光輝くんが過去のトータスに誘拐されました   作:夢見る小石

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真・勇者パーティ

 ラストチャンス。

 

 今日この時間は、恐らくラストチャンスとなってしまうだろう。

 

 明日からはオルクス深層の攻略に向かうため、話をすることなんてできない。攻略後にその機会はあるかもしれないが、今のように落ち着いて、というのは厳しいはずだ。

 

 そもそも、俺達が無事に攻略できるという保証もない。

 

 何が何でも、今この時に勝負をかけるしかないのだ。

 

 鬱陶しいほどに鳴り響く鼓動を抑えるために、一度大きく深呼吸をし、意を決してドアを叩く。

 

 さぁ、話をしよう。恵里。

 

 

   ◆◆◆◆

 

 

「これで全員集まったな?」

 

 メルドさんが確認の声を上げる。

 

 今日はオルクス深層突入当日。本当の大迷宮へと挑む、決戦の日だ。

 

 広間に集合しているのは、俺が選んだ攻略メンバーと、ここまでの引率に来てくれたメルドさん。

 

「みんな、すまない。王国の勝手な都合で地獄に挑ませることになってしまった。そして、頼む。神代魔法を手に入れて帰って来てくれ! 人間族の希望を、掴み取ってくれ……!」

 

「もちろんですよ、メルドさん」

 

 この場にいる者は、誰だって人々の幸せを願っているのだ。絶対に、攻略してみせる。

 

「光輝、お前はみんなのリーダーだ。うまくまとめて、導いてやってくれ」

 

「はい!」

 

 そう、ここから先は保護者(メルドさん)はいない。俺がしっかりしないとダメなんだ。選択を間違えたら、全てが終わってしまうのだから。

 

「雫。辛いかもしれんが、光輝を支えてほしい。それに、もし光輝の身に何かが起きれば……」

 

「……分かりました」

 

 俺に何かがあった時、代わりに指揮を取れるのは雫だろう。

 

 それに、俺が道を間違えた時に正してくれたのは彼女だった。皆は苦労人だのそんな性格だの言っているが、その本質は優しさだ。以前の俺のような紛い物ではなく、本物の。

 

「香織。お前はパーティの要だ。他の誰よりも、お前が欠けたらそこで終わりになる。無理はしないように」

 

「は、はいっ!」

 

 香織は防御と回復のスペシャリストであり、代役を務められる人間はいない。もし彼女に何かあったら、心理的にも戦力的にも攻略は不可能となるだろう。

 

 だからこそ、何に変えても守り抜く!

 

「幸利。お前の能力はとても貴重だ。使いこなせれば、或いは光輝よりも大きな戦力になるかもしれない。頑張れよ!」

 

「はい」

 

 少し照れたような、しかし引き締まった顔で清水は頷く。

 

 初めはどうなるかと思ったが、今となっては立派な最高クラスの戦力だ。……前回ももっと彼を気にかけていたら、こうなっていたのだろうか。

 

 そんな後悔をしても仕方がないとは分かっているのだが、それでも考えずにはいられない。

 

「ハジメ。お前は、単純な力ではこの場の誰よりも弱い。だが、根性は一番だ。胸を張れ。……絶対に生き残れよ」

 

「はい!」

 

 南雲は連れていかないという選択肢もあった。少し油断すれば簡単に死んでしまうかもしれない。

 

 だが、彼がこの迷宮を攻略するメリットはとても大きい。ここは〝錬成師〟のための場所なのだから。

 

「全員、迷宮内では決して油断するなよ! 安全確認を怠るな」

 

「はい!」

「あれ? 俺には何かないの? メルドさん?」

 その後も迷宮での心得を説いていくメルドさん。実力はすでに俺たちの方が上だが、大迷宮の攻略のための知識はメルドさんの方が多い。

 

「ハンカチは持ったか? 拾い食いはするなよ? 変なもん食べたら、すぐにペッしろよ」

 

「……は、はい」

 

 ……もう、大迷宮は関係ないような。そもそも、拾い食いって、何も口にしなくても俺たちのステータスならばかなりの時間生きていられるのだが。

 

 若干雲行きが怪しくなって来たが、まだ心配なのかメルドさんはなおも言い募る。

 

「そんな装備で大丈夫か?」

 

 そしてついには最高位のアーティファクトをそんな装備扱いし始めた。過保護。

 

「「大丈夫だ、問題ない」」

 

 なぜか得意げに返す南雲と清水。二人は装備とかはあまり関係ないからな。

 

 大迷宮にはこの六人で挑むことになる。

 

 龍太郎など、他にも連れて行きたい人はいたが、大迷宮攻略中に王国が攻められて主力がいないのでは本末転倒だろうということで、何人かはおいていくことにしたのだ。

 

 そして、これはメルドさんにしか言っていないのだが、万が一俺たちが迷宮で全滅した時に希望となれる人間がいなくなってしまうのは不味いと判断したためでもある。

 

 その他にも色々と保険はかけているのだが、それでも俺たち六人で攻略して、神代魔法を習得して帰ってくるのがベストだというのは間違いない。

 

「みんな、ここからは今までと比較にならないほどの危機が何度も訪れると思う。だけど、俺はこの六人でなら、絶対に攻略できると信じてる。頑張って、帰ってこよう!」

 

 そう、この六人なら……。

 

 六人なら……。

 

 …………。

 

 …………。

 

 ……ん? 六人?

 

「あれ、一人足りなくないか?」

 

 俺、雫、香織、南雲、清水。

 

 やっぱり五人しかいない。

 

「た、確かに。おかしいわね……」

 

「後一人って誰だっけ……」

「俺だよ! 遠藤だよ!」

 雫と香織も気がついたようで、焦りながらなんとか思い出そうとしているようだ。

 

「光輝、本当に六人だったよな?」

 

 メルドさんが人数が間違っていないか聞いてきた。

 

「は、はい。それであってたはずですけど……」

 

 いや、気のせいで本当に五人だっただろうか。こういう時に冷静に判断できそうな南雲も、動揺しているようだ。答えは期待できそうにない。

 

 みんなでオロオロと慌てていると、清水が手を挙げた。

 

「……最後の一人って、遠藤じゃないか? 確か、永山のパーティからだったはずだし」

 

「「「「「それだ!」」」」」

 

 そうか、浩介か。それなら全員が忘れていたのも納得できる。……いや、こんなことを言うと怒られそうだが。

 

 浩介はとても影が薄く、自動ドアですら反応しない可能性があるほどなのである。それ故に〝暗殺者〟としては最高の力を持っていると言えるのだが、日常生活では不便でしかない。

 

「どうしたんだろうね? 寝坊でもしたのかな?」

「いや、だから、いるからここに!」

 南雲が首を傾げている。しかし、まさかこんな大事な日に遅れるとは。気が付かなかった俺達も悪いが、浩介ももっと希望を背負ってると意識してほしい。

 

「仕方がない、俺が呼びに行くからお前ら待ってろ」

「メルドさん!? いや、マジで必要ないから! ここにいるからっ!! これ、泣いていいよね?」

 溜息を吐きながらメルドさんはそう言って、歩き出そうとする。

 

 ……はぁ、なんというか、一気に気が抜けてしまったな。これはこれで、緊張しすぎるよりはいいのかもしれないが。こんな意識の低さでは、大迷宮では命取りになる。しっかりと注意しておこう。

 

「すみません、メルドさん。お願いしま――」

 

「だからここにいるって言ってるだろうが! お前らいい加減にしろよ!?」

 

「うぉっ!? 浩介!」

 

 突然聞こえてきた大声に、全員が驚いて固まった。

 

 声の発信地を見てみると、そこには六人目のメンバーである遠藤浩介が額に青筋を浮かべながら立っている。

 

 ……いたのか、浩介。

 

「こ、浩介。悪かった! だが、お前のその存在感の無さは大きな武器となる。大迷宮でも頑張れよ!」

 

「何いい話風にまとめようとしてるんですか! 話題転換が無理やりすぎるだろっ!!」

 

 涙目の浩介がメルドさんに詰め寄っている。

 

 ……オルクス深層の攻略は、こんなグダグダな状態から始まったのであった。

 

 

   ◆◆◆◆

 

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:100

天職:勇者

筋力:1500

体力:1500

耐性:1500

敏捷:1500

魔力:1500

魔耐:1500

技能:全属性適性[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術[+無念無想]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知[+効果範囲上昇]・魔力感知[+効果範囲上昇]・限界突破・言語理解

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天之河光輝 18歳 男 レベル:100

天職:勇者

筋力:1500

体力:1500

耐性:1500

敏捷:1500

魔力:1500

魔耐:1500

技能:全属性適性[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇][+闇属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和][+不屈]・複合魔法・剣術[+無念無想][+無念有想]・剛力・縮地[+爆縮地][+真縮地]・先読・高速魔力回復[+瞑想]・気配感知[+効果範囲拡大]・魔力感知[+効果範囲拡大]・限界突破[+覇潰][+戦鬼]・言語理解

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〝闇属性効果上昇〟闇属性への耐性が更に上がる

 

〝不屈〟使用中、器官が使用不可になる傷を負わず、その代わりに魔力を消耗する

 

〝真縮地〟縮地の連続使用が可能になる

 

〝効果範囲拡大〟効果が及ぶ範囲が広くなる

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:100

天職:錬成師

筋力:328

体力:328

耐性:328

敏捷:328

魔力:328

魔耐:328

技能:錬成[+高速錬成Ⅹ][+効果範囲拡大Ⅹ][+精密錬成Ⅶ][+自動錬成Ⅷ][+圧縮錬成Ⅸ][+魔力効率上昇Ⅵ][+消費魔力減少Ⅷ][+複製錬成][+イメージ補強力上昇Ⅲ][+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+鉱物分解]・言語理解

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白崎香織 17歳 女 レベル:100

天職:治癒師

筋力:340

体力:340

耐性:340

敏捷:420

魔力:2310

魔耐:2310

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・言語理解

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八重樫雫 17歳 女 レベル:100

天職:剣士

筋力:860

体力:1090

耐性:650

敏捷:2220

魔力:780

魔耐:780

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子][+斬撃威力上昇][+明鏡止水]・縮地[+爆縮地][+重縮地][+震脚][+無拍子][+跋山渉水]・先読[+投影][+無拍子][+水平思考]・気配感知[+無拍子][+滴水嫡凍]・隠業[+幻撃][+無拍子][+鏡花水月]・言語理解[+無拍子]

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〝斬撃威力上昇〟斬撃の威力が上がる

 

〝明鏡止水〟集中力は極限へと至る

 

〝跋山渉水〟全ての障害は無意味と化す

 

〝水平思考〟塵ほどの可能性も見逃さない

 

〝滴水嫡凍〟一切の油断もない

 

〝鏡花水月〟水月は決して捉えられず

 

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清水幸利 17歳 男 レベル:83

天職:闇術師

筋力:380

体力:460

耐性:460

敏捷:400

魔力:2740

魔耐:890

技能:闇属性適性[+魔力効率上昇][+発動速度上昇][+効果上昇][+連続発動][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+複数同時発動][+精神干渉効果上昇Ⅸ]・闇属性耐性[+状態異常耐性上昇]・言語理解

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〝精神干渉効果上昇〟精神干渉系の魔法の効果が上がる

 

〝状態異常耐性上昇〟状態異常への耐性が上がる

 

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遠藤浩介 17歳 男 レベル:100

天職:暗殺者

筋力:850

体力:1100

耐性:470

敏捷:2180

魔力:570

魔耐:570

技能:暗殺術[+短剣術][+隠蔽][+追跡][+投擲術][+暗器術][+伝振][+遁術]・気配操作[+気配遮断][+幻踏][+夢幻Ⅳ][+顕幻][+滅心][+無幻]・影舞[+水舞][+木葉舞]・言語理解

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〝無幻〟夢幻すらもそこには存在していない




本文が短いのは許してください……。ステータスを書くのに無駄に時間かかったんです……。

あ、ステータスは大分ツッコミどころ満載ですけど、致命的なミスがない限り変更とかしないので。ご了承ください。

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