転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

147 / 168
08/『希望』の返歌 vsフェイト・テスタロッサ(3)

 

 ――『闇』のゲーム。

 

 それは遥か数千年前の古来より存在するデュエルモンスターズの『闇』であり、嘗ての海鳴市を『魔都』とした元凶そのモノである。

 質量のあるソリッドビジョンの安全装置を外せば簡単に相手を殺傷出来る暴力となり――更には生来より『異能』を持つ『転生者』の本領を発揮する『殺戮空間(キリング・フィールド)』として悪用される事となる。

 

 ――その当時はライフ0になって決着のつく『決闘』など稀であり、モンスターのダイレクトアタックで致命傷を負う者、モンスター効果や魔法効果・罠効果で精神諸共焼き尽くされる者、相手からのリアルダイレクトアタックで即死する者など日常茶飯事。

 まさに『闇』のゲーム全盛期にして史上最悪の大混乱時代。恐怖と共に語り継がれる魔都『海鳴市』の暗黒期である。

 

 ――そんな阿鼻叫喚の地獄の只中を、『闇』のゲームを否定して貫き通した『決闘者』がいた。

 

 後に『伝説の決闘者』として語り継がれる『彼』は、別段強い『決闘者』ではなかった。

 そもそも皆が挙って投入している禁止級カードが一枚も入ってないデッキなのだ、他の無差別級と比べて劣るのは当然過ぎる話である。

 それに『彼』は『転生者』ではあったけど、所詮は異端揃いの『転生者』の中でも『中の下』程度の存在、しかも『転生者』の利点を存分に活かせる『闇』のゲームを自ら否定している事から非転生者の『決闘者』にさえも劣る存在だった。

 

 ――何度も敗北した。何度も死にかけた。それでも『彼』は諦めずに『決闘』し続けた。

 

 一体何が『彼』を突き動かしていたのかは、当人しか知る由も無い事だが――その蟻の一穴が、最終的にこの『魔都』における終わり無き『闇』のゲームを終わらせるに至った事は確かだった。

 

 ――彼女、フェイト・テスタロッサはその『彼』に挑んだ側の一人であり、『闇』のゲームを仕掛けた側だった。

 

 様々な要因、多種多様の悪意によって弄ばれた結果ではあるが、当時の彼女自身もまた『彼』を強く憎んだ。

 何で高町なのはの時に限って助けに来るのか、何で自分は助けてくれないのか、何で自身のサーヴァントが辿った歴史とは違う道筋を歩んでいるのか、何でそんなに強くあれるのか、どうして『希望』は自身の手のひらから零れ落ちてしまうのか――。

 

 憎しみも、妬みも、憧れも、怒りも、悲しみも、絶望も羨望も諦観も悲哀も何もかも『彼』に全てぶつけた『決闘』の結果は、フェイト・テスタロッサの敗北に終わった。

 その『決闘』で何もかも消え果てたけれども、最後に『彼』から貰った1枚の『希望』だけは残ったのだ――。

 

 

 

 

 いやぁ、割りと自覚無かったが、フェイト・テスタロッサとは何度か殺し合った仲だし、その遺恨が今でも残っていたという説が極めて濃厚じゃないだろうか?

 ……うん、なのはとの事で邪魔した記憶しか無いしな! そして遊戯王次元と化したオレ自身の事が一番解らないが、うん、更に激発するような事を仕出かしたんじゃないだろうか……? この世界のオレ、一体何やったんだ?

 と、とりあえず、今は『決闘』に集中だ!

 

「――オレのターン、ドロー!」

「ドローフェイズ時、《SNo.0 ホープ・ゼアル》の効果発動! 相手ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き――このターン、相手は効果を発動出来ない!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻4000→3000/守4000→3000 ORU4→3

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 ぐわぁ、やっぱりドローフェイズに全部の効果が封じられた……! これは厳しい、と思いきや――スタンバイフェイズ、さっきのターンに自身の効果で除外した《PSYフレームロード・Ω》と《PSYフレームロード・Ζ》がオレのフィールドに帰ってきた? あれ、効果は発動出来なくなっているが……?

 

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2→3

 《バトルフェーダー》星1/闇属性/悪魔族/攻0/守0

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4→5

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻3000/守3000 ORU3

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 ……あ、効果が発動出来なくなっているだけで、既に発動している効果は大丈夫という裁定なのか。

 

「スタンバイフェイズ、前のターンに除外していた《PSYフレームロード・Ζ》と《PSYフレームロード・Ω》がオレのフィールドに戻る。同時に除外していた《No.39 希望皇ホープ》と手札一枚も戻る」

 

 よし、このお陰で《SNo.0 ホープ・ゼアル》の攻略の手段が思いついた。アイツがこの絶対的な効果を発動出来るのは相手ターンだけ、自分のターンの時は何の耐性も無いモンスターだ。次のターンが来たらドローフェイズ時に《PSYフレームロード・Ζ》の効果で除外してしまおう。

 さて、このターン、オレの出来る事は少ない。効果の発動が出来なくなった以上、『早すぎた埋葬』が死に札、既に効果を発動していた『生還の宝札』も『RUM-ヌメロン・フォース』の効果で無効化されている。よし、まずは――。

 

「オレは手札から《ワイトキング》を通常召喚し、《PSYフレームロード・Ζ》と《PSYフレームロード・Ω》を攻撃表示に変更する――オレの墓地にいる《ワイト》は合計11体、よって攻撃力11000となる!」

「っ!?」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札3→2

 《バトルフェーダー》星1/闇属性/悪魔族/攻0/守0

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?→11000/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 かつてないほどの攻撃力を得た《ワイトキング》が張り切りながら出現する。

 

「バトル! オレは《ワイトキング》で《No.39 希望皇ホープ》を――」

「――『希望』は断ち切らせない! 墓地の《超電磁タートル》の効果発動! 相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外し、そのバトルフェイズを終了させる! この効果はデュエル中に1度しか使用出来ない!」

 

 ……うん、効果の発動を封じられている以上、あれに対処する方法は無い。『天使の施し』で《処刑人-マキュラ》と一緒に落ちた前のターンから解っていた事だ。

 

「バトル終了、メインフェイズ2――」

 

 さて、する事は今引いたこのカードをセットする事ぐらいだが、使い処を間違えなければ大丈夫だろう。

 既にフェイト・テスタロッサは攻勢限界点に達していると見て間違い無いだろう。前のターンで《No.39 希望皇ホープ》3枚、《CNo.39 希望皇ホープレイ》3枚、《CNo.39 希望皇ホープレイV》1枚、《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》1枚、《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》1枚、《SNo.0 ホープ・ゼアル》1枚と、既に10枚もエクストラデッキから使用して残り5枚となっている。

 エクストラデッキ全部が『希望皇ホープ』系列と断定するのは早いが、最初に展開するべき《No.39 希望皇ホープ》を全部使い果たし、次に重ねる《CNo.39 希望皇ホープレイ》も全部使用、恐らくはまだ《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》が2枚エクストラデッキに眠っているだろうが、エクシーズ素材2枚用意出来ないのならば恐れるに足らんだろう。

 残りの3枚が未確定要素であり、それが見えた時こそ勝敗を決する時だろう。

 ――とりあえず、次にオレのターンが来れば、どんな布陣だろうが何とかなる。幾ら《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》が殺意の塊でも、攻撃力5000を超えてしまえばもう一安心だ。

 

 そう、例え《ワイトキング》の打点を超える手段があったとしても――。

 

「オレはカードをセットしてターンエンド!」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2→1

 《バトルフェーダー》星1/闇属性/悪魔族/攻0/守0

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻11000/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

  伏せカード1枚

 

「私のターン、ドロー!」

「ドローフェイズ時、《PSYフレームロード・Ζ》の効果で自身と《SNo.0 ホープ・ゼアル》を次のオレのスタンバイフェイズまで除外する!」

「っ、《ホープ・ゼアル》……!」

 

 さらば、絶望の化身! これでヤツのエクシーズ素材は全部墓地に送られ、次のターンに戻ってきても効果を使えない上に攻撃力0で棒立ちする事となる!

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札5→6

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

「……っ、《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》の効果発動! 1ターンに1度、墓地の自分の墓地の『No.』モンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 蘇って《No.39 希望皇ホープ》!」

「その効果にチェーンして《PSYフレームロード・Ω》の効果発動! 相手の手札をランダムに1枚選び、そのカードとこのカードを次の自分のスタンバイフェイズまで表側表示で除外する!」

 

 さて、この妨害で除外したカードは――罠カード『ブレイクスルー・スキル』か。良いカードを除外出来たものだ。

 これで次のターンでの憂いが一つ無くなった。

 

「蘇生した《希望皇ホープ》でエクシーズ・チェンジ! 宇宙の秩序乱されし時、混沌を照らす一筋の希望が降臨する! 見参! ランク4《SNo.39 希望皇ホープONE》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札6→5

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《SNo.39 希望皇ホープONE》ランク4/光属性/戦士族/攻2510/守2000 ORU1

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 んな、まだチェンジ先の『希望皇ホープ』モンスターがあったのか! だが、これでフェイトのエクストラデッキは残り4枚となる。

 ……しかし、攻撃力2510とは、最近のカードにしては珍しく半端な攻撃力だ。『デュエルディスク』が無ければライフ計算が面倒な事になっていたんだろうなぁ。

 

「そしてランクアップ・チェンジ! ランク5《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》!」

 

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札5

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU2

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 2枚目の《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》、しかもエクシーズ素材2個持ち――だが、それでは攻撃力11000の《ワイトキング》は倒せない。

 展開する以上、これを倒せる手段があると見て間違い無いだろう。フェイトの残りのエクストラデッキの枚数は3枚、さぁ、その『切り札』を出してこい……!

 

「――行くよ、直也! 私は手札から『RUM-バリアンズ・フォース』を発動! これで《No.39 希望皇ホープ》をランクアップ・エクシーズチェンジッ!」

 

 また『RUM』か!? 良くサーチカード無い魔法カードをこんなにも手札に引けるもんだな。流石は『決闘者』というべきか。

 

「――重なる想い、繋がる心が世界を変える! 希望に輝く魂よ! ランク5《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札5→4

 《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》ランク10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守2000 ORU4

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU2

 《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》ランク5/光属性/戦士族/攻2800/守2500 ORU1

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 ホープレイ∨が禍々しい進化だったのならば、こっちは正統進化系と言えよう。オレは即座にこのカードのテキストを確認する。

 

 《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク5/光属性/戦士族/攻2800/守2500

 レベル5モンスター×3

 このカードが攻撃する場合、

 相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 また、このカードが「希望皇ホープ」と名のついたモンスターを

 エクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

 ●このカードが相手の表側表示モンスターに攻撃宣言した時、

 このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

 ターン終了時まで、その相手モンスターの効果は無効化され、

 このカードの攻撃力はその相手モンスターの攻撃力分アップする。

 

 これまた恐ろしや、《オネスト》効果内蔵の戦闘絶対勝利するマンである。

 これとさっき手札除外した時に見えた《ZW-阿修羅副腕》が組み合わさった日には問答無用で全員殴り殺される事だろう。本当に『ホープ』とは殺意溢れる一族である。

 

 ――さて、このタイミングだろう。バトルフェイズに入ったらコイツらの効果で罠カードを発動出来なくなるしな……!

 悪いが、フェイト。この勝負、オレの勝ちだ……!

 

「――罠発動っ! 『死のデッキ破壊ウイルス』! 自分フィールドの攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体――攻撃力0の《バトルフェーダー》をリリースし、相手フィールドのモンスター及び相手の手札を全て確認し、その内の攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する!」

「――え?」

 

 フェイトが呆然とする中、自動的に処理が行われてフェイトの残り4枚の手札が開示される。

 

 モンスターカード《イエロー・ガジェット》

 モンスターカード《ZW-阿修羅副腕》

 通常魔法『RUM-アストラル・フォース』

 モンスターカード《Vサラマンダー》

 

 えーと、《イエロー・ガジェット》の攻撃力は1200、《ZW-阿修羅副腕》の攻撃力は1000、《Vサラマンダー》の攻撃力は1500、手札4枚のうち《Vサラマンダー》だけ破壊して墓地行きか。

 

「あ、あ、あっ……!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4→3

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 場の全ての『希望皇ホープ』が何の抵抗も出来ずに『死のデッキ破壊ウィルス』の効果で一気に破壊され、フィールドががら空きとなる。

 《バトルフェーダー》が手札誘発効果という役割を終えて、更にこんな処で役立つとは予想外である。ちなみに普段は《ワイトプリンス》などを使ってリリース要員にすると同時に墓地に《ワイト》を肥やすとかいう使い方をする。

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札1

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻11000/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

「その後、相手はデッキから攻撃力1500以上のモンスターを3体まで選んで破壊出来る。このカードの発生後、次のターンの終了時まで相手が受ける全てのダメージは0となる」

 

 エラッタ後についたデメリットが地味に痛い。

 ちなみにこの攻撃力1500以上のモンスターを3体まで破壊して墓地に送るのは任意効果である。大抵は墓地肥やしの為に逆利用されるし、この次のターンの終了時までダメージが0というのも痛い。無条件で相手に1ターン与えるという事だからなぁ。

 だが、流石に此処からの立て直しは1ターンでは無理だろう。

 

「……わ、私は、これで、ターンエンド……」

 

 3体まで墓地に送る効果を使わず、フェイトは生気無い眼でターンエンドの宣言をする。

 

「オレのターン、ドロー! スタンバイフェイズ時、《PSYフレームロード・Ζ》と《PSYフレームロード・Ω》がオレのフィールドに帰還し、除外した2枚のカードも帰還する」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札1→2

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻11000/守0

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札3→4

 《SNo.0 ホープ・ゼアル》ランク0/光属性/戦士族/攻?→0/守?→0 ORU0

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 エクシーズ素材を全て失った《SNo.0 ホープ・ゼアル》の攻撃力・守備力は0、もうあの効果を起動する事も出来ない。

 ただ『死のデッキ破壊ウィルス』の効果で、このターンが終わるまではダメージを与える事が出来ない。

 だが、ライフを削れなくても出来る事は沢山あるのだ。

 

「墓地の《グローアップ・バルブ》の効果発動! 自分のデッキの一番上のカードを墓地に送り、墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果はデュエル中に1度しか使用出来ない」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻11000/守0

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《グローアップ・バルブ》星1/地属性/植物族/攻100/守100

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 落ちたカードは魔法カード『ブラック・ホール』か、地味に痛いな。

 

「レベル1の《ワイトキング》にレベル1のチューナーモンスター《グローアップ・バルブ》をチューニング! シンクロ召喚! レベル2《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 またもF-1と合体したような機械族モンスターがこのデュエルでも登場である。うん、コイツ便利だからね。

 

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動! このカードがシンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローする!」

 

 ドローしたカードは3枚目の《ワイトメア》――モンスターカードである。よし、これなら――!

 

「手札から魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動! 自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体を選択してゲームから除外する。オレは墓地より《ゾンビ・マスター》を特殊召喚し、そっちの墓地にある《No.39 希望皇ホープ》を除外する」

「――ホープ……!」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2→3→2

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

「更に《ゾンビ・マスター》の効果発動! 手札からモンスターカード1枚を墓地に送り、自分または相手の墓地のレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。――来い、レベル3《ワイト夫人》!」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札2→1

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 《ゾンビ・マスター》星4/闇属性/アンデット族/攻1800/守0

 《ワイト夫人》星3/闇属性/アンデット族/攻0/守2200

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

「……あっ、3体のモンスターの合計レベルが『9』……!?」

 

 フェイトはオレのやろうとした事に気づき、心底絶望した顔になる。

 ……うん、その悲痛な顔を見るのは非常に心苦しいが、これがこのターン、オレが出来る事であり、残念ながら容赦はしない。

 

「レベル4の《ゾンビ・マスター》にレベル3の《ワイト夫人》、それにレベル2のシンクロチューナーモンスター《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング! ――破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! シンクロ召喚! レベル9《氷結界の龍 トリシューラ》!」

 

 絶対零度の封印を粉砕・玉砕・大喝采し、3つ首の伝説龍がフィールドに降臨する……!

 さぁ元禁止カード、現在多分制限カードの、シンクロ時代が最も狂っていた時に数多の『決闘者』を絶望に追い込んだ最狂のシンクロモンスターの登場だ! あ、念の為に守備表示で。

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札1

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 コイツのシンクロ素材はチューナー+チューナー以外のモンスター2体と、最低でも素材モンスターが3体必要な重い条件だが、それに見合う効果をコイツは持っている。

 

「あ、あっ、トリ、シューラ……!」

「――このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚ずつ選んで除外出来る」

 

 そう、コイツは手札・フィールド・墓地、全ての領域から1アドずつ、合計3アドも除外する最強級の除去カードなのだ……!

 

 あとコイツのテキスト的に選んで除外しているように見えるが、対象を取らない除外効果なので、効果の対象にならない耐性持ちモンスターも選んで除外出来る。

 ……選んで除外しているのだから、対象に取る効果じゃないのか!? だって? オレだってちんぷんかんぷんだよ。KONMAI語は世界で最も難解な言語という事で納得してくれ。

 

 全盛期の満足はコイツを1ターンのうちに3体もシンクロ召喚して相手フィールド全てを除外し尽くしたという無慈悲な話は非常に有名である。

 

 ――うん、出されたら叫びたくなるが、出すと凄く気持ち良い。コイツはその無慈悲な効果で多くの『決闘者』を殺してきたが、同時に多くの『決闘者』を救ってきたのだ。

 

「フィールドから《SNo.0 ホープ・ゼアル》、墓地から2枚目の《No.39 希望皇ホープ》、そして手札を1枚除外する!」

 

 除外された手札は……お、これはラッキーだ。効果モンスターの効果を無効化する『ブレイクスルー・スキル』が除外されている。

 これで効果を無効化される心配がほぼ無くなった為、安心して《ワイトキング》を立てれる。

 

「墓地の《馬頭鬼》を除外し、墓地の《ワイトキング》を攻撃表示で特殊召喚する」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札1

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500/守1800

 《PSYフレームロード・Ω》星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻0→12000/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 このターンのうちに最後の《ワイトメア》が墓地に落ちたので、これで《ワイトキング》の攻撃力は12000となる。ほぼ理論値じゃないか。

 ……まぁ『死のデッキ破壊ウィルス』のせいでダメージ与えられないから、もうバトルフェイズに入らずにエンド宣言をするしかないのだが。

 

「オレはこれでターンエンドだ」

「……ぁ」

 

 あれ、フェイトさんの反応が無い? あ、ヤバい、目が完璧に死んでいる……!

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4→3

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 一見して永続魔法と永続罠があるように見えるが、あれは『ヌメロン・フォース』の効果で無効化されている為、ただのカカシと化している。

 

 フェイトのエクストラデッキの残り枚数は僅か2枚。

 《No.39 希望皇ホープ》は1枚墓地で2枚除外。

 《CNo.39 希望皇ホープレイ》は3枚墓地。

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》は2枚墓地。

 《CNo.39 希望皇ホープレイV》《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》《SNo.39 希望皇ホープONE》《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》は1枚ずつ墓地。

 《SNo.0 ホープ・ゼアル》は1枚除外――おそらく1枚は3枚目の《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》だとするなら、不確定要素はあと1枚。だが、これはおそらく『RUM』魔法カードを用いてランクアップ・エクシーズ召喚する類だったのだろう。

 

 ――普通に考えれば、もう逆転出来る可能性など皆無に等しいだろう。

 

「……あーあ、直也君。やりすぎて完全に消化試合になっちゃってるじゃない。フェイト・テスタロッサが可哀想だよ」

「いや、やりすぎじゃない」

「……? 流石に此処から逆転するなんて、私にだって無理だって解ってるわよ?」

 

 怪訝な顔をして柚葉は尋ねる。確かに常識的に考えればそうだろう。砂粒ほどの確率など0に等しいだろう。だが――。

 

 

「――いや、ある。『決闘者』が次なる可能性に向かってドローし続ける限り、逆転の可能性は、『希望』の光は決して消えない……!」

 

 

 そう、アリアとの『決闘』でオレがそうだったように、相手のライフを0にしない限り『決闘者』という人種は何処までも足掻く、不屈にして不滅の戦士なのだ……!

 

 

 ――なぁ、お前もそうだろ? フェイト・テスタロッサ!

 

 

 

 

 ――今度は『彼』の眼を、まっすぐ見る。

 こんな私の事を、真摯に信じて見てくれる、まっすぐな眼を――。

 

 ……そうだ、あの時貰った『希望』に答えたくて、今の私は勇気を振り絞って『彼』と『決闘』してるんだ。

 こんな苦境ぐらい、簡単に乗り越えられるほど強くなったと、感謝の気持ちを伝えたくて、なのに私は……!

 

「……また私は、『絶望』の前に心折れて、屈しそうになった。自分の無力さに涙を流して、全て諦めそうになった」

 

 涙で濡れた両眼を乱雑に拭い取り、そのまっすぐな眼を見据える。

 

 

「――でも、貴方が、私に『希望』をくれた貴方が信じてくれるなら、私は――!」

 

 

 もう迷わない。もう何も怖くないっ! 貴方が私を信じてくれる、それだけで私はこんなにも強くなれる――!

 

「――見ていて、直也! これが、私から貴方への全力全開の『返歌』……! このドローに全ての想いを乗せてっ! 私のターン、ドロー!」

 

 デッキトップのカードが目が眩むほど光り輝き、その『希望』の光に答えるべく全身全霊を籠めてドローする!

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札3→4

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

「スタンバイフェイズ、《PSYフレームロード・Ω》の効果発動! 除外されている《馬頭鬼》を墓地に戻す!」

「ホント容赦無いなぁ……でも、来たよ。『希望』に繋がるカードがっ!」

 

 そのまま私は引いたカードを開示する。

 

「私は手札から魔法カード『貪欲な壺』を発動! 自分の墓地のモンスター5体をデッキに加えてシャッフルし、その後、デッキから2枚ドローする!」

「此処で『貪欲な壺』だとォ!?」

 

 このタイミングで起死回生の1枚が来てくれた事に、感謝する。

 『希望』は繋がった。あとはその『希望』をもって勝利を結実させるのみ――!

 

「私は墓地の《No.39 希望皇ホープ》《CNo.39 希望皇ホープレイ》《CNo.39 希望皇ホープレイ》《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》《No.99 希望皇龍ホープドラグーン》の5枚をデッキ――もといエクストラデッキに戻し、2枚ドローする! これが私のラストドロー、2枚ドロー!」

 

 力一杯引き、引いた2枚を確認した瞬間、『彼』は間髪入れず動く。

 

「――《PSYフレームロード・Ω》の効果発動! 1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに相手の手札をランダムに1枚選択し、そのカードとこのカードを自分スタンバイフェイズまで表側表示で除外する!」

 

 思わず顔が引き攣る。最悪のタイミングで最悪の妨害が来た! お願い、どうか――! もう祈るしかない私を他所に、除外するカードがランダムに選出される。

 

「除外されたカードは《ZW-阿修羅副腕》……!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4→3→5→4

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 明らかに『彼』は引き損ねたという顔をし、私はこの手に残った『希望』に胸を打たれる。

 

「――行くよ! 手札から《ゴブリンドバーグ》を通常召喚! 効果発動、このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。この効果を発動した場合、このカードは守備表示になる! 来てっ、《イエロー・ガジェット》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札4→3→2

 《ゴブリンドバーグ》星4/地属性/戦士族/攻1400/守0

 《イエロー・ガジェット》星4/地属性/機械族/攻1200/守1200

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 これで同じような効果を持つ《ブリキンギョ》が来ていたらアウトだった。エクシーズ召喚する前に《PSYフレームロード・Ζ》の効果を発動されて一緒に除外されて詰む処だった……!

 

「……嘘? これでレベル4のモンスターがまた2体揃った……!」

 

 観戦していた豊海柚葉が信じられない顔でそう呟き、静かに納得する。この局面で揃えられた事に一番驚いているのは私自身なのだから――!

 

「レベル4の《ゴブリンドバーグ》と《イエロー・ガジェット》でオーバーレイ! これが私の最後の『希望』! ランク4《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札2

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU2

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 《No.39 希望皇ホープ》を守備表示でエクシーズ召喚し――。

 

「そして手札から『RUM-アストラル・フォース』を発動っ! 自分フィールドのランクが1番高いエクシーズモンスター1体を、そのモンスターと同じ種族・属性でランクが2高いモンスターを重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 そして私は呼び出す。あの時、貴方から貰った『希望』のカードを!

 

 

「――人が『希望』を越え、『夢』を抱く時、遙かなる彼方に新たな『未来』が現れる! 限界を超え、その手に掴めっ! ランクアップ・エクシーズチェンジ! ランク6《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!」

 

 

 この戦いの最中に散っていった『希望皇ホープ』達の幻影が一点に剣を重ね合わせて――純白の翼と白金の装甲纏いし『希望皇ホープ』の最終進化系がフィールドに降臨する!

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札2→1

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ランク6/光属性/戦士族/攻3000/守2500 ORU3

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

「このカードがエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は0となる!」

 

 秋瀬直也

 LP4000

 手札1

 《PSYフレームロード・Ζ》星7/光属性/サイキック族/攻2500→0/守1800

 《氷結界の龍 トリシューラ》星9/水属性/ドラゴン族/攻2700→0/守2000

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻12000→0/守0

 魔法・罠カード

  永続魔法『生還の宝札』

 

 あれだけ精強を誇った秋瀬直也のモンスター達の攻撃力が0となり――。

 

「っ、だが、まだだっ! 《PSYフレームロード・Ζ》の効果発動! 相手フィールドの特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を次の自分のスタンバイフェイズまで除外する! ――惜しかったな、フェイト」

 

 無情にも《PSYフレームロード・Ζ》の効果で『攻撃表示』でエクシーズ召喚された《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》を連れ去り、エクシーズ素材となっていた『希望』が墓地に落ちる。

 

 

「いいえ、直也。こういう時、こう言うんだよね? 『――それはどうかな?』って! 私の引いた『希望』は、1枚だけじゃない!」

 

 

 そして私は手札に残った最後の『希望』を発動させる――!

 

「手札から魔法カード『シャッフル・リボーン』発動! 自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地のモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに除外される」

「――あ、まさか……!」

「再びフィールドに蘇れっ! 《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札1→0

 《No.39 希望皇ホープ》ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU0

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 秋瀬直也は驚いた後、「あーあ、こりゃやっちまった」と穏やかに笑った。

 

「エクシーズチェンジ! 《CNo.39 希望皇ホープレイ》! 更にランクアップ・エクシーズチェンジ! 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》!」

 

 フェイト・テスタロッサ

 LP3500

 手札0

 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守2000 ORU2

 魔法・罠カード

  永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

  永続罠『血の代償』

 

 そう、私の勝ち筋は、直也のモンスターの効果で《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》が除外され、《No.39 希望皇ホープ》が墓地に落ちなければ訪れなかった……!

 

「――バトル! 《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》で《ワイトキング》を攻撃! そして《ライトニング》の効果は――」

「戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までカードの効果を発動出来ず、ダメージ計算時にエクシーズ素材を2つ取り除いて計算時のみ攻撃力5000となる。お見事」

 

 《ライトニング》の雷迅の一閃が死者の王を切り裂き、爆散する。

 ――秋瀬直也は何処か満足気な顔で、この『決闘』の終わりを静かに見届けたのだった――。

 

 秋瀬直也

 LP4000→-1000

 

 

 

 

「――まさか《PSYフレームロード・Ζ》の効果で墓穴を掘る羽目になるとはなぁ。でも、滅茶苦茶楽しかったぜ、フェイト。良いデュエル、さんきゅーな!」

 

 ああ、こりゃ完全にプレミスでの敗北だなぁ。

 折角《No.39 希望皇ホープ》を2枚除外したのに、それを生かせなかったとは我ながら情けない。

 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》を除外しなければ《PSYフレームロード・Ζ》は破壊されても3000ダメージで済んで、次のターンで決着という流れだったか。

 ……うん、相手ターンに動ける便利な効果に溺れたという訳だ。深く反省するとしよう。

 

 

 ――そして勝ったフェイトはというと……って、何で感極まったような顔で泣いてるの!?

 

 

「なっ、え、え!? だ、大丈夫か? フェイト、ソリッドビジョンが痛かった、とか?」

 

 ああくそ、女の涙は苦手だというのに、どうして良いか解らずにテンパる!? いや、というかオレ自身は1ダメージも与えてないよな!?

 とりあえず駆け寄ってみると、この小さな体の胸に飛び込んできて――!??!?!

 

「ひっぐ、ぅぅん、違、う。嬉し、くてっ、涙が、止まら、ないの……!」

 

 ……あ、うん、こんな胸で良いなら貸すけどさ――。

 

「――なーおーやーくん?」

 

 後ろから生命の危機を切実なまでに感じるぐらいの殺意を浴びているんだが、これ、どうすれば良いかな?

 

 

 

 

 




 ……あれ、最初のデュエルプロットでは秋瀬直也が勝利する予定だったのに、何でデュエルプロットを途中から破棄した上で逆転してるんだろ?
 ホープの主人公補正かな? それともフェイトちゃんのヒロイン補正? 元ラスボスさんのラスボス補正がそろそろ復活しそうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。