転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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10/初戦

 

 

 

 ――好きな人が居ました。

 

 拒絶される事が怖く、化物と忌み嫌われたくなかった。

 それ以上に本当の私を知って欲しかった。

 初めて悩みを打ち明けて、私の秘密を笑って受け入れてくれたのが貴方でした。

 

 ――好きな人が居ました。

 

 まるで夢のような日々でした。

 一生打ち明けられずに、誰にも理解出来ずに終わると信じてました。

 けれども、貴方は受け入れてくれた。私は羽のように軽く、燃え滾る想いに心を踊らせました。

 こんな幸福な時間が永遠に続くと信じて疑いませんでした。

 

 ――好きな人が、居ました。

 

 そしてその日々は唐突に終わりを告げました。

 一面に広がる赤い血飛沫、冷たくなっていく貴方は動かず、私は必死に泣き叫びました。

 喉が枯れ果てるまで叫び続け、もう貴方は何一つ答えてくれない事を実感したのです。

 

 ――好きな人が居なくなりました。

 

 血の滴る大太刀に、返り血が夥しく付着した黒い武者鎧、巨大な鋼鉄の鎧を纏った誰かは見下ろしてました。

 これが貴方を殺した仇敵である事を、私は網膜に焼き付けました。

 

 ――好きな人が消え果てました。

 

 貴方の死体は残らず、最終的には行方不明扱いになりました。

 貴方のいない世界はこんなにも色褪せて、無意味で無価値に継続している。

 許せなかった。何もかも許せなかった。貴方を殺した者が憎い、貴方が居なくても変わらない日常が憎い、貴方を失って泣き寝入りする事しか出来ない弱い自分自身が情けなくて、何よりも憎たらしかった。

 

 ――それでも神様は居ました。私に贖罪の機会を与えてくれました。

 手にしたのは三画の呪痕、呼び出されたのは無窮の吸血鬼――さぁ、復讐を、始めましょう。

 

 

 10/初戦

 

 

「――以上が『聖杯戦争』の概要よ。質問はあるかな?」

「……その『聖杯』とやらは、死者蘇生も可能なのですか?」

 

 半信半疑、と言った表情で月村すずかは問いかけ、豊海柚葉は飄々と答えた。

 

「それが真に『万能の願望機』であるならば可能でしょうけど、あんまり期待しない方が良いかな。第四次と第五次から破壊という形でしか叶えない欠陥品だったし、願いを叶える者の知り得る方程式でしか願望を成就出来なかったしねぇ」

 

 ――本末転倒な話だった。その『万能の願望機』が真価を発揮するには『万能の担い手』が必要だとは笑い話にもならない。

 万能でないが故に人は届かぬ領域の奇跡を求めるというのに。まるで馬鹿らしい茶番だった。

 

「高望みしては何も成せないわ。貴女が引き当てたサーヴァントは最強の部類だけど、クラスは最悪よ。バーサーカーは理性を奪う事で狂化して弱小の英霊を補強するクラス、けれどもそれは悪霊として超一級品の上に高燃費なのよねぇ。――バーサーカーはね、例外無くマスターを魔力枯渇で破滅させる外れクラスなの」

 

 それは暗に聖杯戦争で勝ち抜く事は万が一にも在り得ない、と言われたようなものである。

 確かに、賞品である『万能の願望機』が当てにならないのならば、他のサーヴァントとの戦闘は極力避けた方が無難であろう。それに割く時間は残されていない。

 

「魂食いをしてサーヴァントの魔力を補強しても、肉体に掛かる負担までは軽減出来ない。戦える回数は限られていると思って良い。その限られた状況下で、貴女は貴女の悲願を果たさなければならない」

 

 限られた時間内で、目標を果たさなければならない。絶対的な方針として脳裏に刻まれる。

 これらを説明される過程で生じた疑問を、月村すずかは思わず口に出した。

 

「どうして、私に協力してくれるのですか?」

「その質問に何か意味はあるのかな? 月村すずか、貴女の時間は限られていると言った筈よ? 無駄な質問に費やす時間はあるのかな?」

 

 失点扱いであり、豊海柚葉から厳しい駄目出しをされる。

 答えるつもりは元々無い。というよりも、自分はこれを知る必要が余りにも無い事に改めて気付かされる。

 彼女の言っている言葉に間違いは無く、全てが正しい。その彼女の期待に答える為に質問を吟味し、舌に乗せる。

 

「……貴女は彼を殺した人を知ってますか?」

「知らないわ」

「そう、ですか。それじゃ――殺して、バーサーカー」

 

 霊体化していたバーサーカーの巨大な腕が実体化し、破壊の渦を撒き散らす。

 人間大の塊など一瞬でスクラップに出来る超越的な暴力の具現、全て彼女の忠告通り、時間を無駄にする事無く執り行われた最小限の殺害行為である。

 

 ――背後からぱん、ぱん、ぱん、と、拍手が鳴り響いた。

 

「――あははっ! 良いね、月村すずか! 貴女は想像以上に愉快だわ! そうね、自力でバーサーカーを引き当てたのだからマスターが狂っていない道理は何処にも無いよね!」

 

 振り向いた先には彼女の姿は無く、ただ声だけが響き渡る。

 

「さようなら、貴女の復讐が完遂する事を心から祈っているわ」

 

 そう言い残し、豊海柚葉は何処かへ消え果てた。

 けれども、彼女に割く時間は最早一秒足りても存在しない。

 

 ――私は問い続け、答えを得る。

 彼の無念を必ずや晴らす。私の復讐を絶対に遂げる。

 さぁ、舞台は始まったばかりである。

 

 

 

 

「すずか、ちゃん……? どうして此処に。その後ろのは……!?」

「これはね、バーサーカー。私のサーヴァントよ」

 

 月村すずかの背後に蠢く影は不定形であり、常に妖しく揺らいでいた。

 まるで現実味の無い光景だった。其処に普段から日常的に接している親友が居れば尚の事度し難い光景となる。

 高町なのはの思考はある種の麻痺状態に陥っていた。

 この状況を正確に理解すれば後戻りが出来なくなるという本能的な危機感が後押しした結果なのだろう。

 

「――? なのはちゃんもかなって思ったけど、違うのね。一応聞いておくけど――神谷龍治君を殺した相手、なのはちゃんは知っている?」

 

 神谷龍治、その名前には聞き覚えがある。

 二年前の四月初旬に居たクラスメイトであり、すぐさま行方不明になった少年の名前がそれである。

 

「……え? 神谷君は行方不明に、なったんじゃ……? 殺されたって、どういう事……!?」

 

 彼とすずかは出会って間もなくだったが、非常に良好な関係を築き上げ、行方不明になった後のすずかは抜け殻のように気落ちしていた記憶がある。

 

「龍治君はね、私の目の前で殺されちゃったの。黒い鋼鉄の武者鎧を纏ったアイツに――」

 

 虚空を睨みつけるようにすずかは空を見上げる。その眼はやはり錯覚では無いのか、滴る血のように赤く輝いている。

 爛々と狂おしいばかりに輝いていながら、感情の色は一切無い。無機物のように暗く死んだ瞳は恐怖以外の何物でもなかった。

 

「そう、まるで知らないんだ。それじゃ――なのはちゃんも協力してくれる?」

 

 その一言が合図となったのか、月村すずかの背後に待機していた黒い影が一斉に蠢き、地面のコンクリートを打ち砕きながらなのはの下へ殺到する。

 

「きゃっ!?」

『Protection』

 

 レイジングハートは自動的に防御魔法を展開し、真正面から受け止め――高町なのはは受け止め切れずにダンプカーに撥ねられたかの如く吹き飛ばされ、十数メートル彼方の電柱に激突し、脆くも倒壊させてしまった。

 背中に走る激痛を堪えながら、高町なのはは弱々しく立ち上がる。

 黒い影は先程よりも大きく流動し、蠢いていた。その千の眼は全て震えて慄く自身の姿を克明に捉えていた。

 

「……魔力がね、全然足りないの。バーサーカーが少し行動するだけで気が狂ってしまいそうなぐらい身体が痛いの。少ししかマシにならないけど、良いよね?」

 

 月村すずかは仄かに笑う。正気の色などとうに失せていた。

 

「す、すずかちゃん!?」

「な、なのは! 駄目だ、逃げるんだっ!」

 

 右肩に乗っていたユーノは必死に叫ぶ。

 余りの出来事に、なのはは感覚が麻痺している。いつも出逢う親友に殺されかけたなんて現実味がまるでなく、このままで夢心地のままに殺されてしまうだろう。

 

 あの黒い影は青い槍兵と同類かそれ以上の脅威だった。

 高町なのはという傑出した才能を持ってしても、あれには抵抗にすらならないだろう。やはり彼女でも駄目なのだ。ユーノは恐怖にかられて即時撤退を求める。

 

「あの黒い影の魔力は次元外れだ! 彼女もあれに操られているんだと思う!」

 

 そしてその一言が、高町なのはのなけなしの勇気に火を灯した。

 勇気と蛮勇の違いを解るには、この年齢の少女には酷な問題であろう。

 

「っ、それなら、尚更助けないと――!」

 

 

 

 

「全く、ガキじゃないんだし、送り届けなくても良いだろう?」

「鏡を見て言え、九歳の小僧。夜の九時過ぎまで付き合わせてしまったのはこのオレだ。帰りの安全を保障するのは当然の義務だろう」

 

 ヤクザな大男に付き添って貰っても全然嬉しくねぇ。

 鱈腹物を食べた帰り道、オレは冬川雪緒と駄弁りながら帰り道を歩む。

 

「オレが女だったら顔を赤く染めてソッポを向く処だよ」

「安心しろ、秋瀬直也。その仮定ならオレは即時通報物だ」

 

 全く笑えない冗談である。確かに見た目は完全アウトになるか。

 ヤクザと九歳の幼女、うん、100%在り得ない絵面である。

 

「アンタを見て通報出来る度胸のある日本人が何人居る事やら」

 

 軽い冗談で返すが、当人は割りと本気で落ち込んだ様子だ。厳つい外面に反して意外と打たれ弱いのか?

 一応慰めようとした処で、遠くから正体不明の爆音が鳴り響いた。断続的に不定期な感覚で、だ。

 

「何だ、この音は……!?」

「まずいな。近くで派手にやっている奴が居るらしい」

 

 『魔女』か? それとも聖杯戦争の関係者か。

 緊張感が高まる。前者ならまだ何とかなるが、後者だと対処不能だ。幾らスタンド使い二人でも英霊の相手などしたくない。

 

 ――撤退か、その場に駆けつけるか。

 いや、後者は絶対に在り得ない。迂回してでも回避するべきだろう。

 懸命な判断を下そうとした時、厄介事は向こうから文字通り飛んできた。

 

 何かが馬鹿げた勢いで飛んできて、地面に落ちて転がる。

 一瞬それが何なのか、理解できなかった。

 

 それが人間大の何かであり、

 うちの制服に似た白い服を流血で真っ赤に染めており、

 茶髪のツインテールの少女は血塗れで微動だにしていなかった。

 

「高町なのは!?」

 

 即座に駆けつけ、息と脈拍、怪我の状況を確かめる。

 息と脈拍はあったが、非常に弱々しい。白いバリアジャケットが全身真っ赤に染まるぐらい流血しており、どう考えても生死を彷徨う一刻の猶予も無い事態だった。

 

 かつん、と小さい靴音が鳴る。

 

 オレと冬川雪緒は瞬時にスタンドを出し、高町なのはをこんな目に遭わせたであろう襲撃者の姿を眼に映した。

 それは紫色のワンピースを来た同年代の少女――信じ難い事に、同じクラスの月村すずかだった。

 

「あぁ、貴方達は『転生者』ですよね? 後ろから変なのも出しているし。へぇ、秋瀬君もそうだったんだぁ……」

 

 オレ達のスタンドが見えている……!?

 彼女の一族は夜の一族と呼ばれる吸血鬼もどきだが、血を吸うだけで吸血鬼としての超人的な能力は持っていない筈だ。

 だが、しかし、今の彼女の両瞳は真っ赤に輝いており、背後には正体不明の黒い影が絶えず蠢いてやがる。

 あれが彼女が呼んだサーヴァントなのか!? 英霊の類じゃない、間違い無く悪霊や怨霊の類だ。一体彼女は何を呼び寄せてしまったのだ……!?

 

「神谷龍治君を殺した相手、知りません? 私、探しているの」

「神谷龍治? ……誰の事だ?」

「……二年前、第一次吸血鬼事件が始まる前に死んだ彼女等の同級生の名前が確かそれだったか。残念だが、詳しい死因までは解らない」

 

 冬川雪緒は緊張感を漂わせ、額から汗を流しながら語る。

 迂闊に刺激するのは危険だが、会話が成立するならまだ交渉の余地がある。だが、問題は既に正気を逸している可能性があるという事だ。

 あんな虫も殺せぬ性格の少女が親友の高町なのはをボロ雑巾のような目に遭わせたなど誰が信じられようか。

 正気では行えない、もしやサーヴァントに意識を乗っ取られた可能性があるのでは……?

 

「そうですか、それじゃ――やっちゃえ、バーサーカー」

 

 黒い影が狂える獣の如く吼える。暴走列車となった影は進撃を開始した。

 オレは意識の無いなのはをこの腕で抱き締め、オレと冬川雪緒は互いに自分のスタンドの脚力によって瞬時に左右に別れ――ほんの一瞬前までに黒い影は殺到し、何者の存在を許さぬ爆心地となる。

 この一瞬で敵との戦力差は明確となった。この敵とは触れた瞬間に終わる。こんなのは戦闘とは到底呼べず、一方的な蹂躙に他ならない。

 その判断は冬川雪緒も同じだった。彼は即座に命令を下す。

 

「高町なのはを連れて逃げろ秋瀬直也ッ! 此処はオレが時間稼ぎをする!」

「な!? 馬鹿言うなっ! 相手がサーヴァントでしかもバーサーカーだぞ!? 足止めすら無理だ! それなら一緒に逃げた方がまだ生還率がある!」

「間違っているぞ、まともに逃走しても追い付かれて三人とも死亡するだけだ。オレも一当てして逃げる。お前は『魔術師』の屋敷に逃げ込め。――その傷だ、処置を間違えれば死ぬぞ」

 

 この腕に抱き上げた高町なのはの鼓動は弱々しい。掌から感じる彼女の体温も妙に冷たく感じる。

 彼女を背負ったまま戦闘を続行するのは無謀を通り越して自殺行為だ。それはつまり冬川雪緒の足を引っ張っている事の証明でもある。

 

「生きていれば後で連絡する。行けッッ!」

「ッッ、絶対死ぬなよおおおぉ――!」

 

 振り返らずに駆ける。屋根から屋根へと飛び移り、夜の街をひたすら跳躍する。

 熟練のスタンド使いである冬川雪緒なら、月村すずかを出し抜いて脱出する事が出来るに違いないと信じて――。

 

 

 

 

「――『魔術師』! 『魔術師』はいるか!? 頼む、早く来てくれ! 間に合わなくなるッ!」

 

 居間にさえ光が灯っていない幽霊屋敷に躊躇無く押し入り、声の限り叫ぶ。

 程無くして玄関に光が点灯し、ひょこっと猫耳娘が顔を出した。

 

「こんばんは、秋瀬直也さん。夜分遅くの来訪、流石に歓迎しませんよ?」

「いいから『魔術師』は――!?」

 

 目の前の何もない空間が水滴が一滴落ちた水面の如く震動し、この館の主である『魔術師』は音も無く現れた。

 ……空間転移? 自身の『魔術工房』の中では魔法の一歩手前の大魔術も平然と行えるのか……!?

 

「随分手酷くやられたようだね、病院なら匙を投げて葬儀場送りだから此処に来るのは必然か。やれやれ、この私が治癒魔術を得意としているように見えるのか?」

 

 やや呆れたような顔を浮かべ、それでも『魔術師』は律儀に診察する。

 抱き上げていた高町なのはを床に下ろし、彼等『魔術師』達の手に委ねる。素人の自分が出る状況ではない。

 

「ランサー、手伝ってくれ」

「おうよ」

 

 『魔術師』がそう声を掛けると同時に背後から青い英霊が実体化する。

 その青髪赤眼で全身タイツの英霊は、もしかしなくても奴ではないか……!?

 

「クー・フーリン……!?」

 

 アイルランドの光の御子、ケルト神話の大英雄、第五次聖杯戦争のランサーが今其処に居る……!?

 よくよく他人に奪われるサーヴァントだなぁと、違う意味で呆れざるを得ない。

 

「おいおい。何でこうも一目で人の真名を看破する奴が多いんだ?」

「君が英霊として格別に有名だからだろうよ」

「こんな極東の果ての島国まで衆知とは到底思えないんだがねぇ?」

 

 などとぼやきながら『魔術師』は治癒魔術を、クー・フーリン、いや、ランサーはルーンを刻んで協力する。

 見るからに高町なのはの顔色が良くなり、どうやら峠は簡単に越えてくれたと安堵する。

 これで助けれずに死なせてしまった、とかなったら後味が悪い処の話じゃない。

 ほっと一息付いて脱力すると、自身の携帯が鳴る。相手は――冬川雪緒! 無事だったのか!

 

「冬川っ! 無事だったのか……!」

『――あはっ、残念でした』

 

 その耳に発せられた声は冬川雪緒の厳つい声ではなく、狂気を孕んだ少女のものだった。

 彼の携帯で彼女が出るという事は――冬川雪緒はバーサーカーと戦闘して敗北し、逃げ切れずに死亡した事に他ならない。

 

「……ッッ!」

 

 言葉が、出ない。少し前まで一緒に歩いていた人物が殺された、などと認めたくない。

 偶然、彼女が冬川の携帯を拾って、電話を掛けて来た。そうに、違いない。

 そうやって自分を騙そうと思っても、既に彼の死亡が確定済みだと認めている自分を否定出来なかった。

 放心中の自分から、携帯がひったくられる。『魔術師』の仕業だった。一体何を……?

 

「見境が無いな、吸血鬼」

『貴方が『魔術師』さんですか? 一つ聞きたい事が――』

「劔冑を纏った武者なら『武帝』にしか居ないぞ」

 

 

『え?』

 

 

 一体、何を言っているのだ? この『魔術師』は。

 見上げた彼の顔は笑っていた。純度100%の悪意を、オレは初めて目の当たりにした。

 

「何を呆けているんだ? お前の想い人とやらを殺したのは『転生者』への復讐の為に生涯を捧げた一般人の組織である『武帝』だと言っているんだ。奴等の詳しい情報と居場所は冬川雪緒の携帯のメールに送信しておくから勝手に見るんだな」

 

 そう言い捨てて自分の携帯を投げ返し、懐から取り出した『魔術師』自身の携帯を手早く操作する。

 

「一体どういうつもりだ『魔術師』イイイィ――ッッ!」

 

 冬川雪緒を失った遣る瀬無い怒りを彼にぶつけるように心の底から叫ぶ。

 そんなやり場を失った怒りの感情は、まるで届いてなく――『魔術師』は愉しげに嘲笑った。

 

「どうせ自滅するんだ、有効に活用しなければ勿体無いだろう? 精々華々しく散れ」

 

 

 

 

 

 


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