GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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どうもどうも。何と言うか…時間が経つのは早いもので、世間は卒業式のラッシュですね。
いきなり何を言い出したかといえば、ですね…
例のアンケート(投票者一名…)なんですが、小ネタをやることに決定したんですよ。
とりあえず手始めにこの時期に合ったものを出そうかなあ、と思いまして…
時間設定はGE本編終了の翌年の三月と、同じく一年半後です。


Other side's story. No.1

決意

 

「……」

 

任務終わりの昼下がり。私宛の手紙が届いていた。差出人は、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ。エリックさんの妹だ。

……コウタとの初陣で、私が助けた少女でもある。

 

《……へえ……あの子が……》

【うん。】

 

意外ではあるけど、思い返せばどこか納得できる。そんな決意が、文面からは見て取れた。

 

《……ちゃんと、全部伝えたんだよね?》

【うん。この仕事の、辛さも嬉しさも全部。】

 

……たとえ無理かもしれなくても、少しでもお兄ちゃんと神楽さんに近付きたい、かあ……

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「エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ。」

「はいっ!」

 

エリナちゃんの卒業式。エリックさんから誘われる形での出席だ。

 

「……ここまでで一番はっきり返事しましたね。」

「ああ。」

 

ソーマとエリックさんの間に入る位置で壁にもたれ掛かり、彼女が証書を手渡されるのを見ていた。……誰よりも堂々としていた、と言っても過言ではないだろう。

……それを見て涙しているのは、他でもなくエリックさんだ。

 

「……お前が泣いてどうすんだ。」

「ああ……いや……すまない。」

「やっぱり喜んであげなきゃだめですよ。病気だって治ったんですから。」

「……ああ……」

 

授与が済むと、それぞれが一言言ってからステージを降りる。ここまでずっと変わり映えのしない発言が繰り返されていただけに、私とソーマは帰る準備に入ろうとしたのだが……

 

「……私が今ここにいられるのは、両親とお兄ちゃん。それに、ある神機使いの方のおかげです。」

 

ステージ上から聞こえたエリナちゃんの声。

 

「……私?」

「だとは思うが……」

 

ソーマと顔を見合わせつつ、彼女の言葉が続くのを待った。

 

「病弱で、ろくに逃げることも出来なかった私を必死で守ってくれたこと、絶対に忘れません。」

「……あ……」

 

言いながら、涙を拭った。

……上げた顔が向けられた先は、完璧に私がいる方向。

 

「この学校にいられたこと、この学校を卒業できること、全部に感謝しています。」

「エリナのやつ……校長まで困ってるじゃないか……」

「はっ。お前の妹らしいじゃねえか。」

 

驚きが張り付いていた顔に、徐々に笑みが浮かんできた。……今更ではあるけど、私はこの子を守れたんだなあ、って思えて……

 

「……私の夢は、その人みたいに誰かを助けられるようになることです。」

 

気が付けば、彼女に向かって親指を立てていた。

 

「たとえその夢が無理かもしれなくても、少しでもお兄ちゃんと神楽さんに近付いてみせます。」

 

……実名が出された瞬間、私は悟った。この話し手に見られつつ親指を立てているどこかの腕輪のない神機使いの誰かさんは、この後しばらくここから動けないだろう、と。

……居住区の情報屋、万屋が流した私の情報のなせる技によって。

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《あの時は驚いたよねー。》

【そりゃあねえ。】

 

……適合する神機が見つかった。エリナちゃんからの手紙の内容は、それが主なところだった。

絶対神楽さんみたいに、誰かを助けられる神機使いになります、だそうだ。

 

【……私のあれって助けるに入るのかな?】

《いやいや。どっちかって言えば無理を通しまくった結果でしょ。》

【やっぱりそうだよねえ……】

 

初めてヴァジュラと戦って、ぼろぼろになって。ソーマに背負ってもらいながらアナグラに帰った。そんな外部居住区防衛戦。

 

《まあいいんじゃない?助けたことは助けたんだし。》

【……そんなもんかなあ……】

《そんなもんでしょ。》

 

初めて誰かを守った日だった。今でも、私の中でかなり重要な意味を持つものの一つ……というより、一つの要石に近いものと言えるだろうか。

 

《……これで第一部隊に来たりしたら、面白いね。》

【……それ……たぶんがちがちになっちゃうんだけど……】

 

何にしても……すこし残念だ。この仕事に就くってことは、少なからず自分を身の危険にさらすこと。正直なところ、彼女の家ならば神機使いになることを強要されることはないのだから、この仕事はやめた方がいい……そんな風に言いたい気持ちがあることは否めない。ましてやここは激戦区だ。その危険度は跳ね上がる。

……今になって、もっと強く危険性について説明するべきだったのかな、って思っている自分もいるらしい。

 

《何言っても、やめないと思うよ?》

【……私もそう思う。】

 

……神楽さんと一緒に頑張れること、すごく嬉しいです……か。

 

【よっし!がんばろっ!】

《あれ?いきなりやる気出したね。》

【考えてもしょうがなさそうだし。】

《……はいはい。》

 

……私が救った命が、今度は別の誰かを救うために動こうとしている。どうしてか分からないけど、それが少しだけ嬉しく感じられた。




…小ネタというか何と言うか…まあ、エリナの入隊時期などの考察も含めている感じです。
とりあえずこのような形で出していく予定の「Other side's story. 」なんですが、次の投稿が行われた際に最上部へ移すようにしようと思っております。ちょうど御正月ネタがあるところです。

さて。次回からは「the second break」の内容になるんですが、アーサソールの設定改変がひどいのでマリーは出ません。原作での時間設定は2074年ですが、そちらも変更します。予めご了承ください。
…ちなみに…たぶん今までにないくらいの亀更新が続くかと…申し訳ありません。

それから、小ネタの内容で何かやって欲しい、と言うものがあれば何でもお申し付けください。できる限りやっていきたいと思います。

それではまた次回お会いしましょう。

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