転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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--/■物語

『――、――!?』

 

 何やら機械的な音声が若干漏れており、「まだ足りなかったか」と追加のガムテープで更にぐるぐるまきにし、机の奥底に放り込んでおく。

 二回目ぐらい平穏で穏やかな日常を歩もうとする自分の目の前に突如、理由無く唐突に現れた不純物の処理に無事成功し、「良い仕事したなぁ」と爽快な笑みが溢れる。

 正月元旦に新しいパンツを履いたような爽やかな気分とはまさにこの事だろう。……元ネタなんだっけ?

 

「……しっかし、何で『高価な危険物』がぽんと置かれてやがるんだよ? 主に家のセキュリティ的な意味で、お兄さんびっくりよ」

 

 小学校入学記念の如く置かれ、机の奥底の彼方に放り込んだ『謎の物体A』は、嘗ての一回目の世界で憧れたような憧れてないような魔導師の杖――所謂『デバイス』らしき代物だった。

 

 

 01/魔導師になりません

 

 

 ――理由は解らないけど『デバイス』を手に入れた。さぁ、今日から君も『魔導師』だ!

 

 なんてなると思っているのだろうか?

 オレにはこれが地獄への片道切符にしか見えない。何処ぞの「僕と契約して魔法少女になってよ!」並の落とし穴にしか思えず、受け取り拒否を選んでやった。

 

(これを人知れずに忍び込んで配布した理由は? やった者の意図と目的は? それよりもどうして自分に? ……まさか、転生者として気づかれた? いや、日常的に演じているからその線は薄い。誰も自分が二回目の人生を歩んでいると知った者は居ない。――なら、自分でも気づかないが、魔力――いや、資質? 『リンカーコア』でも持っていたのだろうか? 『闇の書事件』で襲われないだろうな?)

 

 このままゴミの日に紛れ込ませても良いが、こんなオーバースペックの物体が陽の目に触れては色々厄介だろうという理由から、机の中に永久的に死蔵する事を選択する。 

 ……結果として、これが最善の選択だった事を後々に知る事となる。

 

 

 02/魔導師がいっぱい

 

 

「……ああもううるせぇっ!」

 

 深夜、とある轟音で目を覚ました自分は苛立ちを込めて窓の外を睨みつける。

 遥か彼方で、金色の光やら緑色の光やらが華々しく散っており、人目を弁えずにどんぱちやっている模様である。

 

 ――やはりというべきか、なんというべきか、不自然なまでに『デバイス』を配布されたのは自分一人ではなかったようだ。

 

 恐らくは主要キャラ、高町なのはを除くリンカーコア持ちに無差別に配布し、その結果が『魔法』という猛威を振るう無法者の量産である。

 ある日突然、常識外の力を手に入れたら、人という生き物は自分を自制出来ずに舞い上がるものである。その気持ちは分からなくもないが、せめて人知れずに迷惑掛けずにやって欲しいものだ。

 

(……というか、あの魔力光、どっちも初見だなぁ。明らかにおかしい奴は多々居たが、ヤバいほど数いるのかよ……)

 

 色々とげんなりする。一つの舞台に転生者は一人、とは限らず、確認しただけでも十数人以上居る見込みである。

 

(あんなに堂々とやって、目撃者が出たらどう処理するつもりかねぇ? いや、もしかしてあれで隠密行動のつもりなのだろうか?)

 

 便利な結界張っていて、資質のある者のみ知覚出来るとか、そんな都合の良いものを張っているのだろうか?

 ……そんな配慮の出来る奴が、真夜中に堂々と暴れ回らないだろうなぁとため息が溢れる。

 

 一体、この街はこれからどうなるのだろう?

 ――そんな浅い心配は、明らかに認識不足だったと後で思い知る事となるが、この時点で予測するには余りにも酷なものだった。

 

 

 03/武者姿の防護服?

 

 

 月村すずかとフラグ立てていた転生者らしき同級生が『行方不明』となった。

 狂乱する彼女の言葉を全面的に信じるなら「突如空から現れた巨大な鋼鉄の鎧姿の武者が首を両断して容赦無く討ち取った」らしいが――物騒な転生者も居たものだとげんなりする。

 

(しかし、時代錯誤も甚だしい全身和風鎧ねぇ。というか、空を舞う? もしかして劔冑――『装甲悪鬼村正』リスペクト? 趣味が悪いったらありゃしない)

 

 この時から、ある種のきな臭い予感が過ぎり、オレは一層一般人の演技を徹底するよう心掛け――幸いと言うべきか、不幸と呼ぶべきか、その予感は最悪なまでに的中していたのだった。

 

 

 04/魔導師が居なくなりました

 

 

 ――その一週間は最悪の一週間だったと断言出来る。

 

 終わる頃には、窮屈なまでに教室にずらりと並んだ机が幾つも空席になり、そして一気に減った。片付けられた。無くなったというより、亡くなったというべきか。

 

 連続殺人事件、深夜未明に侵入されて家族諸共皆殺しにされる凶悪事件。

 共通点はその同様の手口と、両親の遺体は全身の血を抜かれたが如く干乾びている事、殺害された家族の――オレと同年代の子だけが『行方不明』である事である。

 

 その犠牲者になった彼等と彼女等は等しく『転生者』だろうなぁと一目で解る人物であり、オレは誰にも悟られないように冷や汗を流す。

 

 オレに出来る事は他の一般人の生徒と同じように怯え、動揺するように演技し、誰にも悟られないようにする事のみである。

 

(……あの『デバイス』を配布した者と、殺し回っている狂人は幸運な事に別口か? 完全に組んでいたのなら、今頃オレの命もないだろうし――)

 

 真相の解明など危険過ぎて割に合わない。

 ただ、この最悪の時の中、自身の無事だけを祈るのみだった――。

 

 

 05/唯一にして最も遠い同類

 

 

 誰の思惑かは知らぬが、高町なのは世代の転生者は自分と後一人を除いて一人残らず駆逐された。

 

 ――そう、自分の他に、唯一人だけ生き延びた奴がいる。その事実は恐怖以外、何物でもなかった。

 

(……豊海柚葉。クラスは別だが――あの一回だけ、すれ違った際に理解出来た。あれは自分と同類の、それ以上の猫かぶりだと……!)

 

 その違和感は言語化して説明し辛い。直感だとか、非科学的なものを盛り沢山した経験則――所謂、同類だからこそ出遭った瞬間に解るという類のものである。

 

(そう、自分が気づいたのだから、向こうも恐らく気づいている……)

 

 思い出したくもない。あの一瞬の遭遇の時、奴は自分の目を射抜いて、確かに笑った。今までの演技が全て吹き飛びそうなほどの恐怖を味わった。

 

(あの一瞬だけで十分だ。あれと関わっては駄目だ。あれは自分が触れていい者じゃない。あれの視界に居て良い筈が無い……!)

 

 今のオレに出来る事は絶対にあれと人目の無い場所で遭遇しない事、出来る限り『彼女』の視界に入らない事、それを他人に不自然に思われないようにこなす事のみである。

 

 

 06/原作時期に転校生が大量に来ました

 

 

 この二年間で他の世代の転生者も粗方駆逐され、この原作からかけ離れた『魔都』はある種の小康状態になっていた。

 去年の十二月末には精神が狂い悶えそうな訳解らない天変地異が発生したような気がしたが、オレは何となく、何とか生き延びていた。

 

(……なーんか、日常的に演じ続けていると、元々がどうだったのかあやふやになってくる。これは『自分』として生きていると言えるのだろうか?)

 

 と、やや自分の本幹に関わる疑問が生じるが、見つかったら即死亡のかくれんぼを常時やっている感じなので、今は何よりも生き延びる事を優先する。

 誰だって無意味に死にたくないし、今世の両親に親孝行しない内は死ぬに死ねない。

 

(そういや、『物語』はまもなく始まるって具合だっけ? ……それで都合良く転校生が大量に押し寄せるとか、逆に哀れだな……)

 

 もう見るからに露骨に『なのは』、『アリサ』、『すずか』をうきうき気分で見ている転校生を見ながら、心の中でため息を零すと共に十字を切っておく。

 

 ……一体、何人が生き残る事が出来るだろうか。

 この地獄の一丁目よりも凄惨な『魔都』で、その実態を知って抗える者は現れるだろうか?

 

 

 07/転校生がいなくなりました

 

 

 一日で四人も『行方不明』になりましたとさ。いや、予想通り過ぎて何も言えないけど、あえて言わせて貰う。幾ら何でも早すぎるよ。

 

(その事実を突きつけられた転校生――名前覚えてないな、まぁすぐ居なくなるから覚える価値も無いか。その転校生は、体調不良を装って何処か行ったか)

 

 このまま『彼』も『行方不明』になるのだろうなぁと。

 内情を若干知る自分だけではない。周囲のクラスメイトも同じ感想を抱いていたのだから、この『魔都』の異常さを物語っている。

 

(オレの知っている『魔法少女リリカルなのは』ってのは、もっとハートフルな内容だったと思うんだけどなぁ。一体何処で道を違えたのだろうか)

 

 おっと、いかん。養豚場の豚を見るような目で転校生を見ていた。違えようのない事実だけど。

 『可哀想だけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね』って感じの。

 

(はて、それの元ネタは一体何だったのか、思い出せない――)

 

 

 08/フラグ折りやがりましたよ、コイツ

 

 

 あのまま間違い無く『行方不明』になるだろうなぁと思われた転校生『秋瀬直也』が平然と登校し――我等クラスメイト一同は幽霊を見る目で生還した『彼』を目の当たりにしたのだった。

 

(……ああ、思い出した。『ジョジョの奇妙な冒険』のリサリサ先生だったけ? 何でアイツの顔見て思い出したんだろうなぁ?)

 

 『彼』も『行方不明』になるだろうなぁとお通夜モードだった教室には驚嘆の色が色濃く――高町なのはが感極まって涙するというハプニングも発生した。

 

(そりゃ精神的にきっついよなぁ。顔知り合った奴が何人も消えていくんだし)

 

 明日は我が身かもしれない自分は気が気じゃないが、その動揺すら表に一切出せないもどかしさ。

 果たして、『彼』はこの『魔都』でも生き延びられるほど特別、いや、異常極まる転生者なのだろうか?

 

(何だろうなぁ、期待? それとも嫉妬? 自分で自分の感情が自己分析出来ないのも久しぶりだ)

 

 

 09/例外と同類の邂逅

 

 

 信じられないものを見た。まさしく我が目の正常具合を疑った。

 その日は昼過ぎに学校の窓ガラスが割れたり、校庭の木が何本も折れて倒壊したりと、何かと騒がしい普通な一日だったが、それすら全部吹き飛ばす異常事態が放課後になった直後に訪れた。

 

 ――ホームルームが終わった直後、先生が退出するより早くがらがらと扉が開き、あの、あの『豊海柚葉』が自分の教室のように堂々と入ってきた……!

 

(……は!? 何故お前が? 自分と同じく目立つ行動を極力取らない奴が何故此処に!? え? 何でっ!?)

 

 あの時の自分は動揺がもろに表情に出ているほど混乱していただろう。今考えると一生の不覚である。

 だが、そんな自分の一時の恥などどうでも良い。

 彼女は自分に見向きもせず一直線に――同じく驚愕して硬直している『彼』秋瀬直也の前で立ち止まった。

 

「ちょっと付き合ってくれる?」

 

 ……訳が解らないよ。

 

 気づいた時には教室を騒がせた二人はおらず――その後の二人の行動が記憶に残らないほど、自分は放心していたらしい。

 

(どういう事だ? 明らかに転生者である『彼』と堂々と接触を図るというのは、自分もまた転生者であると宣伝しているようなものであり――『彼女』は一般人の擬態を捨てて、猫かぶりを打ち捨てて、この混迷極まる壇上、つまりは舞台に立ったという事か?)

 

 その日はそればかりしか頭に浮かばず、延々と寝れなかった事だけは覚えている――。

 

 

 10/ボーイ・ミーツ・ガール

 

 

 朝のホームルーム前の日常光景に、廊下で仲良く談笑する『彼』と『彼女』が追加された。

 見えてる異常だが、最早言うまい。今はあの女とまともに話せる君を心から尊敬したい気持ちで一杯だ。

 出来る事なら陰ながら応援したいから、自分の視界から完全に消えてくれる事を望むばかりである。

 

(いやぁ、マジで感動しているよ? あの超怖い女と臆せず話せるその図太い神経に。もし転生者である事を打ち明けて話せるなら、この驚嘆と感動と疑問で一日以上話せる自信があるとも!)

 

 何かもう自分とは違う世界の人間っぽいから、今度からは君の事を秋瀬直也さんと、さん付けで呼ばせて貰おう。勿論、心の中だけだが。

 

 

 11/ボーイ・ミーツ・ガール(2)

 

 

 いやはや、やはり『彼』だけは別格だね。あの秋瀬直也さんは。

 一週間以上欠席して無事再登校する奇跡を起こすなんて、後にも先にも『彼』だけだろう。

 

(……そういや、もう『魔法少女リリカルなのは』の本編は始まっているんだっけ? という事は『夜中に起こった市街地限定の奇妙な地震』も『見るからに日本で起こる規模じゃないスーパーセル』も『ジュエルシード』の仕業なのかー。『ジュエルシード』すげーね)

 

 ……はて、樹木が肥大化して街中騒ぎになる現象は無かった気がするが、あと後者の実際に市民全員が避難する事になったあれはどう考えても別物の何かとしか思えないが、この際気にする事ではないだろう。

 

(さて、大事件だ兄弟。いや、オレに兄弟なんていないが、所謂その場のノリってヤツだ)

 

 通常通りなら、その手の(自分の中での)大事件は豊海柚葉が先立って何か行動し、秋瀬直也の方は完全に受け手なのだが、今回先に動いたのは『彼』の方だったのだ!

 

(そう、それはいつも通り、朝の廊下での逢瀬だったんだ。普段と違う点は豊海柚葉の機嫌が見るからに悪いという事で、今日起こるであろう修羅場を密かに楽しみにしていたのは秘密だ。一体『彼女』の機嫌を損ねるとか命知らずな事を平然とやれるなんてホント凄まじいなぁ、秋瀬直也さんは。まぁそんな大事をしたんだ、『彼』も緊張した面持ちで現れ――不機嫌だった豊海柚葉さえ変に感じるほどの緊張具合だったんだ。つまり、『彼女』の機嫌を損ねた以外の要因だったんだ、その緊張は)

 

 ……一体自分は何で盛り上がっているのか、自分自身が一番解らない始末である。

 そういえば、二人の事を視界外に行ってくれと望んだような気がしたが、誰よりも切実なまでに目で追って見ているのは気のせいだろう。多分、気のせいだ。気のせいったら気のせいである。

 

(そして『彼』は豊海柚葉の前に立って、二回、大きく深呼吸をした。弁解すべき本人など見えてないほどテンパっている様子であり、あの豊海柚葉もその奇妙な空気に飲み込まれていたほどだ。不機嫌を上回る困惑と言うべきか。――そして秋瀬直也さんは何とォッ! 「放課後、遊園地に行かないか……?」と言ったのだったッ!)

 

 うん、ホント、心底、コイツには絶対敵わないねと思ったよ。

 あんな、この世の恐怖全てが馬鹿馬鹿しくなるほど恐ろしい女に、真正面から嘘偽りなくデートのお誘いするなんざ、オレにはもう一回死んでも出来ないだろう。

 

(困惑の一瞬、豊海柚葉はいつもの余裕満々の表情で「あらあら、それはデートのお誘いかしら?」と小馬鹿にしたように笑い――間髪入れずに「そうだ」と秋瀬直也さんは断言したのだった……!)

 

 その後の豊海柚葉の表情は、遠目から見ても顔が真っ赤だと解るほどであり――初めて、此処に至って初めて、豊海柚葉が零した人間らしい表情であり、そんな『彼女』の初々しい姿が、今世で初めて「可愛いな」と血迷ってしまうほどであったのだ……!

 

 

 12/ボーイ・ミーツ・ガール(3)

 

 

 最近、自分の興味関心の全てが『彼』と『彼女』に行っている事に気づいた時、愕然としたね。

 あれほど恐れ、遠ざけようとして離れなかった死の恐怖をすっかり忘却しきっていたのだ。我ながら単純というか、何と言うか……。

 

 さて、その『彼』と『彼女』の初デートは――どうやら、何か破滅的な事態が発生したらしい。

 

 解っている事は『彼女』が此処暫く登校していない事と、『彼』が心此処にあらずという酷い具合に陥っている事。

 色々推測、いや邪推出来なくもないが、敢えて辞めておこう。自分はただの脇役、高町なのは達と関わり合いを持ち、物語の本筋を辿っているであろう二人とは何の関わりのない『一般生徒A』だ。

 二人の事情など一切知らないし、都合の良いアドバイスを与える機会も絶無だ。だから、自分勝手に心の中で応援する事しかしない。

 

 ――此処で終わる筈が無いだろう、と根拠無く確信して。

 

 

 ep/そして

 

 

 気づいたら『彼』と『彼女』は誰が見ても砂糖を吐くぐらいの『バカップル』になっていた。

 何を言っているか、さっっぱり解らないと思うが、オレも解らねぇ。超スピードや催眠術じゃない、もっと恐ろしい片鱗を味わった気分だった。

 

(まぁメタ的に考えれば、物語的な山場を乗り越えて大団円って処か)

 

 ああ、もしも自分が転生前の――従来通りの読み手なら、『彼』と『彼女』の物語を余さず堪能出来ただろうなぁと少しだけ悔しがり、同時に『彼』と『彼女』の物語を全く関係無い第三者として物語に記されていない部分を直接見れた事への優越感に浸る。

 

(これからも自分は、『物語』の本筋には絶対に関わり合わない、路上の石の如く生きているのだろう。――どうだ、羨ましいだろう。こんなに面白い事を間近で見れるんだ。これぐらいの対価があって然るべきだよな)

 

 常日頃転がっている生命の危機に比べれば些細過ぎる報酬だが、名前も無いエキストラには過ぎたものだろう。

 

 ――今日もオレは『彼』と『彼女』の『物語』を見続ける。

 

 自分の『物語』など一向に紡がず、遠い星の彼方に放置して。

 そういうのは今でも机の奥底に放置している『デバイス』を手放した時に、オレの『物語』は始まりもせずに終わったのだろう。主人公足り得る資格を自ら放棄したのだろう。

 それでも良いと思う。誰もが『物語』の主人公にはなれない。誰でも華々しく活躍出来ない。悲しいけど、それが現実である。

 そんな事をしていたら、他の数多の転生者と同じように、『物語』が始まる前に退場していただろう。

 

 けれども、だからこそ、誰もが『傍観者』にはなれる。

 主人公にはなれなくても、語り部にはなれるという事だ。

 

 さて、此処で綺麗に『物語』を締め括ろう。『物語』には題名が必要だ。それがあって初めて『物語』は意味を持ち、そして完結する。

 自分が見届けるこの『物語』を名付けるのなら、その題名は一つしか在り得ないと思う。

 ……まぁ元の世界のあれと被るような気がするが、それにこだわれるのは自分しかいないから、何一つ問題無いだろう。

 

 これは『彼』と『彼女』の初々しいまでの『恋物語』に他ならない、と――。

 

 

 


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