転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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13/この虫野郎! これが人のやる事かァ! vs『代行者』(1)

 

 

「……此処か?」

 

 辿り着いた先にあったのは10階建ての如何にも廃ビルといった感じの建物であり、視認出来た当初からヤツの狙撃を警戒していたが、何事も無く到着する。

 

「うん、この廃ビルの屋上に居るみたいだね」

「馬鹿と何かは高い処が好きだと言うが、典型的みたいだな」

 

 ヤツがどういう意図で此処を選んだのかは知らんが、とりあえず顔を拝んでから色々文句言いたい。

 

「……ああ、待っているからさっさとぶちのめして来い」

 

 ヘルメットを脱ぎ去った赤坂は『D・ホイール』の運転席に腰掛けたまま、テンション低くそう言う。

 元の低すぎるテンションに戻ってしまったのは名残惜しいが、態々待ってくれてるんだ、さっさと済ませるとしよう。

 

「よし、馬鹿正直に登ってやる義理も無いな。柚葉」

「そうね、一飛びしましょ。身体を預けるわ」

 

 『蒼の亡霊』を装甲し、柚葉をお姫様抱っこする。そしてオレのスタンドの風の能力を最大限にフル活用し――一気に飛翔する。

 

 ――飛び越えた先の廃ビルの屋上の中央に、『代行者』は一人で待ち侘びていた。着地狩りを警戒したが、何もして来なくて拍子抜けする。

 

 

 抱える柚葉を降ろしてからスタンドを消さずにヤツを見据える。うん、普段と変わりないが、やっぱり奴も『デュエルディスク』を装備している……。神父服でそれは凄い違和感である。

 

 

「――随分と遅かったですね、些か退屈してましたよ。寄り道が過ぎるのでは?」

「……はぁ、ヒント無しでその言い草かよ。盗っ人猛々しいとは良く言ったもんだぜ」

 

 ああ、ヤツの嫌らしい嘲笑が気に触る。まぁ此処に来るまで時間が掛かりすぎて、もう日が落ちかけているからなぁ。

 うん、そういう要素を全部無視して、すっごいボッコボコにしたい!

 

「とりあえず、テメェがオレの『デッキ』を盗んだ犯人って事で良いんだよな? 一応聞いておくが、返す気はあるか?」

「ふふっ、返して欲しければ私との『決闘』で勝つ事です。――此処ならば邪魔が入りませんからね」

 

 ……そうかなぁ? さっきからお前が無視している柚葉の殺意は全然そうは言ってないが……。

 それに動じない当たり、面の皮が分厚いってレベルじゃないよな。

 

 

「――さぁ、始めましょうか。昼間までのお遊戯ではない、本物の『闇』のデュエルをッ!」

 

 

 またもや『デュエルディスク』から警告音が生じ――うん、コイツならやってくれると信じていた!

 予想通りの展開にオレと柚葉は揃って安堵の息を吐いた。うん、安定の『リアリスト』で逆に安心した。お前はそうだと信じていたよ。

 

「あ、それでOKなんだ。良かった良かった、テメェは最高に嫌らしいヤツでウザい事この上無い嫌なヤツだが、この世界のテメェは話が早くて助かるぜ。――うん、これも腐れ縁だ。お前の嫌がらせ程度に一々構ってられんから半殺し程度で済ませてやる」

「それなら残り半分は私がやっていい? さっきから理不尽ばかりで鬱憤が溜まっちゃってさ」

 

 ――まるでまな板に置かれた鯉を何方が解体するかの如く軽い会話を交わす。

 

 オレは『蒼の亡霊』を前に繰り出し、柚葉もいつもの邪悪な笑顔を浮かべてライトセーバーを取り出し、独特な音と共に赤い光の刃が生じる。

 

「……は? あの、秋瀬直也? 我が主? 一体何を――?」

 

 何って、いや、お前こそ何で馬鹿正直に『デュエルディスク』を構えて棒立ちしてるの? 何処に所有しているのか解らないぐらい投擲してくる『黒鍵』はどうした? 余りにも隙だらけで逆に殴る気が起こらなかった程だぞ?

 

「……何って『闇のゲーム』なんだろ?」

「……自分で『闇のゲーム』仕掛けておいて何言ってるの?」

 

 オレと柚葉は互いに見合い、揃ってジト目で『代行者』を見る。

 何か『デュエル』しまくりでこの改変された世界法則に完全に馴染んでしまいそうだったが、ようやく元の世界のルールで戦えるから凄い気楽だ。

 『魔術師』から聞く限り、この世界での『闇のゲーム』はリアルファイトでのKOでも特殊勝利出来る『決闘』なんだろ? なら――。

 

「い、いやっ、貴方達こそ何を言ってるのですか!? 何故『デュエルディスク』を構えないのです!? 『決闘者』としての誇りは何処に行ったのですか!?」

 

 ……何だろう、『代行者』の野郎が珍しく狼狽している?

 あの男にしては珍しすぎる反応にどう返して良いか解らない。

 

「いや、人の『デッキ』を盗んだ野郎が言っても説得力皆無じゃねぇか。……というか『闇のゲーム』ってリアルファイトで終わらせて良いんだろ? さっきはどうしようも無かったが――」

「戦闘不能にして意識飛ばしても勝ちなんだから、別にデュエルする必要無いじゃない?」

 

 うん、柚葉の言う通り――『魔術師』の言葉を聞く限り、そういう結論に至るのは自然だよな? どうせこの『魔都』で生きる全ての『転生者』の共通見解だろ?

 それなのに『代行者』の野郎は、何故かこの世が終わったかのような顔をして――。

 

 

「――な、なんて事だ。それを貴方が、よりによってッ! あの秋瀬直也がッ! それを言うのかァッッ!」

 

 

 鬼気迫る顔で本気で憤慨しやがった!? 柚葉も困惑して「え? 何この反応?」と突っ込むが、まるで聞いてないようだ。

 

「――不本意ですが、貴方がそんな様子では『闇』のゲームなどやってられません。秋瀬直也ッ! 私と『決闘』しろォッ!」

「お、おう……?」

「貴方が失ってしまった大切なモノを、この『決闘』で取り戻すのですッッ!」

 

 ……え? い、いや、何でお前、よりによってお前が、闇堕ちした主人公を救うような親友ポジションのような決死の気概で『デュエル』を仕掛けてくるの!?

 柚葉の方も「……ぇー? 何この展開……?」と完全にぽかんとして呆れてるじゃないか。

 

「――『デュエル』!」

「――でゅ、『デュエル』……?」

 

 声が重ならずズレる。うん、もうこの最初の掛け声と同じぐらい、認識の差が致命的なまでにズレてると思う。

 今回のデュエルは……向こうが先行か。過程はともあれ、結局いつもと同じ展開で『デュエル』だが、一体どんなデッキなんだか。

 

「――私は手札から魔法カード『遺言状』を発動! このターン、自分フィールド上のモンスターが自分の墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を特殊召喚する事が出来る!」

 

 うわぁ、最初から最初期の禁止カードかよ? まさか懐かしの『サイエンカタパ』か? いや、《カタパルト・タートル》が『エラッタ』――既に販売されたカードのテキストが後々書き換えられる事――されて1ターンに1度しか効果を使えなくなったから完全消滅した筈……?

 

 ――あれ? そういえばいつ頃『エラッタ』されたっけ?

 

 ルール面からの不備があるなら、即座に効果が書き換えられたカードは結構あったが、昔からのカードの効果が大幅修正(しかも大幅な弱体化)されるなんて珍しすぎる事なら記憶に残る筈なのに……。

 自覚が無いだけで、割りとこの『異変』の影響を知らず知らずの内に受けているのか……? おっと、今は目の前のデュエルに集中だ。

 

「《甲虫装機 グルフ》を通常召喚し、魔法カード『孵化』発動!」

「げぇっ、『インゼクター』!?」

 

 うっわぁ、それ使うんかよ……。おのれ、この虫野郎めぇっ!

 

「昆虫族モンスター? ……直也君の物凄い嫌そうな顔を見る限り、ロクなテーマじゃないと思うけど、どんなの?」

「カード名+1ターンに1度という一文を書き忘れた罪深き虫野郎どもだ……!」

「……あ、大体察したわ」

 

 ……うん、奴等の頭おかしい効果は見ていれば自然に解るだろう。

 

「魔法カード『孵化』は自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、そのモンスターよりレベルの1つ高い昆虫族モンスター1体をデッキから特殊召喚する! 私はレベル2の《甲虫装機 グルフ》をリリースし、デッキからレベル3の昆虫族モンスター《甲虫装機 ダンセル》を特殊召喚する!」

 

 顔の下半分が露出する赤い仮面被り、近未来的な機関銃を構える、戦隊物の変身ヒーローみたいなスーツ着た最低最悪の虫野郎がエントリーだァッ!

 

 ――こればかりは引き攣る顔を抑えられない。

 

 初手から破滅の呪文「ダ ン セ ル 召 喚」である。

 あー、うん、この場合、『代行者』が先行で良かったというべきか。後攻だったら最高なまでに悲惨な事になっていた。

 

「そして《甲虫装機 グルフ》が墓地に送られた事により、『遺言状』の効果発動、デッキから攻撃力1000のモンスター、2体目の《甲虫装機 ダンセル》を特殊召喚!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札5→4→3→2

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 魔法・罠カード

  無し

 

 そうだった……! この世界には禁止制限無いから、この永久の制限カードにすべき戦犯カードを入れたい放題だったッ! 絶望したッ!

 まずい、墓地に《甲虫装機 グルフ》だから、こっちのフィールドに破壊対象が無くても展開し放題じゃねぇか……!

 

「手札から《甲虫装機 ギガマンティス》の効果発動! このカードは手札から装備カード扱いとして自分フィールド上の『甲虫装機』と名のついたモンスターに装備し、装備モンスターの元々の攻撃力が2400となる! 私は1体目の《甲虫装機 ダンセル》に装備!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2→1

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000→2400/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 魔法・罠カード

  《甲虫装機 ギガマンティス》

 

 ……残りの手札1枚が《甲虫装機 ホーネット》じゃない事を切実に祈ろう。

 

「更に1体目の《甲虫装機 ダンセル》の効果発動! 1ターンに1度、自分の手札・墓地から『甲虫装機』と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備出来る。私は手札の《甲虫装機 ホーネット》を装備! 《甲虫装機 ホーネット》が装備カード扱いで装備されている場合、装備モンスターのレベルは3上がり、攻撃力・守備力はこのカードの数値分アップする!」

 

 ――ですよねぇ! やっぱりその最後の1枚は《甲虫装機 ホーネット》かよ! 即座に祈り裏切られたよ!

 ぐ、ぐぬぬ、肝心のこっちの初期手札には《エフェクト・ヴェーラー》が無いし、《甲虫装機 ダンセル》が2体並んでいる以上、あっても展開止めれないから意味ねぇ!

 

 『代行者』

 LP8000

 手札1→0

 《甲虫装機 ダンセル》星3→6/闇属性/昆虫族/攻2400→2900/守1800→2000

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 魔法・罠カード

  《甲虫装機 ギガマンティス》

  《甲虫装機 ホーネット》

 

「……あれ、手札使い切った? もう展開終わり? 装備して攻撃力・守備力を上げる程度ではないでしょ?」

「……ああ、装備して攻撃力・守備力が増えるのは飾りだ。問題は外した後だ! ――此処からが本当の地獄だ!」

「……装備カードを外した後? 装備したのに?」

 

 一体此処から何処まで『ソリティアタイム』が続くか、オレも見当つかないぞ……!

 

「《甲虫装機 ホーネット》の効果発動! 装備カード扱いで装備されているこのカードを墓地に送り、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する! 私は《甲虫装機 ギガマンティス》を選択して破壊する!」

「え? 自らの装備カードを破壊……!?」

 

 そう、一見して自らのフィールドのカードを破壊する愚かしい行為、だが、それがインゼクターだと――。

 

「《甲虫装機 ダンセル》の効果発動! このカードに装備された装備カードが自分の墓地に送られた場合、デッキから《甲虫装機 ダンセル》以外の『甲虫装機』と名のついたモンスター1体を特殊召喚出来る! このカードに装備されていた装備カードが2枚墓地に落ちたのでこの効果は2回発動出来る。私はデッキから《甲虫装機 センチピード》2体を特殊召喚する!」

 

 ちなみにこれは処理的に《甲虫装機 ホーネット》が墓地に落ちてから《甲虫装機 ギガマンティス》が破壊されて墓地に行く為、装備カードが墓地に送られるタイミングがずれているので、《甲虫装機 ダンセル》の効果が2回発動しやがる。マジふざけんな。

 『大嵐』や『ハーピィの羽根帚』などで同時に墓地に送られた場合は1回しか発動しないが――。

 

「……え? 何これ?」

「これがインゼクターだよ。効果使って手札か墓地の『甲虫装機』モンスターを装備するのは1ターンに1度だが、装備カードが墓地に送られた際に発動する効果に1ターンに1度の縛りがねぇんだよ!」

 

 一体何を考えてこのテーマ生み出したんだっ!

 

「なお破壊されて墓地に送られた《甲虫装機 ギガマンティス》の効果は発動しません」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札0

 《甲虫装機 ダンセル》星6→3/闇属性/昆虫族/攻2900→1000/守2000→1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 魔法・罠カード

  無し

 

 次に2体出てくるはゴツい茶色装甲を着た虫スーツの男。お前等のような鬼畜な戦隊ヒーローがいるかっ!

 

「1体目の《甲虫装機 センチピード》の効果発動! 1ターンに1度、自分の手札・墓地から『甲虫装機』と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。私は墓地の《甲虫装機 グルフ》を装備! 《甲虫装機 グルフ》が装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは2つ上がり、攻撃力・守備力はこのカードの数値分アップする!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札0

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 センチピード》星3→5/闇属性/昆虫族/攻1600→2100/守1200→1300

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 魔法・罠カード

  《甲虫装機 グルフ》

 

「装備した《甲虫装機 グルフ》の効果発動! 装備カード扱いとして装備されているこのカードを墓地に送り、自分フィールド上のモンスター1体を選択し、レベルを2つまで上げる。私は1体目の《甲虫装機 センチピード》のレベルを1つ上げる!」

 

 げっ、《甲虫装機 グルフ》でレベル操作してレベル4にするだと?

 レベル3主体のそのデッキでランク4エクシーズモンスターを立てる気か……!

 

「そして《甲虫装機 センチピード》の効果発動! このカードに装備された装備カードが自分の墓地へ送られた場合、デッキから『甲虫装機』と名のついたカード1枚を手札に加える事が出来る! 私はデッキから『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を手札に加える!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札0→1

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 センチピード》星3→4/闇属性/昆虫族/攻2100→1600/守1300→1200

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 魔法・罠カード

  無し

 

「……ねぇ、これ、直也君が先行だったらさ――」

「《甲虫装機 ホーネット》の効果でオレのフィールドがズタズタに破壊された上で大量展開されるという悪夢を経て、容赦無く1キルされただろうな……!」

 

 その点だけは純粋に運が良かったと言えよう。前知識無しに後攻のインゼクターを相手にするとか最悪過ぎる巡り合わせだし。

 

「2体目の《甲虫装機 センチピード》の効果発動、墓地の《甲虫装機 グルフ》を装備し、効果発動させて2体目の《甲虫装機 センチピード》のレベルを1つ上げ、装備したカードを墓地に送られた《甲虫装機 センチピード》の効果でデッキから《甲虫装機 ギガウィービル》をサーチする」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札1→2

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 センチピード》星4/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 《甲虫装機 センチピード》星3→4/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 魔法・罠カード

  無し

 

「レベル4となった《甲虫装機 センチピード》2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ――愚鈍な獲物誘う魅惑の毒花! ランク4《フレシアの蟲惑魔》!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻300/守2500 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 

 現れたのは誰も彼も死んだ眼をしている五人のロリ幼女達、彼女達は妖しげな笑顔で此方を手招きする。

 ランク4のエクシーズモンスターなのに攻撃力が300と極めて低く、守備表示でエクシーズ召喚された《フレシアの蟲惑魔》。

 あ、これ絶対何かあると確信してテキストを読んで見ると――。

 

 《フレシアの蟲惑魔》

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク4/地属性/植物族/攻300/守2500

 レベル4モンスター×2

 (1):X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。

 (2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

 「フレシアの蟲惑魔」以外の自分フィールドの「蟲惑魔」モンスターは戦闘・効果で破壊されず、

 相手の効果の対象にならない。

 (3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

 発動条件を満たしている「ホール」通常罠カードまたは

 「落とし穴」通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。

 この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる。

 この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 何か強くておかしい事しか書かれてなくね!?

 (2)の自分以外の『蟲惑魔』モンスターに戦闘・効果による破壊耐性と効果の対象にならない絶対耐性付与は多分腐るだろうが、コイツ、相手ターンでもデッキから罠カード発動とか頭おかしい事出来るぞ!? 絶対第九期のカードだろこれ!?

 1ターンに1度の縛りはあるが、魔法カードで除去しない限り、必ず『落とし穴』系の罠を食らうハメになるのかよ……。

 

「2体目の《甲虫装機 ダンセル》に装備魔法『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を装備。このカードは『甲虫装機』と名のついたモンスターのみ装備可能であり、装備モンスターの攻撃力・守備力を800ポイントアップする」

 

 ぐっ、またしても《甲虫装機 ダンセル》に装備カードを……。

 また《ホーネット》装備して外して自分で破壊する事で2アド以上稼がれるのかよ……! アドバンテージって何だろうな、少なくともこんなにぽんぽんと稼がれて良いものじゃない気がする……。

 

「2体目の《甲虫装機 ダンセル》の効果発動、墓地の《甲虫装機 ホーネット》を装備し、装備した《甲虫装機 ホーネット》を墓地に送る事で『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を破壊する。――装備を破壊されて墓地に送られた《甲虫装機 ダンセル》の効果2回と墓地に送られた『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』の効果発動!」

 

 うわぁ、今日のデュエルの中で一番、一人でやってるよー!

 

「フィールド上に表側表示で存在する『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』が墓地に送られた時、自分の墓地の『甲虫装機』と名のついたモンスター1体を手札に加える。私は墓地の《甲虫装機 ギガマンティス》を手札に加える」

 

 また手札から装備カードになれるカードを回収されたか……!

 

「そして《甲虫装機 ダンセル》の効果でデッキから《甲虫装機 センチピード》《甲虫装機 ホーネット》を特殊召喚する!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2→1→2

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻300/守2500 ORU2

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 《甲虫装機 ホーネット》星3/闇属性/昆虫族/攻500/守200

 魔法・罠カード

  無し

 

 ……しかし、3枚目の《甲虫装機 センチピード》に2枚目の《甲虫装機 ホーネット》か。

 デッキから特殊召喚出来るモンスターを全て使い切る気か? 本当に1ターンの内に全部無くなる勢いで展開しているな。

 普通に考えれば、勝負を決める時にやるべき展開だと思うが――あの性根が『魔術師』レベルに腐っている『代行者』の事だ、確実に何か企んでるな?

 

「レベル3の《甲虫装機 ダンセル》2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ランク3《No.20 蟻岩土ブリリアント》!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻300/守2500 ORU2

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200

 《甲虫装機 ホーネット》星3/闇属性/昆虫族/攻500/守200

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻1800/守1800 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 

 次にエクシーズ召喚されたのはランク3の昆虫族モンスター。

 ……うーむ、ランク3はランク4と比べて優しい効果揃いだったから、どんな効果だったか全然覚えてないな。

 

「《No.20 蟻岩土ブリリアント》の効果発動、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻300→600/守2500 ORU2

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1600→1900/守1200

 《甲虫装機 ホーネット》星3/闇属性/昆虫族/攻500→800/守200

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻1800→2100/守1800 ORU2→1

 魔法・罠カード

  無し

 

 ……む? まだ展開途中だと思うのに、今効果を使うという事は、エクシーズ素材の《ダンセル》を墓地に送る為か。

 最終的に《No.20 蟻岩土ブリリアント》を3体展開した上で3回効果使って全体的に900アップで終わらせるのか?

 それだとモンスターを使い切る勢いで展開するメリットに見合わないか。

 

「手札の《甲虫装機 ギガマンティス》を《甲虫装機 センチピード》に装備し、《甲虫装機 センチピード》の効果で墓地の《甲虫装機 ホーネット》を装備、装備した《甲虫装機 ホーネット》を墓地に送って《甲虫装機 ギガマンティス》を破壊――《甲虫装機 センチピード》のデッキから『甲虫装機』をサーチする効果が2回発動し、更に墓地に落ちた《甲虫装機 ギガマンティス》の効果発動!」

 

 息を吸うように3アド以上の動きを……!?

 

「モンスターに装備された《甲虫装機 ギガマンティス》が墓地に送られた場合、自分の墓地から《甲虫装機 ギガマンティス》以外の『甲虫装機』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する! この《甲虫装機 ギガマンティス》の効果は1ターンに1度しか使用出来ない。――私は墓地の《甲虫装機 ダンセル》を特殊召喚! そして《甲虫装機 センチピード》の効果で3枚目の《甲虫装機 ダンセル》、2枚目の『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を手札に加える!」

 

 この《甲虫装機 ギガマンティス》の蘇生効果だけはカード名付きで1ターンに1度の縛り、だからさっき墓地に落ちて発動条件を満たしたのに関わらず、この効果を発動しなかったのか……!

 

 『代行者』

 LP8000

 手札2→1→3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《甲虫装機 センチピード》星3/闇属性/昆虫族/攻1900/守1200

 《甲虫装機 ホーネット》星3/闇属性/昆虫族/攻800/守200

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻2100/守1800 ORU1

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 魔法・罠カード

  無し

 

 うわ、これで次のターンも破滅の呪文「ダ ン セ ル 召 喚」による展開が来る上に、また《ダンセル》がフィールドに戻ってきたぞー!

 

「レベル3の《甲虫装機 センチピード》と《甲虫装機 ホーネット》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ランク3《No.47 ナイトメア・シャーク》!」

 

 何か羽根が生えた鮫モンスターがエクシーズ召喚される。

 うーむ、何だろう。微妙な匂いがする……?

 

「《No.47 ナイトメア・シャーク》の効果発動、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の水属性モンスター1体を選択する。このターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃出来ず、選択したモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃出来る。私は唯一の水属性の《No.47 ナイトメア・シャーク》を選択する」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻2100/守1800 ORU1

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《No.47 ナイトメア・シャーク》ランク3/水属性/海竜族/攻2000/守2000 ORU2→1

 魔法・罠カード

  無し

 

 ふーむ、攻撃力2000のダイレクトアタックが出来るだけのエクシーズモンスターか、攻撃出来ない1ターン目に効果を使用したのは、やはりエクシーズ素材になっている《甲虫装機 センチピード》を墓地に落とす為か。

 しかし、何でまた制圧系のカードじゃなく、こんな微妙な効果のランク3エクシーズを繰り返してるんだ? 終点が全然見えねぇ……!

 

「《甲虫装機 ダンセル》に『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を装備し、効果発動して墓地の《甲虫装機 ホーネット》を装備、装備した《甲虫装機 ホーネット》を墓地に送って『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』を破壊――《甲虫装機 ダンセル》が2回発動しますが、これ以上場に置く枠が無いので1回だけ、あと墓地に送られた『甲虫装機の魔剣 ゼクトキャリバー』の効果発動!」

 

 うっわぁ、フィールドに召喚出来るモンスターカードは5枚まで、特殊召喚しようにもフィールドの枠が無いとか、『満足』じゃないと起こらないような事が起きてるなぁ……。

 

「墓地の《甲虫装機 センチピード》を手札に、《甲虫装機 ダンセル》の効果でデッキから3枚目の《甲虫装機 ホーネット》を特殊召喚する!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札3→2→3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻2100/守1800 ORU1

 《甲虫装機 ダンセル》星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800

 《No.47 ナイトメア・シャーク》ランク3/水属性/海竜族/攻2000/守2000 ORU1

 《甲虫装機 ホーネット》星3/闇属性/昆虫族/攻800/守200

 魔法・罠カード

  無し

 

 あの手札3枚は《甲虫装機 センチピード》《甲虫装機 ダンセル》《甲虫装機 ギガウィービル》か。

 《甲虫装機 ギガウィービル》は《甲虫装機 ギガマンティス》と同じく、手札から装備カード扱いとして装備出来るカードで破壊されて墓地に送られた際、墓地の『甲虫装機』を特殊召喚出来る効果も持っている。

 割りと主要な『甲虫装機』モンスターはデッキから召喚し切っているが、次のターンも《ダンセル》通常召喚から3アド以上稼げる事が確定してやがるぞ……!

 

「レベル3の《甲虫装機 ダンセル》と《甲虫装機 ホーネット》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! ランク3《No.17 リバイス・ドラゴン》!」

 

 『代行者』

 LP8000

 手札3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《No.20 蟻岩土ブリリアント》ランク3/光属性/昆虫族/攻2100/守1800 ORU1

 《No.47 ナイトメア・シャーク》ランク3/水属性/海竜族/攻2000/守2000 ORU1

 《No.17 リバイス・ドラゴン》ランク3/水属性/ドラゴン族/攻2000/守0 ORU2

 魔法・罠カード

  無し

 

 そして出てくるは六枚翼の青色のドラゴン、確かエクシーズ導入初期のエクシーズモンスターであり、1ターンに1度、エクシーズ素材を取り除いて攻撃力500上げる程度の、微妙な効果だった筈……?

 

 

「――見せてあげましょう、私の真の『切り札』をッ! エクシーズ素材を持った同じランクの『No.』エクシーズモンスター、ランク3の《No.20 蟻岩土ブリリアント》《No.47 ナイトメア・シャーク》《No.17 リバイス・ドラゴン》の3体でオーバーレイッ!」

 

 

 は? 何だと!? 何そのヘンテコなエクシーズ素材条件!? 

 

「レベルを持たないエクシーズモンスターでエクシーズ召喚だとォッ!?」

 

 そう、エクシーズ召喚は同じレベルを重ねてエクストラデッキから召喚するものであり、同時にエクシーズモンスターの持つのはレベルではなくランク。なので、普通ではエクシーズモンスター同士でエクシーズ召喚するなど不可能なのだが――。

 

 

「――万界に散りし魂の祈りよ! 今こそこの手に集いその姿を現せ! 現われろ、ナンバーズの真の皇よ! ランク12《No.93 希望皇ホープ・カイザー》!」

 

 

 『代行者』

 LP8000

 手札3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《No.93 希望皇ホープ・カイザー》ランク12/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU3

 魔法・罠カード

  無し

 

 その条件で爆誕したのは、四枚の純白と黄金の翼纏う、《希望皇ホープ》の派生モンスター……!?

 

「――ランク12のエクシーズモンスターだとォ!?」

 

 素材条件が、エクシーズ素材を持った同じランクの『No.』エクシーズモンスター×2体以上だと?

 この条件を満たす為に効果が微妙でもランク3の『No.』エクシーズモンスターをエクシーズ召喚してきたのか……!

 

 

「《No.93 希望皇ホープ・カイザー》の効果発動! 1ターンに1度、自分メインフェイズにこのカードのエクシーズ素材の種類の数までエクストラデッキからランク9以下で攻撃力3000以下の――同じランクは1体までの――『No.』モンスターを効果を無効にして特殊召喚する! その後、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く。このターン、相手が受ける戦闘ダメージは半分になり、自分はモンスターを特殊召喚出来ない!」

 

 

 何だと!? 最初から攻撃出来ない1ターン目じゃデメリット0の効果じゃねぇか!

 

 

「――ランク8《No.107 銀河眼の時空竜》! ランク6《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》! ランク5《No.53 偽骸神 Heart-eartH》!」

 

 

 『代行者』

 LP8000

 手札3

 《フレシアの蟲惑魔》ランク4/地属性/植物族/攻600/守2500 ORU2

 《No.93 希望皇ホープ・カイザー》ランク12/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU3→2

 《No.107 銀河眼の時空竜》ランク8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500 ORU0

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU0

 《No.53 偽骸神 Heart-eartH》ランク5/闇属性/悪魔族/攻100/守100 ORU0

 魔法・罠カード

  無し

 

 機械的なフォルムの黒きドラゴンに、《希望皇ホープ》の正統進化系、フェイトの時にも見た《ビヨンド・ザ・ホープ》、そして最後の城に両手が生えたようなモンスターだけ、守備表示で特殊召喚される。

 

 ――効果が無効化され、その上でエクシーズ素材も無いので、この効果で出されたエクシーズモンスターは効果を持たない通常モンスターと同じようなもの。

 定石通りに活用するなら《銀河眼の時空竜》や《ビヨンド・ザ・ホープ》のように攻撃力3000のエクシーズモンスターを出せば最大限に活かせれるが、それなのに最後に出した《No.53 偽骸神 Heart-eartH》の攻撃力・守備力は共に100? その数値の低さが逆に嫌な予感を過ぎらせる……!

 

 

「――私はこれでターンエンド。さぁ、秋瀬直也。かかってこいッッ! 貴方が『デュエル』に賭けた情熱を、その初志を思い出すのですッッ!」

 

 




 本日の禁止カード

 『遺言状』
 通常魔法(禁止カード)
 このターンに自分フィールド上のモンスターが自分の墓地へ送られた時、
 デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 最初期に登場した魔法カード。テキストにやや不備があるが、この効果で特殊召喚出来るのは1体だけである。
 見ての通り、余りにも万能過ぎるサーチ&特殊召喚カード。これで君のデッキから攻撃力1500以下のキーカードをいつでも引っ張り出せるぞー! ……まぁ永久に禁止カードだろうけど。

 なお、このカードを使い、インゼクターどもを展開すると同時にネクロスの儀式モンスターも同時展開しようと企んだが、儀式の神様達の儀式モンスター&儀式魔法サーチ効果が特殊召喚には対応してない事に気づいた作者は泣く泣くこの案を破棄した。仕方ないね。
 素人が下手に複合デッキにするより、一つのデッキテーマでガンガン回した方が事故率が少なく強くなるから仕方ないです。

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