ごめんね光輝くん、しばらくオリ主に罵倒され続けてね。
光輝くんファンの皆様ごめんなさい、彼の扱いはしばらく酷いです。
原作主要キャラ紹介回なので、原作を読んでいる方々は半分以上読み飛ばして下さって結構です。
オリ主の台詞をほんの少し修正しました。
感想を元に修正してみた。
side 原作主人公
僕、《南雲ハジメ》は何時もの様に始業チャイムが鳴るギリギリに登校し、夜更かしでふらつく体をなんとか踏ん張り教室のドアを開けた。
その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。
女子生徒も友好的な表情をする者は、一部の者を除けばいない。
極力意識しない様に自席に向かう僕に、しかし、毎度の事ながらちょっかいを出してくる者がいる。
「よぉキモオタ!また徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっキモ〜。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃ〜ん」
何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒たち。
声をかけてきたのは《檜山》、毎日飽きもせず日課の様にハジメに絡む生徒の筆頭だ。
近くでバカ笑いしている《斎藤、近藤、中野》の三人と共に頻繁に自分に絡む。
檜山の言う通り自分はオタクだが、キモオタと罵られる程身だしなみや言動が見苦しいという訳では無い。
コミュ障という訳でも無いので、積極性こそ無いものの受け答えは明瞭だ、と思っている。
単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけである。
本来ならば学校のクラスのオタクは、嘲笑こそあれどここまで
では何故男子生徒全員が、自分に対して敵意や侮蔑を向けるのかといえば。
その答えの
「南雲くんおはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
ニコニコと微笑みながら一人の女子が自分の下に歩み寄った。このクラス、いや学校でも自分にフレンドリーに接してくれる
名を《白崎香織》といい、学校で三大女神と呼ばれている女神の一人であり、男女問わず絶大な人気を持つ
いつも微笑の絶えない彼女は非常に面倒見が良く責任感も強いため学年を問わずよく頼られ、それを嫌な顔一つせず受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。
そんな彼女は何故かよく自分を構うのだ。
夜更かしや徹夜のせいで居眠りの多い僕は、成績は平均を取っているにも関わらず不真面目な生徒と思われてしまっており、それを見た彼女がその面倒見の良さを発揮してしまい気にかけている、と思われている。
これで僕の授業態度が改善したり、あるいは僕がイケメンであれば彼女が構うのも許容できるのかもしれないが、生憎僕の容姿は極々平凡であり、『趣味の合間に人生』を座右の銘としている事から態度改善をするつもりも無い。
そんな僕が彼女と親しくできている事が、他の男子生徒たちには我慢ならないのだろう。
「なぜあんな奴だけが!」と。
女子生徒たちは単純に彼女に面倒をかけている事と、なお改善しようとしないことを不快に感じているようだ。
「あ、ああ、おはよう白崎さん」
瞬間、これが殺気か!?と言いたくなる様な眼光に晒されながら、頰を引きつらせて挨拶を返す。
それに嬉しそうな表情をする白崎さん。
なぜそんな表情をするのだ!と、心の中で叫びながら更に突き刺さる視線に冷や汗を流した。
というか何故彼女はこんなにも自分に構ってくるのだろうか。
どうにも彼女の性分以上のものがあるような気がしてならない。
……僕など比較にならないほど"いい男"が彼女の周りにはいるのもあって、自分に恋愛感情を持っているなどと自惚れるつもりは毛頭無いのだが。
というかいい加減、この殺気を孕んだ眼光の嵐に気づいて下さい、それとも自分に構ってくるのは悪意あってのものなのかキサマァー。
なんて思い始めていると、三人の男女が近寄ってきた。
そこには、先程言った"いい男"も含まれている。
「南雲君、おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか?まったく、本当に香織は優しいな」
「まったくだぜ、そんなやる気の無い奴にゃあ何を言っても無駄だと思うがなぁ」
三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒は《
ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。
彼女の実家が八重樫流という剣術の道場を営んでおり、彼女自身、小学生の頃から剣道で負けなしの猛者なのだとか。
次に、些か臭い台詞で香織に声をかけたのが《
如何にも"勇者"っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗成績優秀スポーツ万能の完璧超人で、ダース単位で惚れている女子生徒がいる筋金入りのモテ男だ。
最後に、投げやり気味な言動の男子生徒は《坂上龍太郎》といい、天之河くんの親友だ。
努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間なので、僕の様な学校に来ても寝てばかりのやる気が無さそうな人間は嫌いなタイプらしい。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。まぁ自業自得とも言えるから、仕方ないよ、ははは」
八重樫さんたちに挨拶を返し苦笑いする。
「あん?てめぇ、何親しそうに八重樫さんと話してんだオラァァン!?」という言葉より明瞭な視線がグサグサと刺さる。
八重樫さんもまた、白崎さんに負けないぐらい人気が高い。
「そこまで分かっているなら直すべきじゃないか?いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君にばかり構ってはいられないんだから」
天之河くんの目にも、自分は白崎さんの厚意を
僕としては「甘えたことなんて無いよ!寧ろ放っておいてくれ!」と声を大にして反論したい。
のだが、彼は無駄に思い込みが激しいところがあるので言ったところで無駄だろう、と思う。
直せと言われても、両親の仕事現場では即戦力扱いされていたりと、自分としては真面目に人生しているので、誰に何と言われようと今の生活スタイルを変える必要性は感じない。
白崎さんが僕を構わなければ、"物静かな目立たない一生徒"として終わるはずだったのだ。
「いや〜、あはは……」
それ故に、笑ってやり過ごそうとする。
が、今日も変わらず我らの女神は無自覚に爆弾を落とす。
「? 天之河くん、何言ってるの?私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」
ざわっ、と教室が騒がしくなる。
男子たちは、僕を呪い殺さんばかりに睨みつけ、檜山たち四人組は何やら話し込んでいる。
おそらく昼休みに僕を連れて行く場所の検討でもしているのだろう。
「え?…………あぁ、ホント、香織は優しいよな」
どうやら天之河くんの中で白崎さんの言葉は、僕に気を遣ったと解釈された様だ。
彼は完璧超人なのだが、そのせいか自分の中の正しさを疑わなさ過ぎるという欠点がある。
(そこが厄介なんだよなぁ)と思いながら現実逃避気味に教室の窓から青空を眺めていると………天之河くんが僕の一つ後ろの席にいる女子に向けて話し出した。
「なぁ、《四季》もそう思うだろう?」
その言葉を聞いた、四季と呼ばれた女子は、読んでいた小説に栞を挟みパタンと音を立てて閉じると彼に向けてこう言った。
「アマノガワコウキくん、馴れ馴れしく名前で呼ばないでって毎日毎日言ってるわよね?」
やんわりと言う
「あ、ああ、悪かっ……」
「せっかくだから言わせて貰うけれど」
謝罪を遮られ、続けられる。
「アマノガワコウキくん、貴方に毎日毎日馴れ馴れしく名前で呼ぶなって言っていた理由、教えてあげましょうか?
友達でもない貴方に名前を呼ばれるとね、虫唾が走るからよ」
良く通る《彼女》の声で、教室の空気が死んだ。
「な、何を言って……」
「それから」
再び言葉を遮り、《彼女》はまた続ける。
「毎日毎日私に対して当然の様に、勝手に自分の身内みたく接してくるの、やめてくれないかしら、すごくイライラするわ」
天之河くんは呆然としている。
ちょっと可哀想に思えてきた。
「それから……私の席の周りで、大人数で騒がないでくれる?さっきまでまでこうやって小説を読んでいたのが見えなかったのかしら
どうしても私の席の周りで騒ぎたいのなら、私がいない時にして貰える?」
そう言って一瞬こちらを見た《彼女》は、最早用は無いと言わんばかりに小説を鞄の中に仕舞い、教室の窓から空を眺め始めた。
天之河くんは最早何も言うことが出来ずに、一瞬だけ《彼女》を睨みつけた坂上くんと共にすごすごと自分の席に戻っていった……かなり可哀想に思えてきた。
白崎さんも《彼女》に対して、怒りとはまた違う感じにムムムッと唸ってから戻っていった……《彼女》は顔を向けすらしなかったが。
「……えーっと、ごめんなさいね?南雲くん。彼らに悪気は無いのだけど……」
八重樫さんがこっそりと申し訳なさそうに謝罪してきた。
天之河くんが《彼女》に話しかける直前までの話の続きだ。
彼女にも先程の流れに関して言いたい事はあるのかもしれないけれど、どうやら「とっとと失せろ」という《彼女》の意思を尊重したらしい。
自分は「仕方ない」という風に苦笑しながら肩をすくめるのだった。
そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が入ってきた。
いつもと違う教室の空気を疑問に思いつつも、いつもの様に朝の連絡事項を伝えている。
そしていつもの様に自分は夢の世界に旅立ち、授業が開始された。
そして僕は意識が沈む直前に、
(《両儀さん》、言ってた事こそ本音だろうけど、絶対僕が勧めたラノベのキャラの口調を参考にしていたよ……)
なんて思ったのであった。
次回、ハジメと四季の、少し変わった関係の始まり。
そして…………。