GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

70 / 150
…えと…その…
た、大変長らくお待たせいたしまひた!
…噛んだ…
ま、まあ…何はともあれコミック版のストーリーに入ります。と言っても…
アーサソールの設定改変のせいであの二人は出せないわ伏線の関係やら何やらで神楽たちも書かなきゃいけないわ…
はあ…長くなりそうです…


Broken "The second break"
新しい神話の始まり


新しい神話の始まり

 

「……い。」

 

肌に触れる布団の感触の他に、頬から伝わったごく小さな圧迫感。それが誰かの指によるものであることに気付くのに、そう時間はかからなかった。

 

「おい。神楽。そろそろ起きろ。」

「んみゅ……あ、ソーマ……おはよ……」

 

重たい瞼をこじ開け、寝転がったまま彼を見る。時刻は朝の八時。いつもならとっくに起きて朝食まで済ませている時間なんだけど……

 

「さすがに疲れてたか?」

「……そりゃまあ……」

 

昨日寝付けたのは……今から三時間ほど前だろうか。あちらこちらでの救援要請やアラガミの増援。最近のアラガミの増加を物語るかのような忙しさだったことくらいしか覚えていないほど大変だった。同じくかなり無理をしていた(いやまあ私がさせたようなものなんだけど……)イザナミも、今は動いている様子がない。

……西暦、2073年。あれから二年の月日を経ても尚、私達は戦っている。人を守るって言いながら、守れなかった人を悼む暇もなく。

 

「おはよう。」

 

家族の写真に向かっても挨拶を済ませる。……正直もっと寝ていたいのだが、今日はそうもいかない。

 

「親父に呼ばれてんだろ?」

「うん。概要はもう説明してもらったけどね。」

 

運悪くお義父さん……支部長(半年前にまた二人が入れ替わった。誰も文句は言わない……っていうより、またか、って思ってたみたい)から呼ばれているのだ。理由は若干特殊な任務の説明。特務と考えていいだろう。

 

「極東各地を回ってもらう、とか何とか……アラガミの調査が目的なんだって。」

「あいつがやりそうなことだな。」

「ちなみに発案者は博士なのでした。」

「……あの二人が、って言い直した方がいいか?」

「うん。」

 

少し前から同じ部屋になった彼。ここ最近の極東支部所属神機使いの増加の煽りを食う形ではあるんだけど……実質、私達からの要望のようなものだった。通常ならば受理されない部屋替えが命令として降りてきたわけだし。

……腕輪なしで纏まっているっていうのも乙なものだって思わないかい?なんて言ってきた博士に対しては……一瞬殺意を覚えたけど。

 

「ソーマも呼ばれてるんだっけ?」

「俺は別件だ。あいつらも同じもんをやらされるってのは聞いたが……」

「まだ詳細不明?」

「ああ。そんなところだ。」

 

その煽りは、一週間ほど前に第一部隊にも広がった。

 

「はあ……今日からは独立部隊かあ……」

 

来月から前線に出る新人二人の第一部隊配属が決定した、というのが主な原因。もともと人数が多かっただけあって、ツバキさんやお義父さん、榊博士が話し合った末、第一部隊から別部隊を作成することになったらしい。

ちなみに、その新人二人の内一人はエリナちゃんなのだ。もう一人はエリックさんの旧友だとか。

戦闘指導教官はコウタとエリックさん。……三人が話し始めるといろいろ止まらなくって困る。コウタの感想だ。

 

「独立部隊っつっても、別にやることはそこまで変わんねえだろ。……あの二人の直轄になるくらいか。」

「だといいんだけど……」

 

ひとまずは私とリンドウさんが先行して第一部隊から離脱。来月にはソーマとアリサも同じ措置を採られるそうだ。渚に関しては自由意志、とのこと。サクヤさんが産休に入ったし……現状、確実に残るのはコウタだけになる。

しかもソーマは研究者にもなったから……さてどうなることやら、って感じだ。

 

「あ、そういえば新しい制服ってもう届いたの?」

 

その独立部隊であることを示すため制服を新調。私とソーマの分は桐生さんに織ってもらったそうだ。おかげで貯金が飛ぶこと飛ぶこと……

 

「昨日お前が帰ってくる前にな。」

 

答えながら部屋の奥からケースを取り出してきた。いつも服が入っているものよりも少し大きめだ。

 

「こっちがお前のやつだ。」

 

これまで着てきた服と大差ないものが渡される。背の部分についたエンブレムにオリーブの葉が象られているのが目に新しい。

とりあえずその場で袖を通す。着替えを別の部屋で行うような間柄でもない。

 

「……ちょっと大きいかな?変じゃない?」

「大丈夫だ。」

 

返答を聞きつつ、彼からコーヒーを受け取る。

……そうそう。実はコーヒーに関しては彼と気が合わない、というのを、この同棲生活が始まってすぐに発見した。

私の趣味が移ったのか、いつの間にかコーヒーをミルで淹れていたソーマ。その彼が淹れたコーヒーを飲んだときに気が付いた。

……彼はどうやら熱めのアメリカンコーヒーが好きらしい、と。ちなみに私が好きなのは、少しだけぬるめのエスプレッソである。

が、私のコーヒーに関しての拘りはそこで引けるようなレベルではない。ソーマもソーマでそういうところはなぜか頑固だ。

結果……

 

「……にしても、あのセットが二つも並んでるって……」

「仕方ねえだろ。それとも、あの騒ぎをもう一回繰り広げてみるか?」

「……それはパス。」

 

……ミルといい豆の瓶といい……コーヒーに関する何もかもが二つずつカウンターの上に置かれている。この間来たアリサが面食らっていたが……まあ、この生活の中ではすでに欠かせない措置の一つだ。シャワーの時間をずらす必要もない私達だが、ここだけはどちらも譲らなかったのだから。

なんてことを考えていると、彼の端末が短く鳴った。非緊急時のコール音だ。

 

「時間?」

「ああ。」

 

この任務が始まれば、しばらくはここを離れることになる。ソーマも後で私の方へ合流するとはいえ一ヶ月は離れ離れだ。

 

「……」

「どうかしたか?」

 

すっと近付いて、軽く唇を重ねた。今ではかなり頻繁に行うことだけど……こういう時は、何か違った意味を持つように思う。

 

「行ってらっしゃい。」

「……ああ。行ってくる。」

 

……この二時間後のヘリの中……リンドウさんが昔同じことをしていたと聞いてひっくり返り、それが俗に死亡フラグというものであると聞いてすごく不安になって、さらにその不安を払拭しようとした直後にヘリの真下に来たアラガミをメッタ切りにしたというのは……全て別の話だ。うん。全部。

 

   *

 

「でさっ!画面越しにあいつが言ってくれるわけだよ!」

「……お兄ちゃんかっこいいね、ですか……何回目ですか?」

 

エレベーターを降りると同時に聞こえたそんな会話。確かめるまでもなくあの二人だ。

 

「ソーマ……何とかしてください……」

 

俺に気付いたアリサに言われるが……それが出来れば二年前から苦労はしていない。

 

「……応援はしてやる。」

 

どこかしら間の抜けたやり取り。……とても支部長室の前で行う会話とは思えないことは気にしても無駄だろう。

 

「そういえばさ。このエンブレムって何か意味あるのかな?」

 

当然、二人も新しい制服を受け取っている。背中のエンブレムには、通常のフェンリルマークとの明らかな差……つまりはオリーブの葉が、かなりの存在感を持って縫い取られていた。

 

「極東支部の独立部隊だってのを分かりやすくするためだろ。広範囲を動くらしいからな。」

「……俺も?」

「お前まで動きはしねえだろうが……一応こっちにも所属する形にすんじゃねえのか?」

「マジか……」

 

肩を落としため息をつくコウタを後目にノックなしでドアを開けた。いつまでもこんなところでのんびりしている理由はない。

 

「ん。来た来た。」

「やあ。待っていたよ。」

「すみません。お待たせしました。」

 

ソファーに座って会話でもしていた様子の親父と博士。その横には先に来ていたらしい渚が立っている。

 

「まったく……ノックくらいはしてほしいものだ。」

「フン。親父の部屋に入るのにか?」

 

親父とはごくごく普通に言葉を交わしている。……何も思うところがないかと聞かれたら……否と答えるだろう。まだまだお互いに気を使うことは多い。

それでも、神楽のおかげでかなり楽にはなってきた。……いつか……そう遠くない日に、お袋について話すようにもなる……今はそう思う。

 

「ほんっと……相変わらずだね。仲がいいのか悪いのか……」

 

からかうように言う渚だが……俺や神楽以上にアラガミであるせいか、彼女は二年前から外見すら変化がない。もともと大人びていたこともあって性格もほぼ変化なしだ。……最近は外見について若干の僻みが出てきているらしいと神楽から聞いたが……

その神楽は……俺個人としては、二年前と比べてかなり変わった様に思う。

別に外見がどう、と言うことではない。背が少し伸び、髪をまとめなくなったものの(本気になると勝手に解けることがあって面倒、だそうだ)、もともとの細身で華奢な体つきは全く変わっていない。表情からあどけなさがほぼ無くなったくらいだろう。

 

「さて。これで全員だね。」

 

ひとまず会話に区切りがついたのを見計らって博士が切り出した。

 

「とりあえず簡単な説明からいこうか。今、この極東支部の居住環境及び住居数は十分かな?」

 

分かり切った質問ではあるものの、若干答えにくい部類に入るだろう。……ある意味、その原因は俺達だ。

だからこそ、なのか……答えたのはコウタだった。

 

「……何一つ足りてない……かな。俺ん家の近場でも家がない人達のコロニーが出来てるし、そもそも土地も仕事もないらしくって。」

「そう。この極東支部中央施設内でも物資は不足しているんだ。その外側となっては……分かるね?」

 

その状況に不満を覚えたやつらが暴動を起こしつつある。耳に新しいニュースの一つだ。

 

「なるべく援助はしているが、ここの生産力にも限界はある。人員にもな。どうやりくりしても支援の手が回りきらないのが現状だ。外壁内部で手一杯……外には何もできん。本部に物資の要請はかけたが……どこも似たようなものだからな。」

 

立ち上がり、部屋の左奥の絵画の前に向かった親父。自分を選ぶか、人を選ぶか。そんな意味を持ったものが描かれているらしい。

 

「よって、こちらで出来ることはこちらでやるしかない。では博士。説明を頼む。」

「そうだね。そろそろ始めようか。とりあえずこれを。」

 

博士から資料が配られる。数枚の紙にグラフ付きでまとめられたレポート……こいつにしては短めだ。それだけ分かっていないことが多いのかもしれないが。

 

「最近の研究で、アラガミそれぞれにいくらかの行動パターンがあることが分かったんだが……知ってるかい?」

「行動パターン……ですか?」

「本部が行っている研究の一つだ。気候、時間、周辺の生物の有無、その他諸々……多岐に渡る調査項目を、長時間記録し続ける。今年で……五年目だったか?」

 

責任者はラケル・クラウディウスとレア・クラウディウス。実の姉妹である彼女らが、各々の研究のために協力して行ってきたものだ。

 

「その通り。その研究結果はさっき渡したレポートに簡単に書いてあるから割愛するよ。」

 

行動パターン……その個体のみが保有する習慣や癖、行動範囲などがこれに当たるが、アラガミそのものの生態についての研究も満足でなかった頃からのプロジェクトのため、古いデータの正確さはあまり信用できない。最近では各支部へデータ提供を求めることもあったらしい。

 

「君達に頼みたいのは、この行動パターンによって生じるであろう安全圏の特定なんだ。」

「安全圏?」

「アラガミがあまり通らない区域、って言った方が分かりやすいかな。そういう場所に拠点があったら……」

 

……控えめに見て……目が輝いている。返答を期待しているときの顔だ。

 

「ひとまずの土地不足が解消され、かつ建設のための人手が必要になって仕事も発生する。外壁の外だってのが辛いところか。」

 

メリットは大きい。当然、それに伴ってデメリットも発生するが……それを差し引いたとしても、いい話ではある。

 

「土地がないおかげで、建設資材だけは余っている。なるべく広い安全圏を見つけてほしい。」

 

親父も親父で乗り気なのだろう。……レポートにどの程度の広さが良いかまで書いてあるのがその証拠だ。

 

「ソーマ、アリサ、渚の三人で安全圏の特定。コウタはあの二人の指導をしつつここから指示を出してくれ。」

 

それぞれが発した了承の声の後、コウタのため息だけが部屋に響いた。……探し回るのと指示を出しつつ教官として動くのと……どっちが楽なのかは考えないことにしようとこの瞬間に決めていた。




今日はこの回のみの投稿とさせて頂きます。たぶん次まで同時に出すとなるとキリが悪くなるでしょうし…
何より突貫工事になりそうですし…
とりあえずは1.4アップデートをのんびり待ちつつ書いていこうと思います。
…インフラで参加者を募って、っていうのも面白そうですね…
それではまた次回お会いしましょう。

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