GOD EATER The another story. 作:笠間葉月
GE2発売から三日間徹夜してストーリーとキャラエピ終わらせて使う武器は一通り揃えて一人楽しく今作の餌アラガミヴィーナスさんをパクモグし続けて今に至ります。
…いえこっちの方をやっていなかったわけではありませんよ?
そんなこんなでシオ保護回です。
捕獲?いいえ保護です
「いやあ、ご苦労様!たぶん今日が最後のお願いだ。」
「……顔が近いです。」
乗り出していた身を戻していく目の前の博士。何が嬉しいのかよく分からないけど、最後だって言うならいいだろう。これまでやってきた八回のミッションは無駄ではなかったということだ。
「で?今日は何をしろってんだ。面倒なもんばっかやらせやがって……」
いつものようにエントランスに降りた私とソーマは、やはりいつものようにヒバリさんから呼び出しを告げられた。装備の強化がしたいのを押さえつつ来たものの……無駄な長話でソーマはすでに不機嫌に……
「うん。今回はね……」
*
「受け渡します!」
「サンキュ!」
シユウがふらついている間にコウタへとアラガミバレットを受け渡しつつ神機を剣形態へ。サクヤさんはシユウの向こう側だから受け渡せないけど……大丈夫。まだリンクバーストの時間は残ってる。
体勢を立て直した目標の翼を引き裂く。その痛みからかダウンしたシユウから一旦離れる。
「畳みかけるわよ!」
「了解!」
私が下がったのを確認しつつのサクヤさんの号令で二人がアラガミバレットを放つ。両方とも濃縮瀑炎玉だ。
「これで……」
その爆発が収まりきったのとタイミングを合わせてシユウの頭から神機で貫く。
「終わり!」
刃の背に手を当てて下へと思いっきり押し切る。数秒の痙攣の後、ピクリとも動かなくなった。
「さ、コアを回収しちゃわないとね。」
「あ、はい。」
一つ息を吐いてから捕食体制に入る。……そのまま喰らってしまおうとしたのだが……
「それ、ちょっと待った。」
*
……お、気配が消えた。終わったかな?
「……終わったみてえだな。」
「だね。」
最近気が付いたことだが、どうやら私とソーマは集中すれば近くにいるアラガミの気配をある程度正確に感じ取れるようだ。範囲は五十メートルくらいだろう。
「ふむ。じゃあ少し急がないと。」
……この廃寺エリアまで連れていってくれとか頼んできた博士曰く、コア同士の共鳴が起こって云々。
「もうそこにいますよ?」
「え?ああ、本当だね。」
私たちから少しだけ離れた石段の上に三人はいた。コアを回収しようとするアリサへと博士が声をかける。
「それ、ちょっと待った。」
三人とも何事かというような表情で振り向いた。
「えっ?」
「博士?何でここに?」
「二人まで……」
それぞれに不振がるみんなへと博士が再度声をかけた。
「話は後だ。とにかくそのアラガミはそのままにして、ちょっとこっちに来てくれるかな?」
訝しげな表情を浮かべながらも石段横の衝立に全員が隠れる。……さて……
「……あそこかな?」
「ああ。」
シユウの死骸が横たわっている場所のさらに東側にある崖の上。気配はそこにある。よく知るものだ。
「あの……何が来るんですか?」
アリサが聞いてくるが……はっきり言おう。
「私もよく分かんない。……まあ分かんないって言うよりも、ある意味分かりたくないのかもね。」
後半はほとんど独り言だ。実際、あの子がアラガミだっていうことはもう分かっているし……それをなかなか受け入れようとしない自分がいることも自覚している。
「……あまり知りたいとは思ってなかったことは確かだな……」
「……うん……」
彼の声も沈んでいた。
それでも、私たちの言葉とはとは対照的な博士の言葉で気持ちを入れ替える。
「来たよ……!」
さっき放っておいたシユウの死骸の上に、少女型のアラガミはいた。コアを漁って口元に持ってって……ん?ああ、食べたのか。
「よし、頼むよ。」
「了解。」
四人へ手で合図する。……リーダーってやっぱりちょっと面倒だなあ。
そのアラガミを囲むような形で五人が配置に付く。それに何かを感じたのか、あちこちに血を付着させながらこちらを振り向いた。
「オナカ……スイ……タ……ヨ?」
……なかなかに恐ろしい光景だ。コウタは息をのみ、アリサは明らかに敵意を剥き出しにしている。……って……しゃべった!?
「いやあ、ごくろうさま!」
そこへ博士が出てくる。少女型の視線は博士の方向へと動いた。
「ソーマと神楽君もありがとう。おかげでこの場にいあわすことができたよ。」
「いやそれはいいんですけど……」
私たちにそう言った後、少女型へも話しかけた。いったいぜんたい何を考えているのか分からない。
「これまでお預けにしていてすまなかったね。君も一緒に来てくれるかな?」
当の少女型はといえば、構えつつ後ずさっている。怯えているのが見て……いや、感じ取れた。でもそこに敵意は微塵も感じられない。これだけの人に囲まれたことも、この博士みたいな反応をされたこともないのだろう。
たぶん、彼女がこれまでに出会った人間は……本当の意味ではいないのだ。
「……博士、ちょっと下がってください。」
「え?」
博士と……彼女の間に入る。
「大丈夫。おいで?」
手を開いている自分に自分でも驚いた。ついさっきまで受け入れようとは考えもしなかったのに……
そんなほんの一瞬で変化した私の心は、昔家族と過ごしていた時のように暖かかった。後でアリサが話していたところによれば表情まで優しくなっていたらしい。
それが通じたのかは分からないけど、彼女は少し固まってから満面の笑みで飛び込んで、私はそれを何の抵抗もなく受け止めていた。同時にどこかの光景が目に映る。
海沿いの町。エイジス島を臨むその場所で、たくさんの崩れた家屋が散っている。血の飛び散ったその惨状の中、倒れ伏す人間の少女。その体からは徐々に色が抜けていき、最後は真っ白になって立ち上がった。自分の体を見て、泣き叫んで。泣き止んだ頃にはその目に人としての光はなくなっていた。……アラガミ化した、ということなのだろう。これまでもそういった事例は発生している。この子と違って、本当にただのアラガミになってしまったらしいけど。
……最後に見たのはエイジス島。どこか違和感があるその島が徐々に消えていった。
その島が、今私の右側に見える。……感応現象が終わったのだろう。
「……もう、大丈夫だからね。」
頭をすり付けるようにしながら抱きつく少女。その白く小さな頭を撫でた。ちょっぴり強く抱きしめながら。
*
それからしばらくして。
「「「ええええええええ!」」」
「だよねー♪」
「当たり前だろ。」
ソファーに座った私。私の膝に座ってアラガミのコアのストックやアラガミ素材を食べている少女。横に立っているソーマ。……訳の分からないとんでもないポーズを取っている三人。あいかわらずのんびりしている博士。そんな6人が研究室でだべっていた。
「あの……今何て……」
「うん。何度でも言おう。あれはアラガミだよ。」
この子を手で示しつつ語る。その落ち着いた口調に対して他の三人はそうもいかないようで。
「ちょっ!まっ!あぶっ!」
「ええっ!あ……」
わたわたと騒ぐアリサとコウタへソーマが少し笑いながら口を開いた。
「……人は喰わねえだろ。間違いなく。」
そう言いつつ彼女の頭を撫でる。それに目を細めて気持ちよさそうにしている様はどう見ても幼い少女にしか見えない。
「偏食傾向がさらに上位のアラガミに向いているようだからね。さっきみたいによほどお腹が空いていなければ問題ないさ。」
博士からの補足もあって、三人はやっとまともな体制へと戻った。
「とにかくあの子のことは誰に対しても秘密にすること。いいね?」
続く言葉。今度はサクヤさんが反論する形となった。
「しかし……せめて教官と支部長には報告しなければ……」
が……
「サクヤ君。君は、人類の守護者たる神機使いが、その前線基地であるアナグラに、アラガミを連れ込んだ、と、そう報告する気なんだね?」
「それは……」
さらに言葉を繋げようとするサクヤさんに、博士が続けて耳打ちする。何を話したのかはわからないけど……それを最後に二人の会話は終わった。
「そう。すでに僕らは共犯者というわけさ。よろしく頼むよ。」
いつも以上に怪しい微笑を浮かべながら語る博士を余所に、私と私の膝の上にいる少女とは顔を見合わせて笑っていた。
*
「でも驚いたよね。あの子、全然アラガミって感じがしないし。」
「違うのは飯くらいだろ。……まだ知能は低いみてえだが。」
「それはその内なんとでもなるんじゃない?」
「多分な。一応アラガミである以上、学習能力は高いはずだ。」
博士の話では、もともとの人間としての記憶が若干ながら残っており、かつ私との感応現象でいくらかの知識の共有をしたのではないか、とのことだ。だからこそ人を捕喰対象とは考えず、かつこれ以上の外見的変化は見込まれないのだとか。彼の言い方を借りるなら、人と同じくとりあえずの進化の袋小路に入ったアラガミ、そんな位置づけらしい。
その後も博士の話は続いたのだが、その議論の中心であった当の彼女が寝てしまったわけで。解散した後、とりあえずソーマと私の部屋に来たのだ。
「……兵糧責めやらされてたとは思ってなかったけど。」
「コアも回収しろってのがあれのためだってのもな。」
「まさかご飯だなんて思わなかったよ……」
これまで博士に任されてきた八回の任務では全てコアを回収してくるようにと指示があった。研究にでも使うのかと思っていたら……あの子のご飯か。うん、盲点だった。
コーヒーを淹れるためにミルで豆を挽きながら少し考えてみる。といっても、何かわかるわけではない。ちょっとした考えの整理だ。
昔は人間で、アラガミに襲われてたまたまアラガミになって、それで放浪してたのを博士が保護して……あれ?
……何で今まで計測機にもかからなかったんだろう……
「どうかしたか?」
ソファーに座ったソーマが怪訝そうな顔で聞いてくる。
「うーんと……今日みたいに博士が位置を特定できるようなあの子が、何でアナグラそのものの探知に引っかからなかったのかなあ、って思ったんだけど……」
「……」
……彼自身も何とも言えないようだ。腕組みをしながら考え込んでいる。
「はい、コーヒー。」
「悪いな。」
その彼にコーヒーを差し出して私も座る。なおも考え込む彼はゆっくりとそのコーヒーを飲んでから言ってくれた。
「……旨い。」
「えへへ。」
自分でもわかるほどにこにこしながら鼻の下を人差し指でこする。こそばゆくなったときの癖だ。ソーマも含めた第一部隊の皆曰く、ずいぶんと可愛い仕草らしい。
「あ、ごめんね。変なこと聞いて。ひとまずおいといて良いよ。わかんないことだらけなんだから。」
なおも考えを巡らせる彼に言う。
「……それもそうか。」
難しい顔からふっと優しい表情になってこちらを向いた。私が大好きな表情の一つだ。
「うんうん。」
座ったまま彼にすり寄って肩に頭を垂れる。いつもはそうするだけでいろいろな不安が軽くなる。いろいろあったから私自身混乱して……だからそれを晴らそうとしたのだが……
思い浮かんでしまうのは彼女との感応現象で見たエイジス島。……何でこんなにも怖く感じるのだろう……
*
その頃、一機のヘリがアナグラからエイジスへと飛んでいた。
「なあアリサ。それって何なんだっけ?」
「……エイジス島に設置するための探知機です。この間不具合が起こったから取り替えるって教官が言ってたの聞いてなかったんですか?」
相変わらずというか……どうしようもないほどのバカっていうか……本当に毎回毎回ブリーフィングの内容が頭に入っていないんだから……
「あー、この間神楽とソーマが出たやつか。」
「何でそういうのは覚えているんですか……」
横の座席の上で固定された探知機が入っているというアタッシュケースを見やる。私とサクヤさん、それにコウタでこれをエイジスまで運ぶのがこの任務の目的。一日に何度も任務に出ることは少ないけど、まあ討伐任務二つではないから無理ではない。それにしても……何だか探知機にしては小さいような感じがする。前に運んだことがあるけど、確かその時は一抱えもある本体が神機のケースと同じくらいの大きさのケースに入れられていたはずだ。対して今回はごくごく普通の大きさのケース……それこそバレットやアラガミのコアの運搬に使うのと同じサイズなのだから、本当に探知機なのか?と少し変なところで疑っている自分がいる。
「サクヤさん、あとどのくらい?」
コウタが前の席にいるサクヤさんに声をかける。ちなみにサクヤさんは今はパイロットの補佐役に回っている。やっぱり操縦可能な人が少ないっていうのは大変だ。
「だいたい十分くらいね。着陸準備はしておいて。」
「了解。」
「わかりました。」
なんとなく不安だけど……まあいいか。とにかく任務を終わらせよう。自分の中でそう切り替えた。
シオの過去は完全に私のイメージですのであしからず…