GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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まあなんだかんだと三つ目でございます。
ちなみに今回からツバキさんが目立つ位置へ出てきます。
ちなみにちなみにツバキさんの部屋なんて私の想像でしかないです。
ちなみにち(以下略)今回場面転換なしです。


真相

真相

 

「失礼し……ちょっ!サクヤさん!まだ待って!わああ!」

「……ちっ……生意気に鍵かけて……ぶっ飛ばそうかしら……」

「怖いです!怖すぎますってっ!」

 

普段穏やかな人ほど怒らせてはいけないと言うが……全くもってその通りだ。ツバキさんの部屋にノックもなしで入ろうだなんて恐ろしすぎる。

 

「今が何時だと思っている。もう他の奴らは寝ているぞ。」

「ひゃああ!」

 

真後ろから声がして、振り返ってみればツバキさんが立っているという……

 

「こんばんは。呼ばれていたので来ました。」

「さ、サクヤさあん!」

 

それを何とも思わず……というか思う気もなさそうなサクヤさんは初めから挑発的だ。おそらく、ツバキさんが真相を知っていることを知っているからこその行動だろうけど……無理。私には無理。

 

「……なるほどな。博士にでも聞いてきたか?……入れ。立ち話では落ち着けんだろう。」

 

が、当のツバキさんは自分に非があると考えてなのか怒りもしない。それに拍子抜けしたサクヤさんの怒りが薄れる。

 

「……私……ずいぶんすさまじい事してた?」

 

……ぶんぶんと風が鳴るほどに首を縦に振る私。なんて怖い人だ。怒っている間の記憶があまりないらしい。

まあ、とりあえずそれはおいておいて……

ツバキさんの部屋は旧時代の純日本家屋の一室を元にしている。和室、と一般的には括られるそうだが、なんでも書院造りという様式なのだとか。まあ、装飾がそうというだけで、使っている建材は私たちの部屋と変わらない。元の部屋の骨組みも同じだ。

その部屋の真ん中にある卓袱台の周りに、ツバキさんを上座にして座る。……当然、座布団だ。私は家に畳敷きの(といってもカーペットに近いのだけれど。ちなみにお父さんの趣味。研究の成果として造ってもらったらしい)部屋があったから慣れているが、サクヤさんは正座に苦戦中。

 

「別に正座でなくても良い。だいたいサクヤ……この間飲んだときは完全に崩していただろうが。」

「……こういうときだからって思ったんですけど……それじゃあお言葉に甘えて。」

 

足を崩して座り直すサクヤさん。その間にツバキさんは何かの資料を取り出す。

 

「とりあえず、こっちを先に話しておこうか。」

 

ツバキさんが見せた面に書いてあったのはインドラの四文字。……何だろう?

 

「例のアラガミに関する資料だ。もう少しまとまったら、全体へブリーフィングをするつもりだがな。戦闘経験があるお前には先に教えておきたい。」

「私……ですか。」

「ああ。まあ要点だけ掻い摘んで話すか。」

 

とりあえず私に、っていうのが結構怖いけど……

 

「まずは奴の呼称だ。これに関しては本部に任せた。なにせお前が倒れていては発見者に名称を決めさせる、というのもやりづらいのでな。」

「そうですね……私たちもそういう雰囲気ではありませんでしたから。」

 

サクヤさんが同意する。まあ、本部なら私が考えるようなのより良い名前にしてくれるだろう。……青猫ちゃんの名前が言いにくいことに気が着いたのはいつだったかなあ……

 

「名称はインドラ。ヴァジュラ神族の特異変異種。ランクは第一種接触禁忌種だ。……それ以上のランクを作ろうという話まであったらしい。」

 

……第一種の上ってどうなるんだろう……

 

「奴への対策は、この支部以外では立てようがないため記載なし。討伐における注意事項等も情報不足につき同じく記載なし。他に書いてあるのは……特筆点があるだけだ。」

「特筆点、ですか?」

「あまりそういうのは感じられませんでしたけど……恐ろしく強いアラガミというだけじゃないんですか?」

「……ああ。」

 

声のトーンが落ちた。いつも声がほとんど変わらないだけあって緊張感が漂う。

 

「やつには脳がある。人の倍近くな。」

「……?」

「脳……ですか?」

 

予想もしていない言葉に一瞬思考が停止する。

 

「偵察班が携行したスキャナーの画像から脳組織が確認された。これがそうだ。」

 

ぱさりと投げられた紙。何かの画像……

 

「えっと、インドラ……の頭のスキャン画像ですか?」

「そうだ。最大望遠だから質は気にするな。」

 

頭部の半分近くを占める白く示された部分。……たしかあれの頭は私の背丈くらいあったから……

 

「大きいですね……普通じゃ考えられないくらい。」

 

比率としては人とさほど変わりない。が、元の大きさが余りにも違いすぎる。

 

「この他に、脊髄部にも脳に酷似した組織が確認された。学者達は運動制御用の部分だと推論づけている。大昔にそういう生き物はいたらしい。」

 

運動制御用かあ……あれ?ってことはこっちの頭にある方は……

 

「まさかこれ全部が思考に使われてるって事ですか?」

 

サクヤさんが問いかけた。ツバキさんはそれに無言で頷く。

 

「それであるが故に、ディアウス・ピターを捕喰したものと考えられる。」

「え?」

「アラガミが喰った物の特性を取り込むのは知っているだろう?それがもし、自分と同系統の能力を持つものであったなら、純粋に強化されたとしてもおかしくはない。それなら例の大型雷球も説明がつく。」

 

要は自分が強くなるために近種を捕喰していた、ということなのだろう。……恐ろしいことに。

 

「インドラに関してはこれ以上の情報はない。今のところ奴一体しか確認されていないのもあって、奴の調査が進みにくいこともある。……さて。私の愚弟の話でもしようか。」

 

話が変わった。と同時に、サクヤさんが身を強ばらせる。

 

「そう緊張するな。私も詳しいところは知らん。」

「……そうですか……」

 

そんな風に言われても、真剣な面持ちは崩さない。……っていうか、ここに喧嘩腰で乗り込んだのってそもそもそのことが原因だったっけ。

 

「それで?博士にどこまで聞いてきたんだ?」

「博士がリーク元っていうのは確定ですか……」

「当然だ。」

 

うわあ……信用ないなあ……

 

「リンドウが本部から指令を受けていたこと。その内容が支部長に対する調査であること。そしてたった今も調査中であること。だいたいこの三つです。」

「基本的なことは知っているか。なら話は早い。……少し待っていろ。」

 

そう言って立ち上がる。そのまま奥へ向かい、本棚の下にある鍵付き金庫から紙の束を取り出してきた。

 

「あいつが調査したことをまとめたレポートだ。……読ませることはできん。」

 

表面にトップシークレットの文字と本部の押印。……読んだりでもしたら、すごく上の人たちに消されそうな雰囲気だ。

 

「内容はエイジス計画と支部長の動向、かつ……」

 

言うかどうかを悩むように言葉を切って。口を開くまでに相当長くかかった。

 

「……アーク計画の全容。」

「アーク計画?」

「それって……何なんですか?ターミナルにもなかったような気がするんですけど……っていうか、論文にも上がってませんよね?」

「ああ。支部長と博士。そして、支部長の調査を命じられた私とリンドウ以外は全く知らない……というより、知る由もない計画だ。」

 

アークって放電現象の名前……だったよね。一体全体どういう計画なんだろう……

 

「はっきり言っておくが、今アナグラに教官として勤務している以上私の口からは何も言えん。……私が脱走兵か何かにならない限りな。」

「……そうですか……」

 

脱走兵。とても重たいその言葉を身に沁みて感じていた矢先、ツバキさんはとんでもないことを言ってのけた。

 

「リンドウからのディスクでも見つけろ。どうせ計画についても書いているだろうさ。」

 

何が何だかわからずに固まる私とサクヤさん。

 

「知らないとでも思っていたか?」

「……えっと……」

「……は、はい……」

 

先に硬直が解けたサクヤさんに続いて首を竦めながら頷く。……どこまで知っているんだろうこの人は……

 

「あれはそもそも私のアイディアだ。対アラガミ装甲製の容器に入れたディスクをアラガミに飲ませる。そしてそれを第一部隊に回収させることで……」

「私たちに何かをさせようとしている、ってことですか?」

 

そう聞くと、ツバキさんは申し訳なさそうな表情で俯いた。

 

「……お前達にはすまないと思っている。これはあくまで私とリンドウが受けたものであって、お前達を巻き込んでいいようなものではない。それどころか……アーク計画が存在することを知っている、という時点で、支部長に狙われる危険性すら発生する。……例のアラガミを呼び寄せる複合コアや……アリサが錯乱したあの任務……あれも支部長、または彼に与する者による策であった可能性が高い。リンドウや第一部隊を消すための、な。」

 

そこまで言って、言葉を切った。立てていた膝を正座にし……私達に土下座した。

 

「えっ……ツバキさん?」

「あ、あの……そんな……」

 

狼狽える私達に、言った。

 

「……本当に……申し訳ない。」

 

しばらく何も言えず、ただ呆然として。そこから復活したときに口をついて出たのは……

 

「手伝います。リンドウさんが残したディスクも、すぐに見つけてみせます。」

 

身を乗り出すようにして頭を上げたツバキさん。

 

「だが……さっきも言ったようにこれに関わることは支部長に狙われることに直結……」

 

その言葉はサクヤさんが切った。

 

「大丈夫です。あの、リンドウが生きていられるんですから。私達がやられるなんてあり得ません。」

「うわあ……未来の夫さんをそんな風に……」

「いいのよ。夫婦なんてこんなものがちょうど良いって言うし。」

「……ふっ……」

 

横で聞こえた吹き出したような音。

 

「あ、やっと元に戻りましたね。」

「ああ。お前達第一部隊相手に悩んでも、どうやら意味がないようだからな。」

「それに気が付いたの……今更ですか?」

「いや。リンドウが隊長に就いた瞬間からだ。」

 

そんなツバキさんの言葉に笑う。特にサクヤさんは爆笑してたり。

ひとしきり笑って落ち着いた頃、ツバキさんがいつものように命令を下した。

 

「第一部隊へ命ず。本日より、可能な限り早くリンドウがどこかにいるアラガミに喰わせたディスクを見つけ出せ。どんな手を使っても確保しろ。目の前に支部長がいようが本部のお偉方がいようが何がいようが全員退けて手に入れろ。方法も結果も問わん。」

「質問!民間人は!」

「救え馬鹿者!」

「了解であります!上官殿!」

 

良かった。みんないつも通りに戻った。それが何だかすごく嬉しく思えた。




…えーとですね…
要は私の中でのツバキさん像がこんな感じなんですはい!
ツバキさんのファンの皆様ごめんなさい!

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