モンスターハンター 閃耀の頂   作:生姜

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第十九話 二つ月に啼く

 仮面の下で細められた眼が、夜の帳が下りた密林の闇と雨飛沫の幕……そして曇天の空へと向けられる。

 少女が砂漠にて魚竜との闘争を終えた頃。砂漠の地から遥か東 ―― ジャンボ村から更に東方 ―― テロス密林の管轄地に、狩人達は立っていた。

 岩場の傍らで木々が乱立する管轄地の第一区画の最中。仮面の狩人・ヒシュの隣へ、アイルーのネコが連れ添った。主従にとっては「何時もの」、別の大陸に居た頃から幾度となく重ねられた、狩猟開始の陣形である。

 

「御主人。『配置』は済みました。 ―― 私は、何時でも」

「ん。オリザは……来た(・・)

 

 上空を見上げると、それまで上空を旋回していた大鷲が小さく空を滑り、設営した野営地の方向へと飛び戻って行くのが見えた。ネコが頷くと、主は腰から角笛を引き抜く。

 常ならばその身にあらゆる道具を着けている仮面の狩人。しかしヒシュが今身に着けているものは背にある『大鉈』と『ハンターナイフ』、腰に差したままの『ポイズンタバルジン』のみであった。他の物はネコの手によって「配置」……第一区画のそこかしこ、木の陰や草生えの中などにばら撒かれている。

 それじゃあと、ヒシュは引き抜いた角笛を口に咥え、鳴らす。重低音が密林の管轄地を反響しゆく。暫くそのまま繰り返し角笛を吹き、雨脚が一段と強くなった頃になって角笛を放り捨てた。身構え、目前に聳える岩場、そしてオリザが意識を向けていた更に先。夜陰を裂いて飛び来る「何か」へと意識を向ける。

 

「これはまた……随分と、強敵のお出ましですね」

「そう。強いね、きっと」

 

 それは、一羽にして一頭の生物だ。空の向こうから両の翼を持って岩場を飛び越え、狩人らの目前へと降り立つ。岩の切れ目からゆっくりと降下し、地に脚を着け、喉を鳴らす。

 

「グバババ……」

 

 黒狼鳥 ―― イャンガルルガ。

 イャンガルルガを学問的に区分けするなれば、鳥竜種に属する。それ故か。外見は一見イャンクックとの類似点ばかりが目立つ、が、その実態は全くの別物である。

 臆病な気性の怪鳥とは正反対に、黒狼鳥は縄張りに入る者を容赦なく攻撃する気性の荒さを持つ。角笛を吹き侵入者の存在を誇示すれば、自らここへやってくるだろう……そう考えて行った「誘き出し」は、見事に成功。しかしそれは、よりにもよって黒狼鳥の気性の荒さをも肯定する結果でもあった。

 ヒシュとネコは樹の陰に留まり、降りて翼を揺らし首を擡げる黒狼鳥を俯瞰から観察する。凶暴性を示すかの如く、毒々しいまでの紫に染まった鱗と甲殻。繰り返された戦いにより傷ついた耳と厳つい嘴。身体の節々やしなやかで太い尾に棘が生えるその様は、暗紫色の色合いも相まってか、どこか件の未知の怪鳥を連想させる。

 ゆっくりと身体を回し、第一区画に残った敵意に反応した黒狼鳥が嘴を開く。絡みつく様な視線に圧されるように。……居場所を悟られた狩人らは、先手を取られる前にと木陰から飛び出し、その目前。

 

「グバババッ……! ギュア゛アア゛ッ!」

 

 啼いていた。

 細かな震えに狩人達が足をとめる僅かな間。その間に黒狼鳥は飛び上がり、脚に地を着けるなり、狩人目掛けた突進を繰り出した。狩人は左右に分たれて巨体の激突を避け、避けた先から阿吽の呼吸で頷き合う。

 

「イャンガルルガ、ライトスの言ってた鳥竜の頂に、一番近い相手。 ―― 是非も無い。行く」

「はい。例えそこが息すらできぬ空の果てであろうとも……どこまでも御供させて頂きましょう、我が主」

 

 気配を紫苑の鳥竜へ向けて、ヒシュは両の剣を抜き放つ。ネコは背に投擲の道具を幾つかぶら下げつつ、愛剣『ユクモノネコ小太刀』を外套の内で平正眼に構えた。

 狩猟の開始はどちらともなく告げられる。……突進の余韻から飛び上がる黒狼鳥へ、狩人らは左右交互に飛び掛った。

 

 狩猟は密林の地にて。

 事の始まりは、ヒシュとネコがジャンボ村へと帰逗した後へと遡る。

 

 

 

□■□■□■□

 

 

 

「おっ? 帰ってきたな、ヒシュさん!」

「本当だ! ヒシュさ~ん! 手が空いたら、また畑仕事を手伝ってくれよ~!!」

「うるさいよアンタ達! ヒシュさんは狩人なんだ。あんた等の仕事にくらい他力本願にしないで、さっさと働きな!! ……ヒシュさーん! 村長の所に行くんだろう? この馬鹿旦那どもの言う事なんて気にしないで行っとくれよ!」

 

 船上に居る此方に向けて、川沿いの畑にいた男衆とそれらを怒鳴りつけた気の強い女婦が手を振った。そんな、ジャンボ村の長閑な光景に向けてネコは腰を折り、ヒシュは手を振り返す。

 

「……相変わらず暖かい村ですね、ここは」

「ん。気候もね」

 

 砂竜の狩猟を終えダレンへ密書を托したヒシュらは、数日かけた航海を経て無事ジャンボ村へと辿り着いていた。

 作りかけの大型船の後ろに自分達の船を寄せ、着岸。その後に続いたギルドの輸送船から舷梯が降り、足場が確保されると、腕まくりをしたジャンボ村の村民が待ってましたとばかりに雪崩れ込んで狩猟の成果……素材の積荷を降ろして行く。

 そのまま暫く、一際大きな竜骨を運び出すのには相応の時間を割いたものの、恙無く積荷を運び終えた。するとそこへ、一人の人物が近付いていく。

 

「―― やあ。ご苦労だったねヒシュ、ネコ」

「ん。村長。でも、苦労した分の成果はあった、から」

「これは、村長殿。我が主も私も、ダレン殿もノレッジ女史も、無事に狩猟と航海を終えて帰逗しました所です。……これにて船の素材は集まりましたでしょうか?」

 

 恭しく礼をするネコとその横で首を傾ぐヒシュ。セクメーア砂漠への遠征を終えて尚いつもの通りの二者に、村長は思わず頬を緩めた。次に、依頼達成の成果である資材や素材の数々を再び見上げ、

 

「うん。改めて、ありがとう! 船の素材は十分すぎるほどさ! 親方も大工衆も皆々喜んでいるよ!」

 

 村長がわざと大声を張り上げると、遠くまで聞こえたのだろう。船上に居る親方が、力こぶを作ってがははと笑って見せていた。

 ヒシュは顎を上げ、話題に上った作業半ばの船底を眺める。長距離航海も可能な村つきの大型船舶だ。船を重用出来る位置に、この村は建てられている。完成さえすれば発展が一挙に進むであろう事は、容易に想像が出来た。ヒシュ自身も知らず仮面の内で笑みを溢す。

 

「そう! それだよ!」

 

 そんなヒシュを見ていた村長が、突如声を上げた。大口を空けた際に口を離れた煙管の火を消すと懐にしまい、

 

「オイラの知っているヒシュは、シキ国で出会ったあの頃の ―― 何事に関しても無頓着なイメージが強いんだ。だからかな? 最近はそうやって笑っているヒシュを見ていると、やっぱり、嬉しいもんだね!」

 

 満面の笑みを浮かべてそう言った。ヒシュが微妙に疑問符を浮べているとその傍へ、書類を纏めてぱたぱたと駆けて来たパティが並ぶ。何時になく嬉しそうな村長の表情を見、こちらも疑問符を浮べる。

 

「帰ってきてたのね、ヒシュもネコも。でも……へえ~。こんな(・・・)ので感情表現が豊かになったって言われても……判り辛くないですか?」

 

 こんなの、とはヒシュの仮面を指しての言である。そんなパティに笑いかけ、少しだけ同意した村長は口を開く。

 

「それがね。ヒシュは『奇面族』の中じゃあ、意味もなく攻撃的じゃあないだけでもかなりマシな方なのさ。特に王様なんて、攻撃されてちゃあ相手の機嫌を伺うのも容易じゃなくてね」

「『奇面族』……って、ギルドでも危険度を上げる必要だって話し合われている、亜人種族の?」

「ああ。ヒシュは元々、旧大陸はアヤ国に土地を持つ、奇面族の生まれだったのさ」

 

 パティを宥める様に説明を付け加えながら、村長は「だろう?」と視線を寄こす。主従は顔を見合わせ、頷いた。

 

「ウン。ジブンじゃジブンのこと、よく、判らないけど……部族の事は同意できるし、村長の言っている事はホント、です。でも。ジブンの部族は他のより特別だったし、その中でもジブンは特別だったから、普通の奇面族かは微妙。……これ、外の世界を見たからこその意見だけど」

「ふーむ……言われてみれば、確かに。ここジャンボ村へ越してからの日々は激務が続いておりますが……我が友も、以前と比べればよくよく笑顔を見せるようにはなりましたね」

 

 ネコも様相を僅かに崩し、上目遣いに笑いかけた。ヒシュは仮面ごと傾ぎ、

 

「そう? でもネコが言うなら、きっとそう」

「まぁ、ネコは貴方よりも周りとか見ていそうだものね?」

「いえ、パティ殿。その評価は嬉しいですが過分に過ぎます。我が主に私が勝る部分など、この髭程度しかありませぬ故」

「おやおや、髭は勝ってて良いのかい?」

「ネコの髭、立派。ジブン、髭は生えてないし。そもそもの土俵が違う ―― ちょっと、失礼」

 

 言いながらもヒシュはするりとパティの横を抜け、掲示板の一番上に張ってあった依頼書を手に取った。依頼主は四分儀商会。ジャンボ村に逗留する一団の長、ライトスの残した最後の依頼に関する書類であった。

 

「って、もう行くの? ……今帰って来たばっかりなのに」

 

 呆れの色を隠さないパティに、ヒシュは力強く頷く。

 

「ん。これ、ライトスの残した試金石、最後の依頼」

 

 四分儀商会にジャンボ村への継続的な物品供給を認めさせる。その足掛かりとして、ジャンボ村に腕の良いハンターが居るのだと言うことを示す……そういう題目でライトスが提示した依頼の最後の一つがこれであった。

 依頼(クエスト)、「月に啼く黒狼鳥」。

 ヒシュはパティから筆を受け取ると、依頼書に何時もの記号(なまえ)や登録番号を書き込みつつ。

 

「……ジブン、狩人だから。ライトスの持ってきたこの依頼も、こなせば一つの村が救えるんだし。それに……」

 

 一旦言葉を止める。次の瞬間パティや村長の眼に、何時になく無邪気な雰囲気を纏った仮面の主が映った。

 

「それに、イャンガルルガ、楽しみ」

「私はそんな主に御伴させて頂く所存です」

「……はぁ。ハンターってこんなのばっかりなのね」

「いやぁ……あははは。それは、どうなんだろう? オイラとしてはヒシュみたいなのは少数派だと思うけれど、ハンターには底抜けに明るい人が多いって言うんなら、同意はできるのかも知れないね」

 

 

 

■□■□■□■

 

 

 

 それらやり取りの末、ヒシュはライトスからの「試練」最後の依頼を受諾した。かの依頼における狩猟の対象こそ、鳥竜種と区分する生物の内、ギルドが最も危険である……危険度が高いと判断している生物。黒狼鳥 ―― イャンガルルガであった。

 ライトスの依頼を試金石だと判っていながら、ヒシュはそれらを歓待した。ジャンボ村へ還元出来るというのも、ライトス達「四分儀商会」の株を上げるというのもその一環ではある。が、何より鳥竜種の頂というものに興味があったのである。それは狩人としても、ハンターとしても、そして王立古生物書士隊の一員としても。

 

 雨と雲と木々によって遮られた闇の中、狩人と鳥竜との戦いは続いていた。

 重なる葉を書き分け、黒狼鳥が尾を振るう。凶風によって下生えの植物達が一斉に靡き、葉の上に乗っていた雫は宙に飛ぶ。

 暗中を舞う飛沫に身体を割り込ませた仮面の狩人が、唸る。

 

「……ぐる」

 

 雨粒と飛沫とに覆われた視界を睨み、両腕に楯を着け(・・)、両掌に剣を握った(・・・)狩人が疾駆する。黒狼鳥の棘付きの尾を這って避け、ならばと地面の際を薙いだ尾は一跳びに接近して避け、飛び上がっては無防備な翼を斬り付ける。

 しかし神速で放たれた『ポイズンタバルジン』の刃は、翼の骨格に阻まれ爪の先程も沈まない。攻撃の有効性が低い事を察した仮面の狩人は反撃を予期し、すぐさま黒狼鳥の足元を離れた。先まで立っていた地面が、黒狼鳥の嘴によって大きく抉られる。

 息を吐く。両手足を使って地面を掻き抱く仮面の狩人の隣へ、あちこちに葉を貼り付け湿気のせいでか常よりもほっそりとした毛並みのネコが駆けつけた。

 

「御無事で」

「―― ん。イャンガルルガ、すごく硬い」

「どうやら……いえ、やはりと言うべきですか。この黒狼鳥は見た目と種族こそ近似していますが、かの怪鳥とは一括りに出来ない生物である様です。私もあちらこちらに刺突を試みましたが、と」

「グバババゥ!」

 

 ネコが言葉を切ったのは必然であった。両狩人へ向けて、黒狼鳥が嘴を開いていたのだ。炎弾による遠距離攻撃の前駆動作である。

 ……歩幅が違う。避けきれない。判断したネコは、素早くヒシュの背に飛びのった。それを見計らい、ヒシュが姿勢を低く構える。全身を脱力すると脚だけに力を込めて一息に加速。ぐねぐねとうねる蛇の様な軌道で駆け出した。

 駆け出した影を追い、イャンガルルガの喉奥から炎の玉が吐き出されては密林の地面を焼いてゆく。爆ぜる音が密林に轟き、木々に止まり雨を凌いでいた野鳥達が一斉に飛び立っては点となって夜空へ消える。

 それら全てをどこか遠い感覚によって俯瞰するヒシュと、その背に掴まったネコが、木々に紛れて炎弾を凌ぎつつ会話を再開する。

 

「……さて、堅さの話でしたね。黒狼鳥の甲殻は傷つき辛さにしろ柔軟性にしろ、一様にやっかいなものでしょう。加えて遠距離でもこの炎の吐き様です。かの火竜に負けず劣らずの勢いの炎弾をこうも容易く吐き出されては、怪鳥と比べるのも些か以上に失礼でしょう」

「ううん。礼を気にする相手じゃあ、ない、と、思う、けど」

 

 密林近くのジャンボ村に移住してから、数度狩猟した経験のある通常種の怪鳥(イャンクック)。それらを引き合いに出しながら移動を再開、次々と吐き出されては爆ぜる炎の塊を避け続ける。

 暫くして炎が途切れた。一頻り吐き出し終えた黒狼鳥が口内に燻る火の粉を払うその間を逃さず、主従は最後の会話(・・・・・)のために足を止める。

 

「ふぅ。……やっぱり、この相手。全力でいかないと駄目、みたい。……ネコ」

「心得ました」

 

 言葉を交わし、二者共に獲物へと向き直る。

 主の意図を即座に汲んだネコは背を飛び降りると鈴に玉を入れ、踏み出した。最後に目線を合わせ、

 

「我が主 ―― ご武運を。私は遊撃を開始します」

「お願い」

 

 振り向かず、駆けた。

 鈴を鳴らしながらネコが黒狼鳥の真ん前へ、ヒシュが後ろへと入れ替わる。木々の開けた部分へ躍り出たネコは黒狼鳥の気を逸らすべく、飛び鉈や結い錘などの投擲を多用し、言葉通りの遊撃を開始した。

 遊撃の後方。ヒシュは脱力し、瞑目。

 

(ジブンの部族は、部族だけでも強かった。今だってジブンは、ロンのお願いを受けて動いてる。だから誰かの為になんて、あまり考えていなかった。でも ――)

 

 暖かくも強く、活気と希望に満ちたジャンボ村の人々の顔を思い返す。続いて思い出されるのは、志を同じくする……ジャンボ村の狩人にして王立古生物書士隊の同僚達の顔だ。ダレンが仏頂面で悩みながら指示を出し、ノレッジが死に物狂いの疲労困憊で動き回り、ネコがいつもの様に丁寧な援護を行い、ヒシュはそれらの最前で刃を振るう。

 ―― ここテロス密林を訪れてから、大陸を跨いでから。果たして「ジブン」は変わる事が出来たのだろうか?

 ―― あれだけの旅を経ても知る事の叶わなかった自らの想いを、知る事が出来たのだろうか?

 その答えは未だ出ていない。だが、感じたものも確かに存在する。ジャンボ村での生活は決して、無意味ではないとヒシュは思う。

 

(……ジブンは、自分(じぶん)。でも、誰かの為に頑張れるなら。きっとそれって、やっぱり、嬉しい事なんだ)

 

 そう思えば、どこか奥底から力が沸いて出る気がした。熱く昂ぶる奔流の様なその力を抑えるでもなく制御するでもなく、促し、身体に行き渡らせ ―― ヒシュはまた、狩猟へと走り出す。

 風雨に晒され段々と傾いてゆく仮面を無視し、間近に迫る紫苑の鱗へ向けて『ポイズンタバルジン』を叩き付けては離脱する。黒狼鳥に軌道を読まれないよう念入りに緩急をつけた蛇歩を繰り返し、十分な距離をとった所で息を吐く。

 ネコがまだ惹き付けてくれている。火を入れるのならば、この隙を置いて他にない。限界まで吐き出した所で息を止め、ヒシュはひたすらに脱力した。

 観察は行った。十分な筈だ。

 狩猟の流れと黒狼鳥の意識に身を委ね、握り締めていた意識を手放す。

 完全にではない。しかし余人の入り込む隙を更にした心へと創り ――

 

 ―― 眼を開く。景色を、映した。

 

(……ん、う)

 

 ―― それは、もの寂しい孤狼であった。

 雲海の果てより木々を見下ろし、深い木々の合間から月を眺め、自らの縄張りを広げる為にと闘争の日々を送る『彼』。

 争いによって左の耳膜は常に傷を負っており、目の光を失いかけ、この尾は二度も生え変わったか。

 剥がれ落ちた経験のない鱗など身体のどこにもなく、甲殻は命を守る為にと否応なし、より厚く硬く成長した。

 炎熱を放つ植物を飲み干し吐き出す(きば)を濃く、あえて毒虫を食む事で尾に秘めた(つめ)を強く。

 安寧の地で惰眠を貪る事など考えもしない。彼にとっての『生』とは、戦いそのものであったのだ。

 だがそれら全ては、この世界に生きるための手段でしかなく ――

 

 狩人の脳裏に鮮明に描き出されてゆく「景色」。始めのもの寂しいという感覚だけが、僅かながら残ったヒシュ自身による想いであった。

 改めて狩猟へと意識を沈めて行く。視界には薄靄がかかるが、しかし、生命に溢れた世界がよりくっきりとした輪郭を伴って知覚される。何より、どう動くかが判る。こうしてみれば、攻勢の機はそこかしこに転がっている。例えばこれもそうだ。

 

「ギュバァッ!」

「―― う」

 

 ヒシュはイャンガルルガの宙返りによって振るわれた尾を急停止で避け、同時に地面に「配置」されていた得物を拾いあげる。目標は地から僅かに浮いた位置で翼を動かしていて ―― 件の得物を持ち上げた勢いそのままに、振るった。

 みしり。逆上がりに雨粒を割り、ヒシュの身体より太く大きい槌……の体裁をとっているただの大骨、その名も『骨』がイャンガルルガの頭蓋の側面を殴打する。『骨』は鍛冶のおばぁが削り出した鎚であるが、幾ら作り手の技術が高くとも簡易の品に過ぎない。叩いた側である筈の『骨』は黒狼鳥の甲殻との押し合いに負け、大きく軋みをあげる。しかし着地直前であった黒狼鳥も、空中に在る身故に体勢を容易に崩し、成す術なく地面へと転がった。

 この大骨を持っていては機動性が失われる。そう判断すると振るった『骨』を使い捨てにその場に放り、ヒシュは獲物へ向けて猛然と寄る。今度は中途の地面に「配置」されていた『山刀』の束、その括り紐を掴んで引き摺り、イャンガルルガへと放る。抜き身のままだった『山刀』の衝突によって括り紐が断ち切られ、周囲に数十本の刃が転がった。

 

「う」

 

 唸る。

 そのまま、獣の這い蹲る姿勢のまま。散らばった『山刀』の内二振りを無造作に掴み、鋼を超えた硬度を誇る黒狼鳥の甲殻へ向かって叩きつけた(・・・・・)

 この『山刀』とて、決して刃挽きをしている訳ではない。一般的なモンスターが相手であれば十分に武器としての用を成す。が、ジャンボ村の村付きにして大陸随一の知識と腕を持つ鍛冶師であるおばぁが……今度こそ……存分に腕を振るった『ポイズンタバルジン』と『ハンターナイフ』による斬撃でもってすら、イャンガルルガの甲殻の硬度には届かなかった。だからこその『山刀』。量産品の数で暗紫の外皮を穿とうと言う目論見であった。

 ただしヒシュにとって、こうして多数の武器を用意して使い捨てるのは、予てより格上の硬度を持つ相手によくよく利用していた戦法でもある。遥か昔「陸の女王(リオレイア)」を狩猟した際もそうだった。

 勿論狩猟の最中に在る今、昔を懐かしむ気など毛頭ない。周囲の状況を際限なく取り込み拡張してゆく思考にあって、その様な余裕は無いに等しい。

 生を映し、刃を映し。

 両手を三度ずつ計六回打撃を試みた所で黒狼鳥が翼を動かし、『山刀』による打撃が防がれた。ヒシュは咄嗟に握力を殺して刀身の曲がった『山刀』をわざと弾かせる(・・・・)と、辺りに転がっている別の『山刀』を拾いつつ間合いを測る。

 黒狼鳥がばさりと翼を動かし、僅かに浮かぶ。空中にて瞬時の一動作によって体勢を直すと、立ち上がり、怒を顕にして啼き叫んだ。

 発露。燃え盛る怒りが、瞳に映っては狩人の胸を打つ。

 

「ギュグルルゥゥア゛アーッ!!!」

「……う」

 

 孤独を是とする鳥竜は、空の、雲の向こうの月に向かって啼いている。

 この様な感情を区別しようと考えたのは人だけに違いない。ヒシュは人だからこそ、判る。好戦的だというのだから、怒るのは当然だ。ならば残る寂しさは、どこから来ていたのか ―― 深く、沈む。

 

(……ぐるる、る(・・・・・)

 

 その心に宿るのは未知への恐怖。感じるのは怒涛の如く押し寄せる圧倒的な強者の気配。視えたのは、ヒシュの記憶に在る姿よりも一層黒く大きく変貌した未だ知らぬ鳥の姿。

 

 ―― 「未知(アンノウン)」。かの黒く燃え盛る鳥竜が山の頂を覆い、イャンガルルガの安息を奪ったのだ。

 

 弱いモノが、より強いモノに追い出される。判り易い自然の摂理でもある。だがしかし、相手が相手。あの未知は果たして、「生ける物」として成立して良いのだろうか? ……判らない。だからこそ寂しいのだ。何より理不尽にも思える強者に負けてしまった、黒狼鳥自身が。

 その寂しさを。孤独を心に投射した狩人は、映し鏡の如く、月に向かって啼いた。

 

「グルうう゛ゥオオ゛ーッ!」

 

 咆哮と、小さな斬撃によって黒狼鳥の注意を向けさせ、誘導し、

 

「ギュバババッ!?」

 

 ―― ズシィンッ!

 

 怒りに狂い突進した黒狼鳥を、今度は木の間に張った鉄線を使って転倒させる。鉄線は千切れ、代わりに樹が二つ傾いだが、転倒によって十分過ぎる程の隙が出来あがる。

 ヒシュは暴れる黒狼鳥の脚と翼を避けながら、手当たり次第の『山刀』を注ぎ込んでは左脚と左翼を叩き斬り、曲がった傍から別の『山刀』でもって叩き付ける。叩きに叩いた『山刀』はついに皮膜を貫き、そのまま地面に縫い付けようと。

 しかし、『山刀』を突きたてた次の瞬間。

 ずっ……びりぃ。

 張り詰めた薄い布が破れる様な音。黒狼鳥が、縫い付けられた自らの翼膜を力任せに引き千切る事で自由を得たのである。

 感じた敵意に弾かれ、ヒシュは後ろへと跳び退る。今の黒狼鳥の気性ならば二度目の逃走(・・・・・・)という選択肢は採るまい。その命尽きるまで、敵対者であるジブンに牙を剥くであろう。

 だが翼を殺したという事実は、逃走を防ぐ以上の成果でもある。何せヒシュは、飛べないのだ。

 

「……う゛」

「ギュ、バババッ……」

 

 ヒシュは擦り付けられた泥をそのままに唸り、立ち上がる。二本の脚と地に引き摺るほど低く構えた二本の『山刀』が、見る者に四つ脚を地に着けた獣を想起させる。

 黒狼鳥は怒りと気性とを喉奥に押し込め、炎を成して衝突に備えた。左翼と左足の付け根からは滂沱の如く血が流れ、殴打された左の眼窩が僅かながらに陥没し……眼杯の内を満たしていた水晶体は、とうに潰れていた。

 天変かと降り注ぐ大粒の雨の中に二頭、怜悧さと暖かさとを混有した不気味な獣と、どす黒い索漠に埋もれた手負いの獣とが対峙する。

 

 薄暗い雲が嘶き、奔る雷が天と地を渡す。

 同時に、互いが互いへと牙を剥いた。

 

 ヒシュは混ぜ合い肥大化した意識の中、迫る黒狼鳥を漫然とみやる。開いた嘴の中に炎が灯ったのを視認し、身を翻す。

 ―― 黒狼鳥が吐き出した炎は、地面を這う様に動き回る狩人を捉える事が出来なかった。だが、まだ、これでいい。

 ヒシュは獲物の左側ばかりを攻めていた。そこを点く。死角になっている左脚を足元から斬り上げ、転倒させた上で止めを刺す。そのつもりであった。

 ―― これでいい。こちら()ばかりを狙われていたのは、知っている。黒狼鳥は狩人の姿が消えたのを見計らい体を傾け、残る右翼を自らの吐いた炎によって巻き上がる風に乗せた。ぶわりと浮き上がる身体の下で、狩人の振るった剣が空を切る。さあ反撃だ。嘴を振り上げ、足元に居る生物を叩き潰そうと。

 つもりであった ―― その上手を行かれた。たかが左翼だけだというのに、飛ぶ手段を塞いだと思い込んでいた点こそが、唯一にして最大の失策であった。しかしヒシュはやられたとは思わない。苦境にあって、狩人は孤独ではない事を知っている。

 両者の空間へ一筋、視線が割り込む。ネコは木の幹とゴム索を使い急造に拵えた投石器で、黒狼鳥が飛び立つ瞬間を狙っていた。ひゅんという風音。『爆雷筒』が放たれ、空に留まった黒狼鳥へと張り付いてゆく。「我が友をやらせはしない」とばかりに人造の雷が轟いて、黒狼鳥を何もさせないままに地に落とした。

 ―― 黒狼鳥は衝撃に痺れた思考と血に塗れた視界の中で思い返す。思えば、自分は、以前もこうした相手と戦った事が在った筈だ。生を彩る戦いの中燦然と輝くその一戦は、この「相手」と同じく……小さく、硬く、素早く、賢く、勇猛で、鋭い牙を持ち、粘り強い生き物が相手であった。

 そうだ。あの時と同じ。目の前に居る存在は、自らの生を脅かす好敵手だ。

 ―― 背筋が喜びにうち震える。黒狼鳥は恍惚と押し寄せる多幸感に身を任せ、脳髄から魂を燃やす為の薪を次々とくべる。動かなかった身体も、まだ動く。地面に着くと同時に身体を弾ませ、好敵手を突いた。

 仮面の下、ヒシュの顔に笑顔が浮かぶ。ありえない速度と反応で突き出された嘴を辛うじて左腕の楯で受け ―― 受け損ね、鎧までが削れ飛んだ。左の肩が外れる致命的な事態だけを、身体を回して衝撃を殺す事で紙一重に避ける。

 ―― 渾身の突きを悠然といなし(・・・・・・)、好敵手は鈍色に光る牙を向けてくる。苛烈でありながらもどこか共感できる昂ぶりを秘めた、黒狼鳥が今までに経験した事の無い刃筋であった。……此方の左目は既に見えていない。一撃は甘んじて受けてやる。その替わりにと啼き、蹴飛ばした。

 左目に『山刀』を突き立てた直後。ヒシュの全身を威圧の意を込められた音波が襲い、硬直した身体を紫苑の右脚が叩いた。咄嗟に受けた『山刀』が粘土の様に折れ曲がり、重ねた右の『アロイアーム』が砕け、溜めていた息が全て外へと吐き出される。反射行動のまま受身を取って地を転がり……弟子(ノレッジ)への教えを自らが破る訳にもいくまい……四肢で地面を捉えて体勢を立て直す。面を上げると腰につけた本命の得物を二振り、抜いた。

 ―― 離れた位置に蹴飛ばした筈の好敵手は、既に目前に近付いていた。中距離だ。尾を ―― 否。読まれているに違いない。ならば、当たるまで幾重にも振るうまで。

 ヒシュが横薙ぎに振るわれた牽制の一撃をかわした次の瞬間、空に十字を描いて、真下から尾が飛び出した。尾を避けるため低くしていた此方を、強靭な尾による次撃で狙っていたか。―― だが、これも漫然とだが知っている。同じ骨格の生物が行うこの攻撃方法を、ヒシュはダレンから確かに教授されていた。故に、残していた警戒心がその脚をほんの一歩鈍らせる。仮面に覆われた眼前で、黒狼鳥の尾が空をきった。

 ―― 宙に留まった瞬間、黒狼鳥は失敗を悟った。今のは覚悟を込めて挑んだ一撃だった。だというのに、それを避けられるとは。なんという好敵手であろう。仕留められず宙に留まる結果であれば、先と同じ「あの攻撃」が来るのは確実だ。

 予想を違えず、ネコは角度を変えて『爆雷筒』を撃ち放った。黒狼鳥を再びの雷撃が襲い、三度、四度と轟き唸る。これまで木々に留まっていた気強な類の小鳥達も、続けざまに響く轟音によって遂には飛び逃げた。

 雷が切れた間を縫って、ヒシュは『ハンターナイフ』を振り上げた。落ちてくる勢いが重なり、腹を突き破り、突き立てた左腕を反作用が襲う前に手を離し、旋回。今度は逆手の『ポイズンタバルジン』を叩き付ける。抗血小板作用を持つ「黄の毒」が塗られた小斧剣でもって、黒狼鳥の右眼をも潰しにかかる。

 ―― 視界は既に無い。だが本来ある筈の痛みも感じていなかった。左の身体からは「熱いもの」が流れ続け、一向に止まる気配を見せない。これはあの好敵手の牙を覆う毒による効果なのだろう。狡猾で用意周到な相手だ。だがこのまま、やられてばかりでなるものか。とりあえず、気配の有る方向に向けて尾を振るい炎を放つ。

 ネコは襲われる寸前、炎弾に向けて耐熱布を広げた。ヒシュも振るわれた尾によって『ポイズンタバルジン』を弾かれ、折れた。だがしかし、『配置』しておいた武器がまだ残っている。仮面によって顔を覆い隠した「被り者」は腰から『大鉈』を抜き放ち、地面に置いたマカ壷の中に詰めてある液体(どく)に刀身を浸した。右手にはマカライト鋼鉄製……鈍い藍の輝きを放つ『短槍』を拾い上げて、また、駆ける。

 ―― 来る。黒狼鳥は遠離までを埋め尽くす暗闇の中、好敵手らの気配を正確に察していた。小さくも鋭い刃の如き気配が迫り、近付き、……そこで疑問符を浮べる。迎え撃とうとしていた気配が、寸前で二つに分かたれた(・・・・・)

 狩人らは決して、黒狼鳥を侮ってはいない。その狩猟の経験故か、死の間際にある生物の粘り強さも身をもって判っている。だからこそ、満身創痍だとはいえ、安易に近付く不用意さは捨てていた。あくまでかく乱。前後に重ねていた体勢を解き、ネコとヒシュは左右から黒狼鳥へと飛び掛った。

 ―― よくよく感じれば気配の大きさは違っている。その判断をしている間……考えた思考へ、狩人達は衝撃をもって割り込んだ。腹が熱い。ようやくと痛覚を取り戻した黒狼鳥は、地面をもんどりうって転がった。

 はたして、啼いたのは、どちらの獣であっただろう。

 

「グ、ルル」

 

 ここが最期。攻勢を仕掛ける。

 ヒシュはそう決めると、握っていた淵を手放した。

 

 瞑目。

 心と魂とを見開き、

 強者への闘争心で身体の端までを満たし、

 尚溢れ出る闘争心を贄として奥底に溜まった熱を解放し、

 その手に握った(はえた)爪を、獲物へと一閃(ふるう)

 

 仮面の奥の更に奥。魂の底から湧き出したとでも言うべき、人には不可視の……しかし感知できるぎりぎり、狭間の領域に揺らめく虹色の気炎を纏う。「青の毒」を纏った『大鉈』を叩き込み、すぐさま『短槍』を腹に向けて突き込んだ。

 ヒシュが周囲に怒気とも殺気とも取れる、どこか鬼の様を思わせる気迫を纏う。避け、すれ違い様に斬り、跳んでは突いて、攻撃に回避を添える。

 命を懸け、魂を燃やす。先に死んだ方が獲物。連なる機と機を使って更なる機を生み出し、ひたすらに攻撃を加えて続ける。確かな手応えと命を削る焦燥感とがせめぎ合い、ヒシュの意識を染めては流す。

 ―― 耳の奥。万雷の刃が、閃めく音。黒狼鳥に立ち上がる気力は既に無かった。力も無い。しかしどういう事か、心に在った寂しさも、戦いの中でどこか遠くへと消え去っていた。悪くは無い気分だ。生涯を闘争に費やした中にあって、或いは、初めて訪れた安息であったのかも知れない。

 その安息と命とを、断ち切らねばならない。依頼を受諾した狩人としての矜持でもある。ここで黒狼鳥を狩らなければ、ライトスを含んだ誰か ―― 依頼の主と人々が損を、下手をすれば命をも失う羽目になる。

 強者は弱者を淘汰する。万理を通す自然の摂理。この個体とて、今までをそうして生きていた筈。と、ヒシュは自らに言い聞かせ……それでも、を振り払う。

 

「ぐるヴヴヴぅああ゛ア゛ーッッ!!」

 

 『大鉈』を大上段に構えた狩人が豪咆をあげた。孤狼が為の、鬨の声。

 今の黒狼鳥に「負け」はない。先にあるのはただ、死のみ。気力などなくとも黒狼鳥は炎を吹き出した。身体は動かず牙は折れども、奥にある炎を突き立てる。

 命を賭して吹かれた炎と獣と化したヒシュが、真正面から切り結ぶ ―― 寸前、瞬間早く、熱の間に仮面と刃が割り入った。全体重を乗せた『大鉈』の厚い刃がこめかみを裂き、炎は仮面を僅かに焦がして空へと放たれた。

 衝突。十分な距離を離れていたネコが、満ち暴れた気中りによって倒れ込む。ネコが再び視界を上げた時、黒狼鳥の首元にはヒシュの『短槍』が突き立てられていた。

 ヒシュが倒れ込む黒狼鳥の顎に足をかけ、首元を刺し貫いた『短槍』を一思いに引き抜くと、途端に血が流れ出す。血溜りの上で『大鉈』を引き抜き、『短槍』を一槍に構え、背後に回って突き叩く。『大鉈』に何度も刻まれ砕けた甲殻は止めにと大きくひしゃげ、貫かれ。金属質の冷たい異物が体内を抉じ開け、夥しい鮮血を流し、黒狼鳥が、遂にその動きを止めた。

 

「グ、バ、ゥ」

 

 ―― その最期を飾る闘いの相手が最上の好敵手であった事を幸せに思い、誇り、瞼を降ろす。

 雨に煙る密林の地面の上。最期の悲鳴すら上げる事無く。黒狼鳥は生涯最後の闘争を終え、灰の如く燃え尽きた。

 

「……」

 

 両の手に『大鉈』と『短槍』とを握った仮面の狩人は無言のままであった。抜け殻となった黒狼鳥の横に立ち、見下ろす。

 いつしか雨粒が血を洗い流した頃になって面を上げ、空を見る。その頬を無数の雨粒が伝っては落ちてゆく。

 気付けば雫の勢いは弱まっていた。未だ夜半である。降り続くにしろ、猟場に死臭を漂わせていては獣を呼び寄せるだけ。狩人として、黒狼鳥を運び出さなければならなかった。

 

「……う゛」

「我が主にして、我が友。お気持ちは察します。が……そろそろ運びのアイルーを呼びましょう」

 

 ずっと隣に寄り添っていたネコが口を開く。

 逡巡の末、搾り出す様に、ヒシュは頷きを返した。

 




 ……この辺が……限界……(心の吐血
 読みやすさを考慮して、ちょっと実験的な書き方をしております。
 ある意味ではノレッジ編との比較でもあるかも知れません。
 あと、ヒシュ編の割込がもうちょっとだけ続くのじゃよ、です。


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