GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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さてと。
なんかわけの分からないサブタイですが、とりあえずこの回と次とが続き物なのでこういうことになってます。
…と言いつつ次回のサブタイとの共通点がまったくないのですが…


どたばたの前半

どたばたの前半

 

「んしょ。おはよ。」

 

いつも通り家族の写真へと声をかける。

あれからさらに二日。退院後初の朝だ。ちなみに八時。

 

《お。起きた起きた。夜中にメール来てたよ?》

 

彼女と話すことが出来るようになって一番楽になったのがこれかもしれない。

コアであるが故に睡眠その他色々なことを必要としない彼女は、どうも私が寝ている間も起きていられるらしい。だから夜中にメールが来たら朝一で教えてもらえる。……ターミナルからの受信音はなかなかに小さいので、眠りの浅い私でも全く気づかないのである。

まあ、彼女自身私が起きている間にいくらか寝るのを生活の一環にしているようだが。ある程度のリズムを組みたいらしい。

 

【そっか。ありがとね。んで……誰だった?】

《受信音全部同じにしている人の台詞じゃないよねそれ。》

【……はい。】

 

……だって設定面倒なんだもん……

と、そんなどうしようもない会話はおいておくとして。

 

【お。サクヤさんだ。】

《あーそういう。》

 

アリサと一緒に来てほしい。サクヤさんからのメールにはそうあった。ディスクを調べ終わったのだろう。

 

《どうする?もう行く?》

【受信時間見ようよ……】

 

受信したのは三時。ということはほぼ間違いなく、ツバキさんと話していたのだろう。まだ寝て……いや、ベッドに横になったばかりかもしれない。

 

【ひとまず任務に行ってからかなあ。】

 

とは言ったものの……ソーマはコウタと偵察に行ってるらしいし……あ、そういえばアリサもタツミさん達と行くんだったっけ。しかもサクヤさん誘いにくいし……よし。一人で行こう。でも今日は別に行かなきゃいけない訳じゃないんだよね……

そんな考えを巡らせていると、イザナミがふてくされたように呟く。

 

《むう……早く知りたい。》

【我慢。そしてまずはご飯。】

《はーい。》

 

まあ、早く知りたいのは私もなんだけど……こればっかりはねえ……

 

   *

 

「おっす。待った?」

「いや。だいたい集合時間にはまだあるだろ。」

 

地下鉄跡で偵察任務。それもソーマと二人か……なんか久しぶりだな。

 

「だってお前いつも仏頂面じゃん。知らないやつっから見たら怒ってるって思われるぜ?」

「仕方ねえだろ。真顔がこれだ。」

 

そう言って顔を背ける。ま、ここで初めて会ったときよりずっとましかな?

……何をしにここへ来た、か。二言三言の自己紹介の後でそう聞かれたはずだ。家族を守れたらそれが一番、ってそう答えたっけ。

 

「さっさと行くぞ。」

「わかった。」

 

少し先に行っていたソーマを走って追いかける。そこで、ふと思いついた。

 

「なあなあ。今日さ、俺んち来ない?」

「あ?」

「いやそれがさ……第一部隊のこととか色々書いて家にメールしたりするんだけどさ。そうしたら妹がみんなに会いたいって言ってるらしいんだ。んで俺今日いったん家に帰るんだけど……どう?来ない?」

 

……まあはっきり言うと、ソーマに会いたいみたいなんだけど……ソーマにはもう彼女がいるんだぞーって言っても会いたいって言ってたし。が、それ以上に……

 

「今日か……ずいぶんいきなりだな。」

「あ、もしかして忙しい?」

「いや。そういう訳じゃないんだが……」

 

……こいつ……またこの後任務に出るつもりかな?

 

「もう一個任務行く、とか言うなよな。」

「……」

 

最近ソーマが任務に出すぎだっていうのを、ちょうど今日の出撃時にヒバリさんから聞いた。たぶん神楽に少しでも無理をさせないように頑張っているんだろうけど……そんな風に任務に行きまくって神楽がぼろぼろになっていた前例がある以上は、こいつにも休みを取らせないとだめだ。

 

「ああもう来い!アナグラまで帰ったら……いや!帰り道でそんまま寄ってけ!っていうか泊まってけ!ジープは俺が返しといてやる!」

「は!?ちょっと待て!」

 

そうこうしている内にグボロ・グボロの堕天種を見つける。

 

「よし!あいつ倒したらすぐ行くぞ!……ジープ運転すんの俺だから拒否権なしな。」

 

行かない、なんて言っても、こっちが強引に連れていけばいいんだ。……そうでもないとこいつは休まないだろう。

 

「ったく……仕方ねえな。コウタ、背中は任せる。頼むぞ。」

「任せとけ!」

 

よおし……今日は速攻でいくか。

 

   *

 

「……あれ?このパン出来悪い?」

 

結局今日は任務なし。……行かない、というのではなく、そもそも任務がないのだ。急を要するものがないだけではなく、位置を特定しているアラガミが一体もいないらしい。……なぜなのか聞くとヒバリさんは曖昧な答えを返してきたが。

でもって今日ソーマは帰ってこないらしい。なんでもコウタの家に連行されることに決まったのだとか。

更にインドラ討伐の時に見つけたあのアラガミを引き寄せる機械のことも報告した。

というわけで、私は朝の食パンを作ろうとしているのである。……が。

 

「うーん……小麦粉は変えてないんだけどなあ……」

 

とりあえず表面は焼き色がついている。ただ、持ったときの感触がぐねぐねしているのだ。焼き上がりのふかふかしたあの触り心地はいったいどこへ……

ちなみにイザナミは寝ている。……まあ寝ているというのが正しいかどうかはともかくとして、だけど。

 

「……あ……」

 

と、ひとまずそのパンを二つに割ってみたところ……

 

「あちゃあ……もしかしてオーブンがだめになっちゃったかな?」

 

中に火が全く通っていない。そのせいで生地が膨らんでいない。そりゃあ失敗するよねえ。

……っていうか、オーブンの中もほとんどあったまってないじゃん。

 

「リッカさんに見てもらおうかな……」

 

こんな流れで、私はエレベーターへ向かったのだった。

 

   *

 

エントランスに降り、そのままの足で保管庫へ入る。リッカさんはすぐそこにいた。

 

「リッカさーん。オーブンの調子が悪いみたいなんだけど……?」

 

彼女が入って右側のある一点を、端末を片手に凝視しているのに気が付いた。そこにあったのは、巨大な刀のようなもの。

どこもかしこも真っ白。すこしだけ入ったラインの部分だけが、白でなく黒で着色されていた。

二つの刃があるようで、一方はその私の神機に似た形状、もう一方はコンバットナイフのような形で持ち手に直に取り付けられており、その刃は持ち手の向こう側を通りつつ逆側のブレードの刃へと繋がっている。その間だけは、自分の方へ曲線を描いている。

そのナイフの真逆にはまるで銃身のようなパーツが、ナイフと同じ様な取り付け方をされていた。ブレードの腹に向かって、その外側から斜めに短くなっていくような縦幅が長いバレル。その根本付近からは、持ち手部分をいくらか覆う様な鍔が延びている。

そんな風にして取り付けられた銃身のさらに向こう側。ナイフよりも外側へせり出している長いブレード。神機の方のブレードを太刀としたなら、こちらはレイピアと言えるだろう。私のものと比べて細く長く、そして畳むことが出来なくなっているのか繋ぎ目が一切ない。

そして、持ち手と銃身らしきものとの繋ぎ目にはケーブルが繋がっている。その先にはカプセルがあり……

 

「あ、もしかして……」

 

少し近づく。やはり、そのカプセルの中身は銀色の球体。怜の複合コアだ。

 

「リーッカさん。」

「わっ!っとと……もう。いきなり何……あれ?今日何もないんじゃなかったっけ?」

 

後ろから声をかけつつ両肩をポン、と叩く。それだけで思いっきり驚いたリッカさん。

 

「んと、なんか部屋のオーブンの調子が悪くって。それで見てもらおうかなーって思って来たんだけど……」

 

目線をリッカさんから刀のようなものへ移す。

 

「これって、昨日病室に来て怜のコアを使ってもいいか、って聞いてきたやつ?」

「そうなんだけどね……どうも数値といい何といい安定しなくって……あ、触っちゃだめだからね?」

「分かってるって。でも、そっかあ……やっぱり難しいのかなあ……」

 

リッカさんのお父さんが残した図面から作った。そこまではもう聞いてある。なんでも、前に見せてもらった手帳に書いてあった図面なのだとか。

 

「まあ、複合コアでの神機作成自体が初の試みだからね。お父さんも結局はやっていないわけだし……五里どころか何百里も濃霧に呑まれているような感じだよ。」

 

端末を置いて私の方を見るリッカさん。……なんだかんだとぼやきつつも、その顔はとても楽しそうに笑っている。

 

「それと。最近ずいぶん無茶してるみたいだけど……」

「う……ごめんなさい。」

 

口調が変わった。……ちょっと怒ってるかも……

 

「君も神機も、替えなんてどこにもないんだからね?特に君の神機は……君にしか使えないんだから。」

「え?」

 

リッカさんが言った意外な言葉。私にしか使えないって……普通にアラガミのコアから作ったものなんだから、ごくごく希には使える人が複数名いる……最低でも、永久に私以外が使えないと言うのはないはずなんだけど……

 

「君の神機……実は、複合コアを使っているの。たぶん私のお父さんがあなたのお父さんからもらった中の、今残っている唯一の完成品。」

「……え?」

 

完成品……ということは、私のコアと同じ様なものなのだろう。

 

「解析したら君のコアと同じ数値が出たんだ。きっと、桜鹿博士がもともといくつか作ったんだと思う。……日付をよく見たらね……第一ハイヴが壊滅する前日に、あの手帳に書いてあったデータを解析していたの。」

 

なおも続くリッカさんの言葉。にわかには信じられないけど、彼女が言うのだから間違いないのだろう。

 

「だから、君がこの間手帳を見に来てくれたときに話していたことと重ねると……」

 

手帳を見せてもらったときに私の過去のことは掻い摘んで話してある。

 

「……七月五日にもらったコアを、その翌日に解析して、七月七日に来るはずだった私達へのお土産を用意しようとしてた、ってこと?」

「そうなると思う。……まあ、お土産の内訳は面白かったけどね。」

 

話が変わったな、と思いつつ……お土産の内訳が気になる。

 

「えっと、桜鹿博士にはお酒、冬香さんにはスカーフ、君と怜君にはそれぞれ服と玩具。……まあ見事にそれぞれを捉えたお土産だことで。」

「あはは!でもらしい、っていえばらしいよね!」

「いやあ……我が父ながらこのセンスには感服するよ。」

 

そうしてひとしきり笑ってからリッカさんが話を続けた。

 

「まあそういうわけだからさ。みんなが大切なのはいいけど、自分も大切にしなよ?装甲勝手に強化しておいたから、後で素材とお金ちょうだいね?」

「え!この間のブレードの強化でお金も素材も……」

「言い訳無用。さーて。オーブンだっけ?見に行こうか。」

「ちょっ……リッカさん!?」

 

……いつものように負ける私であった。




私にとってのリッカさんって、なんだか主人公で遊ぶ癖がある人になってるんですよね。GE2でキャラエピ進めたら更にそれが固定されちゃって…

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