ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第五十二話 二つの戦場

コロニーレーザーの存在。それはザフトだけでなく地球の各国や連合の兵士すらも驚愕させる出来事だった。

 

「僻地に用意して中継ステーションに偽装させた大量殺戮兵器ってことかな……プラントを直接狙わなかったのは位置的にプラントから発見されることを危惧したからか?」

 

無論、オーブの代表首長の代理であるユウナもまたロゴスの使ったレクイエムとコロニーレーザーに驚愕していた。

 

「国際情勢的にオーブが被害者だって事を主張できたのは不幸中の幸いというべきだけど、これは余計面倒なことになりそうだね……」

 

結局の所、オーブは国の存続としての危機は取り除かれた。国際世論はウナト等オーブの政治家達の尽力によってロゴスを匿っていた加害者から、ロゴスに国ごと焼かれそうになった被害者へと立ち位置をすり替えたのだ。勿論、これはあくまでも世論であって、実際の国際情勢としてはオーブは未だ加害者だ。しかし、世論が被害者だと言われていれば国が負う責任を多少なりとも減らすことは出来る。

未だに未確認MSについての報告要求等もあり、余談を許さない状況ではあるがこのままなら国が亡びるということは避けられると思っていた。

 

「だけど、状況が変わったというべきか―――」

 

ジブリールの遺体、レクイエム、プラント六基の崩壊、そしてコロニーレーザーとそれによって消されたザフトの大部隊――――――想定外の事態が多く巻き起こっている。それらの出来事は一つ一つが状況によってオーブに亡びの運命を与えることになるのだ。オーブという国は今やロゴスとザフトが引っ張り合っている綱の上に立っていると言っていい。

片方に引かれれば、そちらの勢力に頭を垂れることとなり、共倒れになればオーブは中央に立ったまま放置されることになる。そのどちらかになるならまだいい。二年前と比べれば、立て直せないほどの被害ではないだろう。問題は、その綱が千切れて振り落される事となった場合だ。

そう、つまりオーブがそのまま二つの勢力に呑まれ亡びること。それだけは避けなくてはならない。

 

「何よりこの状況に不安を最も感じているのは国民なんだ。僕たちが頑張らないでどうするんだ」

 

オーブを守るために彼は自身から歩み寄りを始める。これまでにもやってきたことなのだ。やって見せると自分に言い聞かせて動き続けた。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、コロニーレーザーの位置は概ね予想通りの場所だったな……」

 

レクイエムだけでなくコロニーレーザーによってゴンドワナが撃墜されたことによって評議会は荒れるような状況となっていた。しかし、そんな中でデュランダルは一人そんな事を誰にも聞こえない程度に呟く。

 

「これ以上大きな被害を出す前に今すぐ新たな部隊を派遣すべきだ!」

 

「しかし、敵の砲撃のインターバルが分からない以上、闇雲に部隊を突撃させるのは危険ではないのかね?」

 

「この場で最も優先すべきなのは月のダイダロスにある砲撃に決まっているだろう!?あれは好きな場所を討てるという話ではないか!」

 

意見の不一致に評議会は騒ぎ立て続ける。デュランダルは内心冷ややかな目で彼らを見ていた。やはりコーディネーターなどと言っても本質はナチュラルと何一つ変わらない。多少優れている人間に過ぎない。

 

「皆さん、どちらにしても二つの兵器を無視することは出来ません。些か無謀だと思われますが、コロニーレーザーにはプラントの主力部隊を、レクイエムにはミネルバとラー・カイラムを送ります」

 

評議会の議員はその言葉に賛同する。元々ロゴスを討つと言った時もデュランダルの意見に賛同していた者が殆どである議員はデュランダルに対して反論すること自体少ないのだろう。

 

(だからこそ、デスティニープランによって世界は導かねばならない。それが不可能だとしても、次の道は存在している――――――)

 

総ては自身の掌の上であると、そう思える程度には世界は彼にとって都合よく動いていた。

 

 

 

 

 

 

「作戦に変更なし―――引き続き俺達は月基地の戦略兵器破壊へと向かうのね」

 

クラウは艦橋でプラントから届いた伝令を簡潔に纏めて、噛み砕いて理解していた。既にどのMSも出撃準備は完了しており、レクイエムを破壊するための準備は既に整っている。

 

『現在、例の中継点に偽装させていた砲撃兵器によってザフトは多大な被害を受けているわ。でも、同時に第一中継点ごと巻き込んだからこそ時間的に僅かな猶予が存在している。でも、移動中の新たな第一中継点を破壊するにはザフトの部隊の集結はおそらく間に合わないの』

 

『つまり、俺達はその新しい第一中継点が到達する前に砲本体を撃墜すると……しかし、あちらのコロニーを利用して造られた砲撃はどうするつもりなんです?』

 

タリアが作戦の概要を説明している中、アスランはもう一つのコロニーレーザーに対する対応はどうするのかと尋ねる。確かに、単純な脅威といった面ではレクイエムの方がプラントを直接狙える分、危険だがコロニーレーザーも無視をするには危険すぎる。

 

『そちらに関しては既にジュール隊を中心として行動を開始しているらしいわ。何にしても、インターバルを考慮してもこちらの方が確実に先に撃たれることになるでしょうしね』

 

でなければ、第一中継点に向けてコロニーレーザーを放った意味がない。おそらく新たな中継点が到着すると同時に確実に放たれることになるのだろう。

 

『イザークが……』

 

『同期だったけか―――信用できないのか?』

 

『いや、でも短気だからなあいつは。そのあたりで無茶をしていないかは心配だ』

 

茶化すように言ったハイネの言葉に同意するアスラン。しばらくして作戦が開始される。

 

『ルナ、ショーン―――気を付けろよ』

 

『シンだって、同じくらい危険なんだから、私達の心配ばっかりしないで』

 

『そうだぜ、必ず無事に戻って来るさ』

 

シンはルナマリアとショーンに連絡を繋ぎ、無事を祈るよう互いに話す。

 

『ハイネ、後の指揮は任せるぞ。先行隊、発進する!』

 

『『了解!』』

 

アスランのセイバー、ショーンのゲルググJG型、ルナマリアのコアスプレンダーとインパルスのチェストフライヤーとレッグフライヤー、そしてブラストシルエットを追随させて進行した。

アスランが彼らの指揮をとり、一方でミネルバとラー・カイラムを中心に展開する部隊はハイネが指揮を執る事となっている。

 

『分かっているとは思うが、俺たちはポイントAで出撃後、直接基地に奇襲をかけることだ。先行隊が発見されないようにこちらに敵を引きつけなきゃならねえ。今回の戦いはこれまでの中でも比べ物にならない位きつい戦いになるぜ』

 

戦力比からしてまず圧倒的な差が存在している。いかにコロニーレーザーや中継ステーションに防衛戦力を割いているとはいえ、ミネルバとラー・カイラムのたった二隻で基地を落とすなど、無謀を通り越している領域だ。だが、動ける戦力がこれだけしかないのも事実であり、同時にそれだけ彼らのこれまでの戦果に期待している人も多いという事だ。

 

『プラント市民の命が託されてんだ……いや、プラントだけじゃないな。ロゴスという組織が勝利すれば、起こるのは泥沼の内乱だ。厳しくてもやらなくちゃならねえ―――』

 

仮にロゴスがプラントを討ってしまえば、ザフトは残党として動く様になり、連合も反ロゴスと親ロゴスに分かれることになるだろう。その先に待っているは長期的な戦争、或いは内乱。そうなってしまえば、本当に決着を付ける所がなくなり、それこそ前大戦ではぎりぎりで避けた人類絶滅の争いとなってしまう可能性すらある。

 

『俺達が止めなきゃ、世界が終わるかもしれないんだ!ハイネ・ヴェステンフルス―――デスティニー出るぞッ!』

 

『シン・アスカ、デスティニー―――行きますッ!!』

 

『レイ・ザ・バレル、レジェンド―――出撃する!』

 

三機の機体がそれぞれの自機カラーを煌めかせながら出撃する。アレックとクラウは艦の護衛を、他にも数機のゲルググG型はオーブ戦が終了してから調整を終了させ、既にF型となっているので問題なく出撃する。

 

「さて、来たな―――」

 

敵がこちらを発見し、敵防衛部隊を出撃させてきた。その中に突出してくる大型のMAがいくつか現れる。

 

『速いッ!?』

 

レーダーに映る敵はデスティニー並―――いや、それ以上の機動力を発揮してこちらに向かって接近してきた。

 

『来るぞッ!!』

 

そして、ハイネがそう叫ぶと同時に戦闘が始まる。

 

 

 

 

 

 

イザーク達ジュール隊はコロニーレーザーを破壊、制圧するために戦闘を続けていた。コロニーレーザーは確かに脅威ではあったものの、おそらく長期的な戦闘にならない限りは次の発射はないだろうと予想されていた。

コロニーレーザー自身の排熱、レクイエムのようにエネルギーを直接基地から受けない、この二点から連続的な砲撃は不可能。ならばこちらにも勝機はあるとそう判断していた。

 

「チィ、数が違いすぎるか!ディアッカ、後衛は貴様に任せる。俺は突撃するぞ!!」

 

『オイッ、イザーク!?―――わかったよ!攻撃部隊、艦隊の射撃に合わせろ!外してもいい、敵を近づかせるな!』

 

しかし、敵との戦力差は決定的だ。元々主力部隊であったゴンドワナが撃墜され、戦力が激減した今の部隊数では連合の防衛陣を突破しきれない。イザークは埒が明かないと判断して戦線を切り開くために自身が動く。

 

「落ちろォォ―――!」

 

クローで捕らえようと突撃してきたザムザザーをそのままスレイヤーウィップで反撃し、姿勢を崩した所でコックピットをビームソードで貫く。そこを後ろから突こうとしたウィンダムだったが、シールドでそれを防ぎ、両手の四連装ビームガンで蜂の巣にした。

 

『下がれ!そいつは俺が仕留めてやる!』

 

イザークのグフに対してそう豪語して接近してくるMAがいた。その機動力は直線的ではあるものの、この場にいるどの機体よりも確実に速い。

 

「何だこいつは!」

 

イザークも流石に相手の速度に驚いたのだろう。正面から突撃し、クローを放ってきた敵に対してシールドを犠牲にすることで何とか躱す。

 

『ほう、このビグロの高速移動による攻撃を躱すとはな!』

 

そう、そのMAの正体はジブリールが機動力においては最強だと豪語し、アズラエルがデストロイの二の舞にならぬか危惧していた緑色の大型MAであるビグロだった。

 

『イザーク!?』

 

「黙って見ておれ!敵を撃つ機会を逃すな!」

 

ディアッカが心配して声を掛けるが、イザークはそう返事をしてそのまま正面にビームソードを構える。それと同時にビグロの口から大型ビームが放たれた。それを正面からイザークのグフは喰らう。

 

『ハハハ、見たか!ビグロが量産の暁にはザフトなど―――何ッ!?』

 

「侮るな!この俺を倒したくばこの三倍は持ってこいと言うのだ!」

 

イザークのグフは大型ビームをビームソードによって防いだのだ。ビームソードはイザークの専用装備として改良を施され、デスティニーのアロンダイトと同様に対ビームコーティングが施されていた。本来ならばビームをそのように防ぐなど反応が間に合うはずもないのだが、イザークは仮にもエースであり、その程度のことは訳ないとばかりに防いでみせた。

 

「しぃずめェェェッ―――!!」

 

直線機動に限定され、急な方向転換をすることが不可能なビグロはそのまま真正面からイザークのグフと相対することになる。

 

『良いだろう、ならばこのビグロのクローで直接叩き潰してくれる!』

 

そう言ってビグロのパイロットはクローをグフに向けて放つが、それを上に躱しながら両手で持ったビームソードでビグロを正面から叩き切った。

 

『馬鹿なッ、このビグロが……たった一機のMSに―――!』

 

「ええい、余計な時間を喰った!ジュール隊、一個小隊分ついて来い!このまま戦線に穴を空けるぞ!」

 

『『『了解!!』』』

 

イザークの指揮に文句を言わず、寧ろ我先にと従ってついて行くジュール隊の面々。彼らの突破によってチャニス隊や他の部隊も戦線の突破に尽力する。

 

「さあ貴様ら、死にたい奴からかかってこい!」

 

イザークはコロニーレーザーを破壊するために進むが、連合の部隊も突破させまいとジュール隊の方面に部隊を集中させて防衛を図る。威勢よく叫ぶまでは良かったが、流石に戦力差を覆せるほどではない。元々ゴンドワナの部隊が第一中継ステーションを破壊するために集めた戦力よりもザフトは少ないにも関わらず、こちらのコロニーレーザーを守っている連合の部隊は第一中継ステーションよりも多いのだ。

 

『ホルスト撃沈!カーナヴォンも孤立しつつあります!』

 

『ええい、砲撃隊、カーナヴォンを援護しろ!先発のMS隊は一旦下がって補給に回れ!イザーク、無茶し過ぎだ!突出し過ぎてるぞ!!』

 

味方のナスカ級の艦の被害も広がりつつあり、このままでは包囲されて潰されてしまうとディアッカは判断し、撤退を進言する。

 

「増援が来るまであと少しだッ!それまでは持たせろ!」

 

コロニーレーザーでの戦いは死闘となり、敵部隊を次々と落としていくのだった。

 




所詮ビグロは噛ませだった……というか活躍的にはデストロイ以下(笑)パイロットがなんか娘がいて顔がごつそうな人っぽい台詞だけどまあ気にしたら負けです。

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