GOD EATER The another story. 作:笠間葉月
もう前作で鬼神竜帝パフェクリしたとき並みの嬉しさですよ。
…え?そんなことはどうでもいいから早く本編始めろ?
…り、了解でございます(しょぼーん)
家族
「じゃあ、みんなアーク計画がどういうものなのかは知っているんですね?」
「ええ。エイジスの中で見つけたデータも、中の管制室から送ったわ。ビデオファイルに偽装した通信回線もあるから大丈夫よ。」
偽装、か。さすがだなって思う。私はそんなこと考えもしなかった。
「それにしても、アリサちゃんも無茶するわねえ……コウタに告白して、私のこと助けに来て……ついでに何十個も爆弾を仕掛けておくなんて……鬼ね。」
「鬼って……だって言わずになんて来られなかったから……」
誰にも言わずに行こう。そう思っていたけど……
「……自分の想いくらい……伝えたいじゃないですか……」
ぼそりと呟いた言葉。聞こえてはいたようだけど、サクヤさんは何も言わなかった。
「さあ。そろそろ行きましょうか。もう少し行ったところに第一ハイヴ跡があるはずよ。」
第一ハイヴ。リーダーの生まれ育った地で、かつリーダーが家族を失った地。
そこでしばらく身を隠すのだ。地下に手付かずの非常食も数多く残っている可能性もある。今持っているもので足りなくなることが万一にでも考えられるからお誂え向きだ。
「はい。」
と、ちょうど端末が受信音を響かせた。
……最期になんてしてたまるものかと、自分で言っておきながらそう思っていた。
*
「……また面倒なことをしやがって……」
「まあまあ……もう言っても始まらないんだから。で、大丈夫ですか?」
ビデオだと思って開いたら、始まったのはサクヤとのビデオ通話だった。
始まると同時に悪態をついた俺を神楽が止め、なんとなくそのまま話し手は神楽になった。
「なんとかね。アリサも助けてくれたし、とりあえずは無事よ。」
「よかったあ……」
大きく息を吐きながら肩から力を抜く神楽と、小さく安堵の溜息をつくツバキ。俺自身も少しだけ笑みを浮かべているようだ。
その後はしばらく向こうの話を聞いた。アーク計画そのものについてはサクヤからのメールで知ったが……あのくそ野郎がそんなことまでしてたなんてな……
二人の話が一段落ついた頃、アリサが話を変えた。
「あの……コウタは……」
ずっとあいつの声がしないことを不審に思ったのだろう。どこか不安気だった。
「……」
「……あいつは……」
返事をしない神楽の代わりに答えようとしたところで、ツバキが手で制してきた。
「コウタは家に帰った。……アーク計画のことを知って……実際のリストに自分と自分の家族の名前があることを知った直後にな。」
「……アーク計画に賛同するなら、私達とはあまり関わらない方がいいでしょうから……」
重苦しい雰囲気の中でサクヤが口を開き、続いて神楽も話す。
「家族を守れるなら、恨まれ役だろうと何だろうとやってやる。そんな風に言ってました。」
「……そう。」
ただのバカだと思っていたが……案外そうでもないらしい。
にしても……
「あのくそが……わけ分かんねえこと始めやがって……」
「でも支部長、あなたのお父さんは、リストにあなたの名前を乗せているわ。」
サクヤの言葉は、俺を変なところで憤慨させた。
「あいつは親父じゃねえ!」
……意味もなくキレて、意味もなくツバキの部屋を出た。
今更になって何を父親ぶろうとしてやがる。許してくれとでも言うつもりか。思考を埋めるのは全て自分勝手にしか思えない感情のみだった。
「あっ……ソーマ!」
後ろから追いかける神楽を振り払うように足早にエレベーターの前まで来た俺は、ボタンを押してからその横の壁を殴りつける。
……ばかばかしい……自分でもそう思った。
「……ソーマ……」
後ろからかかる声に振り向く。拳をどけた位置には無数のひび割れが入り、その拳からは若干血がにじんでいた。
「……悪い。」
「ねえ……支部長のこと……嫌いなの?」
俯きながら唐突に発せられた言葉。……答えなど、考えるまでもない。
「嫌いだな。……憎んですらいる。」
「……どう……して?」
「あのディスク……お前も見ただろ。俺をこんな体にしたのも、その後ここまでねじ曲がったのもあの野郎の……」
「でも……お父さん……なんでしょ?」
……何が言いたいのかは何となく分かっていた。それでも、自分の中でこれまで積み重ねられた感情は容易に消えるものではなく……
「関係ねえ。」
エレベーターが到着した音にかき消されそうな、微かな一言。が、彼女は違った。
「でも生きてるんだよ!?」
俯いていた顔を上げ、俺を責めるように見る。……大粒の涙を流しながら。
それを見ても俺は同じ答えしか返せなかった。
「……それでも俺は、あいつを親父とは認めねえ。」
「っ……もういい!」
エレベーターに駆け込む神楽。……真横を通る彼女へ言葉をかけることすら出来ずに突っ立っていて……
「クソッ!」
その自分が不甲斐なくて、もう一度壁を殴りつけた。
*
「たっだいまー!」
自分の家。そういえば、ついこの間ソーマを連れてきたんだっけ。今回違うのはあいつがいないことのみだ。神機の持ち出し許可ももらっている。
「あ!お兄ちゃん!」
「お帰りなさい。ご飯出来てるけど、食べる?」
先に連絡をしておいたからか、二人ともすぐに出てきた。……ポケットに入れた方の手で、アナグラを出る前に支部長から受け取ってきたカードタイプのチケットを握る。何をしても家族を守らないと。そう思った結果だ。
「おおっ!サンキュー!まだ朝飯も食ってないから腹ぺこでさあ……」
と言ってもまだ朝七時半。いつもなら寝ている時間だから、はっきり言って早めの朝飯だ。
「今日の卵焼き、ノゾミが作ったんだからね?残しちゃだめだよ?」
「マジで!?……お、お代わりあるか?」
「ばっちり。」
「いよっしゃあ!」
ガッツポーズを取ってみせると、ノゾミは満面の笑みを浮かべた。……でも……
実際のところ思い浮かぶのは、朝飯を食わずに討伐に出たときに自分の分の携帯食料をくれたアリサ。
……心の中で言っただけでは届くはずがない彼女への謝罪が、頭に浮かんでは染み込むように消えていく。
「どうしたの?」
目の前のノゾミは、俺がここにいるだけで楽しそうにしてくれているというのに。
「あ、うん。なんでもない。」
……ほんと、ごめん。
*
「……はあ……」
私、ばかだ。
ソーマがこれまでどれだけ苦しんで来たかちゃんと知ってるはずなのに。アラガミと人の間にいることがどれだけ辛いことか身に沁みて分かってるはずなのに……
エレベーターに駆け込んで、無意識に押していたのは自室がある階のボタン。……隣はソーマの部屋だ。
自室の中で何度も溜息をついている。何杯もコーヒーを飲んで、幾度となく頭を掻いて。
「何であんなこと言っちゃったんだろ……」
何がもういい、だ。彼が歩んできたのは、私のよりずっとひどい人生だったというのに……そう思うとまた大きなため息が口からこぼれ出る。
《……えっと……神楽、ちょっと……》
【あ、ごめん。何?】
イザナミが呼んでいることに気付く。
《支部長が来るようにって、放送で呼んでる。》
【……わかった。】
来い、と言うなら……行ってやる。アーク計画なんて認める気は更々ないのだ。
……えと、シャワー浴びてから。
*
……アリサさんとサクヤさんとコウタさんがいないって……けっこう忙しくなってっちゃうかな。
「ヒバリ。任務完了だ。あ、他やばいところってあるか?」
今もタツミが一人で出撃している。ソロで出るのなんていつもは第一部隊の人達くらいなのに。
「今は何ともないけど、もしかしたらまた後で出なきゃいけなくなるかも……」
「げっ。さすがに第一部隊がまともに動いてねえのは辛いか。」
「うん……緊急性はないんだけど、禁忌種がいるの。神楽さんとソーマさんが二人とも出てる時とかに来られたら、急いで部隊を編成して、なんてことになると思う。」
この忙しいときに迷惑なことだ。よりによって接触禁忌種だなんて……
「はあ……うっし、了解だ。とりあえず帰ってからだな。」
「うん。気を付けてね。」
溜息をついてから、明るく言った彼を頼もしいと思う。……なんか、歴戦の神機使いっていうか不思議な風格っていうか……彼と初めて会った頃と比べたら雲泥の差だ。
「おう。じゃあ、切るぞ。」
プツッ、と言う音を鳴らしながら通信が切れる。……おにぎりとか、準備しておこうかなあ。
と……
「第二、第三部隊のメンバーに、帰ってきたら私のところへ来るように言ってくれ。一人ずつでもいい。」
「え……はい……」
Sound only と表示された通信相手。どうも今日は支部長に呼ばれる人が多い。
さっきは神楽さん。次にソーマさん。その後でツバキさんや整備班の人達。この様子だと、他の部隊やオペレーターも呼ばれるだろう。
が、それだけだったら全体に放送をかけるかそもそも集会を開くかすればいいだけだ。
「……なんなんだろう……」
三つ編みに変えた髪をくるくるといじりながら悩んでいた。
…相変わらずの二人です。
あ、今回に関しては前のようにダークな雰囲気にするつもりはありません。実際原稿もひどい状態にはしていませんので。
にしても、です。
鉄砲大好きな私が鉄砲で虐める隙のないあの神速種にパフェクリするって…えと、富Pさんごめんなさい。
っていうか最近更新ペースが異常なほど早くなってる気がします。
…おそらく長くは続かないのでご了承ください。