GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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タイトルで気付いた方もいらっしゃるかと思いますが、今回、初のブラッド極東混合回です。
極東側で出てくるのがソーマだけなのは…気にしない方向でどうぞ(--;)


血の運命

 

 血の運命

 

「……」

 

……初の単独戦闘。小型ばかりが集まっている地点を担当するとはいえ、その重圧はすさまじい。

アラガミの群の一部にフライアが発見されたらしく、十数体にも及ぶ数がこちらへ向かっていた。その討伐任務が出されたんだけど……フライアにいる神機使いを四カ所に分散させる、というなかなか斬新なもの……ジュリウスさん、ギルさんとナナさん、ロミオさん、そして私とエミールさんという分け方だ。

が、私とエミールさんが任された区域に接近する大型アラガミが発見され……

 

「エミールさん……遅いなあ……」

 

エミールさんがその対応、私が元々の区域を受け持つことに……

 

「結意さん。まもなくアラガミがそちらへたどり着きます。」

「は、はい……」

 

広域レーダーに数体のアラガミ反応が映し出された時、フランさんから通信が入った。緊張で体が強ばる。

 

「数は多いですが、全て小型種と思われます。危険と判断される場合には他の区域へこちらから救援要請をかけますので、落ち着いて対処してください。」

「……はい。」

 

気遣ってもらった……のだろうか?

 

「……これまでの戦績には全て目を通していますが、結意さんが苦戦する状況ではありません。怪我一つしないで帰ってこられると思います。」

 

いつもよりも少し優しげな口調で励ましてくれたフランさん。その声に若干の安心感を覚えつつ、徐々に近付いてきているアラガミの気配へ注意を向ける。

 

「御武運を。」

 

……何だか、胸がざわざわしている。単独戦闘だから……なのだろうか……

 

   *

 

「進路上にアラガミの群を捕捉しました。」

「迂回できそうか?」

「……厳しそうですね。極東支部で確認したときはこの辺の山岳地帯に分散してたんで。」

 

偏食場からすれば……その群以外にこのヘリを襲える距離にいるアラガミはいないようだ。山岳地帯の峠を縫う形で進んでいるだけあって、他の群との距離が開けているのだろう。

 

「……分かった。このまま進め。アラガミは何とかする。」

「お願いします。」

 

俺はともかく、後続のユノやサツキはさすがに疲れているはずだ。あまり長々と飛んでいるわけにもいかない。

 

「終わったら連絡する。適当なところで拾ってくれ。」

「分かりました。……では、ハッチ開放します。」

 

外壁の手すりに掴まりつつ周辺を確認すると、すでに数体のアラガミがこちらに気付きかけていた。今のところ耳が鋭いやつばかりだが……見つけられた場合、即座にヘリを落とされるだろう。

 

「行ってくる。」

 

   *

 

どれくらい経っただろう。かなり長い間戦っていたようでもあり、すぐに終わったようでもあり……まあいつもより息が上がっているんだから、きっと長めの戦闘だったんだろうなあ……

 

「あの、フランさん。他にこっちに来ているアラガミっていますか?」

「少々お待ちください。」

 

そこら中に散乱したアラガミの死骸を確認しつつ、結局何体倒したのかを数えてみる。中型種も大型種もいなかったけど、途中で裁ききれないくらいの数になったりもした。

……約、三十体。というより三十体以上。そこから先は数える余裕がなくなった。

 

「……エミールさんが大型種と交戦しつつそちらへ接近して……」

 

通信がブツリと途切れ、すぐ後に繋ぎ直される。

 

「接近中のアラガミは新型種の模様。交戦終了区域からそちらへ向かってもらいますので、回避に専念しつつ抑えてください。」

「新型……?」

 

聞いたとたんに体が強ばった。初めて遭遇することへの恐怖より、何かが沸々とわき上がって、そのせいで息苦しくなって……何が何だか分からないまま、私は神機を握る手に力を込めていた。

 

「うおおおお!なぜだ!なぜ神機が動かない!」

 

後ろの方から聞こえた声に振り向くと、白と赤の狼のようなアラガミに追われているエミールさんが視界に映った。……いつだかにジュリウスさんやギルさんと討伐に行ったガルムと似ているけど……

 

「ごふう!」

 

前足で弾き飛ばされたエミールさん。倒れた彼には目もくれず、そのアラガミは私を見据えていた。

 

《ーーー》

「……っ……」

 

キーンと……耳鳴りのような音が頭に響く。息が荒くなっているし、軽い酸欠でも起こしたのだろうか。

不思議と、アラガミの動きがスローに見えた。神機をどう払えば、相手がどう動くのかが何となく予想できる。

……違う。アラガミが、私の思い通りに動いてるんだ。

 

「はぁぁあああああっ!」

 

斜め下からアラガミの頭を切り上げ、そのまま宙へと振り抜いた。

……同時に、刀身を包み込むように黒いオラクルが発生して、通常の三倍程度の刃が形成されていく。奥へ奥へと突き進むそれの先端からさらに十本近くの針状のオラクルが追撃し、貫いた。

 

「ぅ……」

 

神機を降ろした途端、大きく視界が揺らぎ始め……痛みに悶えるかのようにのたうち回る敵を確認しておく余裕もないほどの疲労感に襲われる。

……これ以上、動けそうもない。

視界の端で、私を見据えながら起き上がるアラガミの姿がぼんやりと蠢いたのを最後に、私の意識はプツリと途切れていた。

 

   *

 

ヘリから降りて五分、といったところか。ざっと十二、三体は斬ったはず……近場に気配もない。ヘリが来たとしても何ら問題はないだろう。

 

「俺だ。聞こえるか?」

「感度良好。何かありましたか?」

 

通信機の向こうから聞こえるパイロットの声。向こうも順調に飛べているようだ。

 

「こっちは粗方片付いたが……ヘリのレーダーに映ってる奴はいるか?」

「特に何も。ただ……フライアっからはオープンチャンネルで救援要請が出てますね。」

「救援……?」

 

フライアからの救援……向こうの神機使いが戦闘中ということか。

 

「ソーマさんがいる地点から三キロ北西へ移動した辺りで戦闘が行われているようです。向かえますか?」

「緊急か?」

「っぽいですね。」

 

とはいえ、携帯式の通信機では拾えない距離からの要請だ。急がなければ間に合わないだろう。

 

「……分かった。そっちはフライアに向かっていてくれ。進路上はクリアのはずだ。」

「了解。」

 

まあ、何とかする以外にないな。

 

   *

 

「……血の力……これは……鼓か?」

 

予想していたよりもかなり早い。博士の言う女王たる種子……その素質ということだろうか?

 

「ジュリウス隊長。結意さんが新型種と交戦中です。向かえますか?」

「新型?分かった。位置を頼む。」

「了解。位置情報、送ります。」

 

この辺りでも新型種が出るのか、と半ばため息をつきつつ鼓へと通信を入れる。返事は出来ないかもしれないが……

 

「鼓。無事か?」

「……お、あんたか。久しぶりじゃん。」

「!」

 

声は確かに鼓のもの……だが口調は別人のものだ。考え違いでなければ、以前庭園で会った侵入者がこの話し方をしていたはず……

 

「貴様……なぜそこにいる。」

「まあそこは自分で考えなって。」

「とぼけるな!」

 

怒号に返されたのは小さな笑い声のみ。それが止むと同時に、突然真面目な声色で語り始めた。

 

「そんなことはさておき、だ。早く来な。リミットは……十分ってとこだな。」

「……何?」

「こいつがアラガミに堕ちるまでの時間さ。俺が抑えておけんのはギリ十分。それ以上経ったら、俺はこいつに呑まれる。そうなりゃもう何にも出来ねえんだよなあ……リンクさえありゃいいんだが……」

「おい!何を言っている!」

「じゃ、頑張れ。あとは知らん。」

 

半分は焦り、半分は怒りで、地面を蹴り出していた。

 

   *

 

……とはいったものの……もうこいつ以外器がねえんだよなあ……

 

《おい。聞こえっか?返事してみろ。》

【……】

 

やっぱ気付かねえよな。偏食場と力とってなると……あー……まずい。十分ないんじゃねえのかこれ……ラケルのやつもここじゃ対応できるはずがない、と。

……まあ暴走に関しては予想してたんだが……

 

《とりあえずそいつ戻せって。誰か来ても助けらんねえぞ。》

【……】

《……だめか。やべえな……》

 

さすがに俺の本体を作るとは考えてなかったな……んだっけ?ジャヴァウォックだっけ?ラケルがそう言ってたはず……サイズが小さいのが救いってとこか。

……まあ、小さくなったっつーか……進化したのかもしんねえな。前より獣っぽさが増してやがる。それともあれか?もっと前の形に戻ったのか?

というのはおいておくとして……ジュリウスは無理だろ?他の奴なんざもっと無理だろ?んじゃああれに任せるか。

 

   *

 

「救援要請地点……こっから北に300。それで合ってるか?」

「そこです。どうですか?」

 

どうも何もない、というのが正直な感想だ。

周囲には中型種がたむろし、廃ビルの上には最近発見されたガルムとか言うアラガミに似た、赤い布らしきものを持つ白い個体が鎮座していた。

それが見据え、中型種が一様に襲いかかっているある一点。そこからは黒いオラクルで形作られた狐のような何かが蠢いて……いや。周りのアラガミを喰らっている。地面に薄い膜のようなオラクルを広げ、それら全てで捕喰しているようだ。

……そのオラクルの中央部で、捕喰すらされずに横たわっている神機使いらしき影が見えた。

 

「……何とかなるだろ。先に飛べるところまで行ってくれ。終わったら向かう。」

「了解。頼みます。」

 

……にしてもあの神機使い、ジャヴァウォックと偏食場が少しばかり似てやがるな。あれみてえな気味の悪さは感じねえが……

 

「おー。やっと来たか。」

 

斜め上からの声。見れば、さっきまでは気配すらなかった瓦礫の上に一人の少年が座っていた。歳は……大方14か15……とは言っても、口調や外見に不相応な落ち着きも垣間見える。

……まあどうせ……

 

「……一般人が入ってくるような場所じゃねえはずだが。」

「おいおい。分かってるだろ?俺は……」

「フン。俺の前に好き好んで出て来るアラガミがいるか。」

「やっぱ気付いてんじゃん。回りくどいなあ。」

 

偏食場がある時点でそうだ、と言いたいところだが、普通のアラガミにしては微弱なように思える。ちょうどコアを摘出した直後のアラガミの死骸と同程度……どういうことだ?

 

「ま、いいや。とりあえずさあ……あれ何とかしてくれない?」

「……」

「一発ぶち込めば静かになると思うからさ。いけるだろ?」

「……人にもの頼むときの口調じゃねえな。何様のつもりだ?」

 

正直なところ、個人的にこいつが気に食わない。アラガミだからだのという単純な話ではなく、こいつの存在自体が気に食わないと……なぜかそう感じている。

理性的にではなく、むしろ本能的に、だ。

 

「……人に、ねえ。」

「あ?」

「俺はアラガミさ。半分だけでも、あんたと同じだ。」

「……チッ……」

 

これ以上、何か言うのもばからしいな。

 

「……少し離れろ。」

「お、んじゃ頼むよ。」

 

……不本意だが、あの神機使いを放置することも出来ない。オラクル濃度からして……あいつにダメージは出さずにいける。

この腕を使うのも、久しぶりだな。




さて。ここで本日の投稿が終了となりますので…GE2RBの扱いについてご説明します。
まず、基本的にはRBのストーリーを含める形で進行いたします。公式サイトやブログを見る限り、新キャラ達はかなり設定が深いようですし…これから登場しないとしても、何らかの形で大きな影響を及ぼしていくと考えられるためです。
それに伴い、これまでよりも大きな原作改変、さらには一部の設定変更もあるかと。それらが苦手な方には申し訳ないのですが、ご理解ください。
さらに、2のみでプロットを練っていただけあって、RBの追加は必然的にシナリオの組み換えを迫るものとなります。よって、(これまでもそうでしたが…)以降の投稿ペースはかなりの亀更新になることが予想されます。なるべく早く出そうとは思うのですが…いかんせんリアルも多忙となりますので…
とりあえず、現時点での報告は以上です。何かしら他に決定した際には、本編ではなく活動報告で告知する場合もあるかと思います。もしよろしければそちらもご確認ください。

それでは、また次回お会いしましょう。

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