GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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…皆さん…バレンタインですね…
私ですか?…いえその…あげる側でももらう側でもないと言いますか…はい…
…駅前ではチョコをもらっている人々を見かけました…不思議です…目から汗が出ます…

バレンタイン番外編。…少しでも寂しさを紛らわせるとしましょう。


Other side's story. No.3

Valentine's Day

 

2月初頭。任務の受注カウンターで、アリサさんにあることを頼まれていた。

……アナグラの誰もが知っている食べ物事情がいくつかある。ラウンジで出されるムツミちゃんの料理がとてもおいしい。カノンさんのお菓子料理の腕前はプロ級。エミールさんは紅茶を淹れるのが上手。最近知られたこととして、私はコーヒーを淹れるのが得意……神楽さんとソーマさんはもっと上手。神楽さんに頼めばたいていのものは作ってもらえる。渚さんは実は大食らい……

そして……

 

「あ、あの……どのくらいのものを作るんでしょう?」

 

……アリサさんの料理は、神機使いすら死に至らしめる(誇張)レベルだということ。

そのアリサさんが、アナグラのみんなにチョコを振る舞いたいと言うのだ。要するに、私だって料理くらい出来るんです!と言いたいらしく……

 

「簡単でいいんです!おいしければ!」

 

それなら市販のものを買うのが得策なんじゃ……と根底から覆しつつ答えに窮す私。その横のカノンさんはといえば……

 

「よ、よし!任せてください!」

 

……乗り気だった。

となると私も無碍に断るわけにいかない……のかな?

 

「分かりました。それじゃあ、三人で作りましょうか。」

「は、はい!」

 

……大丈夫……なのかなあ……?

 

   *

 

「えっと、まずはこれを溶かします。」

「はい。」

 

カノンさんが取り出したのはチョコの塊。料理用で売っているものだ。

 

「あ、これを溶かしたやつの形を整えるんですね!」

「……それは無理が……」

「あの……これ、苦いんですよ?」

「……え?」

 

カノンさんが買ってきたのがどんなものなのかにもよるけど、今売っている料理用のチョコとなると……カカオの配合がかなり高いものばかりのはず。ミルクやお砂糖を混ぜるのが普通なわけで……

そのチョコに、アリサさんは手を伸ばしていた。

 

「二人とも何言ってるんですか。売っているチョコが苦いわけが……苦っ!」

「まあ……料理用ですし……」

「これを溶かして、お砂糖とかを入れるんですよ。」

「……」

 

うなだれるアリサさん。……どんどん不安になってきた……

 

「あ、そうだ。ヒバリさんの分も買っておいたんです。……別で作りますか?」

 

そう言って、今溶かしているものよりも小振りなチョコの塊をくれたカノンさん。二人分より少し少ないくらいかな?

 

「え……でも……」

「ここは彼氏さんがいる人優先ですよ。私の分は別でありますし、使ってください。」

「それじゃあ……ありがとうございます。今度、何かお返ししますね。」

 

このあとのことを考えると少し申し訳ないけど……甘えさせてもらおう。

 

「ちなみにタツミさんは、甘めのチョコが好きですよ。昔そう言ってました。」

 

……何も言えない…毎年全員に配っているだけはある……

 

   *

 

「整備頼む。」

「OK。……ってうわあ……ずいぶん暴れたね。」

「俺がどうあれ神機は神機だからな……悪い。」

「大丈夫大丈夫。任せといて。」

 

神機はぼろぼろ。本人はピンピンしてる。ちょっと使い方に文句を言ってやりたいところだけど、基礎部分への損傷はないし……何より神機が嬉しそう……まあ、いっか。

 

「そうそう。神楽から届いてたよ。」

「?」

「お返し、考えておきなよ。」

「……ああ。」

 

……顔がほころんでる……ちょっと羨ましいなあ……

 

   *

 

「だ、大丈夫です!今回こそは大丈夫なんです!」

「し、しかし……これはあまりに……そう……焦げていると言うのではないだろうか?」

「……これはないですよ。いろんな意味で。」

「味はたぶん大丈夫です!」

 

……14日。エントランスでは、アリサさんとエミールさん、エリナさんによる不毛な戦闘が行われていた。

 

「あの……カノンさん。味見ってしたんですか?」

「……食べられなかったです……私と作ってたのに何で……」

 

カノンさんが作ったのは、ミルクチョコ、ビターチョコ、ホワイトチョコの三層に分かれたブロックチョコや、内側がちょっとだけ甘いトリュフチョコ等々……アソートになりそうなほどだ。

 

「もしかしてコウタさんって……」

「……去年、毒牙にかかりましたから……いつもの倍近い任務を受けていきました。」

「やっぱり……」

 

今年の生け贄は、エミールさんとハルオミさん、なのかな……?

 

   *

 

「タツミ。ちょっと来てくれ。」

「どうした?」

 

サテライト拠点……の内、まだまだ装甲壁が出来てない、ってところを、俺とブレ公で警備している。大変ではあるんだけど、やっぱ頑張らないとって思えるし……性に合うんだよなあ。

 

「アナグラから届け物だ。」

「補修素材か?」

「それもある。ただ、お前を呼んだのはそれじゃない。」

「と言うと?」

 

いつかは、ここもアナグラみたいにしっかりした装甲壁が完成する。そうすりゃもっとたくさんの人を収容できるようになる。……それまで、それから、頑張らないとな。

 

「ヒバリからだ。」

「ん?あー!そういうことか!」

「カノンからも、俺達二人宛で来ている。何か返さなければな。」

「だな。何かこっちの特産品とか……何が良いと思うよ?」

「俺に聞かないでくれ。そのあたりには疎い。」

「んじゃあ、二人で見に行ってみるか?……そういやあそこの饅頭屋なんかよさそうだな……」

 

……アラガミがいなくなるまで、戦いは続くのかもしれない。戦い続けていたら、いつかアラガミと共存できる方法が見つかるのかもしれない。考えたくはないが、人類が負けるかもしれない。

それでも……

 

「なあブレ公。」

「どうかしたか?」

「これからもよろしくな。」

「……ああ。」




タツミさん役得。アリサはいつも通り。
ヒバリさんって、コーヒー以外の料理とかにはどこからも言及されていないんですよね。何だかたいていの事はそつなくこなしそうですけど…憧れます。

そうそう。ちょっとばかり、RB体験版で転職しました。
ショート使いのままではありますが、BAを風切から螺旋へ(分かる人は分かるはず。体力を削るという、ハイリスクBAです。)。どうやら螺旋の発動条件が変更されたようで、体力が満タンの時でも使えるようになりました。元々は四割以下でないと無理だったんですよね…楽になったものです。

では、良い?バレンタインを。

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