転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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47/負け犬の逆襲

 47/負け犬の逆襲

 

 

 冬川雪緒のスタンド『氷天の夜(ホーリー・ナイト)』は第五部に登場したギアッチョの『ホワイト・アルバム』に匹敵する氷のスタンドである。

 ギアッチョのようにスタンドをパワードスーツのように全身に纏う事は出来ず、無敵の防御力を誇った『ホワイト・アルバム』と比べれば若干以上に劣る。

 だが、近距離パワー型の正統派のスタンドであるが故に、そのパワーと速度は些か以上に驚異的であり、攻撃力及び殺傷性能では圧倒的に勝る。

 

 ――冬川雪緒から中心に超低温の冷気が場を覆い尽くす。

 

 春先の夜風は、白い吐息すら可視出来る凍土に早変わりし、相対する敵の体力と熱を常に奪い続ける。

 これが夏場であろうが、彼が冬場じみた衣服を着用している大部分の理由であり、長期戦になれば、体の感覚が麻痺して一歩も動けずに凍死する事になる。

 尤も、一撃でも直接攻撃を加えられればスタンドごと凍結し、その強靭なパワーをもって粉微塵に粉砕されるだろうが――。

 

(――三百万の生命を持っていて、怒涛の如く押し寄せたアーカードの残骸は、冬川の旦那にとって天敵だったという訳だ。あの時に……!)

 

 いや、冬川雪緒の生死など今、考えるべき事ではない。

 この寄生虫じみたスタンド使いをぶちのめし、尊敬すべき上司を取り戻す。今はそれだけに全力を尽くし――三河祐介は自らのスタンドを出した。

 

 ――それは極限まで筋肉が削ぎ落とされた、極めて軽快な翆色のスタンドであり、その脆弱極まる貧相なスタンドを見て、冬川雪緒の中に居る誰かが嘲笑った。

 

「――知っているぞ。貴様のスタンドはただ素早いだけの無能力だと。そんなカスみたいな脆弱なスタンドで、どうやって冬川雪緒の『氷天の夜』を攻略する気だ?」

 

 そう、三河祐介のスタンドはポルナレフの『シルバーチャリオッツ』同様、特殊な能力を持たない。尤も、その『シルバーチャリオッツ』にはレイピアによる剣捌きが強力だったが、彼の碧色のスタンドは無手で武器らしいものも無い。

 特筆すべき点などその移動能力しかない。それの御蔭で瀕死の冬川雪緒は絶命する前に病院に辿り着き、生命を永らえたのだが――。

 

「冬川雪緒のスタンドは貴様のカスみたいな能力とは違って、この『オレ』が見てきた中でも上位の部類に入るぞ?」

「……何だ。乗っ取った本人の記憶は完全には見れないようっすねェ……。そんなの自分の持ち味を最大限に生かすだけの事っすよォ……!」

 

 三河祐介は自信満々で啖呵を切り、冬川雪緒の中に居る誰かは不愉快そうに舌打ちする。

 

 ――自分に発現した脆弱なスタンドには何の取り柄も無い。その事を何よりも気にして、一種のトラウマとして刻まれていた。

 だが、彼だけは――冬川雪緒だけは、自分さえ惰弱で最弱と蔑むスタンドを、正当に評価してくれた。

 

『――確かに、お前のスタンドは素早さだけしか取り柄は無い。攻撃性能も特異性も全く無いスタンドだ。だが、逆に考えるんだ、素早さだけならどんなスタンドにも勝てると――』

 

 それだけが、彼の中で絶対的な自信となって存在する。

 自分の中で唯一誇らしい記憶であり、自虐して常に自信を持てなかった自分を精神的に救ってくれた恩人の為に、彼は自身のスタンドの名を高らかに宣言する。

 

「駆け抜けろ『希望の翠(ホープ・グリーン)』――ッッ!」

 

 ――正面に居ながら自分の頬を殴り抜いたスタンドの拳を、『彼』は殴られるまで感じ取れなかった。

 

「……!?」

 

 三河祐介との距離は十メートル近くはあった。それが瞬き一つで埋まり――驚きを抱えたまま、『彼』は『氷天の夜』の拳を無数に振るう。

 だが、全部外して新たに六連打、その身体に叩き込まれて一気に後退する。

 

「……~~ッ、なるほど。素早さも此処まで来れば能力の一つだ。非力でなければ今の打ち合いで決着が着いていた処だ」

 

 圧倒的な初動の速さ、目にも留まらぬ移動速度――単なる雑魚だと侮っていた『彼』は自分を内心叱咤し――それでもそのパワーは人間以下であり、大したダメージにはならないと見定める。

 

「そのスタンドは持ち物を、例えばナイフ一本すら持てないほど非力だろう? 惜しいな、実に惜しいスタンドだ」

 

 常時展開している冷気を更に強め、『彼』はスタンドを自身の前に配置して迎撃の構えを取る。

 攻撃を喰らう事を覚悟すれば、あの程度の一撃で自分の行動を止める事は出来ない。撃たれつつも一発でも打ち返せば呆気無く逆転する。

 

「……ケッ、余裕かましやがって。冬川の旦那ならまだしも、使い慣れてねぇ他人のスタンドでオレの速さを捉えられるかってんの……!」

 

 そして再び三河祐介のスタンドの姿が掻き消え、またしても打撃が頭部に突き刺さり、その方向に向かってスタンドの拳打を一心不乱に振るい――既に射程圏内から翠の光と化した彼のスタンドは抜け出していた後だった。

 

「……ッ!?」

 

 完全な一撃離脱(ヒット&ウェイ)の戦法、『彼』は内心舌打ちした。

 経験則から即座にあのスタンドを自身が捉える事は困難であると認め、先程から棒立ちしている本体を攻撃せんと『彼』は疾駆する。

 

 ――三河祐介のスタンドの攻撃性能は絶望的なまでに低い。あの貧弱なスタンドで本体を守る事は出来ないと判断し、それが誤りである事を即座に知る。

 

「何……ッッ!?」

 

 振り下ろしたスタンドの拳はまたしても空振り、それどころか真正面に居た筈の三河祐介を完全に見失い――何処からか、非力なスタンドによる打撃が冬川雪緒の本体に何発も突き刺さる。

 

「スタンドが射程外まで踏み込んだら、逆に本体が引っ張られるっすよねェ? スタンドは己が射程距離を絶対に越えられないのだから――」

 

 三河祐介のスタンドの射程距離は僅か二メートル、それはスタンドが尋常ならぬ速度で駆け巡る度に、本体も引っ張られて超速度で移動しているという事に他ならない。

 まさか射程距離の短さをこんな形で逆活用しているスタンド使いなど、『彼』でさえ見た事が無く――また舌打ちしながら、『彼』は『氷天の夜』の凍結能力を最大限に発揮し、瞬時に猛吹雪を巻き起こして視界を鎖す。

 

(……っ、奴め、冬川の旦那のスタンド能力を最大にしやがった……! この中に数分も居たら凍え死にそうだが、逆にチャンスだ。流石の冬川の旦那も長時間は展開出来ないッ!)

 

 視界は完全に封じられ、局地的に猛威を振るう吹雪は彼の体温と体力を奪い続ける。

 身体の末端である手先の感覚が早くも鈍くなり、三河祐介はひたすら手を動かし、痺れて動けないような事態にならないように熱を保って血行を良くする。

 

 ――だが、この根競べは三河祐介が凍死するまでは保たない。

 必ず『彼』はスタンドパワーが力尽きる前に仕掛けて勝負に出る必要がある。

 それが唯一無二のチャンスであり、それで死ななければ三河祐介の勝利は目前である。

 

(――それさえ凌げば、旦那を出来るだけ無傷で取り戻せる……!)

 

 ある程度動き回りながら、慎重に相手を出待ちし――背後からの僅かな異音を、三河祐介は確かに感じ取った。

 

「――オラァッ!」

 

 先手取って、三河祐介は左の拳を叩き込む。

 殴ったのは本体ではなく『氷天の夜』であり、一発目の接触で芯まで凍り付く感覚に身震いする。

 今までスタンドではなく、本体を叩き続けていたのは、極低温のスタンドに接触した拳が凍り付いて使い物にならなくなるのを回避する為だ。

 

(これで引くと、思ってんのかァ……! 舐めんなよ、オレの覚悟を――ッ!)

 

 構わず、第二打、第三打を繰り返し、更に連打する。

 第二打で完璧に凍りつき、第三打でヒビ割れが生じ、左の拳を捨てる覚悟で、形振り構わず叩き込む――!

 

「な――グ、ガァッ!?」

 

 左拳が完璧に砕け散るまで殴り抜き、『彼』はスタンドごと地に叩きつけられ、視界を封じていた吹雪は一斉に解除された。

 消える『氷天の夜』に、倒れ伏す冬川雪緒――そして其処から無理矢理這い出されたスタンドは、全身が干乾びてミイラになっているような情けないスタンドだった。

 

『グゥゥ、貴様アアアアァ――ッ!』

「それが、テメェのスタンドっすかァ……! 寄生虫野郎に相応しい、みみっちい姿っすねェ……!」

 

 砕けた左手が幸運な事に凍結しており、当分出血死する心配は無い。

 無事な方の右拳を振り上げ、この骨と皮しかないスタンドを打ち砕こうと拳を振るう。

 こんな無惨な状態のスタンドなら、三河祐介の非力なスタンドと言えども呆気無く打ち砕けるだろう。

 

『――よもや貴様のようなカス如きに、我が能力を使う事になろうとはな……!』

 

 ――だが、その拳がミイラみたいな干乾びているスタンドに届く前に、そのスタンドは自らの手で自らの首を掻っ切り、その首を胴体から引き千切った。

 

「何イイイイイイイイイィ――ッッ!? コイツ、自分で自分の首を……!?」

 

 その首が地に落ちて消滅する寸前に、怨念のみが爛々と灯る眼のスタンドは、地の底から轟き渡るような恐ろしい声で呟き――その能力の発動条件を成立させる。

 

『……『負け犬の逆襲(アヴェンジ・ザ・ルーザー)』――ッッ!』

 

 

 

 

(――?)

 

 その時、ソファを独占したまま寝転ぶ『魔術師』は些細な違和感を察知した。

 ただその違和感の正体までは掴めず――むくりと起き上がり、主の奇行に度々手を焼いていたエルヴィと霊体化しているランサーの心胆を寒からしめた。

 

「エルヴィ、ランサー、何か違和感を覚えなかったか?」

 

 アイルランドの英霊と吸血鬼の人間を超越している感覚は、今の違和感をどのように感じ取って処理したのか――。

 

『違和感? いや、何もねぇが? 強いて言うなら、腑抜け状態のマスターが変な事を言ったぐらいだ』

「ランサー! 鬱病患者に真実を告げたらそれだけで死んでしまいますよ!」

「……いや、テメェも同じぐらい酷い事言ってるぞ?」

 

 ランサーは何も察知しなかった。

 彼は単なる『槍兵(ランサー)』ではなく、原初のルーン魔術を習得する『魔術師(キャスター)』としての適正も持っている。

 よって、この違和感の正体は魔術以外の現象であり、彼の専門外の領域――。

 

「エルヴィは?」

「……いえ、特には何も感じませんでしたが? ご主人様、どうしたんですか?」

 

 そしてシュレディンガーの猫であり、卓越した吸血鬼である彼女の全感覚も、あの違和感を察知出来なかった。

 実にきな臭い違和感だ。それは眠りこけて完全に腑抜けていた『魔術師』を瞬時に我に立ち戻させるぐらい、致命的な危険を孕んでいた。

 

(漠然としていて説明出来ないが、最大級の脅威を感じた。時空震ではない、もっと違う形の空間の歪みを観測したような気がしたが――)

 

 

 

 

「クロさん、どうしたん?」

「……いや、何でもない」

 

 そして教会にも一人、この違和感を感知し――というよりも、『過剰速写』は違和感どころか、この正体不明の現象の全容を余す事無く体験した。

 

(――へぇ、このオレの他に時間を操る類の能力者が居たとはねぇ。世界全体の時間が十秒間巻き戻り、それに誰一人気づいていない。隠蔽性と良い、他に観測者が居なければ無敵の能力だな)

 

 これほどまでの強大な時間操作を成せる存在が居ようとは、この世界は恐ろしい人物揃いだと溜息を吐く。

 そんな『過剰速写』の反応を見て、八神はやてとクロウ・タイタスを避けて此処に居るセラ・オルドリッジに疑問符を浮かべさせた。

 

(――ふむ、こういう感覚だったのか。世界を巻き戻すという壮大な感覚とは。どれほどの時間を消費するか見当も付かないが、覚えておこう)

 

 

 

 

「……え?」

 

 未だに高町家の面々と道場で対スタンド使いの稽古をしていた秋瀬直也の首が、何の予兆無く、唐突に切り落ちて地面に転がり――彼の首無し死体から夥しい鮮血が噴き上がった。

 

「直也君!?」

 

 余りの出来事に驚愕し、更には予測出来なかった豊海柚葉は彼に向かって手を伸ばし――フィルムを一枚一枚逆送りしたかのように巻き戻っていく。

 

 

 

 

 そして、世界は再構築され、また正常に運営していく。

 世界の時間が十秒間だけ巻き戻った事を、多くの者に知覚させないまま――。

 

「――どうしたんだ? 柚葉。ぼけっとして」

 

 柚葉は秋瀬直也の首をじっと見つめる。何故其処に強烈な違和感を抱いているのか、自身でも不明だったが――柚葉は互いの吐息が聞こえるまで近寄り、直也の首辺りに実際に触れて見聞する。

 

「え? ちょ、近……!?」

 

 秋瀬直也は本当に油断ならぬ人物とは言え、異性である彼女の急接近に顔が真っ赤になり、柚葉は首がちゃんと繋がっている事に安堵し、その謎の感慨に深い疑問を抱く。

 

「んー? おっかしいなぁ。直也君の首が落ちるビジョンが見えたんだけど?」

「なっ!? 新手のスタンド使いか!? なのは、周辺をサーチしろッ!」

「は、はいっ!」

 

 

 

 

 ある程度動き回りながら、慎重に相手を出待ちし――背後からの僅かな異音を、三河祐介は確かに感じ取った。

 

「――オラァッ!」

 

 振り抜いた拳は囮の氷像を打ち砕き――冬川雪緒の『氷天の夜』の拳が『希望の翠』の胴体を穿ち抜いて貫通させ、本体の三河祐介の身体に巨大な風穴が生じた。

 自らの胴体に開いた巨大な風穴を見て、三河祐介は夥しい吐血を撒き散らした。

 

「……な、んだ、と――」

「――褒めてやる。下っ端の分際でこの『オレ』に能力を一度使わせた事をな……!」

 

 瞬時に『希望の翠』を瞬間氷結させ、一息に穿ち貫いた拳を抜き去って粉微塵に粉砕する。

 三河祐介の身体は完全に砕け散り――空気中に撒き散った血は瞬時に凍結し、粉微塵となって何処かに消えて逝く。

 スタンドを解除し、病院の屋上には冬川雪緒しか居なくなった。

 

 ――そして、唯一人となった『彼』は忌まわしき記憶を思い起こし、その生涯最高の屈辱に胸に蟠る憎悪が一層激しく燃える。

 それは『彼』の今際の時の出来事、秋瀬直也をその手で殺した後の記憶である――。

 

 

 

 

「クソ、クソクソクソクソクソクソクソォ――ッ!」

 

 勝ち誇ったように笑う秋瀬直也の死体を何度も蹴り上げ、『彼』はこの詰んだ状況を打破するべく自分自身の全能を費やす。

 秋瀬直也が死ぬまで保持した『矢』は、彼のスタンドの中にあったまま、この世から消え果ててしまった。――殺しても手放さなかったのだ。

 

「まずい、致命的にまずいッ! 何か、何か手は無いかァッ!?」

 

 秋瀬直也の言う通り、この状況は既に詰んでいる。

 いずれ彼は死のループから逃れられなくなり、発狂するか、自殺して終わらせるしかなくなる。

 完全に船が水没する前に、打開策を見出さなければならない。だが、その唯一の打開策と思われた『矢』が死に抱えされた今、如何程の手があるだろうか?

 

「……『矢』さえ、『矢』さえ手に入れば、この絶対的な状況すらどうとでもなる! このオレが世界の頂点に間違い無く立てるッ! だが、どうやって奴から『矢』を奪う? 殺したコイツの中のスタンドから、どうやって出せば良い……!?」

 

 殺した者をどうにかするなんて、彼のスタンド能力の範疇には無い。

 彼のスタンド能力はあらゆる脅威から彼自身を生き残らせ、敵対者を必ず仕留める能力。だが、その能力の対象は己のみであり、発動手段は外部依存――今は自分唯一人、その発動手段すら満たせない有り様である。

 

 ――心底から絶望する。此処が自分にとって死地であり、逃れられない鉄の棺桶であると恐怖し……それで終わる彼では無かった。

 

「……誰が、誰が貴様の思い通りに死んでたまるかァ――ッ! このオレを、舐めるなアアアアアアアアアアアアアアァ――!」

 

 深い絶望と恐怖が彼のスタンドに劇的な変化を齎す。

 その変化を彼は知覚し、瞬時に理解した。この難局を乗り越えるには、彼自身が一皮剥ける必要がある。

 正確に言うならば、無敵の帝王としての誇りを完全に捨て去る必要があった――。

 

「オレは、この試練を絶対に乗り越える! 己の死を以ってだアアアアアアアアアアァ――ッッ!」

 

 ――彼はスタンドで己の素っ首を叩き切って、自ら最大の禁忌を犯す。

 

 最強無敵を誇った彼のスタンドはその瞬間、見窄らしいまでにミイラ化して、その能力すら徹底的に変質させ――彼は自身の本体を捨て去り、死した秋瀬直也の身体を『本体』として乗っ取ろうとした。

 

『……勝ったッ! オレは自らの能力の限界を乗り越え、不可能だった運命の試練に打ち勝ったぞッ! 秋瀬直也ァー!』

 

 悍ましいまでの邪悪な執念がスタンドを成長、否、変質させて在り得ざる勝ち筋を生み出し――されども、それを阻止したのは死した秋瀬直也のスタンドだった。

 

『……は? え――?』

 

 乗っ取る瞬間、秋瀬直也のスタンド『蒼の亡霊(ファントム・ブルー)』が顕現し、彼のミイラ化したスタンドの胴体を一撃で穿ち貫き――悪足掻きした彼に完全なる引導を渡した。

 

『――私ノ主ハ貴様ナドデハ無イ。我ガ本体ハ死シテ『矢』ヲ守リ抜イタ。ソレ故ニ『矢』ハ誰ニモ渡サナイ』

『……そん、な。あ、ああ、アアアアアアアアアアアアアァ――ッッッ!?』

 

 彼は自らの死を乗り越える事で、自身のスタンドを変質させた。

 自ら禁を犯した彼の能力はもう『殺されたら十秒間巻き戻る』ではなく、『自殺したら十秒間巻き戻る』ものへと歪な変質を果たし、即座にそれが仇となって死因になったのは皮肉だろう。

 

 駄目出しの一撃でミイラ化したスタンドの頭部は打ち砕かれ、半ば同化したまま、彼等は海の藻屑と消え、二人は一緒に死したのだった――。

 

 ――これが『彼』と秋瀬直也の結末であり、新たな宿命の始まりである。

 

 




A-超スゴイ B-スゴイ C-人間並 D-ニガテ E-超ニガテ

『希望の翠(ホープ・グリーン)』 本体:三河祐介
 破壊力-D スピード-A 射程距離-D(2m)
 持続力-C 精密動作性-B 成長性-E(完成)

 特別な能力を持たず、パワー事態も大した事が無いが、随一のスピードを持つ。
 専ら伝令が天職であり、戦闘向きの能力では無かった。

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