GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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お久しぶりです。いやあ、やっと合宿が終わりました。地味に長ええ…
今回から第二章となりますが…神楽の性格が思いっきり明るくなります。
…と、言うよりも…これが本来の性格であったというか…いやいや、ネタばれに繋がっちゃいますね。
そんなわけで、どうぞお楽しみください。本日は二話投稿の予定です。


第二章 自分という名の存在
“いつも”の変化


“いつも”の変化

 

さて、そんなこんなからしばらくして今自室にいるのだが、さすがにあれはひどいような気がする。

たとえ動けるのだとしても私は怪我人のはずだ。それがなぜ目が覚めた途端に自室療養にされなければいけないのか!という話である。いやまあ理由は単純なんだけど。

そもそも論として第二病室は正確には病室ではない。新しい神機使いが来たときのため、または何かしらの会議を行うため、はたまたいざという時の民間人の収容するために随時空けてある部屋にベッドをおいたにすぎないのだ。そして第一病室はアリサが使用中。現在面会謝絶。まあ大丈夫だとは思うのだが……

とか何とか愚痴ってはいるが、その実すごく気分がいい。……当然だ。

 

「はぁ……やっぱりコーヒーが飲めるっていいなあ……」

「お前な、少しは療養中だってのを……」

「むう。堅いなあ相変わらず。もう一杯飲んで柔らかい考えを持ったらどうかな?」

 

ソーマと一緒にコーヒー飲めるんだもん。気分が良くならないはずもない。しかもソーマも怪我人だからいくらでも独り占め。

……さっき様子を見に来たリンドウさん達第一部隊員曰く、なんか……また性格変わったな、とのこと。……自覚はないが……変わったのだろうか?

別にこれといって変わったところはないはずなのだが……彼と並んでソファーに座って時折彼の肩に頭を乗せたり手を結んだりしながら楽しく談笑。何かおかしいのだろうか?

 

「それにしても右腕折られちゃうとは……ずいぶんこっぴどくやられてるねえ。」

「お前が言うな!」

 

あらら。きっちり返されちゃった。……うん。なんか嬉しい。

が、そんな時間を邪魔する無粋な輩が約一名。

 

「えーっと……神崎神楽君はすぐに研究室に来てくれ。ちょっと重要な話があるからね。」

……館内放送で私を呼ぶペイラー・榊……博士。

 

「うーん……ソーマ、一緒に来て。」

「待て、俺は呼ばれてねえ。」

 

相変わらず堅い彼である。

 

「良いじゃん良いじゃん♪」

 

その左手に抱きつきながら彼の肩に頭をすりすり。あ、端から見たら猫だ、今の私。

 

「……」

「ごろにゃ~ん♪」

「なっ!?」

 

ふむふむ。予想外の出来事には耐性がないのか。完全に力が抜け落ちたようだ。

 

「よし行こう!」

「なっ……なあっ!?ちょっと待て!」

 

叫ぶソーマ。そんな彼を引っ張っていく私。……うーん……端から見た感想が怖い。

 

   *

 

「ええっと……神楽君を呼んだはずなんだが……」

「……連行され……」

「成り行きです。」

 

よし。封じ込め完了。

 

「それで……何がどうして私が呼ばれたのかさっさと聞きたいのですが。」

 

うん。それが問題なんだよね。まあだいたい予測は付いてるんだけど……

 

「当然、その右腕と君の体についてさ。」

「やっぱりですか。」

 

協会に閉じこめられたときに壊された腕輪。普通なら壊された時点でアラガミ化が進行し始めるのだが、私の場合は何も起こっていない。

それは単に……

 

「君の体は……全てオラクル細胞で構成されているようだ。」

「そうですよ?」

 

……知ってるし。

 

「やっぱり……あの腕輪は飾りだったのかい?」

「アラガミの反応を隠すための装置とのことですが?」

 

ぶっちゃけた話、無粋なる榊……博士に言われるまでもなく、私はアラガミだ。経緯は、まだソーマにすら話していない。

ちなみにその装置はここの職員の人が秘密裏に入れ替えてくれたもの。……ちょっとしたコネがある。

 

「……調べて良いかい?」

 

そんなことだろうと思いました……

 

「またずいぶんとすごいことを言いますね……」

「まあ……学者の性、というところかな?やっぱり目の前に良い研究対象がいるとねえ。」

 

……研究対象?

 

「……そんなふざけた理由でしたら……どうぞ御逝去なさりやがってください♪」

 

手を下腹部の前で重ね、首を右に倒し、満面の笑みを浮かべつつ眼を笑わせず、後ろに私は怒っていますオーラを出しながら、あくまで言葉は……あれ?なんか日本語としておかしい文章になってるような……まあ良いか。

同時にきびすを返す。……扉の前で暇そうに突っ立っていたソーマの手を握りながら。

 

   *

 

その後二人して支部長に呼び出されて……長々と面倒な……訂正。ありがたいお言葉を賜り、私だけ先に帰されてしまい……

 

「暇だよお……」

「そう言われましても……」

 

エントランスでヒバリさんに絡んでいるという次第だ。

 

「暇だっていうのは私たちにとってはアラガミが来ていないってことですし、それはそれで良いんじゃないですか?」

「そうなんだけどさあ……毎日出撃してたから、出撃もなくソーマといるわけでもなくってなるとちょっと……」

 

一昨日までだったら……ソーマと、じゃなくってみんなとだったのかなあ。

 

「え、えっと、それならリンドウさんやサクヤさんに会いに行くというのは?」

「却下。あのイチャイチャ状態に入る勇気はない。」

「な、なるほど……」

 

あの二人……実はこの間帰還してからというもの、リンドウさんの部屋でずっとイチャイチャしているのだ。あの中に入ったら生きて帰ってこられるかすら怪しい。

 

「そ、それじゃあコウタさんに……」

「もっと却下。コウタと一緒にいたらバガラリーっていうのを五時間は見る羽目になる。」

「う……」

 

前に彼の部屋にいったことがあるのだが……棚の上には何かのフィギュア、床にはジュースなどの缶、ベッドの横には何かの映像ディスク、スクリーンには誰かが映っているという確実に異質な状態。しかもそこに入って五分でバガラリーなるものを一話から見せられた。……もう勘弁。

 

「だったら……第二第三部隊の方のところにでも……」

「うーん……部屋に遊びに行くような仲の人がいないんだよねえ。ほら、カノンさんは自主訓練中だし。」

「……八方塞がりですね……」

「そうなんだよ。」

 

だからここに来てヒバリさんに絡んでいるのだ。

「そういえばアリサさん、まだ面会謝絶らしいですけど……大丈夫でしょうか……」

「さっき病室の横を通ったときは寝てたみたいだけど……ずいぶん静かだったし。何とかなるといいんだけどね。あのときはずいぶん取り乱してたし、もしかしたら昔何かあったのかな?」

 

それは自分がそうであるが故の考え。一概に彼女に当てはめて良いものではないことはわかっているのだが……

 

『……パパ……?ママっ……?やめて……食べないでっ……!』

 

あのとき彼女が言った言葉が思い出される。食べないで……か。

 

「あの……神楽さん?」

 

ヒバリさんの声で我に返る。

 

「あ、ううん。何でもない。」

「そうですか?」

 

まだ疑っているようだけど、こればっかりは彼女に話したってしょうがない。まだ確証も何もないのだ。いたずらに噂を立てるわけにもいかないだろう。

 

「ところで、腕輪なくって大丈夫なんですか?……というか……アナグラの中に常にアラガミの反応があると私としても……その……」

 

ああ確かに……いくら何でも自分の家みたいな場所にアラガミがいるって出てたらねえ。

 

「うーん……とりあえず隠す必要もなくなったから、私のコア反応だけは表示しないようにとか……いろいろ対策を取ろうとはしてるらしいよ?最有力はあの腕輪みたいなのを付けておくってことだけど。今リッカが作ってくれてるんだ。……重いからやなんだけどねえ……」

「あ、そうなんですか。いつまでもこの状態だとさすがにまずいですからねえ……」

 

さすがに言葉には出さないが……言外に早くしてほしい、というニュアンスが含まれている。まあ、当然だ。だいたいヒバリさんは悪気があってそう思っているわけではない。単純に落ち着かないのだろう。

 

「そういえば、神楽さんとリンドウさんが倒した例のヴァジュラ種なんですけど……名称、どうします?」

「名称?」

 

……とてつもなく面倒でとてつもなく嫌なアラガミだったが、やっぱり興味はある。……名称をどうするって?

 

「神楽さんとリンドウさんが初の接触者兼初の討伐者なので、一応名前を付けても良いことになっているんです。……リンドウさんは勝手にやってくれ、だそうですが……」

 

ほうほう。

 

「うーん……Prettily-Martyr……ちょっと語呂が……プリティヴィ・マータ……うん。これで決定で。」

「プリティヴィ・マータ、ですね。本部に送信しておきます。ところで、何か意味があるんですか?」

 

意味はまあ直訳で良いんだけど……

 

「元はPrettily-Martyr。直訳で、上品な殉教者って感じかな。あれのイメージが私の中でそんなのだし。」

 

と、そこへ……

 

「それはインド神話の地母神の名前だろうが……どっからどうやったら全く同じ名前を全く違う言語で表現できる。」

 

ソーマが来た。

はっきり言っておくが……私は今までとてつもなく暇だった。それは単にソーマがいなくなったから。そして……その彼がエレベーターから降りてきたとすれば……

 

「やったあ!暇が解消される!ヒバリさん!またね!」

 

……第一部隊員曰く、なんか前の明るい性格になったところっからさらに変わった、性格によって……

 

「おまっ!いきなり抱きつくんじゃ……ヒバリ!何でニヤニヤしてやがる!」

「いいえ?とっても微笑ましいなあ、なんてこと考えてませんよ?」

「考えてるじゃねえか!」

 

って流れに発展するのであった。

そんな、新しい“いつも”。




…お分かりかと思いますが、今回は完全にコメディ状態です。
ここまでがなんとなくシリアスだったので…

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