GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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お久しぶりです。
いつのまにやら多くの人に読んで頂いていたようで…いやもうこんな駄作に付き合ってもらっちゃって…
えー、とりあえず本日は五個ほど一気に載せますので、よろしくお願いします。


運命(さだめ)のヒト

運命(さだめ)のヒト

 

「っーーー!」

 

最後まで続いた回想から解放され、とび起きる。……脂汗がひどい。荒く息をつきながら、恐ろしいほどに速くなった動機を落ち着かせようとするが……無理だ。

今日が三回目の部屋での目覚め。……はっきり言って、一度も心地よく起きた試しがない。

 

「あ、れ?」

 

着替えている……いつものネグリジェに。

 

「まあ……いいや……」

 

それよりも汗を流そう。そうすれば多少は落ち着くはずだ。

 

   *

 

浴槽に水をためるという前までそうは出来なかった贅沢な入り方を終えてから着替えを済まし、日課である家族の写真への挨拶もして、食事も済んだしそろそろエントランスへ行こうか、と考えていたときに部屋のインターホンが押された。

 

「サクヤよ。起きてる?」

 

来客があるとは思っていなかった。まあ片付いてるから良い。

 

「はい。あ、どうぞ、入っちゃってください。」

 

ドアのロックを解除しつつ答える。サクヤさんは昨日と同じ服装だった。……同じものを三着で着回している私の言うことではないけど。

 

「もう大丈夫?いきなり倒れたからとりあえず部屋に運んで私が着替えさせて寝かせたんだけど……

汗だくで息切らしてたし……」

 

なるほど。着替えていたのはそういうことか。鍵は教官にでも開けてもらったのだろう。

 

「まあ……何とか大丈夫です……」

 

汗を流して多少は落ち着いた。今日任務に行けと言われても大丈夫なくらいには。

 

「そう。よかった。」

 

安心したような笑み。母を思い出す。

 

「今日はソーマとエリックについて任務に行ってほしいってリンドウが言ってたわ。当然行ければだけど、どう?」

 

聞かれるまでもない。元よりそのつもりだ。

 

「行きます。」

 

   *

 

神機を銃形態にしつつ歩く作戦地は旧工場跡。有害物質が流れる汚染水の川と、同じく有害なガスが壊れた煙突から絶えず立ち上るその地には、すでに二人の神機使いがいた。その中の一人がこちらに気が付き近寄ってくる。

 

「ああ、君が例の新人さんかい?僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ。君もせいぜい僕を見習って、人類のため華麗に戦って……」

 

そのくどくどと長ったらしい歌い文句は、もう一人の神機使いの叫びによってかき消される。

 

「エリック!上だ!」

 

反射的に彼の上を見る。そこには大きく口を開けたオウガテイルが迫っていた。

 

「え?わああ!」

 

瞬間、頭の中を駆け巡る思考。

 

『かぐ、ら……逃げ……』

 

頭の中に響くあの日の声。それは目の前の現実と重なって……

意識が途切れる。それと同時に聞いたのは自分の悲鳴。

 

「いやあああああああ!」

 

   *

 

熱い。それだけを感じて目が覚める。

……目に入るのは異常な光景。燃え盛る業火のあいだから見える、未だに残ったパイプラインは全て折れたり無数の穴が空いていたり、はたまた溶けている。地表を覆う鉄板もどろどろになっている部分や逆に集まって山のように固まったところとで分かれている。そしてそれ以上に、どこもかしこも赤いのだ。真新しい鮮血で。自分さえも。

 

「起きたか?」

「え……?」

 

真横から声が聞こえた。そちらを向くと、さっき見たもう一人の神機使い。

 

「俺はソーマ。別に覚えなくていい。とにかく、死にたくなければ俺には近づくな。」

「え……え?」

 

訳が分からない。覚えなくていい?近づくな?初対面でそこまで言ってしまうのか?……人として、生きているのに?

彼が言い終わるのとほぼ同時にエリックさんがやってきた。

 

「おや、目が覚めたようだね。さて……まずは礼を言わなくてはならないな。ありがとう。助けてくれたことを認めようじゃないか。」

 

……?

 

「助けた?私が?」

 

そう聞くとエリックさんはとても驚いたような表情をした。

 

「まさか……覚えていないのか?」

「と言われましても……」

 

唖然とするエリックさん。そんな彼の代わり、とでも言わんばかりのタイミングでソーマさんが口を開いた。

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_____

 

   *

 

いつも通りに始まったあいつの自己紹介。それに半ば呆れるような表情で対応する新入り。腕がいいらしいが、そんなものはどうでもいい。問題は使えるかどうかだということを、これまでの六年間で知っている。その問題をクリアできずに死んだ奴らも。その問題をクリアできずに、目の前の神機使い達を助けられなかった自分も。

そして、あいつらの上にアラガミを見つけた。

 

「エリック!上だ!」

 

どちらも反射的に上を見る。

 

「え?わああ!」

 

ただ叫ぶエリック。俺を僅かながらも認めるあいつの目の前にアラガミが迫った時。

 

「いやあああああああ!」

 

新入りが絶叫した。

 

「っ!?」

 

その手に持ったスナイパーが異常な連射力を持って弾丸を撃ち続ける。全てがオウガテイルに着弾し、塵と化した。

 

「なっ……」

 

そういう呟き以外がでてこねえ。

音を聞きつけてほかのアラガミが集まって来やがる。それに反応してさらにパニックに陥った新入り。その神機が再度弾を撃ち始める。

 

「いやあ!いやあああぁああぁぁ!」

 

その弾はすぐに尽きた。当たり前だ。一匹に何発も馬鹿みてえに撃っている。保つはずがない。

 

「こないで!こないでええ!」

 

本能のように神機を刀に変え、振り回しながらアラガミの群の中に突進していく。その切っ先はどこへとも知らず、時にパイプラインを切り刻み、時に床の鉄板を切り裂いた。

結果、一人で全目標をつぶし、爆発を起こしながら燃える中でぶっ倒れた。

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   *

 

「……私が……そんな……?」

「嘘をつく理由がどこにある。」

 

自分がやったなどと言われても、その間の記憶もなければ実感もないのだ。理解できるはずもない。そもそもその間何を考えていたのかすらも覚えていない。

 

「……話は終わりだ。」

 

それだけ告げて去っていくソーマさん。……あれ?なんかあの人私と同じ感じが……いや、そんなは

ずはない。私は名実共に化け物なのだから。でもやっぱり同じような……って堂々巡りになってる。

そんな思想に埋めつくされそうになったところにエリックさんから声がかかる。

 

「気にしないでいい。彼はほとんどの神機使いに対してあんな風に接するからね。」

「そうなんですか?」

 

驚いて聞き返す。

 

「ああ……まともに話しているのは、彼と同じ第一部隊の古株たちと……」

 

エリックさんはいったん言葉を切った。何かあったのかと考えていたのだが……その不安は無駄なものだった。

 

「このあまりに華麗すぎる僕くらいなのだからね。」

 

……私の気を晴らすとかいう目的なんてなくっていいから、せめて心の底からそう思っているというのだけは勘弁してほしい。

 

「さあ、もうそろそろ迎えのヘリが来るはずだ。立てるかい?」

「あ、はい。」

 

やはり……考えないようにしよう。

そう心に決めてから、ソーマさんを追った。

 

   *

 

そのころソーマはヘリの着陸地点へと歩いていた。

 

「……」

 

エリックが殺されそうになって我を失った。フン。そこまではいい。だが……あの目は何だ?

瞳孔は縦に細長くなり、元々黒かった瞳は目映いとすら言えるほどの明るさを持って赤く光った……

 

「……くそっ!」

 

そして何よりも……自分と同じだった。人を拒絶し、信用せず、自らを化け物としているモノの目。作られた表情ばかりが浮かぶ顔。そして五感の全てで周囲を警戒していた。アラガミを、ではなく人間を。

……後ろから足音がした。

 

「っ!」

 

反射的に神機を向ける。

 

「きゃっ!」

「おっと。僕だよ僕。」

 

こいつらか……

 

「……声をかけてから近付けっつってるだろうが」

「ごめんごめん。」

 

チッ……相変わらずと言えば聞こえはいいが……はっきり言って学習しないっつった方が正しいな。

 

「……びっくりした……」

 

エリックの横には例の新人がいた。

 

「お前……名前は。」

 

自分でもなぜ聞いたのかがわからなかった。

 

「えっと、神崎神楽です。先日第一部隊に配属となりました。以後よろしくお願いします。」

 

神崎神楽……

確実に俺と同じものを持っている、もう一人の化け物か……




…言い忘れていたんですが…この小説はある程度の予備知識があることを前提として書いてしまっています。
もしも、訳わかんねえぞ!、ってことがありましたらいくらでも感想から聞いてください。

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