GOD EATER The another story. 作:笠間葉月
いやあ…この数日間の忙しさと楽しさときたらもう…
あれ?頭が痛い。
えっと、ひとまず今回から無印でのボス戦開始ですね。長くなりますが、お付き合いください。
思惑
……さて……もう何ヶ所かノヴァを切ってるわけだが……
「あのちっこいの……誰だ?」
白い少女。全身に青く光るラインが無数に走って……つーかあれ人か?顔に埋まってないか?
「……さてどうするか……お?」
そんな折、エレベーターが開いた。
*
「っ……」
エレベーターが開くと同時に、どこか懐かしく……でも胸が張り裂けそうなほど悲しい。そんな感情が押し寄せてきた。感覚と言った方が近いかもしれない。
《……お母さん、だね。》
【たぶん。】
だけど今は、そんな感情は捨てておこう。感傷に浸るのは後でいくらでもできるんだから。
エレベーターのドアの向こう側は半球型の空間が広がっていた。その縁には、等間隔にカプセル状の照明のようなものが配置されている。床にも大量のライトがあり、全体を少しオレンジがかった色で照らしていた。
そして、エレベーターとは反対側。その方向には……
「ノヴァかな。」
「だろうな。……チッ……ぶっつぶすのも簡単じゃねえか……」
巨大な女性の頭が、逆さまにぶら下がっていた。その首の辺りからはすさまじい数の触手が伸びていて、この空間全体を囲んでいる。
その額に、シオがいた。
「シオ!」
「嘘……」
まさかもう特異点として回収されてしまったのか?そんな最悪の事態を想像してしまう。
「遠すぎる……こっからじゃ撃てないな……」
「レーザーも届きませんね……」
後ろではアリサとコウタが小声で話し合う。……実際、ここからだと支部長に気付かれずに狙って撃つのは無理だ。
「神楽ちゃん。何とかシオだけでも始めに助けられない?」
たぶん翼を使って、と言いたいんだろう。……けど……
《三秒はないと、まともにスピード出せないからね?》
【わかってる。】
イザナミから申告される。……翼を作り出すのは早くても、飛び始めるのには少しかかっていることはこれまででも確認済みだ。
「気付かれず、は無理ですね……向こうに着く前に何か対策をとられると思います。」
「……まずいわね……」
状況は最悪と言わざるを得ない、か。
「ソーマ……ずいぶんとこのアラガミと仲が良かったようだな。」
ちょうどシオが捕らえられている場所の真下辺りには支部長がいた。……さながら、神にでもなったかのような態度だ。
そして……
「それは愚策と言うものだぞ?息子よ。」
「黙れ!」
……その後に続く言葉が予想できてしまう。
「てめえを親父と思ったことなんざ一度も……!」
そこまで言って、私を見て言葉を切った。たぶん私が……泣きそうな表情でもしていたのだろう。
「悪い……」
「ん……」
やっぱり……だめだなあ……
「……所詮人は人だ。神になど、勝てるはずもない。ならば神を使えばいい。……間違っていると思うか!そこにいるんだろう!ペイラー!」
後半のみ、別の方向を見ながら叫んでいた。……その方向からは博士が出てくる。
……っていうか浚われたわけじゃなかったんだ……
「君をヨーロッパに行かせたりしたけど……どうやらすでに手遅れだったようだね。そんなにアイーシャを奪ったアラガミが許せないのかい?」
「……君も、妻を失えば分かるだろうさ。たとえどんなことをしてでも私はアラガミを絶滅させる。君がどう考えていようと、この計画の邪魔をさせるわけにはいかないのだよ。」
どうやら私達の知らないところでいろいろとやっていたらしい。……ヨーロッパ出張まで博士の策略だった、とは驚きだ。
その二人の会話に業を煮やしたのか、ソーマが声を荒げる。
「そんなことはどうでもいい!シオを解放し……あ?」
が、その彼が言葉を切らざるを得なくなる。……というよりも、支部長を含めその場の全員が絶句した。
「……っと……よう。」
まあ、何があったかっていうのは実に単純だ。ノヴァらしき巨大な顔の上から神機を持ったリンドウさんが降りてきて、その途中でシオを捕まえて一緒に支部長の近くに着地しただけ。だが。だがしかし。
ノヴァらしき顔の上、から……神機を持ったリンドウさんが、降りてきて……その途中で、シオを捕まえて……一緒に支部長の近くに、着地。やっていることの突拍子もないことといったらそれはもう表彰されてもおかしくないレベルだ。
「……え、えっと……アリサ……ここに来たときにいた?」
「……見かけてすらいないです。」
「まさか失踪してからずっとここにいたってのか?」
「……考えるのやめる方が賢明かも……」
《激しく同感。》
各々勝手なことを言っているけど、サクヤさんはそうもいかないらしい。
「……いきなりいなくなってどこにいるのかと思えば……」
「サ、サクヤ?」
「とっととこっちに来なさい!雨宮リンドウ!」
……うわあ……フルネーム言ってるよ……
で、そのリンドウさんが走り出そうとしたときに支部長が我に返り……リンドウさんに銃を向けた。
「そのアラガミをこっちに渡したまえ!今すぐに……」
……その銃はサクヤさんに弾き飛ばされたのだが。っていうか狙撃の腕がすごすぎるよ……
弾き飛ばされた衝撃に手首を押さえる支部長。その間に、リンドウさんは私達のところまで走ってくる。
「あとできっちり説明してもらうわよ!」
「す、すみませんでした……」
憤怒するサクヤさん。怯えるリンドウさん。平静を装うとするが苦笑を隠し切れていないソーマ。それに何か言うのがすでに怖い残り三名。まあ、すぐに収まったんだし……いっか。
「……お?かぐらだー!」
「わぶ!」
リンドウさんの腕に抱えられていたシオが目を覚まし、あろうことか私の顔面へ飛びつく。……い、息が……
「シ、シオ!苦しいって!」
彼女を引き剥がす。……あれ?青いラインが消えてる?……理由として考えつくのって……
「リンドウさん。何かしました?」
「いや……俺はあのデカブツをちょいとばかり切ったくらいだ。」
「確実にそれです。グッジョブです。」
まあ、とりあえず何とかなった。あとは……
「ヨハン。ここは、素直に投降した方がいいと思うね。特異点を持たないノヴァはただのオラクル細胞の固まりでしかない。研究室を襲ったアーサソールも、もうしばらくしないとここへは来られないだろう。」
……アーサソール……?
「リンドウさん。あーさなんとかって、何?」
「本部が研究中の新型部隊だ。新型神機の構想ができあがった頃に薬物や遺伝子の改造によって強制的に作り出された、十名弱の新型神機使い達で構成されていてな。……フェンリルの汚点の一つだ。今は支部長が自由に扱える位置に置かれちまってる。」
コウタが質問。こういうときでも躊躇なく質問ができるって、ある意味得な性格だ。
でも……なるほど。たしかに神機使いであれば、研究室を襲撃するのも容易だろう。
「……ふっ……ふふふ……」
「……」
博士からの言葉に、支部長は不敵な笑いをこぼし……横の端末を操作した。
「なら、そのアラガミを奪い返させてもらおうか。」
低い機械音を響かせながら、繭か卵のような形をしたものが支部長が立っている高台に向かって右側にせり上がってくる。
「たとえ人を捨ててでも、私はこの計画を完遂する。……それが、アイーシャへのせめてもの罪滅ぼしだ。」
上昇が止まり、殻が外側へ向かって割れた。中に入っていたのはノヴァと同じ顔を持ち、その頭の上に太陽を連想させるようなリングを持つ長髪の女性型と、巨大な腕とずんぐりとした胴体とを持つどこか男性を思わせるものとの、二体のアラガミ。その男性型の方の背中が開き、支部長がそこへ飛び込んだ。直後に開いていた部分が閉じる。
「ヨハン……今の君は、人でも、神でもない。でも君は……それすら知っていてその道を選んだのだろうね。」
私達の間を通りつつ、博士はアナグラへのゲートの方へ歩き始める。
「今は君たちに任せよう。ゴッドイーター。」
メガネの位置を直しつつ、下がっていった。
「……ふー……」
《さあて。何とかしちゃおっか。》
ここからは、私達の戦いだ。
「突撃!」
*
「第四部隊は北西、第二ハイヴ駐屯部隊は南に向かえ!第二部隊!現在第六部隊が通路に向かっている。それまで持ちこたえろ!」
臨時で十個のモニターと端末を取り出したカウンターの中。ツバキさんと私で全部隊への指示を行っていた。
「東よりさらに多数のアラガミが接近!第四ハイヴ駐屯部隊!突破されます!」
「第三ハイヴの部隊から増援を向かわせろ!そこを抜かれたら終わりだ!」
「はい!」
んもう!こんなに声張り上げるのって初めて!
「くっそ……切りがない!第六部隊は後どのくらいだ!」
タツミからの通信。……今、エイジスへの通路を第二部隊が三人だけで守っている。
「あと十分で着くから!それまで頑張って!」
「了解……だ!ヒバリ、お前も頑張れよ。」
「うん。もちろん。」
絶対に、神楽さん達のところにアラガミを向かわせない。それが全員の共通の意識だった。
……やるしか、ないよね。
私の中での最終戦闘最大の功労者がヒバリさんなんですよ…
いやだってタツミさんがエイジスへは一匹も行かせない云々って言ってたし、もしかしてオペレートすごく忙しかったんじゃあ…なんて思うわけです。
…では、残り数話ですね。お楽しみください。