転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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13/摂理に抗う者達

「ハインケル。私は――」

「……ご苦労(ほくほう)、何(はに)も言(ひ)うな。安(はふ)らかに眠(ねふ)れ――」

 

 顔に包帯を巻いた神父姿の『彼女』は、長年共に同じ道を歩んだ『彼』に掠れた発音で答える。

 白い、何よりも白い病室のベッドに『彼』は生気無く横たわる。

 誰の眼から見ても、その生命の灯火は消し飛ぶ寸前であり、同じ神父姿の――『彼』の孤児院出身の者達から嗚咽が零れる。

 

 ――それは今際の記憶。『彼』の二回目における最期の光景だった。

 

「……はは、笑い草だ。十三課(イスカリオテ)の死徒が、病如きに倒れ、病床で朽ち果てようとしているなど……! ――またか、またこの結末なのか……!」

 

 ――『彼』は自虐的に、覆らなかった己が運命を全身全霊で嘆き喚く。

 

 元よりこの生命は『彼』の憧れた人が信じる『神』に捧げたもの。

 異教徒と化け物どもの飽くなき死闘で朽ち果てるのならば本望だったが、それすら叶わずに死に絶えるのは耐え難い屈辱だった。

 

「……遅すぎだ、アーカード……! 私は、貴様の主と従者と違って、三十年の歳月を、待つ事が出来なんだ……!」

 

 ――『彼』は病床で涙を流しながら慟哭する。

 

 あの日から、『彼』は在り得ざる再戦の機会を待ち望んでいた。

 化け物を殺す術を一心不乱に磨き続け、狂気の修羅場を幾度も乗り越えて、いつしか『彼』の憧れの『神父』のように対化物用の『鬼札(ジョーカー)』として畏怖され――されども『彼』は化け物ではなく、死の病に敗れ、死の淵にある。

 

「ハイン、ケル。アンデルセン、神父は、エレナの聖釘を、使わずに、人、間のままで、打倒出来た、だろうか……?」

 

 ――あの恐るべき吸血鬼を、人間は人間のままで倒す事が出来るのだろうか……?

 

「――、――、――!」

 

 死の間際に吐かれた言葉がそれであり、ハインケルは包帯に隠れる表情を歪ませて、必死に言葉を紡ぐ。

 あの日以来の、いつもの掠れた発音で――されども『彼』はその言葉を聞き届ける事が叶わず、無念の形相のまま事切れたのだった。

 

 

 

 

「あんのド腐れ外道野郎ぉ~~! 今度という今度は絶対に許さないんだからッ!」

 

 神経がまともな常人では一発でSAN値が直葬しかねない『イヌカレー空間』にて、孤軍奮闘する『シスター』の怒号が響き渡る。

 笑顔で『魔女』を擦り付けた『代行者』に途方も無い怒りを滾らせながら、押し寄せる『魔女』を『シスター』は対『魔女』特化の魔術を即興で組んで次々と駆逐していく。

 

(ああもう、今はそんな事を気にしている場合じゃないよ! 『もう一人の私』!)

「解っていますよセラ! でもこれが叫ばずにいられますかっ!」

 

 主人格であるセラの忠言を尚上回る勢いで、『シスター』は憤怒と共に叫んだ。

 大体の状況を把握している。何者かの『固有結界』によって、『教会』に居た『転生者』は分断され、差し向けられた刺客に足止めされている事を――。

 

『シスターちゃん、街全体を結界で隔離しましたけど――!』

「解ってますシャマル。元を断たないと海鳴市が死都に成り果ててしまいますね……!」

 

 携帯電話を片手に、『シスター』は現状のまずさに歯軋りを鳴らす。

 今、把握しているだけでも『神父』と対峙している吸血鬼『アーカード』、クロウ・タイタスと大十字紅朔が対峙している『マスターテリオン』、そして自分が対峙している『魔女』の軍勢――今はまだ雑魚揃いだが、いずれ舞台装置の魔女『ワルプルギスの夜』と救済の魔女『クリームヒルト・グレートヒェン』が出現すれば、『アーカード』の『死の河』の他に対軍級の脅威がまた増えてしまう。

 

(……っ、こんな時に悠陽が居れば……っ!)

(……『もう一人の私』……)

 

 無意識の内に、死んだ『魔術師』の事を連想してしまい、『シスター』の気が沈む。

 

(これは私一人じゃどうにもならない! せめてクロウちゃん達の『デモンベイン』でも無ければ……!)

 

 ――再生怪人と言えども、海鳴市の総力を結集して漸く片付けた『ワルプルギスの夜』に、あの『魔術師』が反則技を使って退場願った歴代最悪の魔女、幾ら『禁書目録』の彼女一人でも対処出来るレベルではない。

 

『そちらは大丈夫ですか!?』

「大丈夫じゃないですよシャマル! いいからそっちは八神はやての救出を再優先にして、何処でも良いから事態を打開しなさい!」

 

 話す余裕が無くなり、通話を打ち切る。

 

(どうする? このままじゃクロウちゃんが――!)

 

 あの最悪の魔人『マスターテリオン』が駆る鬼械神『リベル・レギス』が相手など悪夢に等しい。万が一にも億が一にも勝機はあるまい。

 何としてでも合流して手助けしたいが、圧倒的なまでの物量で封殺され、身動き一つ出来ずに超巨大魔女で詰む未来が直ぐ其処に迫っており――突如影が差し、『シスター』は見上げる。

 

 ――其処には恵方巻きのような姿の巨大な魔女が、無造作に大口を開けていた。

 

(お菓子の魔女『シャルロッテ』!?)

(避けて『もう一人の私』!? マミるよっ!?)

 

 『歩く教会』の防御性能ならば、単なる『魔女』の噛み付き程度には耐えれるが、飲み込まれて時間ロスするのは――瞬間、桃色の光がお菓子の魔女に炸裂し、一撃の元で消し飛ばす。

 

(!? 高町なのは……いや、違う?)

 

 それを行ったのは白い魔法少女であり、レイジングハートに酷似した杖を持っていたが、どうにもミッドチルダ式の魔導師とは毛色が異なる。

 何より此処に至って初見の、十四歳ぐらいの、輝かしい銀髪をツインテールにした少女だった。

 

 

「こんばんは、私は『例外の魔女』――どういう訳か、今のこの身は『魔法少女』時代のようだけどね」

 

 

 その白い魔法少女は儚く笑い、その言葉を全面的に信じるのならば――今まで一人足りとも現れなかった、キュゥべえと契約した魔法少女まどか☆マギカ式の魔法少女であり、『三回目』の転生者であるのは確実だろう。

 

「まぁ私に限って言えば、『魔法少女』の時も『魔女』の時も姿形は変わらないのだけど」

 

 助けて貰った事には感謝しなければならない身だが、疑問点が多い。

 あの非情なシステムに支配された世界から転生してきたという事は、『魔法少女』から『魔女』に成り果てた後に滅びたという事であり、彼女の言う通り例外的に姿形が変わらなかったと仮定しても、その姿をこの魔都で一度も見ていないというのはおかしな話である。

 

(……味方だと油断させて、闇討ちでもする気――?)

(うーん、考えすぎだと思うけどね、『もう一人の私』)

 

 この緊急時に厄介事がまた一つ増えたという認識でしかなく、そんな疑心を抱くシスターの様子を悟ったのか、白い魔法少女は苦笑する。

 

「此処は私に任せて、早く想い人の下に行くのだ、恋する乙女よ」

「な……!? こ、恋する乙女って……!」

 

 初見の相手にいきなりそんな事を言われて動揺するも、一瞬で冷静に立ち戻って彼女の提案を分析する。

 虚偽や欺瞞の色は見られず、決死の覚悟をその笑みに宿している。だから、一秒でも時間の惜しいこの場で、言わなくても良い事をシスターは口にした。

 

「この数の『魔女』を相手にするなど、幾ら何でも死にますよ?」

 

 冷淡そうな口振りで、特定の相手以外は常に冷たく接しているように見えるが、騙されて擦れた結果であり(前世からの因縁半分、『魔術師』の裏切りが四分の一、『代行者』のからかいが四分の一)、彼女の本質は基本的に度し難いほどお人好しである――。

 

 

「――私はね、最初の一歩を踏み間違えたの。一番安易な逃げ道を選んで、何も成せずに終わってしまった……」

 

 

 その白い魔法少女は前だけを見据える。

 幾多の『魔女』の結界が交じり合った此処は極めつけの異界と化しており、彼女はこの世界の中央に己の杖の穂先を向ける。

 

 

「今宵は私にとって満願成就の夜。だって『魔女』は『魔法少女』が打ち倒すものでしょ――?」

 

 

 彼女が思い浮かべるは桃色の光。絶望の化身たる舞台装置の魔女を跡形も無く吹き飛ばした希望の光。

 最初から『魔法少女』になる際の『祈り』を、魔女化する事を前提に使った彼女には未来永劫届かない境地に、在り得ざる機会を得て今、挑む――。

 

「貴女、名前は?」

「えっと、私の『魔女名』は――」

「そうじゃない。人間としての名前です」

 

 きょとんと、彼女は振り向いた。

 本来存在しない、理性有る『魔女』としての彼女は自分自身の魔女名すら解らない。

 だから名前など存在せず、ただの名無しの『魔女』として暁美ほむらのタイムループに付き添った。

 『例外の魔女』が彼女の呼び名であり、それ以外に必要としなかった。誰も彼も、彼女自身も――。

 

 

 ――貴女、名前は? 魔女名ではなく、人間の頃の名前はあるでしょ?

 

 

 暁美ほむらによって葬られた時間軸の中には、彼女に名前を尋ねた回も、もしかしたらあったかもしれない。

 

「――白(しろ)。苗字は無いから、ただの白だよ」

 

 最高の笑顔をもって、この『三回目』の世界における最初で最後の友人に、彼女は自身の名前を誇らしげに告げた。

 

「では、白。此処は任せますよ」

「うんうん、任せたまえ。元々コイツらは私の負債だしね」

 

 一瞬、何とも聞き捨てならない事が聞こえたが、シスターは振り返らずに走る。

 

 ――目指すは、最弱無敵の鬼械神と最強最悪の鬼械神が世界を壊さんばかりに死闘を繰り広げる、神域の殺戮空間である。

 

 

 

 

 ――死者の軍勢が縦横無尽に侵攻する。

 

 哀れな生贄を悉く串刺しにするべく、『死の河』から這い出た亡者の軍勢は結界による遮断によって無人と化した街を進撃する。

 その規模たるや、総勢342万4866騎。

 唯一人になった領主目指して進撃する『神父』に殺到する直属の軍勢を取り除いても、尚余りある絶望の軍勢は魔都海鳴市を飲み込まんと怒涛の勢いで進軍する。

 

「うっわぁー、これが本家本元の『死の河』ですかい。ミッドチルダの吸血鬼事件の三百倍以上の規模じゃね?」

「計測する限り、総勢342万ですね。流石に掃滅するには魔力が足りないですねー!」

 

 その死者の軍勢の前に、緑色の光が炸裂して一気に消し飛ばす。

 対軍規模の損害だが、すぐさま押し寄せた軍勢によって一瞬生じた空白が埋め尽くされ、上空で見下ろす元管理局執務官であるティセ・シュトロハイムはげんなりした表情を浮かべる。

 

 ――無論、空を飛んでいるからと言って、絶対安全な訳でもない。

 

 耳障りな爆音を鳴らせて、第九次空中機動『十字軍(クルセイド)』の成れ果てである戦略ヘリの大軍が押し寄せてくる。

 空を埋め尽くさんばかりに展開する戦略ヘリの照明は、さながら天使のように見えなくもないが、あれはどう考えても『死の天使』である。

 

「アリアさん、離脱した方が良いと思いますよ。近くの管理外世界に避難する事をお勧めします」

「諦めたら其処で試合終了ですよ? いやいや、大丈夫大丈夫。多分きっと何とかなるさ、ティセちゃん」

 

 ティセの嘗ての上司であり、元管理局の最年少の中将であるアリア・クロイツは軍服のような飾り気の無い白黒のバリアジャケットを珍しく展開し、ティセの後ろで飛翔しながらケタケタ笑う。

 彼女自身の魔導師ランクはそんなに高くなく、個の戦闘力も欠けているので、ティセとしては安全な場所に避難してくれていた方が精神的にありがたいのである。

 

「どんな事態でも何とかする『魔術師』は死んじゃったって話じゃないですか。どうするんですか、これ?」

「それは私達の考える事じゃ無いさ。今はこの無尽蔵の軍勢に一当てして、少しでもいいから穴を開ければ良いさ」

 

 『死の河』を解放したアーカードの殲滅など不可能だが、確かにその程度なら管理局唯一のSSSランクだったティセ・シュトロハイムならやれなくもない。

 少なくとも、今此処に集結している空中戦力は葬れるだろうが、後が続かないのならば意味が無い。

 

「――それにさ、あの性悪『魔術師』が、こんなにも呆気無くくたばると思うぅ? 私達を此処までボロクソにした不倶戴天の宿敵さんはそんな容易い御仁だったかねー?」

 

 ――そう、それである。

 

 何で『魔術師』の死が確定情報のように飛び交っているのか、ティセ達には納得がいかなかった。

 あの『魔術師』が死んだなどという与太話を、一体誰が信じるのだろうか? 生と死の狭間で踊るペテン師に、一体何度、自分達が煮え湯を飲まされたと思っているのだろうか?

 

「ええ、無いですね。こればかりは断言出来ちゃいます! きっと何処かで出待ちのタイミングを見計らってるに違いないです!」

「そうだねぇ、全てを台無しにする切り札の一つや二つ用意してるっしょ。――生きてようが、死んでようがね。ほら、なら私達は『魔術師』の思惑通りに動いてやれば良いだけさ」

 

 上空に展開した戦略ヘリからミサイルが一斉発射され、ティセの杖の一薙ぎによって一斉爆散し、黒き空に巨大な緑色の魔力光を散らせる。

 

「そうですね、適当に葬って適当に任せちゃいますかっ!」

「そそ、こんなので死ぬのは馬鹿らしいってね」

 

 

 

 

 ――『彼』が『主』から与えられた任務は、秋瀬直也の保有する『矢』を使用前に強奪し、彼を戦域から遠ざける事である。

 

 それは穢土転生や類似方法によって呼び寄せられた制御不能の怪物達では達成不可能の任務であり、人間としての理性がある穢土転生体である自分こそが最適任である事は十二分に理解している。

 だが、それは秋瀬直也の眼を見るまでは、である――。

 

(……同じだ。全く同じだ。似ても似つかわしくない風貌の癖に、あの眼だけは全く同じだ――!)

 

 嘗ての世界で『主』の野望を潰した、不倶戴天の天敵たるあの男が持つ、悍ましいまでの希望を宿す黄金の輝きと、全く同じだった。

 彼こそが、あの九歳に満たぬ少年である秋瀬直也が、この世界における『主』の怨敵なのはまず間違いないだろう。

 だからこそ、『彼』の『主』は秋瀬直也と戦わない事を選択した。絶対に対峙しないように戦場を操作した。

 

(――足りない。この相手を戦域から遠ざけるだけでは、足りない……!)

 

 前世における無念が、『彼』の中に慟哭する。

 この相手を『主』に遭わせる訳にはいかない。今、此処で自分が仕留めなければならない。

 本領を発揮出来ない今こそ、秋瀬直也を仕留める千載一遇の機会であり、前世における最大の失敗を償う唯一の手段であると『彼』は信仰する。

 

 ――それは因果な事に、『彼』が今の『主』に仕えた際の初めての命令違反であり、誰にもなれなかった自分が自分勝手に行動する在り得ない様を客観視して戸惑いながらも、『彼』は誇らしげに笑った。

 

 

 

 

「――っ、一体どんな不条理が働いたの……ッ!」

 

 『彼女』は己の『万華鏡写輪眼』に憎悪を籠めて、感情の赴くままに吐き捨てる。

 『彼女』によって用意された一夜限りの劇場、そして破格の配役の数々――だが、そのどれもが『彼女』の思い通りに登場した訳ではなかった。

 

「――『魔術師』、これも貴方の死に土産かしら? 舞台装置の魔女である『ワルプルギスの夜』が全く別の『魔法少女』として登場するなんてね……!」

 

 『彼女』が招いて再現しようとしたのは舞台装置の魔女。

 だが、蓋を開けてみれば『ワルプルギスの夜』を構成しようとしたリソース全てが、あの正体不明の『魔法少女』に消費されて成り変わってしまった。

 『魔法少女』が『魔女』に成り果てるのは当然の理だが、その逆は、『魔女』が『魔法少女』に成り果てるなど在り得ない。在り得てはならない摂理だ。

 

 ――『彼女』は知らない。その『魔法少女』、いや、『例外の魔女』である白の物語を。

 

 白は『二回目』の転生者として生まれ、キュゥべえと契約して『魔法少女』になり、すぐさま『魔女』に成り果てた。

 だが、彼女の『祈り』は『魔女化しても人間としての理性を保てるようにして欲しい』というある意味究極のメタであり、それ故に『ソウルジェム』が砕けて『グリーフシード』になっても彼女は彼女のままだった。

 紆余曲折を経て『魔女』を吸収して乗っ取る事で『ワルプルギスの夜』を見滝原市から追放しようとして失敗し、『三回目』の転生者として魔都に産まれ落ちた。

 

 ――言うなれば、あの『ワルプルギスの夜』は彼女が成り果てた最終的な姿であり、『ワルプルギスの夜』を再び招く事は彼女を招く事と同意語である。

 

 其処に何らかの法則性――例えば、『聖杯戦争』におけるサーヴァントの召喚システムのような、召喚されるサーヴァントを全盛期、英霊の枠組みに嵌るように執り成されるルールが書き加えられていれば、今回のような奇跡のような必然になるかもしれない。

 

「……土地の記憶を触媒にした特殊な穢土転生だけに、『魔術師』の構築した大結界の干渉を受けた……? だとしても『マスターテリオン』の方は説明出来ない……!」

 

 そう、『彼女』の誤算はそれ一つだけではない。

 あの窮極の魔人である『マスターテリオン』が完全な状態で、自身の魔導書である『ナコト写本』を取り戻した状態で召喚されている事こそ、現状での最大の不条理だった。

 『彼女』は『マスターテリオン』のみを呼び寄せた。さながら『機神飛翔デモンベイン』でアナザーブラッドが手駒として用意した時のように、三位一体を欠いた状態で召喚した。

 その状態でも十二分にクロウ・タイタスとアナザーブラッドが駆る『デモンベイン・ブラッド』を凌駕出来ると計算していたが、『ナコト写本』と共にある状態では天秤が有無を言わさぬ勢いで振り切れてしまうだろう。

 

「――事を急ぐ必要がある、か。まぁいつもの事ね」

 

 『彼女』を中心に、幾千幾万幾億の魔術文字が浮かび上がり、地に刻まれていく。

 それはTYPE-MOON系列の魔術系統のようであり、リリカルなのは系列の魔法系統のようであり、デモンベイン系列の外宇宙の魔術系列のようでもあり、『彼女』に馴染み深いNARUTO世界の複雑怪奇の呪印呪刻のようであり、鋼の錬金術師系列の錬金陣のようであり、灼眼のシャナ系列の紅世由来の自在式のようであり、或いはそのどれでもない別の物語の神秘系統の『全て』だった。

 

 ――あらゆる物語からの複合術式は壮大に凄絶に反発しながら融和しながら絡み合い、海鳴市の霊脈が大きく胎動する。

 この術式が完成した時こそ、『彼女』の世界を侵す願いは成就する――。

 

 

 

 

 


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