GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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…亀ですね…これもう間違いなく亀ですね…
あ、お久しぶりでございます。マルチに潜って暴れまわる日々を送っております。
…いえこっちもちゃんと書いているんですよ?ただ単にPC開かなかったから投稿してなかっただけで…
…いやもうほんとすみませんでした。
原稿はGE2の第五話まで入ってるっていうのに、こっちはまだコミック版も終わってないって…
…えと。すみませんでした(二回目)


ロスト

 

ロスト

 

翌日。ひとまずシユウ種の大半を撃破できたらしく、周辺にあれの反応はなくなっていた。

 

「……大丈夫ですか?」

「そう見えるか?」

「……いいえ……」

 

……頭の中で割れ鐘をぶっ叩いているかのような頭痛に見舞われているのだが……神楽が全力を出す度に疲れ果てていたのはこのせいか……

 

「今日は那智に呼ばれてんだろ?」

「はい。例の援助とかネモス・ディアナからのデータ提供とかの話し合いをしたいそうです。」

「……あの堅物がな……」

 

親父が死んだ。その事実は、やはり大きかったのだろう……

 

「……神楽に連絡してくる。」

「あ、はい。じゃあ私もそろそろ……」

 

……静かな家。昨日まで八雲がいたとは思えないほど、妙にしっくりとくる静寂だ。

 

「……どーも。」

「ああ。」

 

家を出ると同時にサツキに声をかけられた。不機嫌そうな表情でトラックのドアに背を預けている。

 

「……何かあったのか?」

「何かも何も……総統がアリサさんを呼んでるんでしょ?これまでなかったことだから特ダネになるかと思って行政府に潜入してたら……まあ素晴らしすぎて本当に泣けるほど厳戒態勢でして。見事にほっぽりだされましたよ。ったく私を誰だと……」

 

……こいつもこいつでどうしようもねえ。分かってはいたが再認識した。

 

「で、通信機でも使います?」

「ああ。いいか?」

「どーぞどーぞ。その間次の潜入方法を考えますので。」

「……」

 

放っておこう。下手に何か言うとこっちが危険だ。

とりあえずサツキから手渡された通信機を操作し、神楽の端末へとかける。……向こうの時間は朝六時。いつもなら起きている時間だ。特に問題はないだろう。

 

「おう。誰だ?」

「……は?」

 

……答えたのはリンドウのようだ。番号は間違えていないと思うんだが……

 

「あーソーマか。神楽ならまだ寝てるぞ。」

「寝てる?その前に何でてめえがあいつの端末を持ってんだ?」

「……ま、あいつが全力出し過ぎただけだ。」

「……」

 

要は疲れ果ててぶっ倒れているわけか……まあそれなら大丈夫だろう。心配ではあるが、最低でも大怪我をしたって訳じゃないはずだ。

 

「何かあったのか?こっちはそろそろアナグラに帰るんだが……」

「まあかなりいろいろとなあ……込み入った話になるから神楽に聞いた方が良いぞ。後でかけ直させるか?」

「頼む。」

 

……こっちのことくらいは言っても良いかもしれないが、俺や渚の状況を考えると神楽相手に話した方が無難だろう。いくらリンドウがベテランとは言え、アラガミとしての部分には当然疎い。

 

「他なんかあるか?ちょいとばかりこっちは大騒ぎなんだが……」

「いや。悪かったな。神楽に無理するなって伝えておいてくれ。」

「おう。じゃあな。」

 

大騒ぎ……しかも神楽が全力でやったということは……向こうも向こうでかなりの戦闘があったのだろう。

……こっちはまだ続きそうだが……

 

「……ったく……」

 

現在、午後二時。寝室に引きこもっているやつが一名。

……泣き疲れて寝た後、全く起きる気配がないが……そろそろ起こしておかねえと帰るときが面倒になる。

問題は……すでに三回起こしに行っている上、その三回とも布団にしがみついて動かなかったことだ。寝たい、ではなく……外に出たくない、と言いながら。

 

   *

 

「よう。」

「……リンドウさん……」

 

……一晩中見守っていたのだろう。ベッドの横に座るギルの顔には、明らかな疲労の色があった。

 

「あんまり根を詰めない方がいいぞ?」

「はい……」

 

攻撃を受け動けなくなったケイト。それを見て、即座にカリギュラを引き付けつつ離れたらしい。俺が合流した頃には劣性ながら戦闘中だった。

 

「ハルオミは?」

「任務記録を作ってます。……俺が書かなきゃだめだろ、って言ってました。」

「そうか……」

 

一番辛いのはあいつだろうに……

 

「……んで、どうだって?」

 

神楽に発見されたケイト。ギルの話ではアラガミ化が始まっていたそうだが、ハルオミがぶっ倒れた神楽と共に回収、搬送したときには、アラガミ化の形跡は全くなかったらしい。だが……

 

「アラガミ化はありません。腕輪も修復しましたから復帰はすぐにでも……起きればすぐに復帰できるそうです。」

 

……今の彼女の状態はいわゆる昏睡状態だ。アラガミ化のショックが原因だろう。

 

「……例のカリギュラ……他の地域に移動したそうですね。」

「らしいな。……ハルオミのやつ、そこへの異動願い出したんだって?」

「はい……」

 

追うんだろう。婚約者の神機が刺さった、そのアラガミを。

 

「お前はどうすんだ?」

 

ピクリと体を強ばらせたギル。……思うところはあるらしい。

 

「……フェンリル極致化技術開発局って知ってますか?」

「あー……最近発足準備に入った神機使い部隊だったっけか?偏食因子が違うとか何とか……」

「その部隊から誘いが来てるんです。その偏食因子に適合確率があるらしくって。」

 

偏食因子の研究はまだまだ続いている。その一環として発見されたのが、そのフェンリル極致化うんたらかんたらの偏食因子だそうだ。アラガミや神機、ひいては神機使いの研究のために設立された部署であり、その新しい偏食因子を投与された神機使い部隊が所属するとのこと。各地を転々としつつ稼働する予定らしい。

 

「……そこに行こうかと思ってます。」

「……」

「もちろんこの支部に他の神機使いが来てからにはなると思いますけど……俺だって、あいつと戦いたいんです。」

「……下手すりゃ接触も出来ないまま終わるぞ。それでもか?」

 

立ち上がり、俺の目をまっすぐに見た。……決意は固いらしい。

 

「そこで多少なり強くなれれば、ケイトさんみたいな人を少しは減らせますから。」

 

……彼と同じように考えていたとして、実際にそれを口に出せるだろうか。俺は……間違いなく無理だ。

それだけに、俺には止められないことを悟った。少しその部隊の様子を見てからにしろ。フェンリルは綺麗な組織じゃない。言いたいことはあるが、おそらく彼にそう言えるのは……彼と同じことを言える奴だけだろう。

……無理するな、と心の中で彼に言いつつ、外に出たときだった。

 

「なあ聞いたか?」

「何を?」

 

事務員らしき二人の会話が聞こえた。支部内での軽い噂話でもしているんだろうか。

 

「あのギルバートって神機使いさ、ケイトさんのこと見捨てて逃げたらしいぞ。」

「だから今昏睡状態になってんの?」

「かもな……」

 

……噂話……か……

 

   *

 

家に戻った俺を、何でもないかのように渚が迎えた。

 

「おはよ。」

「……いつ起きたんだ?」

「さっき。」

 

さっきまでの三回は何だったのか……眠そうな様子も、気怠そうな雰囲気もないのが腹立たしい。

 

「アリサは?」

「那智に呼ばれてる。今頃ああだこうだと面倒な話でもしてんだろ。」

「ふうん。」

 

が、いつもと変わらない中にもどこか思い詰めた様子が感じられた。別に言動や行動にそれが現れているわけではないが。

 

「で、今日はどうするの?」

「もうしばらくしたらコウタが来る。諸々が片付けば、後は帰るだけだ。」

 

昨日のことはまだ理解しきっていない。あまりにも情報が少なすぎる。それでもこいつにとっては、かなり重要な意味を持つ何かとして認識されるものなんだろう。

 

「……私は帰らない。」

「……あ?」

 

突然妙なことを言い出した渚。……それも止めても聞かないときの表情で。

 

「……あのアラガミが欧州に飛んでったみたいでさ。……それを追いたいんだ。」

「神楽達と合流するのか?」

「……たぶん。神楽達が探してるのも、きっと母さんだから。」

 

……あれが自身の母だ、ということだけは確信しているのかもしれない。過去を思い出せないまでも、直感でそう判断したのか……またはそれ以外の理由か。何にしてもここまで決意を固めているのであれば、俺には止める理由がない。

 

「……コウタに連絡しておけ。ヘリは二台で来いってな。」

「……良いの?」

「止めてほしいならいくらでも止めてやるが?」

 

良いと言われないと思っていたのか完全に面食らった様子の渚を見て少し面白くなる。こいつでもこういう時はあるんだな、と……若干の驚きを隠せなかったが。

 

「……ごめん。ありがとう。」

「気にするな。」

 

……本当は、まだまだ見た目相応の少女なんだろう。どこかで無理をして、どこかで取り繕うしかない状況に置かれ続けただけの……

 

「何かあったら連絡しろ。こっちでも例のアラガミの観測は続ける。」

「うん。お願い。」

 

……ただただ孤独でいようとした過去の自分に、どうしても彼女が重なった。

 

   *

 

「……ここは……」

「黒蛛病患者の病棟だ。赤い雨に濡れる、または感染者に触れることで感染する、若干の潜伏期間を持った不治の病だというところまでは分かっている。」

 

力なく様々な機器に繋がれてベッドに寝転がる十数名の患者。歳や性別はバラバラだけど、腕や足に蜘蛛のような形の痣が浮かんでいることだけは共通している。

 

「あの痣は?」

「黒蛛病特有の症状の一つだ。末期になり、あれが体のあちらこちらに浮かぶと……もう何をしても助からない。対処療法もほとんど効果がなくなる。」

「じゃあここにいる人たちは……」

「……あと一月以内に治療法が見つかれば……まあ、何度そう思ったか分からないが。」

 

まだアナグラには降っていない赤い雨。私達が知らないそれが、ここではずっと猛威を奮っている。

……被害地域が広がるのは時間の問題だろう。

 

「……君達への対価は、ここの患者達や病死者の記録、ネモス・ディアナそのものや赤い雨に関するデータの提供。さらに余っている土地を任意で提供する。それで構わないな?」

「もちろんです。……でも、本当に対価なんて……」

「……恩も返させてはくれないのか?」

「あ、いえ……そういう訳じゃ……」

 

……やられたらやり返す。そんなもの、続けていたって意味がないとは思わないか?……初対面の時は思いっきりやり返しそうな雰囲気で接してきていたのに、今日は会った瞬間にそう言い出した那智さん。

思うところがあったのかはたまたユノさんに平手打ちでもくらったのか……ほほに真っ赤な手の跡をつけた彼は、すでに前の彼とは違っていた。

 

「……ただし。」

「はい。」

 

……出来ることから、出来たようだ。

 

「シックザールが間違っていると判断したときは、俺は迷いなくお前達に牙を剥くつもりだ。……分かっているだろうな?」

 

……あのロボット……神機兵が、このネモス・ディアナへアラガミを誘導していた。それは、昨日の戦闘後に外をかけ回ったソーマが、アラガミに襲われて乗員が全滅していたトラックの中から見つけた事実だ。

 

「そのときは是非呼んでください。お手伝いします。」

 

手を差し出しつつはっきりと答えた。

ソーマと私と渚と……たぶん神楽さんやリンドウさん、コウタもこっちにつくだろう。フェンリルが本気になっても勝てないはずだ。

 

「……そういうことをそういう顔で言わないでくれないか?気が抜ける。」

「……すみません……」

 

……どうやら満面の笑みでも浮かべていたらしい。さすがにそんな表情で言うことではなかった。

 

「……あの……それで、八雲さんは……」

「彼の自宅の横の森だ。そこの慰霊碑に埋葬された。アラガミに襲われての死亡だからな。」

「……すみません……」

 

二度目の謝罪。今度は恥じらいではなく、純粋に八雲さんを守れなかったことへの罪悪感からだ。

 

「……謝らなくていい。どちらにしろ、彼はもう長くなかった。」

「えっ?」

「遺体から蜘蛛型の痣が発見された。アラガミが来なかったとしても……保って数週間。すでに明日をも知れぬ身だったようだ。」

「……」

 

こちらに背を向けたまま歩き出した那智さん。表情を伺うことは出来ないけど、口調は淡々としていた。まるで感情を込めるのを恐れるかのように。

 

「まだ……恨んでいるんですか?」

「……どうだろうな……」

 

足を止め、数秒間黙った後……

 

「……まあ、悪い親父ではなかったことくらいは認めている。」

 

振り向いたその顔には、少しだけ笑みが浮かんでいた。




…ソーマと那智さんがどうしても被る…うーん…だいたいあの二人ってさりげなく共通点が…これは富Pの陰謀かな?
あ、コミック版のストーリーは次回で終了。その後に人物紹介を投稿したいと思います。

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