――高速道路をスケートのように滑りながら疾走するオッドアイの少女に、超巨大な存在、封印されていない『エクゾディア』とその『亜種』が並列して飛翔していき、少し後ろにレベル12の儀式モンスターがおまけのように並列して飛翔する。
秋瀬直也
LP8000
手札5→4→5→6→7
無し
魔法・罠カード
無し
――今、オレ達が行っているのは『ライディングデュエル』、速さの世界に生まれ、更なる次元へ突入した新世代の『決闘』である!
《増殖するG》の効果で3ドローし、オレのターンが回ってきたが、その前に――この謎の襲撃者には聞いておかなければならない事がある。
「――お前は何者だッ! オレ個人、いや、違うな。オレ達に対して並ならぬ怨恨を抱いているようだが……!」
超速度で疾走する中、オレは声の限り叫び、『襲撃者の少女』はその緑と赤のオッドアイにあらん限りの憎悪の炎を滾らせていた。
「……ッッ! そうだよね、貴方達は私の事なんて知る由も無い……! 貴方達『転生者』によって否定された物語の事なんて、一顧だにしなかったでしょうね!」
『謎の少女』が感情の荒ぶるままに虹色の光を放ち、赤坂による華麗な『D・ホイール』捌きによって全弾回避される。
操作性は甘いが、なのはの『アクセルシューター』みたいな性能だろうか? 心なしか、着ている漆黒の装甲服も『バリアジャケット』に見えなくもない……?
「否定された物語? 一体何の――」
「大十字紅朔が同じような事を言っていたな。むこうは辿り着かなかった物語だと言っていたが――」
『D・ホイール』を運転する赤坂が言うには、本来産まれる可能性が無かった大十字紅朔と同じ境遇?
いや、この少女の話からすると、オレ達の手で否定された事に――?
「――話しても無駄よ、直也君。それは私達が歩んだ歴史では決して辿り着かない虚像の亡霊。永遠に出番の訪れない端役の戯れ言よ」
と、サイドカーの隣の席にいる柚葉はヘルメット越しから冷めた眼を向ける。
無感情を装っているが、無関心ではない様子。という事は、柚葉にはあれが誰なのか、見当が付いているのか?
「――そうよ、豊海柚葉。そして秋瀬直也ッッ! 今の私は貴方達に否定された可能性! 完全に折られたフラグの切れ端! 産声さえ上げれなかった名も無き赤ん坊の怨嗟ッ! 誰よりも本来の歴史を改変した『転生者』達を憎む存在よ!」
叫ぶ、叫ぶ。超高速で疾走するデュエルロードに『謎の少女』の悲痛な叫びが響き渡る。
「私は貴方達が憎い! 私の産まれる未来を奪った貴方達が! 奪われた明日を一顧だにしない貴方達が! 何で、何で何で何で何で何で何で私だけ、どうして本来の物語にならなかったのッッ!?」
感情の爆発が魔力の暴走を生み、その余波だけでコンクリートの道路を粉砕していく。
悪路になった道路に少し足を取られながらも、転倒せずに疾走し続けてられるのは『D・ホイーラー』の腕に他ならない……! 更には――。
『デュエルモード・チェンジ――『闇』のゲーム』
『――警告、警告、『闇』のゲームの発生を確認! 『闇』のゲームの発生を確認ッ! デュエルモードを『闇』のゲームに切り替えますか?』
『蒼の亡霊』が装着している『デュエルディスク』からそんな警告音が生じ、『Yes』と『No』の二択が表示される。
この『闇のゲーム』が『ライディングデュエル』である以上、『魔術師』の言うように『リアルファイト』で片付ける方が困難であり、むこうが先に仕掛けた以上、この『決闘』での敗北は即ち死である事が確定している――。
「――ッッ! 遂に仕掛けて来やがったか……! 気をつけろッ!」
赤坂さえ険しい顔で警告し、更に『D・ホイール』を加速させる。
この世界が『遊戯王』次元に改変されてから初めて体感する生死を賭けたデスゲーム。だが、オレの胸に去来するのは生死を賭けた『決闘』による恐怖でも高揚感でもなかった。
「――なぁ、そのデッキってお前の本来のデッキじゃないんだろ?」
そう言った瞬間、図星だったのか、『謎の少女』の顔が驚愕に染まる。
「……っ、一体何を――」
「いや、最高に回ってるように見えて、案外隙だらけだからな。手札は《封印されし者の右腕》1枚、墓地も『封印されし』モンスターが11体のみ――ほら、こっちの展開の邪魔すら出来ないだろ」
何か無理に、中途半端に回ったような感触が残り「何か回せてない時のオレと似たような感じなんだよなぁ」と率直な感想を述べる。
『魔術師』との屋敷でやったデュエルの大半はそれであり、アイツ等の使う鬼畜なカード達も合い重なって惨敗を連発したしなぁ。
「……その詰まらないハッタリは命乞いのつもり? こっちは攻撃力11000の《召喚神エクゾディア》がある以上、幾ら貴方でも絶対突破出来ないわ!」
「――果たして、それはどうかな? どんなモンスターにも攻略手段がある。オレには既に見えてるぞ、完璧そうに見えるこの布陣を崩せる一筋の光を!」
うん、何でだろうな。理由は解らないが、酷く気に食わない。気に食わないから、我慢ならない――。
「お前の苦しみも憎しみも、今のオレには理解してやれないけど――今度は、本来のデッキでデュエルしようぜ!」
『蒼の亡霊』で『デュエルディスク』に現れた選択ボタンを刹那に押す、当然『No』だ! ――相手が『闇のゲーム』を押し付けようが関係ねぇ!
「――オレのターン、ドロー!」
秋瀬直也
LP8000
手札7→8
無し
魔法・罠カード
無し
「手札から魔法カード『手札抹殺』を発動! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分だけドローする! オレの捨てる枚数は7枚、よって7枚ドローする!」
「私は1枚捨てて1枚ドロー! この瞬間、手札の《封印されし者の右腕》が墓地に落ちた事で《召喚神エクゾディア》と《究極封印神エクゾディオス》の攻撃力が12000にアップ!」
?????
LP8000
手札1→0→1
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻11000→12000/守0
《究極封印神エクゾディオス》星10/闇属性/魔法使い族/攻11000→12000/守0
《崇光なる宣告者》星12/光属性/天使族/攻2000/守3000
魔法・罠カード
無し
「――ちょっと、あれの攻撃力増やしてどうするのよ!?」
ただでさえどうしようもない《召喚神エクゾディア》の力が更に増し、封印から解き放たれている『エクゾディア』は疾走しながら咆哮する。
確かにあんなモンスターの攻撃を受けては守備表示のモンスターを出していても上からリアルに殺害されそうな勢いである。
というよりも、一撃でもまともに喰らえば『D・ホイール』ごとクラッシュして交通事故になる未来が見えるな。
「それだよ、まさにその通りだよ、柚葉。あれは他のカードの効果を全て受けないが、自分のモンスター効果で攻撃力が『増減』する。――そう、『増』えたり、『減』ったりするんだ」
そう、それが完全耐性を持つ《召喚神エクゾディア》の攻撃力が変化する唯一のルールである。
「――確かに《召喚神エクゾディア》の耐性は惚れ惚れするぐらい完璧さ! だが、その攻撃力を支える『封印されし』モンスターカードはそうではないッッ!」
ならばこそ、付け入る隙は其処に他ならないッ! 如何に強力なモンスターがいても、己の効果という弱点からは絶対に逃れられない!
「『手札抹殺』の効果で手札から墓地に送られた《ワイトプリンス》の効果発動、このカードが墓地に送られた場合、デッキから《ワイト》《ワイト夫人》を1体ずつ墓地に送る!」
「――え? 『ワイ、ト』……? そんなっ、あの『デッキ』じゃない……!?」
「……ああ、オレの本来の『デッキ』は『代行者』の野郎に奪われたみたいでな。このデッキは『魔術師』から借りている」
ああ、この少女もオレの本来の『デッキ』を知っているのか。一体どんなデッキなんだろうな?
とりあえず墓地に《ワイト》《ワイト夫人》《ワイトプリンス》が1枚ずつ落ちる。
「手札から《ゾンビ・マスター》を通常召喚し、効果発動。1ターンに1度、手札のモンスター1体を墓地に送り、自分または相手の墓地のレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。オレは2枚目の《馬頭鬼》を墓地に捨てて《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札8→7→0→7→6→5
《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
魔法・罠カード
無し
隣席にいる柚葉が自身の『デュエルディスク』を弄り、「2枚目? あ、『手札抹殺』で既に落ちてる――」と、1枚目の《馬頭鬼》の居場所を確認する。
「レベル4のモンスターが2体……! でも、幾ら狂った効果揃いのランク4エクシーズでも攻撃力12000の《召喚神エクゾディア》を倒せるカードは無いわ! 例え《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をエクシーズ召喚して《究極封印神エクゾディオス》の攻撃力を半分吸収しても攻撃力8500、今の《召喚神エクゾディア》には届かない!」
「残念だが、このデッキにエクシーズモンスターは1体もいない!」
「え!?」
……その驚愕は『魔術師』に送ってくれ。そのランク4エクシーズの狂いっぷりを見せつけておいて1枚もいれなかったアイツの性根にな!
まぁ『RUM』が手札にある事が前提なら、ランク4の《希望皇ホープ》からフェイトが使った《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》を出して、上から殴り殺す事も出来るし――そもそも光属性モンスターを主に使っているなら、相手がどんな攻撃力でも《オネスト》を握っていれば粉砕出来るだろう。
戦闘での破壊耐性が無いだけで、随分と撃破する方法が思いつくものである。このデッキには何方も無いのが難点だが――。
「墓地の《グローアップ・バルブ》の効果発動! デュエル中に1度だけ、自分のデッキの一番上のカードを墓地に送り、墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札5
《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《グローアップ・バルブ》星1/地属性/植物族/攻100/守100
魔法・罠カード
無し
む、デッキトップから落ちたのは未だに出番の無い、このデッキにある禁止カードのうちの一つの魔法カード『大嵐』か。まぁ特に支障無い。最初の『手札抹殺』で墓地に落としたモンスターカードをバンバン使っていこう。
「自己蘇生可能なレベル1のチューナーモンスター……!? そしてフィールドの3体のモンスターの合計レベルは9、まさか……!」
「レベル4の《ゾンビ・マスター》とレベル4の《ゴブリンゾンビ》にレベル1のチューナーモンスター《グローアップ・バルブ》をチューニング! ――破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚! レベル9《氷結界の龍 トリシューラ》!」
秋瀬直也
LP8000
手札5
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
魔法・罠カード
無し
そしてシンクロ時代の代名詞、最強最悪の龍が『ライディングデュエル』に登場し、飛翔しながらオレ達に追随する――まずは一回目ェッ!
「《氷結界の龍 トリシューラ》がシンクロ召喚された時、相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚ずつ選んで除外出来る! オレはフィールドの《究極封印神エクゾディオス》、墓地の《封印されし者の右腕》、手札1枚を除外する!」
?????
LP8000
手札1→0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻12000→11000/守0
《崇光なる宣告者》星12/光属性/天使族/攻2000/守3000
魔法・罠カード
無し
「ぐっ……!」
《究極封印神エクゾディオス》の方は何の耐性も無いのであっさり除外されて退場する。そして除外された手札の1枚は『強欲な壺』か。危ない危ない、残しておいたら次のオレのターンは無かったな。
言うまでも無いが、他のカードの効果を受けないという史上稀に見る完全耐性の《召喚神エクゾディア》はフィールドにいる以上、《氷結界の龍 トリシューラ》と言えども除外出来ない。
先にフィールドにいるなら効果モンスターの効果を無効化する永続罠『スキルドレイン』すら通用しない始末だ!
「フィールドから墓地に送られた《ゴブリンゾンビ》の効果発動、デッキから守備力1200以下のアンデット族モンスター1体を手札に加える。オレは《ゾンビキャリア》を手札に加える」
秋瀬直也
LP8000
手札5→6
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
魔法・罠カード
無し
「――くっ、《トリシューラ》……! でも、たかが1回シンクロ召喚した程度じゃ――」
「たかが1回程度で済ます訳ねぇだろ! 手札から魔法カード『シンクロキャンセル』発動!」
「なっ、『シンクロキャンセル』!? 何でそんなカードを……!?」
まぁ言いたい気持ちは解る。今までサイドにはあったが、メインに投入したのは今回が初めてだからな。……『D・ホイール』に乗ると決まった瞬間に嫌な予感が生じて入れておいて良かった良かった。
そして心なしか、更に『D・ホイール』の速度が加速しているような気がする。『蒼の亡霊』が飛翔する速度を地味に上げる。
オレがシンクロ召喚を決める毎に更なる加速を得ているのか……?
「フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体を選択してエクストラデッキに戻し、更にエクストラデッキに戻したそのモンスターのシンクロ召喚に使用したシンクロ素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていればその一組を自分フィールド上に特殊召喚出来る! オレは《氷結界の龍 トリシューラ》をエクストラデッキに戻し、オレの墓地の《ゾンビ・マスター》《ゴブリンゾンビ》《グローアップ・バルブ》をフィールドに特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札6→5
《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《グローアップ・バルブ》星1/地属性/植物族/攻100/守100
魔法・罠カード
無し
再び2体のアンデット族モンスターに一つ目の植物族モンスターがフィールドに戻る。……しかし、この3体が飛翔する様って中々シュールだな……!
「《ゾンビ・マスター》の効果発動! 手札のモンスターカード《ゾンビキャリア》を墓地に捨て、墓地の《ユニゾンビ》を特殊召喚する! 更に墓地の《馬頭鬼》を除外し、墓地のアンデット族モンスター《ワイト夫人》を特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札5→4
《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《グローアップ・バルブ》星1/地属性/植物族/攻100/守100
《ユニゾンビ》星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
《ワイト夫人》星3/闇属性/アンデット族/攻0/守2200
魔法・罠カード
無し
「――ああ、そっか。カード名入りで1ターンに1度制限じゃないから、墓地経由して特殊召喚すればまた使えるんだね……!」
「そういう事!」
お、柚葉の方も解ってきたじゃないか! さぁさぁ上げていくぞぉー!
「レベル3の《ワイト夫人》にレベル3のチューナーモンスター《ユニゾンビ》をチューニング! シンクロ召喚! 現われろレベル6《氷結界の龍 ブリューナク》! 更にレベル4の《ゾンビマスター》とレベル4の《ゴブリンゾンビ》にレベル1のチューナーモンスター《グローアップ・バルブ》をチューニング! 再び降臨せよ《氷結界の龍 トリシューラ》! ――二回目ェッ!」
そして無慈悲な事で有名なニ龍をフィールドに呼び出す!
《ブリューナク》と《トリシューラ》は共鳴するように大咆哮をあげ、超高速に飛翔しながら世界をも震撼させる。
……あれ? 『氷結界の龍』はもう一匹いたと思うが、効果も名前も思い出せないな。何故だろう? この二匹に匹敵するぐらい壊れカードだと思うが……?
「《氷結界の龍 トリシューラ》がシンクロ召喚された事でフィールドの《崇光なる宣告者》、墓地の2枚目の《封印されし者の右腕》を除外!」
?????
LP8000
手札0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻11000→10000/守0
魔法・罠カード
無し
手札は無いので除外は出来ないが、此処に至って『謎の少女』は此方の目論見を悟って顔を歪める。
「――ま、さか、このまま《トリシューラ》で『封印されし』モンスターを除外し尽くして《召喚神エクゾディア》を……!? 無理よ、そんなの在り得ない! 『生還の宝札』があるならまだしも、その前に確実に手札が尽きる……!」
そうだな、そんな真似は手札0枚になった方が動ける、『インフェルニティガン』3枚積み《氷結界の龍 トリシューラ》3枚積みの『満足』じゃない限り出来ないだろうし、今回のオレは『生還の宝札』も『早すぎた埋葬』も引けていない。
「さぁて、どうかな? 墓地に落ちた《ゴブリンゾンビ》の効果発動、デッキから守備力0のアンデット族モンスター《ワイトプリンス》を手札に加える」
秋瀬直也
LP8000
手札4→5
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
魔法・罠カード
無し
「墓地の2枚目の《馬頭鬼》を除外し、墓地からアンデット族モンスター《ゴブリンゾンビ》を特殊召喚。そして手札から魔法カード『生者の書-禁断の呪術』を発動! 自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体を選択してゲームから除外する!」
だが甘い! 墓地のモンスターを除外出来るカードは何も《氷結界の龍 トリシューラ》だけじゃないぞ!
「オレは墓地のアンデット族モンスター《ユニゾンビ》を特殊召喚し、3枚目の《封印されし者の右腕》を除外する!」
秋瀬直也
LP8000
手札5→4
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《ユニゾンビ》星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
魔法・罠カード
無し
?????
LP8000
手札0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻10000→9000/守0
魔法・罠カード
無し
「あっ……!」
3枚目の《封印されし者の右腕》がゲームから除外され、除外ゾーンから回収する手段が無い限りは『エクゾディア』パーツ5枚揃える事が不可能となる。
これで手札に5枚揃えての特殊勝利は無くなったな……!
「――いいぜェ、最高に乗ってきたなぁ秋瀬ェッ! もっとだ、もっと疾走く、もっと強く――!」
赤坂が狂気喝采し、更にテンションを上げる――まだだ! まだ行ける。まだまだ加速出来るッ!
「おうともッッ! その調子でばんばんぶっ飛ばせぇーッ!」
そのオレの意思に呼応するかのように、赤坂の『D・ホイール』捌きが更に鋭利に繊細なまでの挙動となり、全ての要素を併合して加速していく。
ヘルメット越しから頬を打つ迎え風に恐怖を抱くと同時に芽生える、熱く燃え滾る情動、これがッ、この高揚感が速さの中でのみ生まれる『ライディングデュエル』の醍醐味か――ッッ!
「墓地の《ワイトプリンス》の効果発動! 自分の墓地からこのカードと『ワイト』2体を除外し、デッキから《ワイトキング》1体を特殊召喚する! オレは《ワイト》《ワイト夫人》を除外する!」
秋瀬直也
LP8000
手札4
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《ユニゾンビ》星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?→0/守0
魔法・罠カード
無し
「――っ、此処で《ワイトキング》を特殊召喚!? 墓地から『ワイト』が無くなったから攻撃力0だよ!?」
「構わないさっ! 生憎とこのデッキにレベル2のチューナー以外のモンスターはサーチ出来るアンデット族以外に2体だけだからな! ちょっと墓地コストの高い代役さッ!」
柚葉の困惑は尤もだが、そのうちの1体の《増殖するG》はアンデット族モンスターじゃないので蘇生出来ない、もう1体の《デビル・フランケン》は未だにデッキの中だ!
「《ユニゾンビ》の第二の効果発動! フィールドのモンスター1体のレベルを1つ上げ、デッキからアンデット族モンスター1体を墓地に送る。この効果の発動後、ターン終了時までアンデット族以外の自分モンスターは攻撃出来ない。――オレは《ユニゾンビ》のレベルを1上げて4にし、デッキから3枚目の《ワイトプリンス》を墓地に送って効果発動、デッキから2枚目の《ワイト》《ワイト夫人》を1枚ずつ墓地に送り、《ワイトキング》の攻撃力は3000となるッ!」
秋瀬直也
LP8000
手札4
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《ユニゾンビ》星3→4/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻0→3000/守0
魔法・罠カード
無し
……しかし、飛翔する《ワイトキング》って頭蓋を金色に着色し、黒いマントを装備すればもろ『黄金○ット』だよな……? 飛翔するドラゴン達は絵になるが、飛翔する骸骨はシュールな光景である。
しかし、これでまた3体の合計レベルが9となった!
「《氷結界の龍 ブリューナク》の効果発動! 手札を任意の枚数墓地に捨て、捨てた数だけフィールド上のカードを選択して持ち主の手札に戻す。――オレは2枚目の《ワイトプリンス》を捨て、《氷結界の龍 トリシューラ》を持ち主の手札に戻す。言うまでもないがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターは手札ではなく、エクストラデッキに戻る。墓地に送られた《ワイトプリンス》の効果発動、デッキから3枚目の《ワイト》《ワイト夫人》を墓地に送り、《ワイトキング》の攻撃力は6000となる」
秋瀬直也
LP8000
手札4→3
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《ゴブリンゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1100/守1050
《ユニゾンビ》星4/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻3000→6000/守0
魔法・罠カード
無し
徐々に追いついてくる《ワイトキング》の攻撃力の数値に、『謎の少女』の焦燥感が更に沸き立つ!
「レベル4の《ゴブリンゾンビ》とレベル1の《ワイトキング》にレベル4となったチューナーモンスター《ユニゾンビ》をチューニング! レベル9《氷結界の龍 トリシューラ》! ――三回目ェッ!」
無慈悲な龍の絶対零度により、更に『謎の少女』の墓地の『封印されし』モンスターを除外する!
「効果発動で墓地の《封印されし者の左腕》を除外! 墓地に落ちた《ゴブリンゾンビ》の効果でデッキから守備力0のアンデット族モンスター、2枚目の《ワイトキング》を手札に加える」
秋瀬直也
LP8000
手札3→4
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
魔法・罠カード
無し
?????
LP8000
手札0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻9000→8000/守0
魔法・罠カード
無し
これで墓地の『ワイト』モンスターは《ワイト》2体《ワイト夫人》2体《ワイトプリンス》2体《ワイトキング》1体――合計7体となる。
「これで『封印されし』モンスターは8体、『ワイト』モンスター」の合計は7体!」
柚葉の言う通り――《ワイトキング》は《召喚神エクゾディア》と同じく、墓地に落ちたカードによって攻撃力を増減させるカード、それを使う彼女が気づかない筈も無い……!
「墓地の《ゾンビキャリア》の効果発動! このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚デッキの一番上に戻し、《ゾンビキャリア》を墓地から特殊召喚する! この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れた場合、ゲームから除外される!」
秋瀬直也
LP8000
手札4→3
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ゾンビキャリア》星2/闇属性/アンデット族/攻400/守200
魔法・罠カード
無し
「《氷結界の龍 ブリューナク》の効果発動、手札を1枚墓地に捨てて《氷結界の龍 トリシューラ》をエクストラデッキに戻す!」
最後の仕込みだ。オレは手札の2枚目の《ワイトキング》をコストとして墓地に捨てる。
「――え? 《ワイトキング》を捨てた……?」
対戦相手の驚愕は尤もだろう。次のターンに通常召喚するだけで攻撃力7000になるカードを捨てたのだ、驚くなという方が無理がある。
――この時点で既に、オレの見えている『道』の終点と彼女の見えている道は、致命的に違えていた。
秋瀬直也
LP8000
手札3→2
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《ゾンビキャリア》星2/闇属性/アンデット族/攻400/守200
魔法・罠カード
無し
「そして手札から速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動! 除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで墓地に戻す! オレは除外されている《馬頭鬼》2体と《ワイトプリンス》を墓地に戻す!」
「そんな、此処でそのカードをっっ!?」
除外されたカードを墓地に3枚まで戻すだけだから、普通のデッキではアド稼ぎに繋がらないが、墓地にいる自身を除外して別のアンデット族を特殊召喚出来る《馬頭鬼》を使うアンデシンクロにおいては最高のアドバンテージとなる……!
これで墓地の『ワイト』モンスターの合計は《ワイト》2体《ワイト夫人》2体《ワイトプリンス》3体に《ワイトキング》2体を合わせて9体! さぁ、最後の仕上げだッ!
「墓地の《馬頭鬼》を除外し、墓地のレベル1のアンデット族モンスター《ワイト》を特殊召喚する!」
秋瀬直也
LP8000
手札2→1
《氷結界の龍 ブリューナク》星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
《ゾンビキャリア》星2/闇属性/アンデット族/攻400/守200
《ワイト》星1/闇属性/アンデット族/攻300/守200
魔法・罠カード
無し
そしてオレの次なる行動を察したのか、赤坂が嬉々とした顔で最大限にアクセルを握り締め――先に見えるコーナーを見る限り、明らかに事故確定のオーバースピードとなる。
「――秋瀬直也ッ!」
「――解ってるさッ! いっちょ派手に行けェッッ!」
「――え? 何? ちょっと、次コーナーだよ!? 曲がる気あるの!?」
隣の柚葉が慌てて驚愕するが、ったく、このスピード狂め! さっきまでの気怠い顔は何処行きやがったァッ!
「レベル6の《氷結界の龍 ブリューナク》とレベル1の《ワイト》に、レベル2のチューナーモンスター《ゾンビキャリア》をチューニング! シンクロ召喚! レベル9《氷結界の龍 トリシューラ》! ――四回目ェッ!」
最後のシンクロ召喚によって空前絶後の最大加速を得た『小狸号』はそのままカーブを一直線に踏み越えて、フェンスを飛び越え、コースを踏み外し――地を疾走する『D・ホイール』が文字通り天を舞う。
地上を這うだけのマシンは地の道を踏み越えて大ジャンプし、遥か先の遠方にある高速道路に見事着地して尚も疾走する。
「――っっ?!?! な、なななななんて無茶を!?」
「なぁに言ってんだ、テメェの指し示す方角通りの進行だッ! その行程を破壊的なまでに短縮してやったじゃないかッ!」
――赤坂の野郎、テンション高ぇなぁおい!?
まぁオレもノリで同意したからとやかく言えないが――確かに目的の『代行者』のいる方角は常に柚葉から指し示されているが、流石に寿命縮まった。今度はまともな道を疾走ってくれよなッ!
――少し遅れ、《召喚神エクゾディア》の右掌に乗って渡ってきた来た『謎の少女』の驚愕は並ならぬモノだっただろう。
「《トリシューラ》の効果で2枚目の《封印されし者の左腕》を除外ッ!」
秋瀬直也
LP8000
手札1
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
魔法・罠カード
無し
「あっ……!」
?????
LP8000
手札0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻8000→7000/守0
魔法・罠カード
無し
これで『封印されし』モンスターを合計5体除外し、攻撃力の優劣はこの時点をもって逆転したッ!
「墓地の2枚目の《馬頭鬼》を除外し、墓地の《ワイトキング》を特殊召喚する! 墓地の《ワイト》の数は合計8体! よって《ワイトキング》の攻撃力は8000となる!」
秋瀬直也
LP8000
手札1
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?→8000/守0
魔法・罠カード
無し
《ワイトキング》に攻撃力を逆転された『謎の少女』の驚愕は底知れず、けれども同時に安堵する。
《ユニゾンビ》の第二の効果を使った以上、このターン、オレはアンデット族モンスターしか攻撃出来ない。
《召喚神エクゾディア》は戦闘破壊されるが、そのダメージは1000程度、このターンで仕留められる事は無くなったと確信したが故に。だが――。
「――いいや、このターンで終わりだ。オレの手札の最後の1枚は、2枚目の『生者の書-禁断の呪術』! 墓地の2枚目の《ワイトキング》をフィールドに特殊召喚し、3枚目の《封印されし者の左腕》を除外する!」
秋瀬直也
LP8000
手札1→0
《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻8000→7000/守0
《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?→7000/守0
魔法・罠カード
無し
「そん、な――」
?????
LP8000
手札0
《召喚神エクゾディア》星10/闇属性/魔法使い族/攻7000→6000/守0
魔法・罠カード
無し
……勝負あった。
《氷結界の龍 トリシューラ》は《ユニゾンビ》の第二の効果を使ったせいでこのターン攻撃出来ないが、彼女の手札は0枚、墓地から発動するカードが無い以上、この攻撃を受けて合計8000ダメージとなる『謎の少女』に尽くせる手は既に無い。
自身の敗北を悟った『謎の少女』は絶望し、光無き眼から溢れんばかりの涙を流す。
「――私を『除外』して、永遠の『闇』に葬るの……? いや、いやいやいやいやいやいやいや……! 私はっ、ママ達と一緒にいられる未来が欲しいだけなのに……!」
……ああ、いきなり攻撃を仕掛けてきた『謎の少女』に何故か敵意を抱けなかったのは、彼女が見た目と違って余りにも――泣きじゃくる小さな子供みたいだからと、無意識の内に悟っていたからか。
ったく、女の涙は苦手だって言ってるだろうが……!
「聞いちゃ駄目よ、直也君。あれには最初から救いが――」
「……一つ良いか?」
柚葉からの忠告を敢えて無視し、オレは『謎の少女』に向き合う。
……うん、柚葉の言う事が一番正しいって解ってるし、オレに出来る事なんて最初から無い事も解っている。解り切ってる事さ。だが――。
「――もうこの『魔都』では正規の『物語』の流れは途絶え、本来辿り着く筈だった『物語』も別の形に変容しているのは自覚している。……けどさ、どんな形であれ、確固たる『個』として此処に存在しているのはさ、君に繋がる『物語』が存在しているからじゃないのか?」
「――え?」
「まぁ、断言は出来ないけどさ。未来なんてモノは秒単位で変わるからなぁ」
詭弁である事は強く自覚している。この余りにも小さすぎる『希望』が更なる『絶望』の撒き餌になる事も察している。
そしてこの『約束』も、決して叶わぬものだとも――。
「……いつかまた、まだ見ぬ未来の先に――こんな危険な『闇のゲーム』じゃなく、普通に『決闘』しようぜ。オレは此処にいつまでも居るからさ――」
この果たされぬ『約束』が、オレ自身をも自傷するものだと解り切っている。
それでも――泣いている子供に手を差し伸べない選択は、選べなかった。
「――バトル! 少しだけ痛いぞっ! 《ワイトキング》で《召喚神エクゾディア》を攻撃!」
最初に召喚した《ワイトキング》が飛び出し、対抗して《召喚神エクゾディア》が両手を合わせて破滅の炎が撃ち出し――《ワイトキング》は全て受け切ってからその骨の拳を振り下ろし、その打撃地点から中心に黄金に光り輝く巨体が割れ、幻の召喚神は塵芥と消えていく――。
「――ぐぅぅっ!」
?????
LP8000→7000
「2体目の《ワイトキング》でプレイヤーにダイレクトアタック!」
そして2体目の《ワイトキング》もまた飛翔しながら『謎の少女』相手にその拳を振り下ろし――直撃させずに下の道路を木っ端微塵に崩壊させて、その余波をもってこのデュエルに決着を付ける。
「あ……――」
?????
LP7000→0
デュエルの終了を知らせる音の響きは、いつ聞いても切ない。後味の悪い時は尚更だ――。
「――おいッ! お前っ! 名前はっ!?」
だが、最後に、オレは力の限りそう叫び――光の粒となって消え逝く『謎の少女』は最後に笑顔を浮かべて自身の名前を呟き、最後の一文字まで聞き届けた。
「……なぁ、柚葉。アイツに繋がる未来は――」
「……多分、無いわ。おそらく誕生すらしないと思うし、万が一誕生したとしても私達と巡り合う事は無いわ」
あれから、赤坂悠樹は元のテンションに戻って、普通に走行し続けている。
オレはサイドカーの中で揺らされながら、この重苦しい沈黙に耐えれずにぽつりと柚葉に尋ね――返ってくる返答は予想通り気休めにすらならない『残酷な現実』である。
「……そっか。出来ない『約束』をしちまったな……」
やはり、心にいつまでも取れない棘のような悔いが残った。オレのやった事はただの自己満足による偽善であり、欺瞞だ。自己嫌悪で嫌になる。
「――いいえ、それは違うわ。貴方が此処で生きて行く限り、彼女との『約束』は守れるわ」
……どうしてこういう時にそういう事を言うかな、お前は。いつもと比べて優しすぎて、ああ、くそ、もう……!
「……それこそ詭弁だろ、全く……ありがと、柚葉」