GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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いやはや…お久しぶりでございますです。
もーめんどくさい定期テストとか言うやからがですねウダウダウダ…
まあその辺の私事は置いておくとしまして。今回はさほど物語に進展はありません。のんびりお付き合いください。


第三章 進む神話
そしていつもの一日へ


そしていつもの一日へ

 

……隣にソーマがいる。私と同じ、生まれたままの格好だ。

 

「ふふっ……おはよう。」

 

それでも日課は欠かさない。その日の始まりの合図だから。

 

「日課か?」

 

突然声がかかる。聞き慣れた、愛しい声。

 

「あ、うん。……起きてたんだ。」

「横で動かれたらな。」

「あはは。確かに。」

 

手元に置いておいた下着を着る。昨日買ってもらった服はクローゼットにしまったから取りに行かないと。

 

「今日はどうするんだ?」

 

彼も立ち上がり、ソファーの上に脱いでいた服を着る。

 

「うーん……とりあえずは重たくないミッションかなあ。一応病み上がりだし。」

「まあ、それもそうだ。」

 

その会話の間に着替えを済ませる。

 

「……戦闘服じゃねえんだったな。悪い。着替えてくる。」

「うん。それじゃあまた後で。」

「ああ。」

 

さてと、今日はどんな日になるかなあ。

 

   *

 

「おはよー。」

 

エントランスに出て……あれ?何でこんなに人が……

 

「あれ?神楽さん、今日ずいぶんゆっくりしてますね。どうかしたんですか?」

 

……アリサから聞かれる。……えっと、ゆっくりってまさか……

 

「いつも二時間くらい前には出てるって聞いてたんですけど……」

「あ、アリサ、今何時?」

「もう九時ですよ?」

 

……どうやら相当ぐっすりと眠ていたようだ。いつもならその二、三時間前には出撃しているのに……

 

「え、えーっと……アリサは今日行く任務って決まってるの?」

「はい。コウタとまた軽めの任務に行くんです。一応前線にも復帰しましたけど、もうちょっと勘を取り戻さないといけませんから。」

 

コウタと一緒にかあ。アリサも変わったなあ。

 

「そっかあ……ごめんね。あの時断っちゃって……」

 

彼女から戦い方を教えてほしいと頼まれたとき、私は自分本位なことで断っていた。たしかに、承ける義務があったわけではない。でもその行為が彼女を悲しませたのも事実だろう。

 

「そんな、大丈夫ですよ。いろいろあって大変みたいだっていうのはコウタから聞きましたから。」

「……コウタからっていうのが地味に不安なんだけど……」

「その辺も大丈夫です。脚色してそうなところは信じてませんから。」

 

……さすがというか何というか……

 

「あはは……まあとにかく、がんばってね。」

「はい!それにしても、その服すごく似合ってますよ。ソーマからのプレゼントでしたっけ。」

「あ、うん。ありがと。……戦闘服ではあるんだけどねえ……なんか任務に着ていきたくないくらいだよ。」

「……けど他の服がないと。」

「その通り。」

 

その後すぐに出撃ゲートへと向かったアリサ。その背にはもう迷いは感じられず、かつこれまでの意固地になっているような様子もなくなっていた。そういえば、彼女の評価も上がり始めているらしい。これまでの戦績とあわせて最近の彼女の変わり具合がいい方向に向かっているようだ。

 

「あれ?今日は遅いんだね。」

 

その出撃ゲートから出てくる人もいた。

 

「おはよーリッカさん。いやあ……遅いっていうかぐっすり寝てたっていうか……」

「ふーん。あ、神機の方はフルメンテかけておいたよ。……しかしまあずいぶんと乱雑な扱いをしてくれちゃったようだねえ……」

「うぐっ!」

 

ソーマを助けに行った時……実は神機がほぼ限界になってしまった。理由は単純で、私の使い方があの日特に荒かったから。

その私をじと目で見ているリッカさんが目の前にいるわけで……

 

「……ごめんなさい。」

「よろしい。」

 

……いいのか?本当に……

 

「しかしまあ……きれいだねえ、その服。」

「あ、それ本日二回目。さっきアリサからも言ってもらったんだー。やっぱり、けっこうそんなふうに思ったりするの?さっきからいろんな方向から羨ましいオーラを浴びせられてるんだけど……」

 

こっちが窮屈になりそうなほどの羨望の、といえば聞こえのいい嫉妬の目線。ええっと……結構怖いよ?

 

「私はそうでもないかなあ……きれいだとは思うけど、私自身はファッションに興味がある訳じゃないからね。」

「……そういうもの?」

「じゃないの?」

 

うーん……そんなものかあ……

 

「さあて、そろそろメンテに戻るよ。とにかく、今日は無理しないように。いいね?」

「わかってる。じゃあ、また後で。」

 

手を振りながらまた格納庫へと歩いていくリッカさん。昨日あんな話をした後だからだろうか。なんだか不思議な気持ちだ。

その後ろ姿を見送ったくらいでエレベーターのドアが開いた。

 

「……この時間だと多いな。」

「まあ、ねえ……」

 

降りてきたのはソーマだ。

 

「任務はどうするんだ?」

「まだ決めてない。降りた瞬間にアリサとリッカさんに続けざまに捕まって……」

「……なるほどな……」

 

二人でエントランスの一階に降り、カウンターへと向かう。

 

「おはよ。すっかり寝坊しちゃった。」

「おはようございます。確かに……いつもと比べると大寝坊ですね……」

 

……し、辛辣なお言葉で……

 

「んとさ、今日軽めの任務って入ってない?」

「軽めですか……あ、旧市街地にグボロ・グボロの堕天種が出現してますね。それと平原にシユウが一体。こちらも堕天種です。」

 

……最近、堕天種が急増している。先日の超大規模発生の時にも堕天種の数が半数を占めていた。

 

「ふむふむ。ソーマ、どっちにする?」

 

とりあえずソーマに確認。私はどっちでもいいんだけど……

 

「まあ、旧市街の方だな。」

「そう?じゃあグボロの方受注で。」

 

ソーマの提案によりグボロに行くことになった。にしてもずいぶん決めるの早かったなあ……何かあるのかな?

 

「了解しました。あ、病み上がりなんですから……」

 

ヒバリさんから忠告が入りそうになる。

 

「わかってる。無茶はしないで帰ってくるって。」

「はい。それではお気を付けて。」

 

さあてさて、前線復帰だ。

 

   *

 

「へーえ。じゃあ神楽のやつ元気になったんだ。」

「はい。もう体の方も何でもなさそうでした。」

 

平原でのボルグ・カムランの討伐。それが今日の任務内容だった。今は迎えのヘリを待っているところだ。

 

「神楽が元気じゃないと結構大変だからなあ。四日前なんて、スサノオの討伐に第三部隊がかり出されそうだったんだぜ?神楽がやばいから休ませないとってツバキさんが考えたみたいでさ。でもうちは誰も残ってなかったし第二部隊も任務中で、あやうく第三部隊が出そうなところで結局神楽が帰って来ちゃったから……」

「……逆効果だった、と。」

「そういうこと。」

 

……スサノオの討伐……帰ってきてから行ったってまさか……

 

「……その前に行っていた任務って何だったんですか?」

「セクメトの討伐。シユウの第二種接触禁忌種だって聞いたことがあるけど……」

 

接触禁忌種とのソロ戦を一日に二回なんて……聞いただけでも吐き気がするようなハードスケジュールだ。私だったら間違いなく潰れている。

 

「それにしても、もう三回になるんだな。アリサと任務に出たのって。」

 

話題を変えつつどこか感慨深げな様子で話しているコウタ。

 

「……そうですね。ちょうど一昨日からですし。それがどうかしたんですか?」

「いや、やっぱりアリサって強いんだなあって思ってさ。」

「え?」

 

予想外の発言だった。……私が強い、それ自体はこれまでも何度か言われてきていた。とはいえ、それはあくまでも戦闘時の評価を受けるときであってこういう時に言われるようなことではない。

 

「だってさ、あんなことがあった後じゃあ俺だったら絶対動けないよ。特に自分から戦線復帰なんて考えもしないと思う。」

 

私の様子を若干伺いながら話しているように見えた。

 

「なのにアリサはもう何度もリハビリも兼ねて実戦に出てる。だからすごいなって思ったんだ。」

「……」

 

対して私は無言。何を言えばいいのかも分からず、何をしようとするでもなくコウタの話を聞いていた。

 

「なんて、俺が言うことじゃないよな。まあとにかく、これからもがんばろうぜ。」

「……はい!」

 

そんな私に、文句一つ言わずに付き合ってくれている。それを嬉しいとすら感じるようになっていた。

 

   *

 

同じ頃、旧市街の教会跡。

 

「よっ……と。」

 

ちょうどグボロ・グボロの堕天種の討伐が完了していた。

 

「うん。普通かな。」

「そんなもんだろ。」

 

コアを無傷で回収したわけでもなく、特にレア物を手に入れたわけでもない。何の変哲もない戦果だ。

 

「ヒバリさん、回収お願い。」

 

無線でヒバリさんに任務完了を告げる。その間ソーマはといえば……

 

「……何してるの?」

 

北東の角の床を凝視していた。

 

「来てみろ。」

「?」

 

答える間もその位置から目を離さない。よっぽど気になる物があるようだ。

傍に行くと、彼はある一点を指さした。そこには真っ白な何かの欠片のような物が落ちている。

 

「何だか分かるか?」

「分かるかって……?」

「恐らくだが、例の人型アラガミの一部だ。形からして結晶化しているだけの頭髪だな。」

 

そういわれて記憶を探る。……朧気ではあるが……実際それに酷似しているようだ。

 

「確かに……でも何で?」

「そこまでは分からねえが……まあアラガミ同士でやり合ったときに落ちたのかもな。結晶になってんのは瓦礫から何か溶けだしてるだけだろ。」

 

そう言いながら腰を屈め、一瞬指先で触れてみてからその結晶を持った。もしかしてこれみたいなのを探すのが目的だったのかな。すぐここに決めたのって。

 

「とにかく戻ったら榊のやつに渡そう。……多少なり何か分かればいいんだけどな……」

「まあ少しは頼りになる人だし、大丈夫じゃない?」

 

少しは、だが。

 

「そう願う。」

 

苦笑しながら笑った彼に続いて教会を後にした。何か分かるかなあ……




ふう。もうGE2発売までそう日がないというのに…まだここか。

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