ハイスクールD×D~英雄の力を使う者~ 休載   作:アゲハチョウ

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11話

十日後にライザーとのレーティング・ゲームを控えた僕たちオカルト研究部のメンバーは強化合宿と言う名目(本当の意味での強化合宿)でリアス部長の別荘へと向かっていた。

 

「ぶ、部長…!まだですかぁー!」

「イッセー、それはさっきも聞いたわよ」

「いち兄、ファイトだよ!」

「ふるせぇ!微妙に似ている声真似で励ますな!」

 

うーん、僕はそこまで穂○果ちゃんに似せてたかな?

 

「ほら、イッセーくん。ここに山菜があるよ」

「木場、俺にそんな余裕があるように見えるか?」

「イッセー先輩、情けないです」

「小猫ちゃーん!」

 

木場先輩も励ますが意味もなく、塔城さんのはもはや蔑みだった。

 

「まぁ、いち兄が音をあげるのも無理ないよね」

 

何故なら魔法によって本来の三、四倍近い重さの荷物を背負って坂道を登っている。塔城さんに関しては僕たちの優に三倍近い荷物を背負っている。

 

「着いたわよ。ここが私の別荘よ」

「うわー」

「ぜぇぜぇ、し、死ぬぅー」

「本当に情けないですね、イッセー先輩」

 

目の前にあるのは別荘と言うよりはどっちかと言うと豪邸じゃないのかな。

 

「それじゃあ、着替えてここにまた集合よ」

「「「「「「はい!」」」」」」

「あ、それとイッセー、覗いちゃだめよ」

「し、しませんよー」

「あらあら、少し肩が揺れましたわね」

「図星だったみたいですね」

 

まったく、アルジェント先輩と付き合うようになっても根本的なところは変わらないなぁ。

 

「男子も別々の部屋があるみたいですし、さっさとそこで着替えちゃいましょう」

「イッセーくん、覗かないでね」

「誰が覗くかよ!」

 

木場先輩ってもしかして同性愛者(そっち)の人じゃないよね。

一抹の不安を覚えながらも僕は与えられた部屋で着替えることにした。

 

「それじゃあ、イッセー貴方から祐斗とやってみてちょうだい」

「はい、部長!やるぜ、木場!」

「うん、それじゃあ始めようか」

 

まずは木場先輩が相手みたいだ。二人は木刀を構えている。

 

「はああああ!」

「甘いね」

 

いち兄が木場先輩へと走りながら木刀を斬るように降り下ろすけど木場先輩はなんなく避ける。それを数回繰り返されたあとに今度は木場先輩が攻撃を始める。

 

「もっと視野を広くした方がいいよ」

「くっ、速すぎだろ!」

「そうかな?これでも目で追えるくらいの速さだと思うんだけど」

 

確かに木場先輩の速さは目で追えるギリギリの速さだ。でも、普段から運動していなかったいち兄とってはキツいだろうね。

 

「くそ、速すぎたぞ」

「あはは、まあこれから頑張ろうよ」

「次はアスカよ」

 

僕の番が来た。

 

「あの、神器の使用は…」

「アスカはありで大丈夫よ。貴方はまず自分のmodeに慣れといた方がいいから」

 

よ、よかった。正直、禁止だったら僕もいち兄と実力は変わらないからね。

 

『マスター、最初は誰にする』

『うーん、魔術に関しては皆適性がないよね』

『うん、そうだね。今はキャスターのクラスはいないからね』

 

うーん、となると…。

 

『最初はジークで、戦況を見て変わってもらうよ』

『わかったよー』

『了解した、マスター』

『うん、分かったよ。マスター(おかあさん)

 

それじゃあ、行くよ!

 

使い魔との絆(ボーンズ・サーヴァント)modeセイバー」

 

マントと鎧に剣を身に付けていた。

 

「行きますよ、先輩」

「うん、僕の方も準備できたよ」

 

木場先輩も神器を使って剣を作っていた。

 

「木場先輩も神器を持っていたんですね」

「うん、まあね。僕は魔剣を作れるって言う能力だけどね」

 

魔剣、か。たしかこの剣も魔剣としての性質を持ってるんだよね。

 

「はあ!」

「ぐっ!中々やるね!」

「先輩こそ!」

 

鍔釣りあい、何度も剣同士で弾き会う。

 

「!?」

「今だ!changeアーチャー!」

 

バランスを崩した木場先輩に向けて天の鎖を射出する。

 

「とった!」

「うん、これは僕では無理だね」

「そこまでよ。どうだったかしら、祐斗」

 

戦い終え、リアス部長が木場先輩に問いかける。

 

「はい、アスカくんはよく相手を見ていますね。その証拠に僕がバランスを崩したのを見逃しませんでしたから」

「そうね。状況判断も中々だったわ」

 

なんか照れ臭いなぁ。誉められるのに慣れてないからな。

 

「それじゃあ次いくわよ」

 

木場先輩との特訓は終わり、次へと向かった。

 

「…えい」

「ぐへぇ!」

「いち兄!」

 

いち兄が綺麗に放物線上に飛んでいった。

 

「と、塔城さん。もう少し手加減を」

「これでもしています」

「し、してるんだ。あれでも…」

 

いち兄が飛んでいく様をみて、戦慄する。

 

「イッセーが気絶したみたいだし、次はアスカよ」

 

気絶!そんな一撃を食らったら、僕の体もたないんじゃ。

 

「早くしましょう、アスカくん」

「え、もうちょっと待って。心の準備は」

「行きます」

「ちょ、modeアサシン!」

 

僕は急いでジャックの力を使った。

 

マスター(おかあさん)、あの子斬り刻んでいいの?』

『だ、ダメだよ!仲間なんだから』

 

ヤバイよ、ジャックが少し興奮していると思うよ。流石、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)

 

「うまく避けますね」

「これでもいっぱいいっぱいだよ」

 

ヤバイ、ナイフで迫り来る拳をいなしていくけど正直キツい。一撃一撃が重たく、手が痺れてきた。

 

「くっ、手が痛くなってきた」

「すごいですね、よくもっている方です」

「あ、あははは」

 

このまま防御し続けても意味がないよね。でも、なかなか攻撃を仕掛けることができないよ。

 

『マスター、変わろうか?』

『ええ、いいところなんたから邪魔しないでよ』

『あ、あははは。もう少し頑張ってみるよ』

 

ギルが変わるかと提案してくれるけど、ジャックも少し怒り始めたから、ギルの提案は断っておいた。

 

「二人ともそろそろ終わりよ。イッセーも気がついたみたいだわ」

 

やっと、いち兄が目覚めてくれたお陰で終わりを迎えた。

 

「もう少しやっていても大丈夫でした」

「か、勘弁してください」

 

これ以上やったらナイフとか手とか壊れそうだった。

 

「それじゃあ、次いくわよ」

 

いち兄も意識がちゃんと覚醒したのを確認して次へと移った。

 

「次はスクワット五十回を3セットよ」

「「はい!」」

 

次はリアス部長からのスパルタ体作りを始まった。

 

「終わったみたいね。次はこれを背負って坂道を走ってもらうわ」

「こ、これは」

「岩よ」

 

そう、岩が目の前におかれていた。

 

「これを背負うんですか?」

「ええ、そうよ。さあ、始めるわよ!」

 

リアス部長はスパルタ女王でした!

 

「それじゃあ、魔力を集めるところから始めますわよ」

「「「はい!」」」

 

最後は朱乃さんからの魔力による料理教室だった。

 

「このように体に流れる魔力を手に集めてみましょうか」

「うーーん」

「「できました!」」

「嘘!」

 

僕とアルジェント先輩は初めてものの数秒で出来たが、いち兄は中々出来ていなかった。

 

「あらあら、二人は魔力の才能があるようですわね」

「くぅ、俺だって!」

 

いち兄が一生懸命魔力の球体を作ろうとしているけど、どんなにやって無理だった。

 

「それじゃあ、食べましょうか」

 

あれから結局いち兄は魔力で作ることはできたけどとても小さいものだった。本人はがっかりしていたけど、まあ何とか三人で協力して夕食を作り終えた。

 

「それで三人の意見を聞きたいのだけど」

「はい、アスカくんに関してはとてもいいですね。力もちゃんと状況で使い分けていますし、能力も個々で違いますからとても相手しずらいですね」

「アーシアちゃんは魔力の才能が高いですわね。これなら、攻撃魔法を簡単なものなら覚えられるかもしれませんわよ」

 

なるほど、結構分析されてるんだなぁ。

 

「そして、イッセー先輩がもっとも伸び代がありますね」

「まあ、そうでしょうね。さて、この後はお風呂にでも入りましょうか」

 

こうして、僕たちの長い特訓が終わりました。

 

「うーん、喉が渇いたなぁ」

 

夜中目が覚めてしまい、水を飲みに行くために部屋から出る。

 

「あれ?リアス部長?」

「あら、アスカじゃない」

 

リアス部長はいつもはかけていない眼鏡をかけながら何か本を読んでいた。

 

「それって…」

「ああ、これね。伊達よ。人間界に長くいると癖になってしまったのよ」

「そうなんですか。似合ってますよ」

「あら、ありがとう」

 

お世辞とかではなく、本気でそう感じた。

 

「あの、リアス部長。聞いていいですか?」

「なにかしら」

「どうして、あそこまで結婚を拒否るんですか?確かにライザーのあれには僕も腹が立ちましたが」

 

そう聞くと、リアス部長は少し間をあけて話してくれた。

 

「私はね、グレモリーなのよ」

「……」

「私はリアス・グレモリー。誰もがそんなことは知っているわ。でも、私には必ずグレモリーの名がついてくる。けして、グレモリーでいること嫌気が差しているわけではないわ。誇りに思っているもの。でも、結婚相手は、人生を共にする人だけは、私をグレモリーとしてではなく、ただのリアスとして、グレモリー家とか関係なく私を愛してくれるヒトと結婚したいのよ。それが、私の我儘で、夢なの」

 

リアス部長の夢。それは一人の少女が誰しもが夢見る普通のものだったけど、リアス部長にはそんな事を夢見ることすら難しかった。

 

「大丈夫ですよ。リアス部長」

「…アスカ」

「その夢は僕が、いえ、僕たちリアス・グレモリーの眷属が守って見せます!だから、そんな悲しそうな顔はしないでください。いつもの凛々しい貴方でいてください」

「…ありがとう、アスカ」

 

リアス部長は涙を流していた。そして、僕は誓う。ライザーとのゲームは必ず勝って見せると。


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