GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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…まんまです。タイトルが完全にそのまんまです。
これしか思いつかなかったんだよ!しょうがないだろ!だいたい○×□+@*・・_#%$=/……!(←言葉にならない言い訳)



蒼穹の月

蒼穹の月

 

さてさて、そんな大騒ぎから一週間が過ぎた頃……

 

「偵察任務、ですか?」

「おう。旧市街地のな。」

 

エントランスの二階では私とアリサ、そしてリンドウさんの三人がブリーフィングをしていた。

 

「下の臨時のかわいこちゃんの話ではだな……これまで未確認のコア反応波形が確認されたってことらしい。」

 

実は今日、ヒバリさんが休暇をもらって休みなのだ。支部長から日頃の頑張りのご褒美、と言う形のサプライズで貰ったらしく、オペレーターには別の人が付いている。まあ当然、いつものローテーションとは違う人という意味だから、臨時のかわいこちゃんとか言うリンドウさんの言葉は微妙に違う。

ちなみにヒバリさんはものすごく嬉しそうだった。訳を聞いたら、極東支部主催のバーゲンが開かれるのだとか。うーん……私も行きたかった。

 

「それで……何で私達を?」

「まあ一番は偵察任務の経験を積ませること。それと、いざ戦うとなっても問題ないと判断したってこと。んでもって第一部隊のメンバーを出しすぎるわけにはいかないってこと。さらに言えば最近おまえ達のコンビネーションが良いってことだ。」

「なるほど。」

 

なんかずいぶん誉められた感じがするのだが……

 

「あなたがそこまで誉めてくると逆に不気味なんですが……」

「うん。確かに。」

 

さっすがアリサ。同じようなことを感じてくれていた。……対してがっくりって感じのリンドウさん。

 

「……まあそんなわけだからよ……二時間後ぐらいにさっき言った地点に来ておいてくれ……」

 

ああ……エレベーターに乗り込む彼の背中から哀愁が……

 

   *

 

「来ない……」

「来ませんね……」

 

二人の不満げな声が重なる。理由はいつも通り。リンドウさんの重役出勤故である。

と、そこへ私達を二十分は待たせた自称重役さんが到着。

 

「おーう悪い悪い。遅れちまったか?」

 

相変わらずというかどうしようもないというか……

 

「はい。かれこれ十分は遅れています。」

「二時間後と言うからそれより少し早めに来てみれば……やっぱり遅れましたか。」

 

辛辣な私達。

 

「……悪い……さあ……行こうぜ……」

 

肩を落として歩き出すリンドウさんであった。

 

   *

 

そんなかんじで偵察開始後五分。教会の南東の端まで来た。ここまでの接触はなしっと。

そしてその南東の角をリンドウさんを先頭に北に折れて、と。

 

「お?何だ?何であいつらがいるんだ?」

「え?」

「何が……」

 

リンドウさんが見ていたのは教会の北東の角。そこにいたのは……

 

「何っ?」

「あれ?リンドウさん、何でここに?」

「どうして同一区画に二つのチームが……?どういうことっ?」

 

ソーマとサクヤさんとコウタ。第一部隊が全員、あり得ない形で出会ったのだ。

通常、一つの地域には一チームしか送られない。複数のチームが同じ場所に存在していては、神機使いの人数不足を補えなくなるからだ。当然、もともといたチームからの増援要請で合流することはあるものの、今回に関してはそんなわけもない。

 

「考えるのは後にしよう。とにかくさっさと済ませて帰るぞ。俺たちは中、おまえ達は外を警戒。良いな。」

 

こういうときのリーダーシップはさすがと言わざるを得ない。私とアリサは彼について教会内へと入り……同時に、最奥の破壊された壁。外と通じるその穴にアラガミが飛び入った。

私達を認めた瞬間に床へと飛び降りるそのアラガミ。

ヴァジュラだと思いそうになって、それは違うと悟る。骨格はヴァジュラだが、顔の部分が虎ではなく石膏の女神像のような物で形成され、背中のマントは青へと変わり、纏う雰囲気すらも違う。……どこか周囲を冷たくするかのよう。

 

「下がれアリサ!後方支援を頼む!神楽はこのまま前衛!」

「了解。」

 

……何だろう、この感じ……何かとてつもないことが起こるとでも言うような……

 

「くっそ……!堅えな!」

 

予感にかまけている場合ではないか。

 

「くっ……」

 

リンドウさんに続き左前足を切ろうとするものの、弾かれる。この白い部分は無理なようだ。そういった白く覆われた部分を除くと……現実的なのは胴体を攻撃すること。

 

「ふぅ……」

 

息を吐き出しつつ胴体を切り裂く。……どちらにしてもすさまじく堅い。斜め上から浅めに狙ったというのに、その切っ先は振り抜くことが出来なかった。

 

「神楽!下がれ!」

「っ!」

 

右足で蹴りつつ神機を抜き取る。真後ろへと離れた瞬間、足下からは氷の柱が幾本も突き出した。

そうしてアリサの辺りまで下がった私に聞こえる二つの音。

一つは外での戦闘音。目の前のアラガミと同じ声も聞こえた。……そしてもう一つ……

 

「……パパ……?ママっ……?やめて……食べないで……!」

「アリサ?」

「アリサ!どうしたあ!」

 

リンドウさんの声と重なる。が、それが聞こえている様子はない。

 

「……アジン……ドゥヴァ……トゥリー……」

 

こんどはそんな訳の分からないことまで言い出した。……その銃口が向けられた先にはリンドウさんがいた。

 

「アリサ?ねえアリサっ!……うっ……くう!」

 

後ろから飛んできた何か。弾き飛ばした最初の一発が壁に突き刺さり、それが氷柱のような氷弾であることを知る。続けて飛来した氷弾はガードしたのだが、シールドの特性上若干のダメージはくらってしまう。

その氷弾の、本来の標的であったアリサは……

 

「いやああ!やめてえええ!」

 

撃った。……真上に。

同時に感じる、先ほどの範囲攻撃の予兆。

 

「このっ……!」

 

まずアリサをこの部屋の外へと投げ飛ばす。……何ヶ所か擦りむいてしまうだろうが致し方ない。

その直後に足下から氷の柱が立ち上る。

 

「あうっ!」

 

……ダメージは大きい。それもとてつもなく……だが、致命傷ではないのも確かなのだ。

さあ、戦え。誰も死なせないために。

 

   *

 

「っ!何だ!」

 

中からの轟音。まずいことになっているのは間違いねえ。

 

「あなた……!いったい何を!」

 

先に中に入ったサクヤの声。誰に向かって……くそっ。考える暇もねえな。

 

「チッ!少し黙れ!」

 

剥き出しの肩を下段から切り上げる。判断しようとしていようが何していようが攻撃して来やがって……

 

「えっ!?通信が通じな……うわっ!」

 

コウタも教会内部へと引き下がる。……俺も下がるしかねえか。

入ると同時に声がする。

 

「命令だ!アリサを連れてさっさとアナグラに戻れ!」

「リンドウ!あなたも!」

「悪いがこいつらの相手してから帰るわ。配給ビール、取っておいてくれよ!」

 

何で崩れていやがる……

 

「だめよ!私も残って戦うわ!」

「聞こえないのか!アリサを連れてとっととアナグラに戻れ!サクヤ、全員を統率!ソーマ、退路を

開け!」

 

中からは未だに轟音がする。……この状況で、生きて帰ることができる確率は……

……神楽が……いない……?

 

「サクヤさん!行こう!このままじゃ全員共倒れだよ!」

「いやよ!リンドウ!」

 

その叫びに答えて、中から聞こえた声。

 

「サクヤさん!ソーマ!コウタ!行ってください!絶対に生きて帰りますから!」

 

……神楽……?

 

「ふざけるな!この状況で……」

 

俺の声は途中でかき消された。

 

「絶対に生きて帰ります!」

「っ……」

 

この状況……こっちの戦闘音も聞こえているこの状況で言い切った?

 

「私はもう……誰も死なせない!これ以上、誰かに大切な人を失う苦しみを味あわせない!……だから絶対に生きて帰ります!……ソーマ……私を信じてください。」

 

……こいつは……

 

「……行くぞ!」

 

二人に声をかける。サクヤすらも自ら動いた。コウタはアリサを背負う。

生きて帰る。あいつの言葉に、答えなくてどうする……

……ただ自分に言い聞かせている俺がいた。

 

   *

 

「……行ったか……」

「……行ってくれましたね……」

 

崩れた瓦礫に背を預けてぐったり座っている。そんな状態での締まらない会話。でも、どことなく、本当にどことなく安堵に包まれていた。これで四人は生き残ってくれる。そう……ソーマも。

一体目との交戦開始からしばらくして、三体までは倒した。それらが入ってきた穴からは、また別の個体が来る。残りがいくついるのかはわからない。

 

「はあ。ちょっとくらい休憩させてくれよ。体が保たないぜ……」

「ふふ……ほんとですねえ。まだ一本吸ってないんじゃないですか?」

「ま……こいつは捨てるっきゃねえなあ……」

 

三分の一ほど吸ったタバコを投げ捨てるリンドウさん。

何でだろう……こんな絶望的な状況で思い出すのは……

 

「……ソーマ……」

 

彼の背中で泣いたあの日。五年前からずっと忘れていた人の温もりを、彼は思い出させてくれた。

人でないものが、そんなものを求めて良いはずがない。そんな風に思って閉じこもっていた殻を、全部取り去ってくれた。

生きて帰る。自分でそう誓った。

そして、彼は応えてくれた。

 

「神楽あ……背中は預けたぜ。」

「……預かります。あ、交換条件で私の背中をお願いしますので。」

 

前はこんな言葉なんて言えなかった。彼が救ってくれて、やっと言えるようになった。

 

「ったく……緊張感ねえなあ……」

「緊張感ゼロの人が隣にいますから。」

「っはは。言うようになったな。……さあ、もう一踏ん張りだ。」

 

まだまだ、なんにも恩返しできていない。

 

「一踏ん張りで済むと良いんですけど。」

「おいおい……」

「冗談ですよ。……頑張りましょう?」

「おう。」

 

ソーマ……私は……生きて帰りますから。




今のところストーリー改変が一番大きいかもしれません。コウタとの初陣といい勝負ってところですかね…

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