モンスターハンター 閃耀の頂   作:生姜

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第二十七話 継往

 僅かに南西、格子の窓から日が差し込んだ。温暖期を間近に控え、ドンドルマでは快晴の日々が続いている。

 杖をかつりと鳴らし、しわがれた声が道場の中に響く。ダレンはそれを、静けさに染まる木目の上、両膝を折った正座でもって聞いていた。

 

「―― それでは、修行を始めようかのぉ。ダレン」

 

 目前、上座に立つ小柄な老人は、その名をフェン・ミョウジョウという。ドンドルマを拠点として選んだハンターらが倣う主流の流派、「ヨウ捨流」の20代目……前頭領である。

 フェン翁で20代目、現頭領で21代を数える。だが大陸有数の歴史を持つヨウ捨流とて、真っ正直に600年近くを築いて来た訳でもない。ヨウ捨流とは、ドンドルマの猛者達が何処からか身につけていた体術を学問的に掬い取り体系化した、謂わば教科書のようなものだ。内容は心構えから実践まで多岐に渡り、その多様性故に武術の習得を必要とする入門者が後を絶たない。また、頭領すらハンターである為命を落とすことが数多く、後継については何人もの候補者を羅列しており、誰かが亡くなれば誰かが継ぐという仕組みになっている。猛者が集まるドンドルマに居るため武芸者の人材不足に陥る事はなく、その流れが途切れたという事実は、今の所ない。

 武術という物を倣うのは初めてだった。今片手剣を扱っているのは、我流と、出遭ったハンター達の動きを真似たもの。ダレン自身3つ星(ランク3)というハンターランクを保持してはいるものの、それすら書士隊の活動に際して護衛のハンター達と協働をしていた故の、年季に寄るものだ。実際、3つ星のハンターというのはドンドルマやミナガルデでは底辺に近い。少なくとも走り出しではない、だけの意味しか持ち合わせていないのである

 だからこそダレンにとってハンターとしての実力の向上は急務であった。隊長職にかまけていては、ただでさえ成長著しいノレッジに置いていかれてしまう。彼女の才を考えれば仕方の無いことではあり、隊長としては喜ばしいことなのだが、1人の男として出来る限り避けたい事態でもある。

 そこで彼が修行の伝にとロンによって紹介されたのが彼、フェン翁だった。この老翁は現役の師範を退き、ドンドルマの街の端に別宅を持ち隠居をしている。ダレンはそこを直接訪れ、こうして教えを請うことになったのである。

 

「宜しくお願いします」

「ふむ。何とも生真面目じゃのう」

 

 彼にとっては当然の事だったのだが、深く頭を下げたダレンを、フェン翁は多少の驚きをもってみやる。

 

「ロン坊に紹介されたでの、もちっと頭の可笑しい輩かと思うとったんじゃが……ま、それはそれと」

「……はぁ」

 

 髭を弄りながら放たれた言葉を、ダレンは否定も出来ず、ただ適当な相槌をうった。

 ロンに紹介された人物だから、変人。的を射ているような、そうでもないような。いずれにせよ自分がそう謂われる人柄であるのかは、ダレン自身には判断つかない所だ。

 まぁそれはどうでも良いわいと呟いて、フェン翁はぴしりと背を伸ばした。年齢を感じさせない佇まい。ダレンを正中に捉え、何かを考え込む素振を見せる。

 修行の内容を考えているのだろう、とは察することが出来た。フェン翁は若かりし頃、暴勇振りで名を馳せたハンターである。その上ヨウ捨流は現状ハンターが扱う殆どの武器を網羅する、体術に長けた流派だ。これはどんな荒行が待っているか、とダレンは身構える。

 そして身構えた分、落差によって空振りを喫した。

 

「修行の内容は ―― 剣に寄り掛かりながらの、瞑想じゃな」

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

「……これは、大丈夫だろうか……?」

 

 それから僅かに2日後。風車の回る屋敷の庭に寝転がりながら、ダレンは早くも自らの「不甲斐なさ」を悔いていた。

 あれから、フェン爺に指示される修行の内容は変容をみせていない。炎天下の中、別宅の道場の傍にある小さな中庭に生やされた白い大木の傍にて……大剣に寄りかかりながら、芝生の上で黙々と眼を閉じる日々。根気強く続けてはみているものの、ダレンはこの修行は自らの力量にそぐわぬものだろうと感じ始めていた。

 

(達人の域に在る『天刃』、フェン翁だからこそ意味があるのではないだろうか……。私のような凡人は走り込みや素振りでもしていた方が、身に着くものが在る気がする……のだが、まぁ、不可思議な疲れを感じるのは確かだな)

 

 昼時を告げる鐘の音に釣られ、そう考えながらも、ダレンは午前の訓練(という名の瞑想)を終えて昼食のために足を動かす。

 何もしていなくとも腹が減るというのはダレン自身初めての経験では在ったが、実際に汗はかいているし座っているだけでもエネルギーというのは消費されるものだ。そう自身を納得させて、堂内へと続く板間を歩いて行く。

 

「―― む」

 

 すると、角を曲がった所で、食堂を覗き込む小さな人影が目に止まった。

 

「……。……!」

 

 頭の後ろで黒髪を1つに纏めた少女である。扉の裏に身を隠していた少女は、近づいてきたダレンを察知すると、ぱっとその場を離れ、走り去って行った。

 あっという間に消えた後姿を見送っておきながら、思い出す。確か彼女は。

 

「あれは孫のセネカじゃよ、ダレン」

「っ!? お、驚かせないで欲しいの……です、が」

 

 途中から苦笑いに移行しつつ、ダレンは後ろを向く。そこには予想の通り、笑みを湛えたフェン翁が立っていた。

 彼の言葉を思い出しながら、逆説に繋げる。

 

「ですが驚かせるのを止めろというのは、貴方にとって死にも等しい苦行である。でしたか、フェン翁」

「ひょっひょ。わしの楽しみを理解してくれる弟子が増えてくれて嬉しいの、ダレン」

 

 フェン爺は年相応、それ以上に悪戯好きな老人であった。こうして気配もなく背後に立つなどというのは、まだ易しいもの。ここ2日だけでも、何度腰を抜かしたか数え切れもしない。

 そんな気性を理解している新たな弟子に笑いかけつつ、老翁は先立って歩き始めた。ダレンはその後ろについてゆく。

 

「ここで会ったのも誰かさんのお導きじゃ。どうじゃ、このジジイと一緒に昼飯を食わんかの?」

「ええ、是非とも」

 

 意見をあわせ、食堂へと向かう。

 隠居しているとは言え、フェンの下にはまだまだ沢山の弟子達が集っていた。食事の用意は彼等の仕事なのだが、珍しい事に、食事は兄弟子などが作る決まりになっている。ただこれは、単純に料理の腕で決めているらしい。

 その代り、弟弟子達は朝早くから買出しや掃除などの雑務を引き受ける当番制だ。ダレンも今朝は早くから広場までを往復する買出しに出かけていた。ドンドルマの長階段を上り下りするだけでも相当に体力が必要だったのは言うまでも無い。

 通路の途中で弟子等に挨拶を返しつつ、前を歩くフェン翁の背を拝しつつ進んでいると。

 

「ところでダレンよ。何ゆえあんな場所に立ち止まっておったのじゃ?」

「いえ。見知った姿を見かけまして」

「ああ、セネカか」

 

 先日、ダレンもドンドルマの中央に建つ本道場へ挨拶をしに行った事がある。その際親の背に隠れていた小さな娘が、フェンの言うセネカだった。

 

「さっきのお嬢さんは、お孫さんだと言っていましたが……?」

「その通り。セネカはわしの孫娘じゃよ。齢12じゃが、剣術に関してはお前の姉弟子だの。ワシんトコの継承者筆頭じゃ」

 

 口を出たその単語に、思わず唸る。

 

「……筆頭、ですか。あの年にして」

「うむ。ワシらは継承に家系(ちすじ)は気にせず、得物を選ばずの喧嘩殺法じゃからの。腕の立つ物が代表になる。しかしセネカは特に、刀に関しては天稟(てんぴん)を授かっておるとしか言い様の無い飲み込み様での。まぁ男と女じゃ身体つきも違うて、術法としてワシと比べられんのが残念じゃわい」

 

 ひょっひょ、という独特の笑いをあげながらも。……その内に僅かな寂しさが紛れているように感じられるのは、気のせいだろうか。

 差し出がましい。そこは突くべきではない。そう訴える思考を抑えつつ、やんわりと口にする。

 

「……では先ほどは、フェン翁に逢いに来たのではないのでしょうか?」

 

 言外に会わなくて良かったのか、と言い含める。これがダレンに出来る精一杯の進言だ。

 弟子のその様子に、フェン翁は小さくありがとうと返し。

 

「お主はやはり隊長職に向いておるよ、ダレン。そうやって踏み込んでゆける、しかもずかずかとではなく己を弁えながら……という人の質は大切にせねばなるまい。ロン坊が重宝するのも頷ける」

「申し訳ありません。お褒めの言葉もありがたく思います……が、やはり差し出がましかったでしょうか」

「いや。礼を言う。……じゃが、セネカがワシに会いに来た。それはないのう。ワシんとこの流派は、前に行った通りドンドルマの中央部に屋敷と道場を構えておる。だからセネカも、刀の継承者筆頭故に、この離れの屋敷には殆ど顔を出しはしないのじゃ」

 

 『ヨウ捨流』の頭領は現在、セネカの親であるフェンの息子が勤めている。その妻も師範だ。ここ離れの屋敷はドンドルマの物見の高台に建てられており、道場こそあるものの、門下生に溢れ賑わいを見せる本邸とは雲泥の差であるのだという。

 僅かな間。フェン翁は現状についてとつとつと説明を終え、遠くを見るような眼差しを一瞬の内に仕舞い込んだ。

 

「だから先もワシではなく……彼奴の母君でも探し回っていたのであろうよ」

 

 その様子にダレンはそれ以上は何も言えず、ただ相槌をうった。実際、ドンドルマの現状については聞き及んだ程度の見聞しかない。何か言うべきであったのかもしれないが、今のダレンとしてはこれが精一杯の返答である。

 まだ食堂まで路は残されている。ドンドルマや、それに前の会議で猛威を振るったミナガルデの街についても……後々に情報収集をしなければと予定を組みつつ。ダレンは新たに話題を振ることにする。

 

「そういえば、フェン翁。出来ればこの凡才に、せめてあの修行の目的を教えていただきたいのですが……」

「ひょ? ふむぅ、2日もやってとなると ―― 成る程。ダレンは頭から入るお人じゃったか。こりゃあ失礼した」

 

 悪戯小僧の様な笑顔を浮かべ、こつりと自分の頭を小突く。

 

「あの被り者の知り合いだと聞いたもんでの。このジジイ、てっきりこういう感覚的なのがやり易いもんじゃと思っておったわい。ひょっひょ! 年を取ると早とちりでいかんの!」

「はぁ。……被り者、というと……ヒシュの事でしょうか」

 

 言い分は別として、ロンへ手紙を宛てたのはヒシュで間違いない。ロン自身もヒシュという名を聞いて通じていた。ならば「被り者」という珍妙な呼び名はヒシュを指すものであるのは疑い無いだろう。

 

「ヒシュ? はて、あ奴はそんな珍妙な名じゃったかの? ……ふむぅ。兎に角、悪ガキのロンに手紙を渡した者の事じゃよ。あ奴は飛び抜けた感覚派じゃったからの。底なしに水を吸う砂のようじゃて、こりゃあ人類の進化も目前かとたまげたもんじゃったわ」

「それは……かつてヒシュもこの道場に?」

「ワシが教えたのはさわりの部分を、それもちぃっとだけじゃがの。残りは他の奴らがこぞって教えておったわ。ま、その辺りは後々に本人から聞くのがよかろ」

 

 友人の師でもあったらしい老翁は、そう言って話題を切ると、しかし、フェン翁はその歩みを止めた。

 庭を覗くことの出来る2階の通路の傍。空を見上げ、顎を撫で、ダレンに正対し……首を捻る。

 

「さて。そんでは、修行の方針を変えようと思うのじゃが。何れにせよダレンの場合は期間が短いから荒療治しかないんでの。こういうのは実際にやるのがてっとり早いんじゃが……」

 

 未知(アンノウン)の討伐期限まで、残す所4ヶ月。温暖期を(また)ぐほどの猶予が与えられているのだが、それは武術を1つ修めるための期間としては短すぎた。

 だからこそ苦慮しているのだろう。フェン翁はそのまま、暫し悩んでいると。

 

「―― よう。お困りかい? フェン爺」

 

 よりにもよって窓から、1人の男が顔を出していた。

 ここは2階である。どうやら屋根に立っているらしいその男は、話を盗み聞きでもしていたのだろう。窓辺に寄り掛かりながら会話を始めた。

 

「でおったな、神出鬼没。……じゃが、良い機会には違いない。これペル坊。今宵、この離れまでリンドヴルムを呼んで来い」

「おおっと、いきなり長虫さんを指名かい? きっと指名料は高くつくぜー、そんじゃそこらの女なんかよりずっと高いぜー、あんな厳ついおっさんだってのによう」

「ひょ。そう言われると勿体無い気がするがのう」

「おうさ。どうせ呼ぶなら『春狗亭』の姉ちゃんにしねえか? リンドヴルムよりもそっちのが柔こいぜ?」

 

 どうやらフェン翁とこの男は、きせずして女好きという部分で気が合うらしい。暫くの間どこそこのが有名だなどという話題を繰り広げた後、しかし。

 

「……」

「くっはあ! なんてぇ顔してんだお前さんっ!! 女との逢引で待ちぼうけくらった男並にひでえ顔だ!! そんなんじゃあライトスに指差して笑われんぞ?」

 

 ただただ、話にも入れず、何ともいえない表情を浮べていたダレンは、男の大笑いによって引き戻された。

 ダレンの顔を指差して腹を抱えて笑う男。フェン翁は髭を弄りながら仕方が無いのう、と呟いて。

 

「まぁそれは良い。ほれペル坊、挨拶をせんか」

「くっく……いいぜ、いいぜ。オレ様はペルセイズ。先日はモービンが世話になったな?」

 

 フェン翁を前にしながら気後れせず、男……ペルセイズはその手を差し出した。

 やや長めに切り揃えられた濃茶の髪に耳飾。着飾り過ぎる様子は無いが垢抜けた、どこか軽薄な印象を受ける。だが、その目立った軽薄さで覆われているが故に、どこか汲み取り辛さを備えているようにも思えた。ある意味では確信がある。この男は、間違いなく曲者だろうと。

 そう考えながらも、ダレンは先ず、差し出された手を取る。挙げられた名前の1つを引き合いに出し。

 

「私はダレン・ディーノという者です。お初に顔を合わせます、ペルセイズ殿。……しかしモービンというと、《根を張る澪脈》の副団長殿でしょうか」

「ああ。オレ様は、まぁ、その猟団で使いっ走りみたいなことをしてるんでな。モービンから面白い奴が来たって噂を聞きつけてここまで来たんだが……くっは! お前さん、予想以上の面白さだなぁおい!!」

 

 ペルセイズは正面切って、笑うのを止めようとはしなかった。そういう性格なのだろう。気を悪くするような悪意は感じられなかったのが幸いか。

 一頻り笑い終わると、ペルセイズは再びフェン翁の側を向く。

 

「ほいほい。そんじゃあフェン爺、頼みごとの代金はどこから出す?」

「そんなもん、お前のツケたわしの道場の授業代から差し引いておけばお釣りがくるわい」

「了解、了解。じじいが逝っちまう前に返しとかねえといけねえな。そんじゃ、夜まではお時間頂きますぜぇ、っとぉ。またな、ダレン」

「は、あの……」

 

 ペルセイズが姿を消した。

 ダレンはすぐさま窓を覗き込み影を探したが、どこにもそれらしき姿は見当たらない。まるで密偵だな、と、感想を抱いた。

 

 

 

 

 昼食を挟んで数時間。フェン翁の別宅を、件のリンドヴルム・ソルグラムが訪れていた。

 以前と同様鎧を纏ってくるかと思いきや、リンドヴルムはどこか見慣れない着流し……ここより遥かに東方、シキ国の竜人達が好む緩やかな衣類に身を包んでいる。

 夜が更け。ダレンが昼間まで座り込んでいた中庭に、リンドヴルムとフェン翁、それに外野から覗き込むペルセイズが揃うと、先ずはリンドヴルムが口を開いた。

 

「―― フェン翁。某の力が必要と聞いて馳せ参じた次第」

「ひょっひょ。良く来てくれたわい、リンドヴルム。また一段とでかくなったようじゃのう?」

「狩猟に必要と在らば、某、身体も必然と大きくなりましょう」

 

 リンドヴルムはあの会議の場で見た……終始鉄面皮で通した彼よりも柔らかな物腰だった。フェンとペルセイズにきちりと一礼し。

 

「ダレン・ディーノも2日ぶりだな。先の会議の場では迷惑をかけた。あのアレク・ギネス……ミナガルデ卿に反論してみせた時など、某も思わず快哉をあげそうになったが」

 

 今度はダレンに向けて、朗らかに笑った。ダレンは緊張しながらも、その無骨な手と握手を交わす。

 自己紹介が終わると、フェンが早速と本題に入った。リンドヴルムに、ダレンの修行の方針を変えることを告げる。

 

「―― ダレンに我が剣を振るう場を見せる、と仰るのですね」

 

 問い掛けに、フェンは小さく頷く。

 

「そうじゃ。一つで良い。雲間に耀く万理の一太刀を、見せてやってはくれんかの」

 

 庭での瞑想から替わって、今度は一太刀を見せる ―― やはり難解な修行だ、とダレンは思った。

 しかし師と仰ぐ人物からの提案である。そこに何かを見出すのは弟子の役目だろう、と、心構えをしておいて。……同じく師の言葉に、リンドヴルムは間髪居れず頷いた。

 

「勿論。『ヨウ捨流』が20代目、(しかして)、某が師でもあるフェン翁の願いとあらば ―― と、申し上げたい所ですが」

 

 頷いておきながら、リンドヴルムは僅かに表情を濁す。

 

「彼の型は獣らを相手にしてこそ意味を表す物。幸いにして現在、ドンドルマはモンスターの強襲を受けてはおらず。相手がおらずばこの剣も、只の鉄塊と成り果てましょう」

「それもそうじゃの。しかし……ひょっひょ、抜かりはないて。ペル坊に本道場のあれを持って来るよう言ってある」

 

 老翁は、横目で白の庭木に寄り掛かるペルセイズを見やる。当のペルセイズは、やれやれと首を振りながらも。

 

「人使いの荒い爺さんだよな、っとぉ。これに違いないだろ?」

 

 ペルセイズがその手に持っていた布を払い、放る。

 一振りの得物、長剣であった。手を離れた剣は、そのまま地面に突き立つ。柄だけでなく、乱れの無い刃筋までもが艶消しの真黒に染まっている。

 紛うことなき業物だ。しかしそれを、誰も手に取ろうとは思わなかった。剣を包み放たれる ―― 異様としか言いようの無い気配。敵意とも害意とも取れどこか誘うような、馴染み易さを伴った……御伽噺に語られる悪魔の様な、と評するのが適切か。禍々しさに由来する近付き難さ。

 真っ先に動いたのはフェン翁だった。鈍く光る長剣の傍に立ち、リンドヴルムを見上げる。

 

「さてリンドヴルム。これを目の前にしていれば、どうじゃ?」

「これは……魔の剣では」

「うむ。巷で噂の、だの。つい今朝方、弟子が本街の道場に持ち込んだらしくてのう。激怒した息子が取り上げ、その家族に代金を支払った後、破門としたらしいのじゃ。これがその取り上げられた一振りじゃよ」

 

 長剣がこの場に巡った顛末を聞き、リンドヴルムはこれみよがしに溜息をつく。

 

「……邪教が神を祀る剣。王国やミナガルデで極稀に出回っているとは聞き及んでいましたが。……よもやドンドルマまで廻るとは」

「物欲とは人のサガじゃて。これ以上の罰は与えてやるでないぞ、長虫」

「ええ。勿論」

 

 居直し、リンドヴルムは振り返る。

 

「しかし魔の剣であれば相手として申し分なく。これならば私の剣も震える(・・・)かと」

「ひょっひょ。それじゃあ頼んだぞい」

 

 老翁がその身を引くと、ダレンにとって正面。会議の場よりも一層に大きく感じられるその身体は、魔の剣を遥かに押し込めて堂々たる気配を漂わせていた。

 

「ダレン・ディーノ」

「はい」

「剣には魂が宿る。人は志によって動くもの。君が高潔な志と熱い魂を持って剣を振るうこと叶うのならば、(これ)、某などは直ぐにでも追い越す事が出来よう」

「―― いやいやいやいや! 黙って聞いてりゃ、んなわきゃねえって。アンタみたいな化けモンがぽんぽん増殖してるってんなら、この星なんてぇとっくの昔に真っ二つだっての!?」

 

 思わず突っ込みを入れざるを得なかったのだろう。だがそれだけではなく、話に割り込んだペルセイズは、手に大剣を抱えていた。

 会議場で見た『角王蒼大剣(アーティラート)』ではなく、『アイアンソード』という鉄剣だ。大量生産品 ―― 所謂初心者向けの得物であるが、大剣に区分けされるだけあって、ダレンの身の丈程もある巨大なもの。しかしその大剣を、リンドヴルムは片手で雑作なく受け取る。表、裏、と剣を翳し。

 

「得物を持って出歩くには護衛が煩くてな。この場に剣があるのは有り難い。……しかし軽口は変わらないなペルセイズ。先の会談で世話になったモービンはどうしたか?」

「アイツにゃあ今、《根を張る澪脈》で副長をして貰ってんだぜ。猟団の纏めに決まってる。何しろ、オレ様ん猟団(とこ)がお忍びの偵察に行くことになっちまったしな? こっちにゃ流石に、アイツに着いて来てもらわなきゃあ困るからよ。長旅だぜ」

「そうか。それは有り難い。恩に着る。斥侯は宜しく頼む。ドンドルマで信頼の置ける猟団の内、《轟く雷》は偵察になど向いてはいない。腕っ節なら兎も角も、何しろ、親玉がグントラムなのだからな」

「まぁ隠密行動ってなりゃあ、グントラムのおじきは無理だわなぁ。その他のモンスターハンター様はってぇと、ハイランドは相変わらず行方不明でふらふらしてるっぽいし、ギルナーシェは相変わらずミナガルデご領主様の護衛。弟子の片方は未知(アンノウン)の本討伐に向かうときてる。……そこんとこ、オレ様の猟団の役割ってのを理解してねえ訳じゃあねえってばよ」

 

 そして旧年来の友人がそうするように、笑いあう。

 

「何よりオレ様自身、その未知(アンノウン)って奴を見るのを楽しみにもしてんでな。気にすんな!」

「嗚呼。そうか。在り難い(・・・・)

 

 そう笑うと、今度こそダレンに向き直り、リンドヴルムは腰を折る。フェン翁の前だということもあり、巨大な男が何度も腰を折る姿は、リンドヴルムの実直な性格を現しているように思えた。英雄と称されるハンター……モンスターハンターの頂に立つ男は、誰よりもハンターらしい人間であるのだろう。

 

「身内で話してしまい申し訳ない、ダレン・ディーノ」

「いえ。お気になさらず」

「有り難い。では ―― フェン翁、辺りを拝借する」

「ひょっひょ。好きにせい」

 

 フェンの横を抜け、前に。リンドヴルムは『アイアンソード』を手に、地面に突き立つ魔の長剣を睨み据えた。

 斬る。意思を顕に大剣を振りかぶり力を溜める。彼の視界にはもう、ダレンは映っていない。

 

「ヨウ捨流が北辰納豆流など他の流派と際立って異なる部分は、あくまで全が生物を(・・・・・)相手と(・・・)想定する(・・・・)術であるという点に尽きる。体術は前座に過ぎず。全てを受け入れる心構えこそ真髄」

 

 あくまで淡々と。教えの為だけに言葉を紡ぎ、自らの力を余念なく発揮する事にのみ意識を注ぎ。

 

「某が振るうは、是、命を絶つ為の一太刀也」

 

 余韻。

 呟いた一言を持って、

 

「―― 雄々(おぉ)ッ」

 

 空が嘶く雷か。畳まれていた腕が振るわれる。

 猛々しい雄叫びに反して、信じられない怜悧さを伴った一撃。閃き ―― 雷が落ちた ―― と錯覚するほどの速度、衝撃が、数瞬遅れてダレンを襲った。

 斬撃の結果にも目を見開く。残線に残されたのは、等分された剣先。あれだけの異様さを纏っていた魔の剣が、呆気なくも寸断されていた。それも明らかに劣る得物によって、である。

 

(……!)

 

 雷はダレンの内にも衝撃をもたらしていた。それは憧憬にも似た、嵌め込まれた欠片がぴたりと合う様な、直感だった。

 今まで使っていた片手剣とて、ダレンにとって使い辛い物ではない。だがそれは、片手剣が「使い易い」という、得物側の特性に寄る部分が大きい。

 それ以上に。今の一太刀によって拓かれたものが、確かに在った。自らが得るべき……手にすべき物と出会えたという感が、胸の内を占めてゆく。

 口を開けたままの青年の前に、フェンとリンドヴルムが並ぶ。

 

「ダレン。お主にはこのリンドヴルムと……それに後々に合流する《轟く雷》が首領、グントラムによる直接の打ち合いをしてもらう。荒療治じゃが、この2人ならば感覚と頭とのどちらにも教え込むことが出来ると思うての人選じゃよ」

「而、この短期間で雲間に耀く剣を得ようとするのならば。これ以上の環境は無い」

 

 世に名を馳せるリンドヴルムだけでなく、歴戦のハンターが集う《轟く雷》の団長までもがダレンの師を買って出てくれるのだという。荒療治というだけあって、それぞれ達人の域にある彼等と打ち合うなどと言う修行は、確かに命の危険すら伴うだろう。

 こういう時、部下からも学ぶことは多い。好待遇に過ぎる条件だ。しかし不安には思わない。願ったり叶ったり。あとはやってみせるのみ。ノレッジの様に。或いはヒシュやネコの様に。後ろだけは向くまいと、ダレンは腹に決めている。

 フェン翁は皺のある頬を撫でながら、新たな弟子に向かって問うた。

 

「―― 世界は命在る物に全て等しく。しかし人間は誰かを退けるだけでなく、理解を望むことが出来る、好奇心旺盛な生き物じゃ。相手を……モンスターが心を解し、自らのものとする。これはどんな偶然にせよ、『境地』にまで到達し得るハンターでなければ叶わぬ事よ。意思を持って到達するに、どれ程の時間が掛かるものか……この老いぼれとて身を持って知っておる。じゃがお主がかの未知を知ろうとするなればこそ ―― その淵を覗く資格程度は持っておかねばならぬからのぅ」

「どうする。いや。どうしたい ―― ダレン・ディーノ」

 

 そして、リンドヴルムが覚悟を問うた。

 迷いは無い。有るのは望みだ。ダレンの答は、淀みなく澄んだ意思をもって返される。

 

「このダレン・ディーノ、死力を持って食らい付きましょう。どうぞ宜しく指導の程を ―― 師匠方々」

 

 

■□■□■□■

 

 

 そして、ダレンが修行を開始して更に2週が過ぎ。

 季節は既に温暖期を迎えた。ドンドルマを遠く離れた密林の高地の奥深く。そこに、1人と1匹のハンターが身を潜めていた。

 

「―― なぁモービンよ。ダレンの奴ぁ、今頃ドンドルマの近場で修行漬けなんだろーなぁ」

「でも、ドンドルマには女が居んニャ。こうして干し肉噛みニャがら日がな森の中を練り歩いているオレとペルセイズ親分に比べて、どっちがマシかは言うまでもねえニャ」

「はっ、違ぇねーやな。……ダレンなら、リンドヴルムの奴が着いてんなら多少はモノに出来んだろ。相性は良さげだったし」

「2人とも苦労人っぽいかんニャア。ダレンはあんニャんだし、リンドヴルムだって、本来ニャらギルドなんて投げ出して一狩り行きたい性分だろうしニャ。大長老の代わりを務められる位の名声を持ってんのがアイツだけだって話だニャ」

「くっは! 確かにそんなだよな、アイツ。今回のこの遠征だって、オレ様ら《根を張る澪脈》が無けりゃあ、何だカンだで屁理屈こいて自分で来るつもりだったんじゃあねえんかね。まぁそこは、オレ様がギルドナイトの権限とかをぶら下げて押し通したがよ……んむぐ」

 

 笑いついでに開いた口に、干し肉の最後の一切れを放り込む。

 男 ―― ペルセイズは、全身を青の鎧で包んでいた。鎌蟹(ショウグンギザミ)の素材によって作られたその鎧は、所々が鋭利な刃物の様に突き出しており、触れた相手を傷つける。防御だけでは留まらない鎧の新たな役割を唱えた意欲作である。ただ闘いなら兎も角、胡坐をかいて身を小さくしている分には、件の刃物の部分が邪魔で仕様がなかった。

 対して、その横のアイルー ―― モービンは雌火竜・リオレイアを素材とする鎧の上に泥の迷彩を施している。モービンは空を見上げ、髭をぴくぴくと動かす。

 

「……降りそうか?」

「オレの髭センサーは降雨確率120%とか言ってんニャ、親分」

「それだと確率超えてんじゃねえか。そいじゃあ身体を冷やす前にキャンプにでも……っとぉ。随分と暗くなんな」

 

 暗雲が蠢き、あっという間に頭上を覆う。いつ何時雨天となってもおかしくはない曇天具合。

 

「……いや、こらビンゴだな?」

「うニャ。待ち人来るニャ」

 

 しかし空を見上げていたペルセイズとアイルーはその場を動かず、気配を殺す事に終始し始めた。

 そのままその場にうずくまる事、数分。暗雲が厚みを増し夜にも等しい暗さとなった頃、

 

「―― ペルセイズ親分。奴さん、お出ましやがりましたニャ」

「―― おうよ。勿論こっちからも見えてんぜ、モービン」

 

 ようやくと目的の生物が姿を現す。

 全身に泥の迷彩を施したアイルーと、ショウグンギザミの甲殻で作り出された鋭利な青鎧を纏う青年は、茂みの中で揃って顔を上げた。

 そしてその相手を見ると同時、全てを理解した。難敵だと。強者だと。これは、底知れぬ怪物であると。

 

「……こいつぁ凄ぇ。あの被り者がお熱んなる訳だ」

「被り者……ああ、今はヒシュとか名乗っているぽいけど……あの馬鹿弟子、これの相手をすんニャ?」

「らしいねえ。くっは、相変わらず面白れえことばっかしやがる。羨ましいったらありゃしねえ」

「……はぁ。揃いも揃って馬鹿ばっかニャ」

 

 瞳孔が窄み、身体が震え、思わず、口角が釣りあがる。

 

「はっは。ハンター何て皆、んなもんだろ。……さぁモービン。飛び入りで、オレ様たちも目出度く馬鹿の仲間入りだぜ?」

「知ってんニャ。始めからオレだって馬鹿で阿呆の積りだニャ。んで無きゃペルセイズ親分の御供なんてやってらんねぇのニャ」

「応。それでこそオレ様の相棒だ。……行くぜ」

「始めんニャ」

 

 そして両者共に気配を殺すのを止め、茂みを飛び出した。

 木々の合間に開けた場所で、待ちかねた獲物と相対する。

 

「―― ァ」

 

 獲物と相対し、肥大化し黒に染まる身体がぶるりと震えた。

 かつてイャンクックであった頃よりも、嘴は一際大きく頭蓋を侵食している。両足には鋭く尖った鉤爪が備えられ、全身には羽毛が。かつて皮膜で覆われていた翼にも、今は1枚1枚風斬り羽が携えられている。

 

 ―― 変貌を遂げたとは言え、その姿は、おおよそ鳥と呼べる範疇にあった。

 ―― ただしそこには、「原初の」という冠が添えられる。

 

 鋭く巨大な嘴は、開閉機構と言う点について不備があると言えよう。それは食物の摂取し易さ……種の生存率に直結する。鋭く尖った鉤爪は武器にこそなるが、地上の歩行だけでなく、獲物を掴む用途にも適していない。長大な尾など、まるで大きくしてから飛ぶ際の邪魔になった事に気付いて肉抜きをしたかの如く、軽い尾羽へと取って代わっている。

 或いはこれを、生物の進化としてちぐはぐだと語ることも出来る。だが「この時代」にはまだ、進むべき先が多過ぎた。何処かに突出せざるを得なかったのだ。

 先鋭化された、進化を遂げる以前の容貌。分化と適応を繰り返し平たくなった現存の鳥竜とは一線を画す ――「原初の鳥」。

 その尖った姿を見上げながら、ペルセイズは、今は遠くの友人が作っていた「樹形図」とやらを思い浮かべていた。彼は鳥竜の祖……始祖鳥を、なんと呼んでいただろうか。彼が骨格から想像した始祖鳥とこの生物が似ているのかは、判らないが。

 程なくしてその名も思い出される。イャンクックをこよなく愛する人物らの愛読書「クックラブ」において、翼を持つ鳥竜種についての特集が組まれた際、取り上げられていたのを見かけた覚えがあったのだ。

 確か「イグルエイビス」と。そう、嬉々として名をつけていた筈だった。

 決まりだ。目前に立つ……仮称、イグルエイビス……に向かい、ペルセイズは一礼しながら声を張り上げた。

 

「やぁやぁ、真っ黒なドレスが良くお似合いの素敵なお嬢さん。逢引のお誘いだ。見ての通り、オレ様もその相棒も鎧と剣とでめかし込んで来てんでな。ちょっくらど突き合って(・・・・・・)貰うぜ」

 

「非常に残念ニャ事に、親分の心は硝子よりも遥かに脆いニャ。誘いを断られると暫く塞ぎこんでしまうち、逢引のお誘い相手には断るのをお断り(・・・・・・・)してんニャ」

 

「おいおい、そいつぁ人聞き悪ぃなモービン。……まあオレ様は面食いだからよ。そう言う意味じゃあ誰彼構わず声をかけてる訳じゃあねえから安心してくれや」

 

 軽口に逆らって、ペルセイズがだらりと腕を垂らす(・・・)。構えるは『煌竜(コウリュウ)(ツガイ)』。右の白銀と左の黄金の双つ、対になった刃は楯と矛の役割を各々に課している。

 

「ドス黒いアンタも犬に噛まれたとでも思って、ぼちぼちやり合ってくれると助かんニャ」

 

 モービンは、投擲用の手裏剣と様々な笛を背負う。あちこちの茂みには防水布に包んだ道具を潜めてある。以前弟子に享受したこともある狩猟の陣形。

 

「さて ―― 秘密の秘密の偵察任務。死なない程度にゆるぅり、行くとしますかね!」

「諒解。ぼちぼち、始めんニャ!」

 

 絡まる視線。振り出す雨。走り出すハンター。

 イグルエイビスに似通った「過去に還り未だ知られざる鳥」は、嘴と一体化した頭蓋の内から、その紅い眼でもって、向かう敵と敵意とを確かに捉えた。

 覚えている。あの仮面の狩人を匂わす構えに、久方振りの喉を鳴らす。

 再戦を果たさんと。左肩には、焼け焦げた『ボーンククリ』の刀身が残り……しかし既に、飛ぶという動作に支障は無かった。この場に留まっていたのは、ただ、これら狩人なる好敵手を待っていたからに過ぎない。

 原初の鳥は自らの進化の証 ―― 空を目指した巨翼を持って鋭く飛び上り、地に脚を着けた2者に向かい、喉と嘴を開いた。

 

 

 

「―― ギュアアア゛アーッッ!!」

 

 

 

 一鳴一息が蒼炎を生む。

 降り注ぐ雨に逆らって、密林の高地に、一足早い戦火が立ち込める。

 




 先ずクックラブのご出演について、百聞一見さんには再度の御礼をば。
 ありがとうございます! 大事な所では使わないとか言った癖によりにもよってこの場に出すとか不遜に過ぎますごめんなさいっ。でも始めからここに繋げるつもりでしたすいませんっ。

 これにてダレン編、後編の終了となります。前編あとがきより、面倒くさくない詐欺ですね。自覚はあります(ぉぃ。
 私的には非常に実験的でして、ドンドルマ編はダレンの師匠となる人物らの出逢いと、またハンターという市井の背後あたりに焦点をあててみています。元も子もなく言えば捻った説明回ですね。会話で山場を作るのは難しい。とはいえあまり長くなるのもあれでして、説明に寄ってしまったかな……というのが正直な印象です。なので最後に戦闘シーンをちょっとだけ挟んでみたり。修行と言う意味ではノレッジのそれよりも大分判りやすいものになったかとは思うのですが……私の感覚が麻痺しているのやも。はてさて。
 ヨウ捨流、というのもまた全くのオリジナルになります。ですが北辰納豆流(3~4Gでご出演の船長さん及び、剣ニャン丸が扱う流派ですね。スキルにも登場いたしましたネバネバ剣法です)の例を元にして考えますと、まぁなんでもありのケンカ殺法ならば名前の元ネタはこれが良いのではないでしょうかと思い至りました次第です。いえ、この文言ではネーミング元の流派さんに失礼ですけれどね。大好きなのですタイ捨流。でも雲耀とか言っちゃったら別の流派ですよとトンボ大好き。
 さてここで、作中ではできない解説を挟みたく思います。
 話の流れで未知(アンノウン)が未知ではなくなりましたが、未だ知れず(どっちだ。いずれにせよ大本のモンスターとは大違いの戦闘力になる予定です。
 その大元になったモンスターこそ、ハンター大全に載っております「イグルエイビス」という古代種になりますです。少なくとも体色以外の外見に関しては、本作においても、イグルエイビスと全く同じものとなっております。恐らく検索すれば画像も容易に出てきますでしょう。こういう時、自分も絵が書ければなぁと思わなくもないですね。あ、体色は黒と紫で脳内変換を。あの嘴だと本当は炎とか吐けないと思いますが、第1章の未知(ボスキャラ)ですのでそこはご愛嬌と。
 さてさて。
 イグルエイビスは、企画段階での没モンスターを、ハンター大全の発行に伴い鳥竜の祖として設定した(された)ものです。発見されている骨格では最古のもので、樹形図的には鳥竜種を束ねる位置にあります。私は作中で始祖鳥とか書いていますが、少なくとも走るよりは飛ぶほうが得意である(あろう)旨が表記されていますね。こっちでいう始祖鳥とは大分違うものと言えますでしょう。語句的には始祖鳥竜という呼び名も捨てがたかったですが、ちょっとクドイかなと。……因みに、フロンティアでは「花畑」にてこのイグルエイビスに似通ったモンスターがご登場なされている様子です。
 さてさてさて。
 予てからタグにオリジナルモンスターを付けなかった理由が、イグルエイビスの存在となります。直接にゲームの内で狩猟できない相手であるため、戦闘方法などはオリジナルになってしまいますが、モンスター自体はオリジナルではない為に微妙なラインかなーと考えます次第。……原作を重視するからにはオリジナルモンスターのタグをつけたくなかったという思惑も、勿論ありますが(苦笑
 さてさてさてさて。
 作中の「モンスターハンター」陣、随一のチャラ男の戦闘は省略しまして、いよいよ、次話よりノレッジ編に立ち戻ります。それに伴い、26話の不可解な部分の説明……第1章の主題の解説に入ります。書き溜めが少ないので期間は開くかもしれませんが、砂漠で2~3話ほど(分割するか否かという)を挟んでおきまして……やっと第1章の終わりがちらっとですが覗けて来たかと思います。
 ……リンドヴルム(意訳:のたくる長虫さん)がぶった切った例のものに関しては、予てから仕込んでいた2部へのフラグですよーとの注釈を挟んでおきつつ。
 では、では。

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