GOD EATER The another story.   作:笠間葉月

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…疲れました…
いえ昨日五話投稿するとか言っておいて三話しか出せなかったものですから…即効で編集作業と修正作業終わらせたんですよ…うああ…疲れたあ…


新型仲間

新型仲間

 

「ふわぁ……」

 

最近は寝起きの気分がいい……

あの防壁が破られた日以来、昔のことをあまり夢に見なくなった。治療で寝ていた三日間も、リンドウさんが怪しかった日も、それから今日までの一月も昔の夢はほとんど見ず、見たとしても良い思い出ばかりだった。精神的に明るくなると悪い夢は見なくなる、とか言うけど本当なんだなあ……

 

「ふふっ……おはよう。」

 

前よりも笑っているようにすら見える写真の中の家族達。

さて、今日はちょっと特別な日だ。話は一昨日に遡る。

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いつものようにジャムを塗ったパンをかじっていると、サクヤさんが訪ねてきた。

 

「どうしたんですか?こんな朝早くに来るなんて。」

 

一応言っておこう。時間は午前五時である。

起きる時間は基本的に四時半頃。深く短時間で寝る、というのをやっていたら、いつのまにやら十時に寝て四時半に起きるなんてサイクルがある程度確立されてしまったのだ。

 

「あはは。リンドウが泊まっていかなかったらこのくらいに起きるのよ。」

 

……え?

 

「あ、あの……リンドウさんが泊まってくって……」

 

二人とも大人。幼なじみだという話。えっと……

 

「うーん……神楽ちゃんにはまだ早いかな?」

 

やっぱりそういうことですか……

 

「……そ、その……コーヒー……飲みますか?」

「あー、気にしなくって良いわよ。そんなに長居するようなことでもないし。」

 

いえ……そういうことではなくてですね……

 

「……私の精神安定のためにも飲んでください……」

 

うう……たぶん私の顔真っ赤だ……

 

「あははっ。それじゃあ頂くわ。」

「はい。……どうも……」

 

だめだこりゃ。そう思いつつミルを使ってコーヒーを淹れる。

 

「へえ。良い香り……」

「サクヤさんもそう思いますか?やっぱりこうやって淹れる方が香りが良くなるん……」

 

サクヤさんの方を見て、その後の言葉が言えなくなった。

 

「?どうかした?」

 

そんな私が不思議だったのだろう。サクヤさんが気にしてきた。

 

「あ、いえ……もうそろそろ良いですね。どうぞ。豆はあまり良いものじゃないんですけど……」

「ありがと。……あ、おいしい……」

 

コーヒーを飲んでそんな風な感想を漏らすサクヤさん。……その顔は、さっきから母に似ていた。

 

『うん、おいしい。どんどん上手になってるね。』

 

母から淹れ方を教えてもらってから毎日のようにコーヒーを淹れていた。慣れていくにつれて自分でもちょうど良い時間や量、温度などを探したりしていった。それで母に誉めてもらえるのが純粋に嬉しくて。

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。」

 

そうやって誉めてもらえたコーヒーを、また別の人から誉めてもらえるのも……やはり純粋に嬉しかった。

まあ、その後ガールズトーク状態になってしまったのは言うまでもない。男女の話に行きそうになったときは全力で方向転換したけど。

 

   *

 

ガールズトーク開始から十数分後。一つ気になることがあった。

 

「ところで、何かあったんですか?突然だったからなんかうやむやになっちゃいましたけど。」

 

サクヤさんはというと……

 

「……すっかり忘れてたわ……」

「うっ……」

 

どうしてそうなったんですか……あ、リンドウさんのくだりがあったからか。

 

「えっとね、例の新型の新人さんなんだけど、明後日ここに来るらしいのよ。」

「そうなんですか?」

「私も昨日の夜リンドウから聞いたんだけどね。」

 

ああ、と頷く私にサクヤさんは続ける。

 

「それでその教練なんだけど、新型特有の動きを教えてあげてほしいってツバキさんが言ってたらしいの。たとえば銃と剣の切り替えタイミングとか。」

 

ほうほう……えっ?

 

「あの、ここにいる新型って私だけ……ですよね?」

「ええ。だから……」

 

パン、と音を立てながら両の掌を顔の前で合わせるサクヤさん。ちょっと顔を横に倒し、片目を瞑りつつ……

 

「教えてあげて?」

 

………………

 

「えええええっ!ちょっ!私まだ新人……までいかなくっても人に教えられるような状態じゃないですっ!」

「大丈夫!もう一人前よ!もうヴァジュラと一人で戦ったって普通に勝てるじゃない!」

 

ガッツポーズと共に身を乗り出しながら無茶ぶりを言う。

 

「いや確かにヴァジュラなんてかわいい猫ちゃんに見えちゃいますけど……ってそういう問題じゃありません!」

 

一ヶ月の間に自分でも相当強くなったと自負している。この間ヴァジュラを一人で討伐に行くことになってしまったのだが……二戦目にして無傷で勝ってしまった。

その後も実戦経験を積みに積み……いやいや、今はそんなことを語っている場合ではない。

 

「そりゃあ前と比べれば格段に強くなってはいますけど……まだ人に教えられるほどじゃないですし、そもそも戦闘中に形態切り替えなんてほとんどしないですし……」

 

ぶっちゃけた話、こっちが教えてほしいくらいだ。大きめの隙でしか切り替えをしないほどなのだから。

 

「じゃあ、話し相手はかって出てくれる?来る子って、十五歳の女の子らしいの。」

 

……あ……これって逃げられないパターンだ。ニヤニヤしているサクヤさんを見ながらそう感じた。

 

「さすがに私とかリンドウみたいに年が離れていると厳しいし、ソーマはそもそも話そうとするかどうかも怪しいし、コウタは……ねえ。」

「ま、まあそうですね……」

 

きわめて同感。とはいえ……包囲網がさらに狭くなってしまっている。

 

「ってことで、お願い!」

 

さっきみたいに掌を合わせるサクヤさん。逆らえるはずもなく……

 

「……はいぃ……」

 

尻すぼみになりながら引き受けてしまうのだった。はあ……気の合う子だったらいいんだけど……

_____

___

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なんてやりとりがあったなんて露ほども知らないその新型の子が、今目の前にいる。きれいな子だ。

ロシア人らしいとても白い肌。すらっと長い四肢。マリンブルーの瞳。肩の辺りで切りそろえられた銀髪。端正ながらもどことなくあどけなさを持つ顔立ち。かわいい。っていうか、同じ女の子として羨ましい。服装がすごいけど。

 

「ロシア支部から転属となりました。アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。よろしくお願いします。」

 

わっ。声もすっごくきれい……

 

「女の子ならいつでも大歓迎だよ!」

 

コウタの発言。ソーマを始め、アリサちゃんや教官、そして当人を除く全員ががっくりと肩を落とす。が……

 

「よくそんな浮ついた考えでここまで生き残ってこられましたね。」

「へっ?」

 

怒りはないが完全に呆れかえっているようだ。今度はコウタも含めて同じリアクション。つまるところは面食らった。

 

「彼女は実戦経験こそ少ないが演習では優秀な成績を上げている。追い抜かれないように精進しろ。特にコウタ。」

 

教官からの辛辣な一言。

 

「名指し!?」

 

……コウタの嘆きが教官の耳に届くことはなく……

 

   *

 

さてさて、そんなちょっとした騒ぎから三時間後の座礁した空母上では……

 

「遅いですね。」

「まあリンドウさんは重役出勤の常連だから。」

 

任務に向けて待機している私とアリサちゃんがいた。クアトリガというアラガミの討伐任務であるこの任務で、わざわざ出撃ポイントで待機している理由は……リンドウさんがこないこと。

 

「そういえばアリサちゃんてさ……」

 

いろいろと聞いてみようかな、と思ってかけた言葉を遮られる。

 

「呼び捨てにしてください。子供扱いされているようで気分が悪くなります。」

 

うう……なぜこんなにも呼び捨てを好む人々が集まるのであろうか?

 

「じゃ、じゃあアリサってさ、コーヒーとか飲む?」

 

自分でも間の抜けた質問だと思ってしまうが、まあ当たり障りのないところではあるだろう。

 

「何でそんなことを聞かれたのかよくわかりませんが……コーヒーよりは紅茶派です。」

「そっかあ……」

 

そしてなぜコーヒーがあまり好かれないのであろう。

サクヤさんはコーヒーが大好きだそうだが……

リンドウさんは、コーヒー?そんなもんよりビールだビール!

コウタは、えーっ。ジュースの方がいいんだよな。

そしてソーマは……どうでもいい。

それぞれがそんな風に言葉を返してきた。なんだか寂しい……

 

「おー早いなお前ら。」

 

そしてやっと到着するリンドウさん。

 

「相変わらず重役出勤ですね……」

「重役だからな。」

 

いつもの会話なのだが、アリサの場合は違った。

 

「自覚の足らない……せいぜい旧型は旧型なりの仕事をして、くれぐれも邪魔はしないでください。」

 

言い放った。躊躇なく。

 

「ちょっ!アリサ……一応は上官なんだから……」

 

リンドウさんも少し驚いたようだったけど、すぐに私の言葉を遮った。

 

「っはは。ま、足引っ張らないようにがんばらせてもらうさ。」

 

そう軽く言いながらアリサの肩に手を置いたのだが……

 

「きゃあっ!」

 

アリサの方は叫びながら跳び退いた。

 

「……こりゃまたずいぶんと嫌われたもんだな。」

 

リンドウさんはそれについて何を言うでもないが、アリサからしてみるといくら何でも何も言わずにはいられないようで。

 

「あ、あの……すみません。そんなつもりじゃ……」

 

慌てる彼女を落ち着かせようとしてか、または別の理由でか、とにかく彼は落ち着いていた。

 

「……いいか?混乱しちまったときはな、空を見るんだ。そんで動物に似た雲を探してみろ。落ち着くぞ?」

 

経験や場慣れ。飄々とはしているけど、やはりこの人にはなかなかかないそうにない。

でも……空を見るかあ……お母さんと同じこと言ってる。

 

「なっ、何で私がそんなことっ!」

「いいからやれって。とにかく見つけるまではそこを動くな。これは命令だ。」

 

ほんと、かなわないなあ。

 

   *

 

アリサと別れて進むこと一分。再奥地までたどり着いた。ここまで会わなかったことを考えると……地下にいるのだろうか?

 

「アリサのことなんだがな……」

「はい?」

 

リンドウさんが口を開く。いつもとは違って真剣な表情だった。

 

「どうやら結構訳ありらしい。定期的にメンタルケアのプログラムもあるっていうし、まあ何かとみてやってくれ。頼むぞ。」

 

やはり、隊長だ。こんな時はふとそう思う。

 

「サクヤさんからも言われましたよ?話し相手になってあげてほしいって。」

 

そう告げると……

 

「なっ!くっそお……俺の仕事取っちまいやがったな。」

 

悔しそうに言ったものだ。まったく、仲の良いことで。

でも、その悔しそうな表情は次に言ったことと共に消えた。

 

「ところでだ。これは俺からのもう一つの頼みなんだけどな……」

「他にも何かあったんですか?」

「いや何かってほどじゃないんだが……」

 

そう言って続けた。

 

「何となく支部長様が新型をアナグラに集めようとしてる気がしてなあ……それとなく聞いてみてくんねえか?俺が聞くと後がめんどくさそうだからな。」

 

新型を集めている?……そういえば、新型が二人いるのって今のところここだけかもしれない。何かと情報は入りやすい新型配属の知らせだが……まだ一人もいないところだってあるのではなかったか?

……いやそれよりも……

 

「……そもそも聞くのが面倒なんじゃないですか?」

「そうとも言う。」

 

あぁ……やはりそうでしたか……

 

「まあそういうことだから頼む……おお。アリサのやつ、見つけたか。」

 

なんかさっきよりもさらに機嫌が悪くなっているような印象を受けるのだが……あれ?

 

「アリサ!」

 

彼女の後ろに巨大なものが現れる。どこか戦車を思わせる四本の脚部。装甲板を張り合わせたかのような胴体。髑髏状の頭部。左右に張り出したミサイルポッドと呼ばれる器官。間違いなくクアトリガだ。

 

「っ!」

 

振り向いた直後の彼女に六発のミサイルが降り注ぐ。それを……

 

「邪魔!」

 

スプレッドタイプの弾丸で全て撃ち落とした。……ベテランでもなかなか出来ない芸当だ。彼女の腕

は確からしい。

 

「射撃援護お願い!」

 

言葉をかけつつ前に出る。アリサは狙撃兵。私が前衛となるのが得策だ。私の後ろにはリンドウさんが続く。

 

「よーう。いい雲は見つかったか?」

 

なぜ今そんな話を……

 

「オウガテイル型の雲を見つけた自分に腹が立ちました!これで満足ですか!?」

「お、おう……」

 

……この日一番の不幸少女=アリサ。まあ、それはともかくとして……

 

「ちゃんと戦ってってば!」

 

前面の装甲板が開かれ、大型ミサイルを撃とうとしているのをそのミサイルを捕食して止める。直後に爆発。大きなダメージとなったのは疑うまでもない。爆風で飛ばされそうになったけどそこはご愛敬だ。

 

「リンドウさん!アリサ!」

 

二人に一発ずつアラガミバレットを受け渡す。

 

「サンキュー!」

「どうも……」

 

……アリサは素直じゃないだけであると信じたい……

まあ何にしても二人ともちゃんと戦い始めてくれたから良しとしよう。

アリアがクアトリガの頭部へと多数の弾丸を撃ち、その間にリンドウさんが右前足を切り裂いていく。

 

「ふうっ。ったく堅い奴だ。」

「そりゃあ金属みたいなものですから。」

 

一旦下がるリンドウさん。彼の神機はその前足を切断するには及ばず、三分の二まで切れ込みを入れるにとどまった。そして入れ替わりに突っ込む。

それを受けてか私に向けてミサイルが放たれる。

 

「……遅い。」

 

それら六発を回避しつつ後ろへ回り込み足を狙う。

 

「……ん……」

 

やはり堅い。ベルセルク発動中でも一撃で切断するのは骨が折れる。

後ろ足を一本失ったためにバランスが崩れる。最後の回避は、その巨大な胴体に押し潰されないためだ。

そして離れると同時にミサイルポッドが爆発する。アリサの弾丸だ。彼女の足下には数本の使い終わったOアンプルが転がっている。いつのまにか頭部の排熱器官も結合崩壊しているし、相当な数の弾丸を撃ったのだろう。……一度も銃剣の切り替えを行わず、というところに若干問題を感じるが。

という感じでぼろぼろになったクアトリガの前面装甲へとリンドウさんの神機が深々と突き刺さる。……完全に動かなくなった。

それを確認してからリンドウさんがコアを回収する。無傷だ。

 

「何でそんなに上手なんですか?……なんだか羨ましさすら感じるんですが。」

「んー?経験だ経験。」

 

経験かあ……飄々としているけどなんだかんだ言ってやっぱりこの人はすごい。今ではアナグラで一番の古株だし、これまでに討伐してきたアラガミの数だってとんでもなく多いのだろう。ウロヴォロスを一人で討伐したことがあるのは極東支部の中では彼だけなんだし。

 

「さあて、さっさと帰ってビールでも飲むとしますか!」

 

……ちょっと……いやかなり私生活に難ありだが。

そんなリンドウさんを見るアリサの目には、明らかな敵意があるように感じられた。




もうお気付きの方も多いかと思いますが…戦闘シーンを書くのはめちゃくちゃ苦手です。ご容赦を。
っていうか、昨日読み返してて思ったんですけど…原作ととてつもなく違ったストーリーになってますね。今回は特に。
なんとなくクアトが描きたくなってこうなったんですが…にしてもすさまじくストーリーが変わっているんだよなあ…
まあその辺は置いておいて、今日も複数話投稿になると思いますのでお付き合いください。

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