特務警察署の日々   作:宇垣秀康

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取り敢えず最初はここから


case.1-1 亀と龍と

特務警察署が稼働してから数ヶ月…

茹だるような熱気を帯び、少し溶けたアスファルトは特有の甘いにおいを発しながら、その上を走る車や人間に更に熱を与えている。

 

そんななか、特警の署員は兎に角雑用に追われていた…

課長である杉下は神戸をつれ警察庁の大河内の元へ出掛けており、矢部は秋葉と痴漢の取り調べで出ており、青島は交通課と署長たちと共に子供の交通安全教室だ。さらに着ぐるみの中は特車の連中が入っているそうだ。

陸動課に残っている三人は別々の仕事をしているが、うち中年の二人は飽きてきているのが目に見えている。

伊達は市民の警察への意見書の誤字脱字の添削、両津は壊れた細かい備品の修理…

これを既に2日はやっているのだ…

「…おい両津、茶をくれ…」

「…伊達さん…あんたの方がポットに近いだろうが…」

と殺伐とした空気が流れる。

壁には"経費削減!!"と書かれたポスターが貼られ、エアコンは止まっており、扇風機が回っている。

そんな中、一番下のはずの一平は足を組み、イヤホンをし、PCをじっと見ている。

違法販売していた裏DVD屋から摘発した作品の中に無理矢理素人が出ていないかの確認である。ある意味本当に根気のいる仕事である。だからこそ二人も一平にお茶を頼まず押し付けあっているのだが…

鬱々とした空気の中で両津がぶちギレる。

「くそー!こんなんならプラモでも持ってくりゃーよかった!こんないつでもいいような仕事をしなきゃ行けないんだ!!課長も矢部も秋葉をいないし!青島は…あんまり羨ましくもないなぁ…くそぅ!」

そう、今両津がやっている仕事は今急ぐ必要はないのだ。年末までにやればいい仕事を本庁の人間が急ぐようにと押し付けてきたからしていたにすぎない。単純すぎて飽きたのだった。

そして両津の叫びはみんなの心の声でもあった。

 

 

 

両津は何より全員と打ち解けるのが早かった刑事だ。

趣味人としての両津はやはり凄かった。杉下や伊達とは昔ながらの上下関係を結び、同期となる矢部とは飲み仲間、後輩となる面子とは、面倒見のいい理解のある先輩として慕われ始めていた。他の課の面子共仲がいい。交通課では、特車のイベント用の装備を婦警二人と組み上げたり、鑑識では自作の電車ジオラマを持ち込み、大絶賛され、何処にいっても「両さん」「両ちゃん」と呼ばれるようになり、名物刑事の一人となっていった。

 

 

対して伊達は、周りから恐れられていた刑事だ。

昔ながらの古くさいやり方の足で稼ぐ刑事であり、ヘビースモーカーで酒豪。なかなか取っつきにくい人間であった。何よりあまり周りの趣味がわからない為不思議そうに見てしまうことがあり、秋葉や、婦警達から評判が良くなかった。(一人「渋くて素敵!」と言っていた者もいたが…)

 

しかし、そんな署内が蒸し暑くギクシャクしていた中日、伊達を訪ねてきたお客がいるらしい…そのお客に会いに行く伊達が部屋を出た瞬間、交通課の二階堂頼子がにやにやしながらこそこそと入ってくる。

「両さん!大変よ!」

「あぁん?なんだ頼子?なんかあったのか?」

「受付の子が言ってたんだけど、今伊達さんに会いに来てる人って小学生の女の子らしいんだけど…伊達さんのこと伊達のおじちゃんって言ってるらしいのよ?」

「あぁん?そんなのふつうじゃねぇか?」

「でも、なんかあやしぃ~のよねぇ…見に行かない?」

とにやにやと笑いながら両津を誘う二階堂。

そんな会話を聞いていた面子が作業のまま、スススッと二階堂に集まりだす。

「なんや伊達のおっさんそんなのが趣味なんか?かぁっー!」

「そ、それでその女の子…ど、どのくらい可愛いのでしょうか…」

「伊達さんに会いに来るなんて…よっぽどなんかあったんですかね神戸さん?」

「なかなか掴みどころもないハードボイルドな刑事に少女が会いに来るとはなかなか絵として面白いですけどね…」

「しかし、彼のお嬢さんはある程度いい年齢のはずです。…興味深いですねぇ…」

「でしょでしょ?なかなか可愛らしい子らしいのよ。これが!課長~見に行きません~?」

と二階堂が悪巧みに誘おうとしているなか、それをすこし遠くから苦笑いながら見ている一平と呆れている両津。

 

そして殆ど仕事が終わっていた陸動課の矢部、秋葉、青島、神戸、一平、そして杉下が二階堂と共に、伊達を追いこっそりと尾行を始めたのであった。

 

 

そんな者達をみて、残った両津は仕事を進めながら一人愚痴る。

「まったく…そんなもんあいつの知り合いに決まっているだろうに…課長まで…うーん…

まったく、以前ならわしがいの一番にサボっているというのに…ここの連中、矢部を除けば仕事が出来る奴等ばっかだからペースが釣られるんだよな…くそぅ…あーもぅ!」

両津は仕事を放り、下駄を履き直し杉下達を追いかけ出す。

「まてぇー!頼子!わしもいくぞー!」

 

 

その前方には伊達と小学生が並んで歩いている。

少女のもう1人のおじさんが待つ公園に…




題名がガメラ対ゴジラみたいになってしまいました…


時系列としては龍が如く2の冒頭、墓参りの前日と仮定しています。
宜しくお願いします。

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