GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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お久しぶりでございます。GE2RBのストーリーのせいで全ての下書きを破棄することになった私でございますorz
何と言うか…いやもう、運営さん勘弁してつかあさい(・・;)
とまあそんなわけで、本日はこれまでの投稿の遅れに対する謝罪と、運営への嘆きとを込め、三話投稿とさせていただきます。どうぞお付き合いください


Chapter 2. 宣告
β01.微妙な進展


 

 微妙な進展

 

「いいか?命令は三つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ隙をついてぶっ潰せ。……あ……これじゃ四つか?」

「分かりました!」

 

新人教習では毎回告げている言葉……これで緊張が解れるかどうかは分からないが、何もないよりはマシだろう。

 

「私からは一つだけ。何があっても仲間は信じること。背中を預けろ、とまでは言わないけど、そこに仲間がいることだけは忘れないで。」

「はい!」

 

四人を同時に見るのは辛いから、という理由でこの任務に出るよう指示された神楽。さまになったもんだ。三年前はこいつも新人だったんだよなあ……

 

「さあて。そろそろ始めっか。神楽。任務説明頼めるか?」

「……タバコですか。」

「おう。」

 

いかにフェンリル本部であっても、神機使い不足は深刻。常に適合者を求めているのが実状だ。が……

 

「この任務の討伐対象はオウガテイルとナイトホロウが三体ずつ。オウガテイルは接近戦が得意、ナイトホロウは中遠距離しかできない。一見して楽な任務ではあるけど、こういう組み合わせのところに闇雲に飛び込むのはすごく危険だから、覚えておいて。」

「りょ、了解です。」

 

それよりも問題は、本部には新人の指導教官も不足していることのようだ。

神機使いの異動は別段変わったことではない。どこかの支部で人員が不足していれば、その時点で比較的余裕があるところから派遣することはよくある。とはいえ余裕のある支部などどこにもない。あくまで人員は譲り合いであり、有能な神機使いはどこの支部も離したがらず、動くのは中堅手前クラス……それでも本部からの誘いはほとんどの神機使いが受けるわけだが、そいつらは指導教官の経験がないことも多く、しかも本部自体がアラガミが少ない地域に設立されているとあっては……まあ、実地指導教官はなかなか育たないだろう。

 

「よっし。それじゃあ、作戦開始!」

 

   *

 

「……」

「どうだ?」

「……一応いるね。」

 

アリスの追跡、ジャヴァウォックへの警戒。その二つが一段落……と言うより、ひとまずの完了を迎え、それと同時に任務が更新された。それもジャヴァウォックに関係してはいるけど……

 

「場所は分かるか?」

「半径五キロ圏内をかけずり回る気があるなら教えるけど?」

「広いな……」

 

キュウビと仮登録されたアラガミ。ジャヴァウォックの出現の少し後に、一度だけ確認されたらしい。探ってみて初めて分かったけど……面白い偏食場だ。

 

「偵察班が見つけるのを待つ。それまでは待機だ。」

 

残留オラクルから判明していることとして、そのオラクル細胞が非常に純粋で原始的なものである、なんてものがあるとか何とか……

 

「……やっぱりさ、ツバキって変わってるよね。」

「そうか?」

「普通の人なら、私と神楽に行かせるんじゃない?たかが半径五キロだろとか言ってさ。」

「……お前達は人だ。奴隷でもアラガミでもない。」

 

……ほんと、変わってるよ。

 

「……キュウビのサンプル、今日送るんだっけ?」

「送ることが出来れば、今日だ。」

「何でも喰らうから?」

「うむ。偏食因子だろうと装甲壁だろうと時間さえかければ捕喰出来るらしい。向こうに着くまで保つかどうかだな。」

 

何だかんだ言って、榊はオラクル細胞の権威らしい。本部で研究する分が確保された途端、今度は極東に送ろうとし始めた。……というより、本部が行き詰まったみたいだけど。

 

「お前達が回収したときはどうだった?」

「かなり強いオラクル細胞だった、かな。何もせずに触れるほど簡単じゃなかった。」

 

多少なり保護しておかないと、こちらの手を捕喰されそうなレベル。あまりにも純粋だからこそ、何でも取り込もうとするんじゃないか、というのが私の素人なりの見解だ。

……神楽も同意見だったけど。

 

「正直、コアの形じゃないと向こうまで保たないと思う。あれは本当に何でも食べるだろうから。」

「ふむ……」

「何なら母さんに手伝ってくれるように頼んでみようか。私とか神楽よりも正確な位置が分かるはずだけど?」

「それほど急ぐ用でもないさ。というより、彼女に頼ると公式の説明が出来ん。」

「あー……そういえば。」

 

神楽とソーマは元々の登録情報から、私は榊とヨハネスの裏操作と、公式に神機使い?として認められているため、その行動には公的な説明を持たせられる。

ただ、母さんの場合はアラガミとして登録されているわけだ。たとえ人としての人格を残しているとしても、その行動はアラガミの行動として認識される。そういう諸々のことが、ツバキにとってはやりづらいところなんだろう。

 

「気長でいいさ。こちらに大きな被害が出ているわけでもないからな。」

 

ジャヴァウォックが出現した地点は、発電所の自爆から今までずっと隔絶されていた。……その中で独自の進化を遂げたアラガミがキュウビ、と結論付けられたわけだけど……それより何より……

 

「……暇。」

「言うな。」

 

   *

 

《むー……》

 

任務が終わる直前、作戦地域へアリスが接近していると連絡が入った。リンドウさんに新人を任せ、その対応に当たることになったわけなんだけど……

 

【どう?】

《そろそろ来る……かな。》

【そっか。】

《こっちから行く方がいいんじゃない?》

【うーん……一応殿だし……】

 

……新人達を失うわけにはいかない。それも、今回は事情がかなり特殊だ。

 

『ブラッド?』

『うむ。彼らはP63偏食因子を投与されている。ラケル博士がここを発つときに残していた適合者リストから選抜した者達なのだが……ここで実地訓練を積んだ後、フライアへ異動する予定でな。その……まあ、お守りを頼みたい。』

『お守り……』

『P63型はラケル博士が独自に研究していた。その分、我々には分からん部分もある。恥ずかしい話だが……何が起こるかも分からんのだ。場合によっては、彼らに拒絶反応が出ることも考えられる。』

『要するに、そうなった場合はアラガミ化の阻止、ないしは……ってことですか?』

『……嫌な仕事ではあるだろうが……よろしく頼む。』

 

昨日の昼間、本部長から伝えられたことが頭の中でよみがえる。……離れるわけにはいかない。

 

《お、来るよ。》

【……だね。】

 

こちらの攻撃も、向こうの手も届く距離。そこに彼女は転移してきた。悲しいことに、アラガミとしてのランクは私が上だ。……信用されてる、ってことなのかな?

 

《お久しぶりです。神楽さん。》

【いえ……あの、渚はいませんけど……】

《今日はあなたにお話が。》

 

話……いったい何だろうか?ジャヴァウォックのこと?彼女のこと?渚のこと?極東のこと?それとも、キュウビのこと?

……こうして考えると、いろいろ問題抱えちゃってるんだなあ……

 

《今から十数分後。さっき神楽さんが一緒にいた新人たちのアラガミ化が始まります。》

【えっ!?】

 

……予想外、とも言えないけど、それがなければいいと思っていたことでもあった。なぜそんなことが分かるのかと語気を荒げてしまいそうだけど、それに意味がないことに気付いている自分もいる。まだ人の部分がある渚ですら、若干の未来予知に似たことが出来る。それはつまり、この二人の間に本当に親子関係があり、かつアラガミ化の原因が同じであると仮定すれば……彼女にはさらに正確な予知が出来る、そういうことだ。

 

《……もし、今よりアラガミになりたくないと考えるのであれば、彼らを助けてはいけない。》

【……】

《あなたがまだ人でいたいなら助けないで。その口実なら私を使えばいいはずよ。》

【……】

 

ケイトさんを助けたとき、私の中で、人の部分が少しだけ消えた。P53型はとても安定していて、まともにしていれば侵喰も起こりにくいはず。

……そのP53型を取り込むだけで、私から人の部分が減った。

P63型はそれよりずっと不安定だ。それを取り込めばどうなるか。想像はつく。

 

【アラガミとして対処しろ、ってこと……ですよね。】

《……ごめんなさい。でもそうしないと……》

【構いません。】

《……それは、どちらが?》

【……私は、自分がアラガミになることを厭わない。……こっちです。】

 

……私には、誰かを助ける力がある。私が助けられなかった人達もいる。

ばからしいと自分でも思う程、その自負があった。

 

【一人でも助けられるなら、死んでも助けます。】

《……恋人もいるんでしょう?》

【……はい……夫です。】

《ある時、彼の暴走を止めたの。あなたをとても想っているのが分かったわ。子供も欲しいって考え……》

【無理……なんですよ。】

 

とくん、と……自分の言葉に悲しんだ。

 

【……彼と結ばれたときから、ずっと二人でそう話してきました。いつか私達が戦わなくてもいいようになったら、家族を増やしちゃおう、って。でも……いつだかに気付いたんです。私の体は、入ってきた彼のものを喰い尽くしていた……子供なんて、夢のまた夢だ、って……極東にいたときに診てもらったんですけど、私のオラクル細胞が強すぎて、残っていられないんだ、って……】

 

動悸が速くなって、呼吸も荒くなって。もう嫌だと思いながらもその言葉を紡ぐのをやめない……やめられない。

 

【彼が私を愛してくれていることはもちろん分かっています。彼がこういうことで私を嫌う人ではないことも知っています。……私も、彼を愛しています。でも……】

 

……ごめん。本当にごめん。そこに彼がいるわけでもないのに、心の中で泣きながら叫んだ。

 

「……私が私であるだけで、本当にそれだけで、他の人なら可能であったはずの彼の夢を一つ、潰しているんです。」

 

思わず口をついて出る、死にたくなるような現実。……私が、病的なまでに人を守らなきゃと思う理由でもあるのかな……

 

《……愛する人に先立たれることがどういうことか、あなたは知っていますよね。》

【っ!】

 

……気付いたときには、そこにアリスの姿はなかった。体の一部であるはずの神機が、嫌になるほど重い。

 

【行くよ。イザナミ。】

《神楽……》

【やらなくちゃ。……翼、制御お願いね。】

《……分かった。》




うん。本家関係ないのってかなり楽(いやあるでしょうが)

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