特務警察署の日々   作:宇垣秀康

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遅くなりすみませんでした。


case.1-5 亀と龍と

特車の面々が署へと帰るなか、公園内では、遥と婦警達の華やかな集まりと、陸動課と桐生という暑苦しい集まりとなり、盛り上がっていた。

 

ー公園ー

 

婦警たちは遥と少し離れたところでアイスを食べている。

陸動課は秋葉と青島が人数分ジュースを買ってきて、伊達と桐生に話を聞いている。

 

「しかし、今回はどういったご用件で東京へ?失礼ですが、一線を降りられたあなたが此方に来るとなると余程のことなのかと邪推してしまいまして…」

「課長…どうなんだ一平?お前の方には何か入ってないのか?」

「俺の会社の方にもあまり何か動きがあるとは入ってないですね。」

「右京さん、何でしたら丸暴の方に確認しますか?」

と、右京が発した謎に両津達は動こうとするが、伊達がそれを制する。

「待ってくれ。こいつぁもうカタギの人間だ。そこまでしなくてもいいじゃねぇか。

しかし桐生よ。まだ俺も今回お前さんがこっちに来てるとは聞いてなかったぜ。本当にどうしたんだ?」

と訝しげに桐生に問う。

それに桐生は少し空を見て答える。

 

「…明日は、風間の親っさんの墓参りでな…

俺の親父に、遥と暮らしてる俺を見てほしくてな…

そしたら遥が、伊達さん…あんたに会いたいって言い出してな…しかし、俺も流石に署内に入れるとは思わないから遥一人でいかせてたんだ。すまん。」

 

と、少し悲しげに答えた。

伊達は桐生が、愛する女性だけでなく、無二の友人も失い、残ったのは遥だけであることを思いだし、深く煙草の煙を吸い込んだ。そして桐生に気にするなと伝えた。

その後しばらく、刑事達の桐生への質問会へと変貌し、遥が疲れたというまで続いた。

そして、遥は桐生にかかえられ、刑事達に見送られ予約しているホテルへと向かっていった。

 

そして、刑事達が署へと向かっているとき、伊達が右京に話し掛ける。

「課長…」

「なんでしょう?」

「あいつは…桐生は悪いやつじゃないんだ。」

「そうでしょうね。先程話をして判りました。ある程度力量のある人の一種の驕りのような物腰でしたが、その実しっかりとものを見ていらっしゃる…そういうかたのようですねぇ…」

「そうなんだ…課長…今日話したことは…」

「分かってますよ。ただでさえ警察は東城会と官僚が関係していた事件で対応が遅れたと問題視され、上層部はカンカンになっていました。その事を知った現場の刑事達は関係者全員に強引な調書を取ったことも問題になりましたからねぇ…関係者内に重傷者がいたことも…

察するに彼がその重傷者なのでしょう?」

「…よくわかるな…」

「そして彼は証拠不十分であること、怪我のこともあり

釈放と共に消えた。

その彼が突然また神室町へと現れたとしたら…一課と暴対の刑事達が騒ぎ立て、彼の日常が崩れてしまう…そういうことでしょう?あなたはそれが崩されるのが嫌なのですね?」

「そうだ…だから今日のことはせめて明日、あいつが墓参りを終わらせるまで、本庁に情報あげないでくれないか?

頼む!」

と、伊達が頭を下げる。

 

それを見ていた刑事達は、笑いながら口々に答える。

 

「大丈夫ですよ。私達は伊達さん、あなたの友人と、その娘さんにあっただけですから…」

「課長…」

 

「そうですよ。流石にこんなところにあんな大物がとは思いましたが…本庁に嫌われている僕達が率先して聞かれてもいないこと伝えることが遅れたところで何かありますかね?」

「神戸…」

 

「大丈夫ですよ伊達さん。あんな素直な子育てられる親が悪いわけないじゃないですか!」

「そうよ!今度来たときは遥ちゃんを遊びに連れていってあげるんだから!」

「ちょっと!危ないのはだめよ夏実!この前みたいな太田さんとのサバゲーみたいなのは駄目よ?」

「あーあの後、太田さん本物のライオット・ショットガン持ってきて大騒ぎになっちゃったもんね…」

「青島…辻本…小早川…二階堂…」

 

「…ん?儂らはー…あー…あんまり仲いいやつおらんからのー別にどうでもええわ…なっ秋葉?」

「…あの子は、多分原石…同士に連絡せねば…ブツブツ…」

「あー…大丈夫と言うとる。」

「矢部…秋葉…」

 

「俺もいいですよ。あの人は筋が通らないような生き方をする人じゃないですよ。」

「…儂も親戚に年の近い姪がいるが、そいつの親が姪を見る目とあいつが遥ちゃんを見る目は同じだったよ」

「一平…両津…」

 

肩書きや外見だけでなく、中身をしっかりと判断する仲間を見て伊達は嬉しくなり、涙が出そうになるのをごまかしながらまた深く頭を下げる。

 

 

「皆、有難う…」

 

と、照れ臭いのを隠すため、夕食の驕りを勝手に約束し署に走る婦警達…そして、それをまたかという顔をして笑っている刑事達…まだまだ暑い日中だが、その夜の酒は美味しいだろうと言うことだけは言い切れそうだ。

伊達は嬉しそうに、奢る人数の多さに少し悲しそうにしながら金を下ろしに銀行に向かってから署に戻るのだった。

 

 

 

 

 

しかし物語は始まったばかりであることを忘れてはいけない。

龍はまだ胎動を始めたばかりなのだから…




遅くてすみません

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