイン!!』

 

「元気良く振ってこないで下さい。仕事に戻ってはどうです?」

 

 メイド好きの組織票が多数入ったからか、漫研アニ研の票もあるだろう。だがそれでも鶴ヶ谷が10位。

 

(これは、上位に入るのはまず無いだろう)

 

 はっきりと、ガウェインは頭の中で結論付いていた。事前に聞いていた互いの妨害工作や人物月旦の低下工作。上げるのでは無く下げる手口。ガウェインからして、良くて今の10位から4位までに竜宮乙姫が入っていれば正に上々だったのだが、

 

『はっはっはっ! やはり上位を目指すには人物崩壊(キャラクターブレイク)してはいけないということかな! ある一種の賭けだが』

 

 副会長の言葉にガウェインは別の同じ意見が浮かんでいた。

 対決していた二人は学園での“外面”を互いに剥がしあって、“内面”を晒け出しただけのことだった。

 人間やはり合う合わないの自己主張が激しい生き物。宇佐見美々と竜宮乙姫の“内面”を『それも有り』と理解した人も居るかもしれない。だが世は千差万別の地平線。嫌う傾向もある人間はとことん嫌う。

 学園のでは『嫌う』とまで行かずとも『苦手』とまでは行くかもしれない。

 

(それに、大体頭取の考えも読めてきた。だがこの“流れ”が濁流とならなければ良いが・・・・)

 

 先を少しだけ読めたかもしれないガウェインはただじっと、この先の流れを待つことにした。

 

「それでは上位三位(ベストスリー)の発表です☆ 第3位はぁ~・・・魚住メイさん! 249票!」

 

 第3位は綺麗なプロポーションの上に健康的に日焼けした水着の(あと)がなんとも少年たちの心を踊らせた。爽やかさと守ってあげたい保護欲を引き立たせる可愛いさ、さらに美しい四肢にビキニを着た美少女の魚住メイ。確かに“夏の美少女”とキャッチコピーでも出して宣伝に繰り出せば皆が釘付けになる天然の美しさと可愛らしさを感じさせられた少女だ。ガウェインからも男子から見ても夏の美少女は“短髪”が似合う少女が至高であり、本当に魚住メイは短髪と水着が似合う少女である。

 何故彼女が一位では無いのか、ガウェインは疑問に思えてしまったが、上にはその天然水で夏をすっきりさせてくれる美少女・魚住メイより居たという事実。

 魚住メイ本人も三位でも十分に驚いていて、凄く喜んでいる彼女に、男子生徒たちは次々と心を奪われていった。だがまだ終われない、と男子生徒たちは身を震わせた。

 

 そして続いて審査結果の第二位はと言うと、

 

「続いて第2位! 吉備津桃子さん! 342票です!!」

 

 下桐すずめの発表と同時に、壇上に上がっていた吉備津桃子が文字通りに胸を張って『当然よ~♪』と言いた気に悠然とし、堂々とした姿で構えてみせた。

 なんとけしからん水着なのだろうかムフンッ!! と言わんばかりに御伽学園の男子生徒が吉備津に視線が釘付けだ。女子高生でも絶対的な自信がなければ着れない水着を堂々と着ている桃子。豊満な胸を惜しみ無く強調としたラインある黒のスリングショット寄りの水着で、見事に胸元からお(へそ)まで中心が空いている水着だ。

 もうそこら中の男子生徒たちの熱気は治まることを知らず、発狂したかのように叫びまくる生徒たちまで出てくる位に刺激が強すぎる水着だった。同性からは訝しむ視線もあったが、多くの視線は羨む者が多かった。

 

 この超美体保持者(ナイスプロポーションホルダー)である吉備津桃子以上が居るのか!? というほどに男子生徒も女子生徒も興奮が醒めぬまま、下桐すずめの進行に耳も目も釘付けだった。

 

「そして、第一位は!・・・・・・・・・・」

 

 下桐の固唾を飲むのは壇上にて対決する竜宮の姫と黒き兎娘。見守るのは御伽銀行の面々。

 

「私が勝ったら、分かってるのよね」

 

「その言葉、そのままお返し致します」

 

 内面に籠ったその声質に、宇佐見美々と竜宮乙姫の並々ならぬ決意が滲み混んでいた。乙姫は絶対に勝つ、と己に言い聞かせ。そうしなけれはならないという使命を帯びたかのように自分に鞭打つ乙姫。

 まるで幼かった自分との、弱かった自分との決別を決断するかのように、乙姫は心強く待ち構える。

 

(絶対に買ってみせます! 太郎様の為にもっ!)

 

 さぁ、いざ! と言わんはがりに下桐の言葉に一言一句聞き逃さないと言わんばかりに聞き耳を立て、そして出された結果は・・・・・・・・、

 

「・・・・輝かしいミス御伽学園コンテストの頂に立ったのは! 白雪姫乃(しらゆき・ひめの)さん! 433票!!!」

 

「「・・・・えっ?」」

 

 輝かしいミス御伽学園コンテストの優勝者になったのは、とても暖かく、優しい風を纏い、穏やかな笑顔を向けて生徒たち皆に向けてお礼の手を振って感謝している高等部三年の白雪姫乃だったのだ。

 全生徒たちから惜しみ無い拍手を贈られ、優勝者には王者の資格かのように、王冠と赤いマント、そして優勝トロフィーを贈呈される。

 

 その様子を見ていた御伽銀行の面々は、

 

「まぁ、こうなった訳だね?」

 

「・・・・頭取は最初からこれを狙っていたのですか?」

 

 泣き崩れる(内心煮え立つ)宇佐見に追い討ちを掛けるりんごを遠目に、ガウェインは計画通りといった感じに事の顛末を眺めている頭取に聞いた。

 

「まぁ、ね」

 

 頭取はガウェインの質問に答えながらも、横に座る浦島に目を向けている。浦島もなにか思う所があったのか、ただ黙って、落ち込む竜宮乙姫にだけ視線を向けていた。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 ミス御伽学園コンテストを終え、無事に終幕したコンテスト会場は茜色に染まっており、誰も居なくなった会場にただ一人、落ち込んでいる少女がペタンと座り混んでいた。生徒会役員たちも後片付けは明日に構え、帰ってしまっている。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 負けてしまった。何故負けてしまったのか理解出来ないといった感じに下を向く竜宮乙姫は、負けた事実と、浦島に対して申し訳なさ過ぎて、悲しんでいたのだ。

 

(・・・・意地を張り、とことん勝ちに向かって突き進んだ結果がコレですか・・・・御伽銀行の皆様と、太郎さま、に、申し訳・・・・・・・・・)

 

 本当に泣きに入ってしまいそうだった乙姫に、

 

「落ち込むにはまだ早いよ?」

 

「えっ?」

 

 声が掛かった方に目を向ければ、そこには協力してくれた御伽銀行の頭取・桐木リストが立っていた。女性みたいな細身の体つきなのに、今夕日の光に当たる頭取はとても雄々しく堂々とした立ち構えだ。

 『落ち込むにはまだ早い』? 頭取はそう言ったが、乙姫にとって今は理解しようにも負けたショックで頭も回らない。

 

「おいでよ、竜宮君」

 

 そういって、乙姫を動かし催促をする。

 

 壇上に立っていた頭取は、地面に降りて未だに残っているコンテストの結果表が貼られたホワイトボードまで移動する。乙姫は大人しく言うことを聞いてホワイトボードまで移動すると、頭取が静かに人差し指をある票のある所まで移動させて、『ここ見てみなよ』と優しく語り掛けてくれる。

 この先輩はあんなに迷惑を掛けたていうのにどうしてこんなに優しく語り掛けてくるんだろう、と不思議に思っていた乙姫が目線がその頭取が指差す箇所を見てみれば、そこには、最下位にあった二つの名前。票数を集計した数もあったが、分かりやすいように、乙姫の票数に『1』とだけ入れられた数があった。

 

「この一票、誰が入れたのか分かるよね?」

 

 そういって、頭取は胸ポケットからある紙を一つだけ取りだし、乙姫の掌に握らせた。

 

「まさか・・・・」

 

「この勝負、乙姫さんの勝ちですのよ」

 

 会場本部のテントから赤井林檎がそう言ってきたが、『勝ち』というのには宇佐見には勝ったというだけで、コンテストでは一位にはなれなかった。

 

「竜宮君、君が本当に欲しかったのは、本当に大好きな浦島君の一票じゃないのかな? でも君は過去と勝負にこだわってそれを忘れちゃってた」

 

「だから今回、敢えて宇佐見さんと乙姫さんの好感度を落とし、乙姫さんにその一票の重みを感じて貰いたかったのです」

 

 副頭取である桐木アリスも頭取と並び、今回の行動の意図を説明する。

 

「まぁ、竜宮君の依頼を果たせなくて申し訳なかったけどね?」

 

 その意味を知り、握られた掌にある折られた紙を小さく開けば、そこにあったのは愛しい人が書いたであろう『竜宮乙姫』の名。

 その字を見た瞬間に、瞳から雫が流れおち、その紙を大切に額まで移動させ、ただ想う。愛しいあの人を、と。

 

 そして、横から感じる“あの人”の気配に気付いた乙姫は、涙を流しながらも、確りと視線を向けた。

 

「太郎、さま」

 

 そう、そこに立っていたのは今日この日の為に頑張ってこれたであろう健康的な褐色肌と長身、そして女性であれば振り向いてしまうであろう端麗な顔付きである少年・浦島太郎がそこに立っていたのだ。

 

「乙姫は頑張って可愛くなった、もう過去なんて気にする必要なんてない。他の人間の評価なんてどうでも良い・・・このオレが可愛いと思ってるんだから・・・・それで十分だろ?」

 

 誰が何と言おうが、誰がどう思おうが関係ない。“乙姫が可愛いと思ってる自分が居るだけじゃダメなのか?”と、そう思わせるような優しい眼差しで、浦島は乙姫に向けて皆に見せるような笑顔じゃなく、口角に皺が出来るくらい大きな笑顔の、ちょっとカッコ悪くて情けなさそうな顔で笑った。

 

 乙姫はその笑顔を見て思い出す。小さかったあの頃の浦島の笑顔を、

 

 あの頃と変わらず、あの頃の『亀子』と呼ばれてた乙姫でさえ『可愛い』と豪語してくれた浦島に涙が出そうになったあの頃と変わらず笑顔を向けてくれた。

 

(あぁ・・・・・・・・・本当に・・・)

 

 胸が突き破るくらいに、暑くて苦しくて、好きで愛しくて、あなた様の近くに居たいと叫ぶ心に、乙姫は口が震えながらも愛しい名を呟く。

 

「たろ・・う、さま」

 

 自分でも驚く程に震えていた声で呼ぶ。

 

「たろう、さま」

 

 愛しい想い人の名を、大切に、呼んだ。

 

「乙姫は、乙姫は・・・」

 

「本当に、可愛いやつだよ、馬鹿みたいに」

 

 乙姫は涙を隠そうとせず、大好きな浦島の元に飛び付いた。ぐしゃぐしゃになった顔を、浦島にだけ見せる。大事に受け止めてくれた浦島を好きですと何回も泣きながら言えば、浦島は優しい声色で『オレもだよ』と応えてくれた。

 

 御伽銀行の面々はそれを優しく見守り、『良かったね』と呟いた。

 

 

 

 

 

亀は助けてくれた恩人を愛した

美しい乙姫(ひめ)となり

迷惑になると知りながらも

愛し尽くす限りを(もてな)した

 

亀じゃなく、乙姫(ひめ)にしてくれたあの人を

 

いつまでも、愛してしまった

 

 




感想などお待ちしております!

2014/03/02

改善! まさかの投稿間違いないしてました

_| ̄|○

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