では、楽しんでください!
「さて………烏間先生から聞いてたかと思いますが、私もついに教鞭を取る事になりましたので、よろしくお願いします」
挨拶をする氷室さんに緊張しているようには見えず、堂々としている。
「それで、私が今日教える体育の内容は、『フリーランニング』です」
その言葉に、教室屋根の上でテストの採点をしていた殺せんせーがにやりと笑う。
「そうですね…………では、三村君。今からあの一本松まで行くとしたら、君ならどんなルートで行きますか?所要時間も考えてみてください」
三村は少し考えてから喋り出す。
「そうですね………まずこの岩を降りて、そこの小川は幅が小さいところを飛び越えて、茂みのない右の方から回り込んで、あの岩をよじ登ってゴール。まぁ、大体1分位ですかね?」
「なるほど。普通に行けばそんなものでしょう。が……………フリーランニングを使ったらどうか?ちょっと時間を計ってみてください」
氷室は三村にストップウオッチを渡して、崖に背を向ける。
「フリーランニングで必要なのは身体能力の把握や、受け身の技術、距離や危険度を正確に計る力…………………それでは見ていてください。スタート」
氷室は崖を飛び降り、地面に着地すると同時に走り出す。小川の壁を伝って越え、近くの木にジャンプし、岩と岩の間を壁キックで上り、氷室の手は一本松の枝を掴んだ。
「三村君、タイムは?」
「じ、10秒です…………」
皆は氷室の運動能力の凄さを知っているが、ここまでの芸当の技を見せられ、驚いたようだ。
「これを極めれば、どんな場所でも忍者の如く行動できますが……………同時に危険な物でもあります。かつて私の友達もこれに手を出し………………亡くなりました」
その言葉に、皆は表情を堅くする。
「………………って言うのは冗談ですが」
(((冗談かよ!!)))
氷室は付着した枯れ葉を払い、言葉を続ける。
「まぁ、それほど危険なんです。幸い私の友達は亡くなってませんが、本当に亡くなった人もいますからね。この裏山なら地面も柔らかいため、訓練に向きます。でも、ここ以外で技を試したり、私や烏間先生が教える技術以上の事はしないように」
「「「はーい!!」」」
「では、基礎中の基礎である受け身のおさらいをしましょう」
皆が受け身の復習をしているのを見ている殺せんせーが何かを思い付いた顔をしたのに気づいた者はいなかった。
翌日
「ジャンプなくて探しちゃった………」
遅刻して教室に入ってきた不破の手に手錠がかかる。
「遅刻の容疑で逮捕する」
「朝っぱらからなにしてんだか…………」
デュオは呆れ気味で云う。
「てか、その格好はなんだ殺せんせー?」
キバットが聞くと、その質問を待ってましたとばかりに殺せんせーが喋り出す。
「皆さん、フリーランニングを習い始めましたね?それを活かしたゲームを考えてきました」
「そのゲームとは?」
「ケイドロに決まってるじゃないですか、氷室さん!もう、それしかないでしょう!!」
ちなみに創真はドロケーと呼ぶ。氷室はケイドロ。
「今日の一時間目、この裏山を舞台に、泥棒役を皆さんが。警察は烏間先生と氷室さん………じゃなくて、氷室先生と私がやります。皆さんが勝てば烏間先生の財布でケーキを買ってきます」
最後の言葉に氷室がホッとしたのは誰も知らない。
「ただし、警察が勝てば、宿題二倍!」
「………でもさ、殺せんせーが警察なら一瞬で終わりじゃね?」
確かにホリーの言う通り。皆もブーイングを浴びせる。
「先生はラスト一分まで、牢屋に待機します。最初は氷室先生が追いかけ、制限時間の半分を過ぎたら烏間先生にバトンタッチです。私が動くのはラスト一分からです。これなら勝機もありますよ」
「それならなんとかなるか……」
皆も納得し、やる気が出てきた。
「よし、やるか!」
「「「おー!!」」」
本当にいい遊びを考える。これなら楽しいし、緊張感もあって良いと、氷室は思う。
(ただ、烏間先生は殺せんせーと同じ側なのは嫌なんでしょうね………その気持ち、分からなくもないですが)
嫌そうな感じの烏間を見て、氷室は心の中で苦笑した。
ベタな展開だが、創真は倉橋とペアを組んで行動することになった。
「追ってくる鬼の人数は一人だけで、この広い裏山だし………警戒するのはラスト一分位だよね~」
「甘いねぇ…………相手は超人。そう簡単に逃げ切れるとは思えない。あ、陽菜乃。足跡と植物の乱れに気を付けて」
「え?」
「それを警察が見て、場所を特定するからね。僕が警察側だったらそうするし」
「なるほど~。流石創真君!」
間もなく、ゲームが始まった。
鬼の人数は1人だが、逃〇中のハ〇ターの何倍も手強い事を皆は直ぐに知ることになる……………!!
to be continue………
THENEXT story 2/21 PM 22:00
次回ハ〇ター………じゃなくて、先ずは氷室さん放出(?)