ハイスクールD×D~英雄の力を使う者~ 休載   作:アゲハチョウ

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10話

ここ最近のリアス部長は様子がおかしい。

 

「リアス部長、ただいま戻りました」

「……」

「リアス部長?」

 

無視しているわけではないようだ。

 

「リアス部長!」

「!?、アスカ。お帰りなさい」

「はい、ただいま戻りました。何かあったんですか?なんだか上の空でしたよ」

「いいえ、気にしないで。ちょっと、考え込んでいただけだから」

 

そう言うとまたリアス部長は考え込んでしまった。こんなのがここ数日続いている。

 

「リアス部長はどうしたんだろう……」

「イッセーさん、あーん」

「あーん、うんうまい!アーシアの料理はうまいな!」

「えへへ、ならもう一口どうですか?」

「いただきまーすってアスカやめろ!俺の背中に箸を刺そうとするな!」

 

まったくお昼ぐらいはイチャづかないで食べれないのかな……。

 

「部長が悩んでるんだよな。それはここ最近俺とアーシアもわかってたぞ?」

「はい、部長さんなんだか浮かない顔をしていました」

「やっぱり、二人から見てもそう思うよね」

 

このバカップルでさえ気づいているんだから姫島副部長や木場先輩、塔城さんも気づいているんだよね。

 

「次の休み時間に木場辺りに聞いてみるぜ」

「うん、お願いね」

 

心配だ。なにかよくないことでもリアス部長の周りで起きてるのかな?

 

「それなら僕も思っていたよ。それで朱乃さんに今日聞いてみようと思ったんだ」

「そうなんですか」

 

放課後になり僕といち兄にアルジェント先輩、木場先輩で部室へ向かいながら木場先輩にも聞いてみた。

 

「でも、どうして姫島副部長なんですか?」

「ああ、それは気になった」

「あはは、朱乃さんはあれでも部長の懐刀だからね。何か事情くらいは知っているはずだよ。それはそうと小猫ちゃんは一緒じゃなかったのかい?」

「ああ、塔城さんなら先に部室へと向かいましたよ。なんでもとっておいたケーキを食べたいみたいですから」

 

その事を話すと木場先輩は苦笑いを浮かべていた。

そして、部室の前へ着くと木場先輩が不意に止まる。

 

「まさか、ここに来るまで気づかないなんて」

「え?」

 

そのまま扉を開くといつも通りリアス部長と姫島副部長、塔城さんがいた。そして、そこにはもう一人、見知らぬ人物がいた。

 

「リアス部長、その人は…」

「警戒しないで。この人は」

「私はグレモリー家に使えています。メイドのグレイフィアともうします」

 

メイドって実在するんだなぁーと思った。と言うかリアス部長って本物のお姫様か何かなのかな。

 

「初めまして、リアス様の兵士(ポーン)をさせてもらっています。藤丸アスカです」

「お、同じく兵士(ポーン)の兵藤一誠です!」

僧侶(ビショップ)のアーシア・アルジェントともうします」

 

僕たちが自己紹介すると、グレイフィアさんはそのまま僕といち兄をみて。

 

「そう、貴方が伝説の赤き龍を身に宿し、貴方はかつての英雄たちを身に宿した者……」

 

何か言っていたみたいだけど、僕といち兄には聞こえなかった。

 

 

「それで部長。なんでグレイフィアさんがここに?」

「それは」

「いいわ、グレイフィア。私が話すから」

 

うん?なんかリアス部長が深刻そうな顔つきになっているような?

 

「実はね…」

「な、なんだ!?」

 

いち兄が騒ぎだした。いや、それは仕方ないことだ。何故なら急に炎と共に魔法陣が表れたのだから。

 

「フェニックス」

「え?」

 

フェニックス?たしか不死鳥や鳳凰としてアジアの地方で祀られていたりするあのフェニックス?

 

「ふぅ、やっぱり人間界の空気は肌に合わないな」

「ライザー…!」

「よう、愛しのリアス」

 

な、なんだ。このホストかぶれの男は!

 

「触らないで、ライザー」

「あの、この人は?」

「ん、なんだリアス。俺のことを話していないのか」

「話す必要がないもの」

 

なんだか、仲がよろしくないようで。

 

「この方はライザー・フェニックス様。フェニックス家の三男にしてリアス様の婚約者です」

「「こ、婚約者!!」」

 

あまりの真実に僕といち兄の声が部室に木霊した。

 

「お茶ですわ」

「うん、うまいな。リアスの女王(クイーン)がいれたお茶は」

「ありがとうございますわ」

 

うん、今の部室の空気は最悪だ。

朱乃さんもいつもとは違って能面みたいな笑顔だし、リアス部長は誰が見ても不機嫌だし、木場先輩と塔城さんは臨戦態勢にいつでも入れるようにしてるし、もう最悪を越えて危険地帯だよ。

 

「ライザー、私は言ったはずよ!貴方とは結婚しないと。それにお父様とお兄様も急ぎすぎよ。私が大学を出るまでは自由にして良いはずよ」

「ああ、だから大学は自由にして良い。俺と結婚した後でもな」

 

思い出したけど、そういえばソロモン72柱の悪魔のなかにフェニックスがいたことを。でも、こっちだと悪魔と言うよりかは聖なる生き物として認識が根付いているよね。

 

「何度も言わせないでちょうだい。それに婿養子だってちゃんと見つけたわよ」

「そうか、そうか。それは俺の」

「いいえ、貴方ではないわ。ライザー。私は私が心から愛したヒトと結婚するのよ。そしてそれは貴方では決してないわ!」

 

へぇ、リアス部長にもそんな人ができたんですね。なんだか、従僕として嬉しいです。

リアス部長にボロクソ言われているこのライザーさん。顔つきが明らかに変わった。

 

「俺もなリアス。フェニックス家の看板を背負ってここまで来ているんだ。それに俺は人間界は好かない。この世界の空気と炎は汚れきっている!もし、このままお前が俺との結婚を拒むと言うのなら眷属を殺してでもお前を連れていくぞ」

 

ライザーさんから放たれる殺気を感じ、僕たちは臨戦態勢に入ろうとした。そう、入ろうとした。けど、その必要性はなかった。なぜなら……。

 

「お二人ともそこまでにしてください」

 

グレイフィアさんからはライザーさんをも遥かに越える殺気が流れ出ていたからだ。

 

「ライザー様、いきすぎた行為はお慎みください。私は魔王 サーゼクス様の命でここに居ることをお忘れですか」

「ははは、最強の女王(クイーン)と呼ばれている貴方を敵にするのは俺としても荷が重い」

「リアス様もその魔力を消してくださいませ」

「……」

 

うおおお、リアス部長いつのまに滅びの魔力を手に集めていたんだ。

 

「はぁ、このままでは話しは平行線のままですね。サーゼクス様はこの事を予感していました。ですから、お二人ともここはレーティング・ゲームで決着をつけては如何ですか」

「「「レーティング・ゲーム?」」」

 

初めて聞く単語に僕といち兄、アルジェント先輩声に出していた。

 

「レーティング・ゲームとは悪魔同士の眷属を使った戦いのゲームだと理解してください」

 

グレイフィアさんからの分かりやすい説明でとりあえずは納得した。

 

「なるほど、魔王さまも殊勝なことをお考えなさる。リアス、君の眷属はそこの7人だけなのか」

「ええ、そうよ」

 

リアス部長がそう答えるとライザーは嘲笑う。

 

「ははは、それだと俺の眷属とまともに戦えるのは雷の巫女だけじゃないか!それに俺の眷属は」

 

指をならすとライザーの後ろに魔法陣が展開され、炎とともにライザーの眷属が現れた。

 

「15人。フルメンバーだぜ」

「うわぁー」

 

現れた眷属を見て思わずそんな声をあげてしまった。だって、ねぇ。眷属が全員女性とか、ないわぁ。

 

「ハーレム野郎かよ」

「いち兄、そんな事を言ってるけど。自分もそれを目指していたんだからね」

 

まさか、眷属が全員女性だなんて誰が思えただろうか。誰も予想は不可能でしょ。

 

「なんだ、ハーレムは男のロマンだろ」

「いつの時代の台詞だよ。今時そんな事を考えてる奴はただの変態だよ」

「がはぁ!」

 

なんか後ろで倒れた誰かがいるみたいだけど気にはしない。

 

「それに貴方はリアス部長の婚約者でしょ。そんな人がいるのにこんなことをしていいんですか?」

「ふん、さっきから下級悪魔ごときが偉そうに俺に意見するじゃないか。何、安心しろ。リアスも俺のハーレムメンバーの一員として愛してやるさ」

 

ハーレムメンバーの一員として、だと……?

 

「さあ、リアス。結婚式の会場を決めよう。なに、ドレスなら我が家に伝わるドレスがある。だから、安心して来るが良い」

 

そのまま、リアス部長に触ろうとした。が、そんな事を許すわけにはいかなった。

 

「天の鎖」

「なぁ!!」

 

僕は伸ばした腕を天の鎖で縛り、リアス部長に触れられる前に止めた。

 

「汚い手で、リアス部長に触れるな」

「貴様ぁ!」

 

怒りを露にするライザーは天の鎖を外そうとする。

 

「くそ!なんで外れない!」

「無駄だよ。それはかつて天の牡牛を捕まえた鎖。いくら悪魔でも、不死鳥や鳳凰と呼ばれている貴方では簡単には外せない」

「黙れ!お前たちあのガキを殺せ!」

「一歩も動かない方がいい」

 

僕は宝物庫にある名もない聖剣たちを空間を繋いでライザーの眷属の周りに配置する。

 

「名はないとはいえそれは間違えることのできない聖剣だ。触れれば悪魔である貴方たちがどうなるかはわかっていますよね」

「「「…………」」」

 

聖剣で斬られた悪魔は存在そのものが消えるかのように灰となる。それがわかっているなら動くことはしないはずだ。

 

「アスカ、もうやめて。私なら大丈夫だから」

「…わかりました」

 

僕はそのまま聖剣をしまい、天の鎖もライザーから外し、宝物庫へとしまった。

 

「ライザー、私は貴方にレーティング・ゲームを申し込むわ。十日後の深夜に私との結婚をかけた試合よ」

「いいだろ!それまで身を清めておくんだな!そして、お前!レーティング・ゲームでは覚えていろよ!」

 

そんな台詞を残して、ライザーとその眷属は帰っていった。

 

「リアス、よろしいの。相手はあのフェニックスよ」

「ええ、わかっているわ。グレイフィア、この事は魔王さまに」

「伝えておきましょう」

「そう、ありがとう」

 

グレイフィアさんはそのまま僕たちに一礼すると帰っていった。

 

「さぁ、私たちは十日後。ライザーとレーティング・ゲームをするわ!勝つために明日から強化合宿よ!」

 

こうして僕たちは十日後にレーティング・ゲームを控え、それに向けて特訓をすることになった。


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